ライブ当日。
空は雲ひとつない快晴だった。
「あ、でも夜少し雪が降るみたいだよ?」
「ホワイトクリスマスずら~♪」
「ライブが終わったらクリスマスパーティするんだよね?
SaintSnowの2人も誘うの、悠?」
「そのつもりだよ…せっかくなら、大人数でやった方が楽しいもんな?」
もちろん、あの二人にもその話は通してある。
茶房 菊泉をパーティ会場にしていいと許可ももらっている。
「じゃあ、SaintSnowの2人と打ち合わせと練習しに行こっか!♪」
「ヨーソロ!衣装も準備万端であります!」
「曜、俺が荷物持つよ?」
「……流れで、とはいえ…悠さんがここまで影響力があるなんて…鞠莉さんはここまで見え透いてたのですか?」
「…ノン……私はAqoursの結成までは予測していたけど…ここまでするなんて…正直、驚きの連続よ、ダイヤ」
「優しくて…でもどこかまっすぐで…見てて飽きないもんね、悠は♪」
「おーい?3人とも行くよ~?」
クスリと笑い合い悠の元に向かう3年生組。
きっと3人の思ってることは同じだろう。
Aqoursの為…そして、悠のためにも…優勝したい、と。
────────────────────
「お待ちしておりました、Aqoursの皆さん」
「えっと…聖良…さん、でいいのかな…?」
「はい、そのように呼んでくれれば大丈夫ですよ」
…そっか、俺以外は2回目の対面だからまだ少しぎこちないもの無理はないか。
「あ…の、理亞ちゃん?」
「…ほら、さっさと練習しましょ」
「…あっ………うん!!」
やっぱり妹同士…通づる物があるのだろうか?
不器用ながらも意気投合する理亞とルビィだった。
こうして理亞と1年組が本番に向けて練習をすることに。
「…あんまり時間無いけど…大丈夫か、聖良?」
「侮らないでください、しっかり仕上げます。
せっかくの…クリスマスライブ、ですから」
「…頼もしいな、期待してるよ」
こうして、ライブの練習は急ピッチで進められた。
そして…俺の裏計画も着々と進められて行った。
実行は…クリスマスパーティの時。
────────────────────
夕方になり、そろそろライブの時間が迫ってきた。
練習を終えたAqoursのみんなとSaintSnowの2人は充実した顔を浮かべていた。
「…いよいよ、だね」
「くぅ~…!…なんだか緊張してきたであります!」
「楽しいライブにしようね…♪」
「…あのっ」
聖良が口を開く。
「…今日は、ライブに誘ってくれて…ありがとうございます。
その…こんな風かもしれませんが…私たちとAqours皆さん、11人で奏でられる…最高のパフォーマンスでライブを盛り上げたいと思っています…
だから……精一杯、頑張りますね!!」
「聖良さんっ♪」
ニコっと千歌が笑う。
「11人じゃないよっ♪」
「えっ……?
…あっ…………」
「おいおい…今忘れてたよな…??」
「…ふふっ、そうでしたね…
Aqoursには居なくてはならない10人目が居ましたね」
俺の方を見て笑う聖良。
「そして…2組のスクールアイドルを繋いだ…架け橋になった張本人でもありますね」
「その通りですわ、悠さんが居なければクリスマスライブもこんなスケールの大きいことになりませんでしたわ」
「その感謝の気持ちと輝きを悠にたくさん見せないとね♪」
「シャイニーでファンタスティックなクリスマスにするわ~♪」
「理亞ちゃん…ルビィも…がんば……ルビィ!」
「えっ……なにそれ?」
「ルビィちゃんの必殺技ずら♪」
「えへへ……」
「必殺技だったの!?」
「…さぁ、そろそろライブ準備だっ!」
その掛け声に息ピッタリに返事をする11人だった。
────────────────────
ライブ会場となる、噴水公園と札幌タワーに近くにある並木道。
ライトアップされた道に11人が立つ。
空を見上げると少し雪が降ってきた。
「…空気読みすぎだっつの…」
千歌の方を見る。
視線に気がついた千歌が静かに頷く。
「大丈夫…9人じゃない…11人でやる…ライブはもっともっと輝けるよ…!」
立ち止まる通行人もチラホラと見えた。
今から何が起こるのか見ているようにも見えた。
