少女短編集   作:北間 ユウリ

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 嫉妬とは、緑色の目をした怪物だという。
 鏡とは、過去の自分を映すものである。




M16A1×HK416

 すれ違う温度

 

 

 

 ぬるま湯は嫌い。どっちつかずの温度は、私の「炎」を鈍らせるから。

 だから、シャワーを浴びる時は必ず、肌がひりつくほどの熱湯にする。

 その痛みは、頬を張られた痛みによく似ているから。

 シャワーに打たれながら、曇った鏡のガラスを拭う。そして、映っている自分の左目の、赤い涙のタトゥーに指で触れる。

 コレがある限り、私に安息は訪れない。外ならぬ私が、ソレを受け入れられない。

 痛みに焼かれながら、私はタトゥーを刻んだ日の誓いを呟く。

 

「何時か『奴ら』に取って代わる……いつか……」

 

 鏡の中の緑色の瞳が、じっと私を睨んでいた。

 

 

 

 

 

 

 ぬるま湯はあまり好きじゃない。それはとても心地が良くて、何時までも浸かっていたくなる。

 だから私は、身体の芯まで凍り付くような冷水を浴びる。

 その冷たさは、きっと孤独の温度と似ているだろうから。

 閉じていた左目を開いて、鏡を見る。右目の辺りに触れれば、鏡の中の私が手で傷跡を覆い隠す。

 そうして、傷の見えなくなった私の顔が、あの頃の記憶を思い出させて。

 感傷に浸りかけた私を、冷気が現実へと引き戻す。鏡に映った私の顔には、後悔と、懐古と、そして――……

 

「……ははっ。なんて顔をしてるんだ、私は」

 

 情けなく歪んだ顔に頭突きをかまして、嘲笑をこぼす。身体がすっかり冷え切るまでシャワーを浴びて、止めた。

 

 

 

 

 

 

 

「……416?」

「……M16」

 

 シャワールームの個室から出たところで、二人はばったりと顔を合わせた。

 

「お前も……シャワー浴びてたのか」

「……ええ」

「そうか……」

 

 一言、二言言葉が飛んで、それで彼女たちの会話は途切れる。

 何か話題はなかったか、とM16は考えようとして、すぐにその思考を切り捨てる。今の自分たちは、談笑するような仲でも、何でもないのだから。

 それ故に、M16は416から顔を背け、言葉もなく立ち去る。これが他の人形だったら、別れの言葉くらいは言っただろうかなどと、益体もない事を冷めた頭の片隅で考えながら。

 そんなM16の背中に、416は思わず手を伸ばそうとして。

 しかし何かに拒まれるように止めて、そっと自分の胸元へと引き寄せる。

 そして、胸の中のナニカを確かめるように、手を固く握り締めて。

 M16が去った方向へ背を向けて、歩き出した。

 

 

 

 冷水と熱湯は、混ざり合えばぬるま湯となる。

 けれど、混ざらず、触れ合わず、冷やし続け、熱し続けるのなら。

 冷水は冷水のままで、熱湯は熱湯のままだ。

 いつまでも、ずっと。

 





 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

次のタイトルから、読みたいと思うものを選んでください。()の中はメインとなるキャラクターです。

  • 孤独乖離曲線(WA2000)
  • 神様がくれた日曜日(カリーナ)
  • ハートフル・ライアー(カルカノ妹)
  • クリスタルの夜(HK416)
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