少女短編集   作:北間 ユウリ

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ST AR-15

 

 ゆずれないもの

 

 夜も更けきり、基地の灯りもとっくに夜間照明に切り替わった頃に、私はふらつく指揮官を支え、彼の私室まで付き添いをしていた。

 明日の業務の確認をしていた最中にM4に呼び出され、向かったバーにはでろんでろんに酔い潰れたM16と、指揮官の姿があり。話し合いの結果、M4がM16を、私が指揮官を介抱することになった……のだが。

 

「もう、どうしてこんな風になるまで飲むんですか」

「いやぁ、すまん……つい、な……」

「つい、じゃありません。お酒は明日の業務に差し支えない範囲でって、私いつも言ってますよね?」

「いや、本当に、申し訳ない……この通りだ」

 

 そう言って頭を下げようとし、そのまま倒れそうになった体を、体を滑り込ませ両手でしっかりと支える。

 言葉こそしっかりしているものの、意識は夢うつつといったところなのだろう。すぐにでも寝てしまいそうな彼の姿に、私は軽く溜め息を吐く。

 

「……ほら、ちゃんと立ってください」

「すまん……」

 

 この様子では、期待したような事は起きないだろう。それを少し残念に思いつつ、再び彼に肩を貸す。

 そして、また数歩歩いて、思い出したかのように、突然彼が口を開いた。

 

「ああ、そうだ……M16は、どうなった? かなり飲んでたから、アイツも、かなり酔ってるはずだ……誰かが、介抱してやらないと……」

 

(自分もかなり酔ってるのに、他人の事を心配するなんて……)

 私がそう思ってしまうのも、仕方がないだろう。

 

「M16はM4が面倒を見ています」

「そうか、M4が……うん、なら、大丈夫だな……」

 

 そう言うと、指揮官は先程よりも僅かにしっかりとした足取りで、ゆっくりと一歩を踏み出した。

 そして、普段の彼の五倍以上の時間をかけて、私達は指揮官の部屋に着いた。

 指揮官をベッドに座らせ、制服の上着を脱がし、ワイシャツから抜き取ったネクタイと一緒にハンガーに掛けてから、彼にブランケットをかけて寝かせる。

 それで介抱は終わり。終わった以上、すぐに部屋を立ち去るべきなのだろうけど、未練がましく彼の横顔を眺め続けている。

 10分と少し。指揮官の呼吸も不規則になり、完全に寝付いたのを見届けて、私は立ち上がり――

 

「……ありがとうな、15」

 

 不意打ちのように投げ掛けられた言葉に驚いて、指揮官の顔を見る。しかし、彼の瞼は閉じられていて、それは寝言なのだと分かってしまい。

 ただ、それが夢の中の私に向けられた感謝の言葉だとしても、私の溢れる思いは抑えきれなくて。

 

「――当然です」

 

 戦いでも、恋でも。私は、指揮官の一番でいたいんですから。

 

 そう、小さく彼の耳元で囁いて。

 

「お休みなさい、指揮官」

 

 よい夢を。

 

 




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  • 孤独乖離曲線(WA2000)
  • 神様がくれた日曜日(カリーナ)
  • ハートフル・ライアー(カルカノ妹)
  • クリスタルの夜(HK416)
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