Aqoursな日々   作:A×K

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事実上の最終話です。


Code:142 確かに動き出した秒針

曜「…千歌ちゃん」

果南「…千歌、顔…上げよ?」

 

千歌「……………」

悠が雷に打たれるという悲惨な事故から数ヶ月…

千歌の顔が晴れないまま…Aqoursのメンバーと…Saint Snowの2人は沼津に居た。

 

事の発端は、聖良の一言だった。

聖良【ライブ、しましょう…悠さんの、為にも】

 

意識が無くても…きっと歌声は届いてくれる…そんな想いからの発言だった。

千歌は承諾しなかったが…周りのメンバーからの後押しもあって何とかライブ当日を迎えた。

 

Aqoursのしばらくの活動休止もあったからか…ファンもライブを心待ちにしていた。

 

善子「…私たちはやれる事をやるだけ、よ」

梨子「千歌ちゃん…大丈夫、悠くんとは…心が繋がってるから」

 

鞠莉「それに、こんな暗い顔してたら…逆に心配させちゃうわよ?」

ダイヤ「えぇ、いつか…目を覚ましてくれる悠さんのためにも…悠さんの大好きな私たちのライブを披露しましょう」

 

千歌「…………が………よ…」

ルビィ「…ち、千歌ちゃん…?」

 

千歌「違うよ…っ!!!!こんなの…まるで…お別れみたいじゃん…!!」

聖良「違います!!」

 

泣きそうな千歌を聖良が止めた。

聖良「…私たち…AqoursとSaint Snowのメンバーで奇跡をおこすんですよ!

悠さんに目を覚まして欲しいのは、全員同じです!!

だから…悠さんに…私たちの歌声を届けたい、それだけです…!」

千歌「……………っ………」

 

曜「千歌ちゃん…ほら」

曜が手渡したのは…悠のリストバンド。

 

曜「…辛いのは…みんな、同じだから…だけど…諦めてないのも…同じ」

千歌「……奇跡…起きる…かな…」

 

果南「少なくとも…千歌なら起こせる気がするけどね」

梨子「うんっ、悠くんとずっと一緒にいたい千歌ちゃんなら起こせるよ」

 

千歌「……私…」

聖良「…千歌さん」

 

千歌「…歌いたい…悠くんのために…」

花丸「千歌ちゃん…!」

 

千歌「…ステージ、行こっか」

まだ戸惑いながらも…ゆっくりと歩き始める千歌。

 

 

 

 

 

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日も暮れ始めた中…ライブを見に来てくれたファンで埋め尽くされていた。

 

曜「私たち、Aqoursです!」

聖良「お久しぶりです、Saint Snowです!」

 

千歌「…っ…」

曜「…ほらっ、千歌ちゃん?」

 

千歌「私たちは………」

…グッと、力を込める千歌。

 

千歌「この歌を…かけがえのない大事な人に送りたいと思っています!

聞いてください────Over the Next Rainbow!」

 

この…歌詞を…想いを…悠くんに向けて…奏でたい…!

涙を零しながら、叫ぶように歌った千歌であった。

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

ライブは無事に成功した。

夜遅いこともあり…車で十千万に帰るAqoursとSaint Snowのメンバー。

 

 

曜「…明日、悠くんに報告しよ?」

果南「そうだね、ライブしたよって」

 

千歌「…うん」

梨子「…千歌ちゃん…」

 

千歌「…あはは…泣き疲れちゃった…」

聖良「…千歌さん」

 

ルビィ「あっ、流れ星!」

善子「…珍しいわね?」

花丸「善子ちゃん、それ以上は言っちゃダメずら」

 

善子「何も言ってないし!あと、ヨハネ!」

千歌「…悠くん…」

 

大事そうに…ギュッとリストバンドを手の中に収める千歌だった。

 

 

 

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【その日の深夜 病室】

 

 

「………っ…………あ…」

酷く体が重い…何かに押さえつけられているようだ。

視界も定まらない…なんだ…ここは…。

 

「…心電図…?…それに…この傷…」

…そうか…思い出した…俺は…。

 

「ぐっ……ああぁ…っ!」

思い出そうとすると…頭が痛くなり…そのまま…意識がまた途絶えた。

 

(…こんな所で…終われるか…っ…)

ぼんやりと意識が薄れる中…手を伸ばすが…そのままプツリと事切れたかのように手が下がった。

 

 

 

 

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【次の日の朝】

 

 

 

「…ぅ…あっ…」

頭の痛みが引き…静かに目が開いた。

外は明るい…もう日が出始めているのだろう。

 

(千歌…どこ、だ…っ…)

