ゆずれないもの
夜も更けきり、基地の灯りもとっくに夜間照明に切り替わった頃に、私はふらつく指揮官を支え、彼の私室まで付き添いをしていた。
明日の業務の確認をしていた最中にM4に呼び出され、向かったバーにはでろんでろんに酔い潰れたM16と、指揮官の姿があり。話し合いの結果、M4がM16を、私が指揮官を介抱することになった……のだが。
「もう、どうしてこんな風になるまで飲むんですか」
「いやぁ、すまん……つい、な……」
「つい、じゃありません。お酒は明日の業務に差し支えない範囲でって、私いつも言ってますよね?」
「いや、本当に、申し訳ない……この通りだ」
そう言って頭を下げようとし、そのまま倒れそうになった体を、体を滑り込ませ両手でしっかりと支える。
言葉こそしっかりしているものの、意識は夢うつつといったところなのだろう。すぐにでも寝てしまいそうな彼の姿に、私は軽く溜め息を吐く。
「……ほら、ちゃんと立ってください」
「すまん……」
この様子では、期待したような事は起きないだろう。それを少し残念に思いつつ、再び彼に肩を貸す。
そして、また数歩歩いて、思い出したかのように、突然彼が口を開いた。
「ああ、そうだ……M16は、どうなった? かなり飲んでたから、アイツも、かなり酔ってるはずだ……誰かが、介抱してやらないと……」
(自分もかなり酔ってるのに、他人の事を心配するなんて……)
私がそう思ってしまうのも、仕方がないだろう。
「M16はM4が面倒を見ています」
「そうか、M4が……うん、なら、大丈夫だな……」
そう言うと、指揮官は先程よりも僅かにしっかりとした足取りで、ゆっくりと一歩を踏み出した。
そして、普段の彼の五倍以上の時間をかけて、私達は指揮官の部屋に着いた。
指揮官をベッドに座らせ、制服の上着を脱がし、ワイシャツから抜き取ったネクタイと一緒にハンガーに掛けてから、彼にブランケットをかけて寝かせる。
それで介抱は終わり。終わった以上、すぐに部屋を立ち去るべきなのだろうけど、未練がましく彼の横顔を眺め続けている。
10分と少し。指揮官の呼吸も不規則になり、完全に寝付いたのを見届けて、私は立ち上がり――
「……ありがとうな、15」
不意打ちのように投げ掛けられた言葉に驚いて、指揮官の顔を見る。しかし、彼の瞼は閉じられていて、それは寝言なのだと分かってしまい。
ただ、それが夢の中の私に向けられた感謝の言葉だとしても、私の溢れる思いは抑えきれなくて。
「――当然です」
戦いでも、恋でも。私は、指揮官の一番でいたいんですから。
そう、小さく彼の耳元で囁いて。
「お休みなさい、指揮官」
よい夢を。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
次のタイトルから、読みたいと思うものを選んでください。()の中はメインとなるキャラクターです。
-
孤独乖離曲線(WA2000)
-
神様がくれた日曜日(カリーナ)
-
ハートフル・ライアー(カルカノ妹)
-
クリスタルの夜(HK416)