飯を食べた後、鹿角姉妹にこんな質問をしてみた。
「今日はどこかに泊まるのか?」
「「……あっ…………」」
反応から察するに…考えてなかったようだ。
仕方ない、掛け合ってみるか。
【千歌、今日2人泊まれるか?】
【2人?志満姉に聞いてみるよ~】
数分後、千歌からメッセージが来た。
【ちょうど空いてるって!聖良さんたち来るの?】
【ん、そのつもりだよ。ありがとうね】
「…ということで…千歌の旅館に泊まる?」
「…えっ?」
「そんな…いいのですか…?」
「うん、今聞いたら空いてるってさ
沼津に行くんだし、win-winじゃない?」
「なら……お言葉に甘えさせてもらいます」
「ね、姉さまがそう言うなら…」
ということで鹿角姉妹と共に沼津に戻ることになった。
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その道中、電車の中で。
「そう言えば、悠さんは千歌さんの旅館に住み込みでいるんでしたよね?」
「げっ、誰から聞いたの…?」
「千歌さん本人から…」
「ありえない……」
理亞がなんとも言えない冷たい目で見てくる。
そして口から出る大きなため息。
こごえるふぶきをしても、全体攻撃だぞ。
「なんもしてないから、普通に!」
「……………ほんと、ですか…?」
ぼそっと聖良が耳元で囁く。
「………っ……………」
「千歌さんから色々聞いてますよ…♪
もちろん、理亞には話してませんよ」
色々筒抜けのようだ。
隠す必要もなくなったので静かに首を縦に振ることに。
「ふふっ、悠さんが相手なら分かる気もしますね♪」
「姉さま、何の話ですか?」
「いえ、リーダーとしての器、という話ですよ」
誤魔化すように話題を変える聖良。
しかしこちらを見ては舌を出して笑う。
初めて見るその表情に俺もタジタジだった。
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電車とバスに揺られること1時間半…十千万に着いた。
「あ、待ってたよー!♪」
千歌がこちらに気がつき大きく手を振る。
「お待たせ、千歌」
「お久しぶりです、千歌さん」
「…こんにちは」
千歌がしいたけを連れて待っていた。
「…可愛い…」
理亞がそう呟くとしいたけが嬉しそうにしっぽを振った。
「良かったー、この後天気崩れるみたいなんだよー?」
「え、そうなのか?」
「まぁ、明日の朝には回復するみたいだし…
Aqoursのみんなと会ったり色々見て回るのは明日にして…今日は2人とも疲れただろうゆっくり休んでいってね!♪」
「はい、ありがとうございます♪」
「…あ、ありがとう…」
理亞はしいたけに顔を舐められたりといい様にやられていた。
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鹿角姉妹はとりあえず風呂に行った。
俺は千歌の話し相手をしていた。
「それでそれで~?何かいいことでもあった~?♪」
「あのなぁ…」
「えへへ~うそうそっ♪」
寄りかかるように体重を乗せる千歌。
千歌も風呂上がったあとなのだろうか、柑橘系のいい匂いがする。
「…ん、千歌…」
「わわっ…悠…く、んっ…///」
逃げないように抱きしめる。
「悠くん…っ……あの、ね……」
「…んー………?」
千歌の肩口に顎を乗せて目を閉じてると千歌が口を開き始めた。
「…みんなからは…まだ言っちゃダメって言われてるんだけど…どうしても内緒にしておきたくないから…伝えておくね…」
抱きしめてる俺の腕に触れながら千歌が言葉を選びながら話す。
「…ラブライブの…本戦が終わったら……本当に好きなのは…誰なのか…1人に決めて欲しいの」
「…………………………」
「もちろん、これはAqoursみんなで考えた答え…だよ」
──────────来た、か…。
その考えから逃げていた訳では無い。
