「はぁ……はぁ…」
「はぁ…はぁ…」
鹿角姉妹は…さっそく内浦の洗礼を受けていた。
本人たちもここまで遠いとは思ってもみなかったのだろう。
バスも使わず…徒歩で千歌の旅館まで歩いたのだ。
「ま、まさかこんなに距離があるなんて…」
「バスに乗ればよかった……というか、姉さま
なぜ内浦なのですか?…東京に行くはずじゃ」
「……あっ、千歌さんの旅館ですよ!」
「あっ、姉さま!」
待ち焦がれた十千万に着いた鹿角姉妹。
既に旅館の前では千歌と悠が待っていた。
「おーいっ、こっちこっちー♪」
「…随分遅かったね、それに汗だくだし…」
「すいません…まさか、徒歩だとこんなに距離があるなんて…」
「「徒歩で来たの!?」」
「ちょ、耳元でうるさい」
「あぁ、ごめんなさい………」
年下相手に縮こまる千歌。
理亞は相変わらずか……。
「とりあえず中入ってゆっくりしなよ?
…あ、千歌。2人とも汗かいてるし…お風呂はいってもらった方がいいかもな?」
「はーいっ♪」
千歌に連れられ、中へと入る鹿角姉妹。
聖良は【お気遣い…ありがとうございます…♪】と会釈して行ったが…理亞は…。
「…ふんっ」
「そんな顔してると、可愛い顔が台無しだぞ?」
「うっさい」
あれれ…相変わらず手厳しい…。
そのままツンとした態度で中へと入ってしまった。
「んー、どうしたもんかなぁ」
「oh、何が~?」
「…ん?…あぁ、鞠莉か」
「私達も居るよー!」
曜、鞠莉、果南、花丸、ルビィ、ダイヤ…梨子に善子とAqoursのメンバーが次々と十千万にやってきた。
「難しい顔して、どうしたのさー?」
「ん…いや、なんでもないよ」
「…理亞ちゃんと聖良さんのこと?」
「…ルビィは鋭いな…うん、そんな所…」
「…あんまり、しつこく接してるとほんとに怒っちゃうわよ?」
「うぐっ………」
図星を突かれ…ぐうの音も出ない。
(んー…聖良はいいとして…マリーとしては…理亞っちも本当に悠のことが嫌いっ!…って訳じゃないような気がするのよねー)
「…さてとっ、中で準備始めようか?」
「「「はーいっ」」」
──────────────────
(浴場)
「姉さま…今回の来たかったのって…」
「隠していても…仕方ありませんね
…今回は…沼津に来るつもりでした」
「なら最初から…っ!!」
クスッと笑らう聖良。
「そんなこと言ったら…理亞は絶対に来なかった…でしょう?」
「……ぅ………………」
「特に…あの方と会うとなると…余計に…違いますか?」
「…そんな……こと……っ」
「昔から、嘘をつくのが下手ですね、理亞」
「…っ…………」
「出て…あの人を知れば…分かりますよ…ね?」
「…わかり……ました……」
分かってなどいない…けど…私は返事をしてしまった。
…男なんて…誰でも…同じ、だから…。
─────────────────
「ではでは~!鹿角姉妹またの名をSaint Snowの沼津・内浦初訪問を祝って~…………」
「「「かんぱーい!」」」
千歌の掛け声とともにグラスを高々とあげるAqoursメンバー。
「皆さん、今日はありがとうございます
突然の押しかけにも関わらずこんなに振舞ってくれて…」
「いいのいいの♪賑やかな方がみんな楽しいからね♪」
「はいっ、理亞ちゃんお皿っ♪」
「あ、ありがとう…ルビィ…」
ルビィの嬉しそうな笑顔に思わず照れる理亞。
うんうん、やっぱこの顔じゃなきゃな。
「ささっ、悠さん…遠慮なく…」
「お、おう…悪いな…聖良」
「…ふふっ、今日は私ではなく…理亞に構ってあげてください♪」
「…理亞に?」
「話せば分かりますよ♪」
そう言うと聖良は千歌や果南の話の輪に入ってしまった。
(…どゆこと?)
と疑問を持ちつつもルビィや鞠莉、花丸や理亞の話の輪に入ることに。
「楽しいか、理亞?」
「…ま、まぁまぁ…」
「そっか、学校はどうだ?」
「…別に………いや、あんまり…」
「そうなのか?なんかあったなら話聞くけど…」
(ルビィ達は席を外した方がいいかもね?♪)
(オフコース♪そうしましょ♪)
「…そっか、新しく入ってきた部員と上手くいってないか…」
「…なんで…そんなこと聞いたの?」
「んー?…いや、まぁ…話せば…楽になるかなーって」
「…実は……もうひとつ…聞いて欲しいことが…」
「ん?」
「…ううん、あとにする」
「……あと?」
「…ありがと、話…聞いてくれて」
「どういたしまして…これくらいならいくらでも」
そう言うと…気のせいか寂しそうに席を立つ理亞だった。
───────────────────
宴会のようなノリのパーティーも終わり、俺と聖良と理亞は砂浜を歩いていた。
「…んじゃあ、あと2日くらいこっちに居るってことか?」
「えぇ、是非とも沼津を巡りたいので」
「………………………………」
「千歌達も喜ぶよ」
「はいっ」
「………………………………」
「…………ん…………っ?」
「…理亞……………?」
歩いていた足が止まる。
「…2人に…聞いて欲しいことがあるの…」
「…俺と…」
「私…に?」
「…私…もう1回…姉さまとライブやりたい…!!」
「…っ……!」
余程の衝撃発言なのか…聖良が言葉を失った。
「わがままかもしれない…けど…あの決勝を…乗り越えないと…私はまだ上を目指せない…だから…姉さまと…!!」
「Saint Snowは……あの決勝で終わったんですよ…」
「…つまり…解散したってこと、か…」
聖良は高校を卒業したし…自分の将来もあるだろう
不思議な話ではない…事実、Aqoursの3年生も…卒業。
事実上の解散したわけだし。
「…でも…っ………………お願いします…!!!」
深々と頭を下げる理亞。
正直、こんな姿見たことがない。
それほどまで…思い詰めていたのだろうか。
「…やってやれよ、聖良」
「ゆ、悠さんっ…?」
「ぁ………っ」
「聖良だって、あの決勝…本当は消化不良なんだろ?
それに、俺個人として…2人のライブ、もう1回見たいし」
「…………………………ふふっ」
話を聞き終わり…クスッと笑った聖良。
「やっぱり隠し通せませんか……」
「姉さま…っ…」
「1度…だけですよ」
「っ……はいっ!!」
「よっしゃ、決まりだなっ
…じゃあ、提案なんだけど…さ」
「「……???」」
「作詞とか作曲…振り付け…全部俺が作っていいか?」
「「…………………えっ?」」
次回、ラストライブ!
理亞最終話です!
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ルビィ(R版)作らなきゃ…