会いたい、声が聞きたい…その一心で俺の体は動いていった。

 

 

(…くそっ、あん時の記憶だけが思い出せない…)

断片的だか…何かをしていたような記憶。

俺は…一体…っ。

 

 

 

「…体…重い、な…」

ナースコール押す力も残ってねぇ…。

千歌…頼む……早く、その顔を…見させてくれ…。

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

千歌「はぁ、はぁっ…!!」

 

 

 

果南「ま、待ってよ千歌~!」

ダイヤ「病院は走ってはいけませんよ!」

 

千歌「…っ…!」

何かを感じ取ったのか…急ぎ足で病室に向かう千歌。

 

 

息が荒くなる中…ドアを開けると…………そこには…。

 

「………どうした、血相変えて」

千歌「……………えっ…」

 

「…幽霊を見たような顔するなよ…''千歌''」

千歌「………ゆぅ…く、ん……………」

 

果南「…千歌…やっと追いつい…………た?」

「…果南…それに、みんなも一緒か」

 

果南「………っ…!!!先生!!!悠が!!!」

口を抑えて泣きそうな気持ちを抑えて、果南が先生を呼びに行った。

 

曜「…悠…くん…?」

梨子「本物…だよ、ね……」

 

聖良「…ゆう、さん…っ!!」

鞠莉「…全く…心配かけてんじゃないわよ…」

ルビィ「お姉ちゃん…っ!」

ダイヤ「…起きましたね…奇跡」

 

善子「…ゆ、ゆゆゆ、夢…っ?!」

理亜「夢じゃないから」

 

花丸「試しに頬抓ってみるずら」

善子「いひゃい、いひゃい~!!」

 

 

「……騒がしいな…相変わらず」

千歌「…なん、で……そんなことって…っ…」

「…なんだろな…はは、奇跡とでも言おうか…い、つつ…」

千歌「…っ…!!安静にしてて…!!」

 

支えるように、体を持つ千歌。

「…悪い、正直…めちゃくちゃ体重い」

千歌「…当たり前だよ…何ヶ月も…眠ったままなんだもん…

このまま…目を覚まさないんじゃないかって…千歌…心配で…心配で…」

 

ボロボロと泣く千歌。

弱々しい力ではあったが…俺は確かに自分の手で千歌の頭を撫でた。

 

 

 

 

医者「…信じられない…記憶障害も後遺症も何も無い…」

「…はは、自分でも驚いてます」

 

医者「…直撃雷を受けても…生きてるなんて…致死率70%以上だぞ…!?」

「…なら、俺の生命力じゃなくて…こいつらのおかげですね」

 

医者「…と、とにかく!今は安静にしててください!直ぐに精密検査の準備を!」

慌ただしく、医者は病室を後にした。

 

 

 

それからというもの、精密検査に精密検査を重ね…

記憶障害も後遺症も無く、しばらくの安静とリハビリが必要ということになった。

 

Aqoursのリーダーであり、瞬く間に情報が広まり…

雷に打たれて復活した男として少しの間、有名人となった。

 

 

────────────────────────

 

【数日後】

 

 

 

「…いつつ…」

千歌「あぁ、ダメダメ!無理しないの!」

意識を取り戻して数日後…やはり、1人で着替えするのもままならない。

…それに…。

 

「…雷の置き土産…か」

俺の体には…植物の根っこのような傷跡がついていた。

雷に打たれるとこんな傷跡が出来るらしい。

 

「…見てもいい物じゃないな」

千歌「…でも、こうやって意識を取り戻してくれただけでも…奇跡だよ」

「…でも…はぁ…留年だよなぁ…」

こんな状態で学校なんて…と思っていたが…それはまた先の話になりそうだ。

 

「…あ、そうだ…千歌…リハビリも出来て…外に出ていいって言われたら…お願いがあるんだけど…いいかな?」

千歌「…お願い?」

 

「…あぁ、確かめたいことが…あってな」

 

 

それから…リハビリを重ねて…俺が外出できるようになったのは…1ヶ月半も先の事だった。

医者曰く、これでもかなり早い方らしい。

 

「…母さんには感謝しないとな」

仕事をかなり放ったらかしにしてたらしく…今も世界中を駆け巡ってるらしい。

もちろん、意識が回復した時に連絡はしたよ…泣いてたけどね。

 

 

 

──────────────────────

 

 

【電車内】

 

曜「行きたいとこって…」

梨子「…東京?」

 

「…あぁ」

千歌「…μ'sの所…じゃ、無いみたいし…」

 

乗り継いで…着いたのは…。

 

