西野さんちのメ級   作:ユグノート

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第8話 ナギサの社会見学

 

 

 

「いつも感じている視線がまったくない。誰も私に気付いてないからなのかな?」

 

ハイド装置を試そうと人間が集まるところに行くことにしたナギサはいつも買い物に来る商店街に来ていた。

 

 

「あ、あのお肉屋さんだ。」

 

いつも声をかけてくる肉屋の元運動部の筋肉店主は奥から新しい品物を取り出していた。

 

 

「今回もいいの仕入れたな。流石は俺だ。」

 

「ホオゥ、お前もいいの入れたみたいだな。」

 

肉屋に話しかけたのは向かいの魚屋の元文学部系の眼鏡店主である。

 

 

「なんだ魚屋か。」

 

「はは、悪いけど今日も俺が勝たせてもらうんだぜ。」

 

「何だとテメェ!昨日ナギサちゃんに買ってもらえたからって調子に乗るな!買ってもらった回数は俺が勝ってんだ!」

 

「勝手に勝つなだぜ!4勝4敗17引き分けだぜ!」

 

「相変わらずこまけえなオイ!」

 

「褒め言葉だぜ。こっちは今日はなんといつもの半額でアジが入ったんだぜ。なんで今日はサービスで三匹買ってくれたら一匹分まけてやるんだぜ!」

 

「な、なんだとテメェ!?半額で本来一匹なのが二匹なのにさらに一匹お得だと!な、なんてお得なんだ!!」

 

確かに一匹分で二匹は得ですね。

しかし最後のサービスは‥‥うち二人なので多いです。

 

 

魚屋は得意顔だ。だが肉屋も負けじと

 

 

「それなら俺だって!これだ!」

 

「そ、それは!?」

 

「特上牛肉‥‥それも○○産だ。」

 

「な、なぜそんなものが!」

 

「おっとルートは教えられんな。コイツだな。こうだ!」

 

肉屋が紙にその肉の価格を書いていく。

 

「お、お前!正気か!?」

 

「大丈夫だ。元は取れてるから。俺はコイツで勝負だ!!」

 

「肉屋!俺の負けでいいから俺にも売ってくれだぜ!!」

 

「オメェには売らねよ!コイツはナギサちゃんが来たときだけに店に置くんだ。」

 

「だぜ~~!!?」

 

何やってるんだこの人間どもは。

 

あ、でもあの肉は確かに良さそうだがいつも買っているやつに比べると高いな。なんか面倒だから明日はスルーしようか。

 

 

 

「はぁ~疲れました~」

 

その後も商店街を歩き回るが誰にも気付かれなかったナギサはマンションに帰りハイド装置を外した。その効力を確認したが帰ったとたんどっと疲れが来た。

 

「面白いですね。これなら潜入とかに使えるのでは?それも試してみたいですね。」

 

そうだ!

 

ナギサはいい事を思い付いた。

 

 

 

 

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翌日

 

 

「それじゃあ行ってきます。」

 

「行ってらっしゃいませ♪」

 

今日も笑顔で西野さんを送り出すナギサ。そのまま部屋の奥に‥‥は戻らず近くに隠しておいた装置を装備する。

 

 

「ハイド装置起動っと。」

 

装置を起動させたナギサは音を立てずに部屋を出て戸締まりをすると西野を追いかける。

 

 

 

 

「ハァハァハァ‥‥な、なんとか付いてこれた‥‥」

 

なんとか西野さんを見つけたもののバスに乗られ危うく追跡不能になりかけたナギサは艤装を展開。

 

戦闘はできないものの展開した艤装の腕で発車したバスに掴まる。後は手を離さないよう気を付けること数十分‥‥

 

 

「ここが西野さんが働いているカイシャとか言う所ですか‥‥」

 

ナギサが見上げるビルは総合ビルでありここの一画に西野の働く会社の支社が入っている。

 

 

「えへへ~♪一度西野さんが仕事しているところを見てみたかったから。これならば中に入れますしね。」

 

せっかくばれずに潜入できるのならば西野さんが見たいと考えてどこにあるのかは追尾して来るまでは成功だった。ところがバスから降りた所で人が多くなり、見えないナギサにぶつかりそうになる人間を気合いで避けながら追ってたらいつの間にか見失ってしまったのだ。