母親からも言われていたし…この状況をいつまでも続けているつもりも毛頭ない。
…Aqoursとして出した答えなのであれば…それに答えないと…リーダーとして示しがつかないだろう。
そう俺自身も思っていたが…実際のところの怖い部分もあったのだろう。
誰かを振って…誰かと結ばれて…その人のことを考えたら…と。
「…大丈夫、だよ」
「…千歌……」
「えへへっ、それに初めてを悠くんにあげたことに後悔はしてないよっ♪」
にこやかに千歌が笑った。
そして鹿角姉妹が戻ってくるやいなやいつもの明るい千歌に戻っていた。
(…そっか…もう、そういうところまで来ている…のか)
1人ぽつりと考える。
考え始めたのが合図のようにぽつりぽつりと雨が降り始めた。
今の俺の心は…厚く覆われた雲のようだった。
…いや、きっと他のみんなも同じような気持ちだろう。
それを隠して…いつものように振舞っているのだろう。
(男なら男らしく決めなきゃ、な…)
ただ1人、そう決意する俺だった。
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部屋着に着替え、寝ようとした時、ふと外を見る。
相変わらず雨が降り続き、雷も鳴っていた。
「………………………」
らしくない、寝て頭の中を空っぽにしよう。
「っても……果南の受け売りだけどな」
くすっと笑いベットに向かおうとした時ノックする音が聞こえた。
「(千歌か?)どうぞ?」
「…あっ……ゆ、悠さん…すいません、こんな夜遅くに…っ」
訪問者は聖良さんだった。
なんだか落ち着きがない。
それに枕だけ持って……一体どうしたのだろうか?
「あ、もしかして枕変わるの寝られない…とかそういう感じですか?」
「え、っい、いや、っそういう訳では…っ…!」
モジモジしながら歯切れ悪く言葉を放つ聖良さん。
ゴロゴロと雷が鳴ると枕を思い切り抱きしめた。
「ひっ……!!!!」
「…もしてかして…雷が苦手…とか?」
「…は、はい……っ…」
泣きそうな目でこちらを見てくる。
「…つまり、一緒に寝たいと?」
「…だ、ダメ…ですか…?」
ここで断れないあたり、俺はお人好しなんだろうなぁと自虐しつつ聖良さんを部屋に招いた。
…よくよく見れば…聖良さんの部屋着…結構可愛い。
やっぱり…果南や曜と同じくらい…あるだろうか。
「お、お邪魔します…っ」
「ん、狭くてごめんな」
結局、二人一緒にベットにはいることに。
「…あの…悠さん…」
「ん、どうした?」
「もう少し…くっついても…いい、ですか?」
「襲っちゃうかもよ~?」
さすがにドン引きされるか、と思ったが…。
「…も、もぅ…視線がどこに向いてるのか…バレバレですよ……///」
わざと押し付けるように体を密着させる聖良さん。
「……私は…その……///」
「…聖良さん?」
「……聖良、でいいです…っ」
「…ん、聖良…」
「…はい…っ///」
いつの間にか雨や雷の音など全く気にならない2人の空間ができていた。
自然と…どちらからともなく唇を重ね合う。
「…んっ…」
「…なぁ、聖良」
「は、い……?」
「…これ以上のものが欲しいって言ったら…どうする?」
「え、えええっ……!?///」
「質問してるだけだから…」
視線を合わせず顔を赤くしながら聖良は呟いた。
「…あなた…だったら…いい、かな…と…///」
…しん、と静まる部屋の中。
体が密着しているせいか俺のドキドキも聖良のドキドキも伝わってきた。
肝心の聖良は言ってしまった。という恥ずかしさ。
聞いた俺はどうしたらいいのだろう。という葛藤。
だが、今の俺たちには言葉はいらなかった。
気がつくと俺はずっと聖良の手を握っていた…。
朝日が顔を出すまで……ずっと。
次は沼津観光 理亞編です。
聖良さんって意外と初心だと思うんですよ←
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