曜「…お台場?」

梨子「悠くん、一体ここになんの用が…?」

 

「…あった」

千歌「…学校?…えーっと…虹ヶ咲…学、園…?」

曜「…ここがどうかしたの…?」

 

いるはずだ…''あいつらが…''

 

???「…あのー…この学校に、何か用ですか?」

曜「あぁーっ!決して怪しい者では!」

 

???「あーっ!渡辺曜ちゃんだ!」

「…君は…」

 

そこに居たのは…見慣れたピンクの髪の子と……。

???「…貴方って…もしかして!」

「…Aqoursのリーダー…冴木 悠だよ」

 

???「やっぱり~!!私、Aqoursとμ'sのライブ見て感動したんです!!…あっ!私、高咲 侑って言います!…えへへ、同じゆうって名前…ですね♪」

 

…高咲…侑…?

 

「…ちょっと待って…ここって…男子生徒って…」

侑「…?…ここは女子高ですよ…?」

「はじめまして…上原歩夢って言います

…何かあったんですか?」

 

「…あの、ここって…スクールアイドルって…」

侑「ありますよ?あっ、部長は私です!♪」

 

「…せつ菜とか…彼方とか…愛は?」

歩夢「お知り合いなんですか?…あっ、やっぱりAqoursのリーダーだから情報が早いのかな?」

 

…峻という存在が…居ない?

 

侑「今度ね、ライブするんです!

良かったら見に来てください!9人ともソロでするライブなんですよ!」

「…そう、か…」

 

……いや、峻という存在が……侑という存在になっている?

 

 

「…………っ」

 

 

キョトンとする2人に頭を下げて…俺はその場を後にした。

 

曜「ご、ごめんね、急に!…また今度顔出すからね!」

千歌「し、失礼しましたー!!」

梨子「あっ、ま、待ってよー!」

 

 

侑「…なんだったんだろうね?」

歩夢「何だが、思い詰めてた顔してたけど…」

 

 

 

 

────────────────────────

 

【数日後 内浦 砂浜】

 

 

「…はぁ」

不思議なことに、曜や花丸に宮之原 峻という男を知ってるか

そしてニジガクを知ってるかと聞くと何も分からないと来た。

この2人も完全に覚えてないとなると……本当に夢だったのだろうか?

 

「……にしては……悪い夢だっつの……くそっ、俺の選択はこれで合っていたのかよ…」

 

あの後、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の記録を見ていたが…。

 

「俺が峻として過ごした日々ばかりだったな…」

峻として過ごしたあの時間は…全て俺の夢だったということなのだろうか?

 

(それに、あん時の声……)

暗い世界の中で聞こえた声…あの声は、間違いなく…。

 

 

「…考えても…答えなんか出ないよな」

多分…きっと、何かに繋がるのかも…しれない。

そう自分に言い聞かせるしか無かった。

 

 

千歌「悠くんっ♪」

「…ん、千歌?」

 

千歌「みんな待ってるよ♪」

「…あぁ、分かった…行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、再び動き出した秒針を…ゆっくりと噛み締めながら。

今を生きる…そう思って笑う俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

【その、数ヶ月後……】

 

 

 

 

千歌「よーしっ!行ってくるよー!♪」

梨子「あ、待ってよ、千歌ちゃーん!」

 

せつ菜「私達も行きましょう!」

歩夢「見ててね、侑ちゃん!」

かすみ「侑先輩が見るのは、かすみんだけですよ~!♪」

歩夢「かすかす、どうしたの?♪」

かすみ「か~す~み~ん~です~!!」

 

 

侑「あはは、賑やかだね……」

「……まさか、Aqoursと虹ヶ咲が一緒にライブするなんてな……」

 

侑「ごめんね、急に提案して……

でも、悠くんが虹ヶ咲学園に来て……初めて見た時に

何だか、ときめいちゃって!」

「……あぁ、俺もときめいた……すっごくな」

 

侑「そうだよね!ほらほら!1番近くで見ようよ!」

グータッチをして、ステージの最前列に向かう俺と侑。

峻との物語は……不思議な形で終わってしまったが……。

また始まる新たな物語を1歩ずつ噛み締めながら……ライブを見届ける俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Aqoursな日々

Fin




長らく投稿していたラブライブ恋愛小説の第一弾
「Aqoursな日々」楽しんでいただけたでしょうか。

読んで面白いと言ってもらえたり
小説を通じて話せる仲間が増えたりと書いてて毎話毎話楽しくって仕方ありませんでした。

読んでくれた皆様、本当にありがとうございました。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の恋愛小説、ならびに
新作小説共々よろしくお願い致します。

A×K

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