 

 

かろうじてここに入ったのは見えた。問題はどの階に西野さんがいるのかだが‥‥

 

 

「しらみ潰しに探すまでです!」

 

 

それからナギサは各階を順に見て回り西野さんを探した。ところがなかなか見つからないのでただ探すだけでなく人間の仕事を見学しながらにした。

 

 

「おい!そっちはどうだ!」

 

「後少しで終わりです。終わったら手が空くのでそっちのヘルプ入ります。」

 

「おお!助かる」

 

 

「先輩!ここはどうすれば!」

 

「これはだな‥‥」

 

 

忙しく作業しながら他人の手助けをする人間達ははまるで我が軍の駆逐艦どもを彷彿させるいい働きぶりだと思った。

 

駆逐艦達は多様で大量の仕事をこなす働き者で、弱いけどそれを数や連携で補う。

私は駆逐艦は部下としては好きな方だ。姫ではあるが軽巡洋艦。駆逐艦を統率する立場であるからその仕事を嫌でも見てきているからだ。

 

 

そう思うと愚かだと思ってた人間どもも少しは可愛く‥‥

 

 

「おい、例の計画は?」

 

「はい、業者によれば五年後に完成するとのことです。」

 

 

ご、五年ですって!?確かに我々と艦娘の戦いは膠着しているが今は仮にも戦時ですよ!いつ人間が滅ぼされるか、来年にはこの国が無くなってるかも知れないのにそんな未来の事を考えるなんて!

 

なんて呑気な‥‥

 

 

「あ、そういえば。最近深海棲艦からシーレーンが解放されたお陰で資材が入りやすくなったのでもしかしたら早まるかもだそうです。」

 

「おっそれはいいな。鎮守府と艦娘様々だな!」

 

 

ぐぬぬぬぬぬ!それは数ヶ月前に南西海域での戦いで友軍が敗北したからですね。でも見てなさい!その内すぐに取り返すから!

 

 

やっぱり人間は嫌いです!!

 

 

 

 

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次の階からはさっきの会社とは別の会社が入っているようです。

 

 

「ハァハァ‥‥この装置燃費が悪いです。」

 

大分エネルギーを消費してしまっている。そろそろ西野さんを見つけたいところです。

 

 

「うん?あれは‥‥」

 

目の前から歩いて来ているのは西野さんの同僚の東田さんです。彼女がいると言うことは‥‥

 

ここに西野さんがいる!

 

そうとわかれば西野さんのところまで後わずか、このまままっしぐらです!

 

 

とそのまま東田の横を通りすぎようとした時だった。

 

 

「あれ?何かいる。」

 

私はぎょっとなり動きを止めた。

 

(えっ?まさかね‥‥)

 

 

「ううんと‥‥そこかな。」ギュ

 

東田に肩を掴まれた。

 

「ひぃ!?」

 

思わず声が漏れた。

 

 

「あ、やっぱりいた。ここは不味いから少し場所変えよ。」

 

そのまま東田さんに捕まって私はその階の一番隅、給湯室なる場所に連れて来られた。

 

「ナギサちゃんでしょ?もう姿を見せてもいいよ。」

 

「‥‥‥‥なんで分かったのですか?」

 

「う~ん、気と言うか気配かな?」

 

け、気配って‥‥

 

「ふ、ふーん。人間さんは皆そんな芸当ができるのですか?」

 

「いや、多分無理だね。でも私とかそこそこやってた人ならできるんじゃないの?」

 

「やってたって何をしたんですかアナタは‥‥」

 

「ナギサちゃん、それは秘密よ。女性は少し秘密があった方が魅力的でしょう?それに芸当云々ならアナタのそれこそ凄いじゃない。それも深海棲艦だから?」

 

「いえ、それは試作品です。てか、なんで私の正体を?」

 

「え?西野さんから聞いてるからよ。それでそんな試作品なんか使ってなんでここに?」

 

「そ、それは‥‥」

 

「目的は西野さんかしら?」

 

「はい‥‥」カァァァァ

 

「う~ん、ばれたら困るのなら止めた方がいいわよ。彼女、私より気配察知の索敵範囲が広いからすぐにバレるわよ。」

 

