西野さんちのメ級   作:ユグノート

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深夜のコンビニの話

 

 

 

ナギサ達の暮らす街は現在深夜。

 

いつも賑やかな商店街は眠り、明かりがつくのは街灯やコンビニのみである。

 

そんな灯りの1つ、とあるコンビニの話である。

 

 

「ありがとうございました~」

 

深夜のコンビニ、マニュアル通りの接客でレジを回す彼は今年進学を期に一人暮らしを始めた大学生。

 

名を南波と言う。

 

 

彼がバイトをしているのは別に金銭に困っているからではない。そりゃお小遣いを増やせていいとは思っている。

 

彼は空いた時間をほぼここのバイトに使っている。部やサークルに所属していないのだ。別に関心が無いわけでも能力がないから入っていないわけでもない。

 

この男これでも元は運動部の主将を務めていた実力者、当然スカウトされたがそれを蹴ったのだ。

 

違う事をやりたかったと言うのもあるがそれなら別のサークルにでも入れば友達もできたし思い出も作れるだろう。しかし、それすらしなかった。

 

 

では、金の為でもなく、わざわざ楽しいサークル生活を捨ててまで深夜のコンビニと言う人気バイトランキングの最下位を争える所で働いているのか?

 

 

「うぐぐっ!」

 

店長が商品の補充の為かダンボールを運んでいた。しかし、そろそろ定年間近の老体には商品の詰まったダンボールを運ぶのは酷だろう。

 

 

「店長、俺が運びますから少し休んで下さい。」

 

「すまないね南波君。」

 

 

店長に代わってダンボールを運ぶ南波。スポーツをしていたので体格の良い彼はダンボールを軽々持ち上げる。

 

「これ、補充ですか?」

 

「いや、さっき届いた追加の在庫だよ。まだたくさんあるんだ。」

 

外にはダンボールの山が‥‥

 

いや、業者。どうせなら中に運んでくれよ。

 

 

「はぁ‥‥やるか。」

 

南波はダンボールを店内の倉庫に運び入れる。店長にやらせるより自分がやったほうが早いだろう。しかし、少し数が多いな。と、思っていた時だ。

 

「南波君、手伝う。」

 

「おう。ありがとう六花さん。」

 

もう一人のアルバイトである女性が手伝いを申し出てくれた。

 

店長が持てない物をこんな少女に持てるとは誰も思わないだろう。しかし、彼女は

 

「よいしょ!」

 

南波が1つ1つ運んでいたものを一気に2つ持ち上げた。六花の協力もありダンボールはすぐに無くなった。

 

 

「助かったよ。」

 

「ううん、いいの。」

 

そう言うと彼女は店の奥に戻った。実はこの店の売上計算や経理など全てやっちゃってるのだ。

 

「あれ店長の仕事だろ?」

 

「いや~私より早くて正確で助かるよ。」

 

 

オイ店長!

 

 

 

荷運びなんてやったが基本的に深夜に客なんて来ない。なので店の奥の休憩室で店長とかと雑談することの方が多い。

 

 

そんな俺らが喋ってる横で黙々と計算している六花さん。それを横目で、バレないように眺めるのが彼の楽しみだ。

 

六花にはバレてないが‥‥

 

 

(あ、南波君今日も六花さんを眺めてる。若いね~)

 

店長にはバレていた。

 

 

「‥‥」カツカツカツ

 

「‥‥」じー

 

「‥‥」にやにや~

 

 

休憩室にしばしの沈黙タイムがやって来る。

 

 

そして、いつも決まってこの沈黙タイムは、

 

 

「店長、終わりました。」

 

「おわっ!」

 

南波は慌てて目をそらす。

 

「?南波君どうかしたの?」

 

「い、いや?なななんでも?」

 

「クスクス、六花さん相変わらず早いね~」

 

「はい、では約束の‥‥」

 

「うん。いつもの所に置いてるから好きなだけ持ってってよ。」

 

「ありがとうございます♪」きらきら☆

 