「Saint Aqours Snow…今夜限りのクリスマスライブ…
曲名は…」
「「「「「Awaken the power!!」」」」」
曲が流れると共に…俺は全身が震えた。
聖良や千歌…理亞やルビィの歌声…そして、息のあった振り付け。
鳥肌が立った。
こんなにも…違うのか、と。
9人が…11人になると…2倍にも3倍にもなるのか。
そんな風に痛感した瞬間、俺はカメラを回さずには居られなかった。
二度と見れないこの今の瞬間を収めておきたかった。
輝く2組のスクールアイドル…Saint Aqours Snowをもっと見たい…そんなふうに思いながらライブを見つめていた。
────────────────────
「かんぱーーーい!!」
「「「かんぱーい!」」」
ライブ終了後、茶房 菊泉でクリスマスパーティを開催した。
千歌の乾杯の音頭でみんなが一斉にグラスを上げる。
もちろん、ライブは大成功に終わった。
通行人からも拍手や歓声が止まなかった。
「いやぁ、それにしても…聖良さんも理亞ちゃんもここでお手伝いしてたんだねっ」
「ええ、普段は着物を着て」
「見てみたいなぁ、着物!♪」
曜はさっそく、衣装担として腕がなるようだ。
「…ルビィ、今日の振り付けと歌…すごく良かった」
「あっ…理亞ちゃん…ありがとう…!」
「次は…本戦で競い合いましょ?」
「うんっ!」
「いいライバルずら~♪」
「ヨハネを差し置いてリトルデーモンリリィに行くとは…笑止!」
「やめるずら♪」
「あぅ……はい…」
「ライブ、楽しかったね♪」
「ええ…忘れられないクリスマスライブになりましたわ」
「3年生の最後のクリスマスに…ナイスな思い出貰ったわね…」
「って、鞠莉!?
泣いてるの!?」
「の、ノット!目にゴミが入っただけよっ、ノープロブレム!」
「あはは、みんなライブの時とは表情が大違いだ…」
「あ、あの…悠さんっ」
「ん、聖良?」
「少し…いいですか?」
「…?」
────────────────────
聖良に連れて来れられたのは…自室だった。
「今日はお疲れ様でした…とても楽しくて…忘れられないライブになりました」
「こちらこそ…無理言ってライブしてくれてありがとうな」
「いえ…こちらの方こそ……あの、それで、ですね…」
「…ん?」
「明日の午前中…一緒に出掛けて…くれません、か?」
「…俺でいいのか?千歌とか果南じゃなくて…」
「その…悠さんが、いいんです…///」
「聖良……?」
「あの……もし…もしですよ?…私が…貴方のこと…
''好き''…って言ったら…迷惑、ですか…?///」
「…えっ?」
「…その…好き、です…///」
「…ほ、ホントに?」
「…はい、最初は…この人は何を考えているのだろうかって思っていたのが正直な感想でしたが…
話したりするにつれて…貴方の真っ直ぐな思いに…惹かれました…///」
そう言うと近寄ってくる聖良。
「…っ…///」
そのまま、唇を奪われた。
「…続きは…また、明日…いい、ですか…?///」
「あ、ああ……」
「ふふっ…皆さんのところに戻りましょう」
何事も無かったかのように自室を出る聖良。
俺はその感触が離れないでいた。
────────────────────
「あ、悠くん!どこ行ってたのさー!」
「あはは…ごめん、ごめん…ちょっと準備しててね…」
「準備…?」
「ん?」
咳払いをするとみんながこっちを見てきた。
「えっと…隠していたけど…今日のために俺1人で曲作ってきました…
良ければ…聞いてくれますか?」
「えっ…!?」
「ホントに!?」
「聞きたい聞きたい!」
「私達もぜひ聞いてみたいです」
「姉さまが…そう言うなら」
「えっと…じゃあ…聞いてください
''待ってて愛のうた''」
沼津に来て…浦の星女学院に転校して…
自分が感じたこと…思ったことをありのまま書いた詞と
録音しておいた必死に練習したピアノの伴奏を流し、自分の歌声と共にAqours……そして、突如ではあったがSaintSnowの2人にも伝えた。
そこで目にしたのは…自然の涙を流す千歌の姿だった…。
次回は北海道最終日聖良とデート編!
評価・感想・お気に入り登録よろしくお願いします!