「‥‥本当にあなた方は何者なのですか?」

 

「ふふふ、今はしがない会社員よ。姿が見たいならばれない位置まで連れてくわよ。」

 

「本当ですか!ありがとうございます。」

 

 

東田さんに案内されて東田さんのデスクまで来る。そこから私はついに西野さんを見ることができた。

 

「嗚呼!黙々と仕事する西野さん素敵‥‥」

 

「アナタ、ホントに西野さんの事好きだね。声が漏れてるよ。」

 

「おっと、すいません。」

 

この装置、防音とか言ってたけど私の声音は出ているようだ。

 

そのまま東田さんの所から西野さんを眺めていると何やら男が西野さんの所に向かっていた。

 

「東田さん、あの人は?」

 

「うん?ああ‥‥あの人はここの所長だよ。」

 

「所長さん?」

 

彼が西野さんの所に行くとここからでも聞こえるボリュームで

 

「コラッ西野!!」

 

西野さんに怒鳴りつける声が聞こえた。

 

 

「コロス‥‥」

 

「待って待ってナギサちゃんストップ!」

 

東田は必死に所長を始末しようとするナギサを押さえる。

 

その間、西野さんは所長にペコペコ謝ってた。

 

隣の席でひそひそ話をする男達の声が聞こえた。

 

 

「また所長だよ。全く西野ちゃんもヤバイ人に目をつけられたな。」

 

「新人なのに仕事ができるからな‥‥どうせまた有りもしないいちゃもんでも付けて自分の仕事をさせるのだろう。」

 

 

「絶対に殺す‥‥」

 

「待って!ナギサちゃん!それは私も思ってるけどそれだけは不味いから!」

 

ひとしきり怒鳴ると所長は去っていく。後に残されたのは死んだ顔をした西野さんだけである。

 

「私あんな西野さんを見たくありません!」

 

「私もよ‥‥その為にはあの所長をどうにかしないと‥‥あ、そうだ!」

 

「何ですか?やはり殺しますか?」

 

「殺人はNoで。透明のナギサちゃんにしかできない頼みがあるんだけど。それで所長をここから消せるから。」

 

「‥‥‥‥何をすればいいですか。」

 

 

 

 

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数日後‥‥

 

 

「うっは~♪今日のお酒は美味しい!」

 

「今日はご機嫌ですね。何かありましたか?」

 

「それがね。私の働いてる会社の所長がクビになったんだ。」

 

「へ、へぇ~。その人何かしたんですか?」

 

「あの人、私とか部下のパワハラだけじゃなくて支社のお金勝手に使ったりだとか色々出てきちゃったんだって。誰かが証拠を掴んで本社に報告したらしいの。」

 

「パワハラってなんですか?まぁでも西野さんがそれで嬉しいのなら私も嬉しいです。」

 

「うん、これであの所長を見なくて済むから私もう幸せ~」

 

 

うんうん。西野さんは笑顔でなければ。

 

それにしても。東田さんに言われた通りの物をあの男の部屋から探して渡したけど。これはどういうカラクリなのでしょうか?

 

「今日は奮発したいいお肉があるのでたんとお召し上がり下さい。」

 

「わーい♪」

 

 

さてさて、私も報告しないといけませんね。

 

 

 

「やはりダメでしたか。」

 

次の定期連絡で私はリ級にハイド装置の意見を述べた。

 

 

「ええ、使ってみたけどエネルギーの消費が酷く防音にも不備がありました。」

 

「まぁこれは今回だけの開発で出来が良ければ量産との話でしたしね。ではこれは廃案で決まりです。」

 

「ええ、お疲れ様です。ところで‥‥」

 

「なんでしょうか?」

 

「アナタこうも行ったり来たり大変では?」

 

「あはは、これも任務ですから。それに人間に紛れるのも少し楽しいですし。」

 

そう言うとリ級は去っていく。

 

「あ、リ級装置忘れて‥‥まぁ私が持っておきましょう。」

 

また使いそうだし。

 

それにしても。リ級の服装、前のぼろぼろフードとうって変わって可愛くなってた気が‥‥

 

 

「泥棒とかしてなきゃだけど‥‥」

 

 

 

 

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