彼女との同居生活が突然始まって早くも一週間が過ぎようとしていた。
西野さんからの徹底した指導により(ネットの使い方を教えて勉強させた)家事のやり方や一般常識を覚えた彼女はいよいよメイドらしくなってきた。
出勤しては疲れて帰って来てぐったりしていた西野さんもおかえりがある安心感や家事をやらなくて済むようになり前に比べると表情に余裕ができていた。
今ではエプロン姿が板についた(料理ができるとは言っていない)彼女は現在食後のテーブルを綺麗にしている。それを見ていた西野は余裕ができたおかげなのか、ここに来てようやくある事に思い至った。
「ふふ~♪」
「ちょっといいかな?」
「はい♪なんでしょうか?」
「いや~今さらなんだけど、本当にアナタには名前がないんですね。」
「はい。そもそも私達には人間で言う命名文化がないので。」
「でもそれだと深海棲艦って普段どうやって相手と会話してるの?」
「えーと‥‥」
『おい!お前!ちょっと来なさい!』
『は、はい!姫様!』
『左側!弾幕が薄いぞ!』
『はい!旗艦様!』
「てな感じで不便はないです。」
「お前とか左ってたくさんいたら間違えそうな気が‥‥まぁ少なくとも私はないと不便なのよ。」
「と、言われましても無いものはないですし、人間から呼ばれてる名称はちょっと好きではないので。」
「そうなの?」
「はい、なのでどうしてもと言うのであれば‥‥に、西野さんに付けてもらえないでしょうか?」
「わ、私!?」
「こ、こう言うの、言い出しっぺって言うのでしょう?なら西野さんに付けて欲しいです。」
な、なんなのさ~
私に名前を付けろって‥‥私名前考えるの苦手なんです!この前なんてゲームのキャラ名、考えるの面倒だからってaaaaにしたんだから!
まぁでも今後外に連れ出す時とか人が来る時とかに名前がないとかってなると変に疑われるし‥‥
そう言う意味でも名前は必要だね。ああっ!名前の重要性が上がった!ますます適当な付け方ができない!
「西野さん?」キラキラ
うわ~彼女が物凄く期待してるよ。
考えろ‥‥そ、そうだ!彼女との出会いをヒントにってその時の記憶があやふや!!
わずかに覚えてるのは潮風に花火(砲撃音)
そして、靴に入っていた大量の砂‥‥
これらの事から私がいたのは‥‥
「砂浜‥‥うーん、もっといい言葉は‥‥」
ヒントを得た西野は考えた。
「渚‥‥うん!これだ!」
「西野さん?」
「今日からアナタはナギサね。どうかな?」
「ナギサ、ナギサ‥‥はい!音の響きが良いです!今日から私はナギサです!」
名前は気に入ってもらえたようだ。
「さて、これで懸念材料が消えたことだし。メイドさんに今後の日程を伝えるね。」
「お仕事ですね!なんでしょうか!」
「今週末、休日に私の同僚が遊びに来るの。だからアナタはその時はしっかりメイドらしい接客をお願いするね。」
「任せてください!接客はバッチリですよ!」
「へぇ♪そうなの?なら見せて!」わくわく
「では‥‥‥‥お帰りなさいこの変態ご主人様様♪まずお食事ですか?それとも浄化ですか?それとも、私と遊びますか?」
最後の方で彼女から殺気が漏れる。
「ああ~でもですよ。西野さんとなら遊んでも良いですよ~」えへへへ~
「怖いよ!一体何をする気なの!てか色々違う!何がどう違うのかツッコむのはやだけど、とにかくメイドの接客じゃない!」
「え~でもネットで見たのには‥‥」
「いやいや!混ぜすぎ!ネットで確かに紛いはあってもそれはメイドさんじゃないの!」
「そ、そうなんですか?」
「こうなったら私が直接叩き込んであげるわ!今夜こそ寝かさないわよ!」
「ふふふっ!先日は未知の恐怖で臆しましたけど、私は夜戦部隊の旗艦ですよ!夜戦なら負けませんよ!」
こうして二人は夜戦へと突入!
(やましいことはしてません。ただのメイド講義です。)
「だから~もっと恥じらいを!」
「嫌ー!!ニンゲン恐ーい!」
しかし結局やられたのはナギサの方だった。