この瞬間がいつも表情が変わらない彼女が一番笑顔になる瞬間だ。なので南波は見逃さない。

 

 

「~♪」

 

六花はいつもの所へと向かった。

 

 

「なあ店長。」

 

「なんだい南波君。」

 

「確か六花さんが経理をやる見返りって」

 

「うん。売れ残りと期限切れとかで廃棄するお菓子を好きなだけあげる事だよ。」

 

「前から思ってたけどそれってどうなんです?」

 

「彼女自身の提案だからね~。まぁ‥‥食べ物を捨てずに済むから私は有難いけどね。」

 

 

そんな話をしていると廃棄予定の期間限定販売のお菓子の売れ残りを抱えた六花さんが帰って来た。

 

「店長、これだけいただきます。」

 

「うん。いいよ。今南波君にも言われたけどそんな物でいいのかい?」

 

「はい。私、お菓子好きなので‥‥それをこんなに沢山タダでもらえるので‥‥」

 

少し恥ずかしそうに答える。

 

 

「それではそろそろ交代の時間なので。」

 

「うん?ああそうだね。そろそろ次のシフトの子達が来るね。南波君ももう上がっていいよ。」

 

「はい。」

 

「私着替えます。」

 

六花は再び退室した。

 

 

「ところで南波君。君もシフトは今のままでいいのかい?」

 

「はい!問題ありません。」

 

どう言うわけか六花さんは深夜のこのシフトしか入れてないようだからな。

 

「このまま六花さんと同じシフトで大丈夫です!」

 

「そ、そうかい。」

 

六花さんもそうだけど。この子も大概だね。

 

ま、見てる分には楽しいからいっか。

 

 

 

 

「ふぁ~。帰ったら速攻寝ないと講義遅刻だ。」

 

「南波君。お疲れ様です。」

 

「六花さんもお疲れ。毎度のことだけど夜道一人で大丈夫、送るけど?」

 

「ええ。大丈夫。私の家少し遠いから南波君に悪い。」

 

「そっか。なら仕方ない。」

 

「フフ気遣いありがと。それじゃまた明日の夜。」

 

「おう。じゃあな。」

 

帰る六花を見送る南波。

 

 

「また明日の夜か‥‥。よーし。今日も頑張って寝るか。」

南波は今日も嬉しそうに夜道を帰った。

 

たまにシフトを外す彼女がまた明日と言っていた。これで明日は間違いなく彼女と働けるなと。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「ふう。」

 

海辺のもう誰にも使われていない倉庫群。

 

その内の1つに周りに誰もいないのを確認してから六花、いやリ級は入った。

 

 

倉庫の中は少し片付けられていて廃材から作られた家具のようなものが置かれていた。

 

誰も来ないここを彼女は陸地にいるときの隠れ家に使っていた。

 

姫に指摘されたが陸地で活動するにはなるべく変装、そのための服が必要で資金が要った。

 

深夜にしかバイトを入れていないのはなるべく人目につかないため。そして、コンビニで働く理由は。

 

 

「この新作おいし~♪」

 

食糧もといお菓子にありつく為だった。

 

 

当初は深夜で働ける場所を求めての選択だったが、ある日、店長が何気なく差し入れたお菓子を食べてからだ。

 

 

(ウマイ!!?)

 

口には出さなかった。出ないように堪えた。その時は平静を装ったがそれでもこの衝撃はまるで魚雷がぶつかるのと同等以上のモノを彼女に感じさせたのだった。

 

服も買い、資金集めの必要が無くなったのにもかかわらずあそこで働き続けているのは全て‥‥

 

 

チョコのような嗜好品は姫様にしか味わえない貴重なもの。けれどここでなら沢山手にはいる‥‥

 

 

 

「ウフフフ‥‥♪」

 

次の定期連絡はまだ先、もうしばらくは連続でシフトを入れられるなとリ級は思ったのだった。

 

 

 

 




六花と書いてりっかと読んでます。
まさかのナギサの出ない回です。
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