落ち零れの異能力者たちの学園戦争   作:シドラ

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10.実習訓練と決意

【2045年 4月25日  帝王国際学園  戦闘学訓練室】

 

「グハッ!!」

 みぞおちに鋭い拳が入り、俺は膝から崩れ落ちる。

 現在俺がいるのは戦闘学の授業を実践するための訓練室だ。

 真四角な壁を6枚使って作ったような真っ白な部屋の中で俺はのたうち回る。

 相手は同学年の戦闘学専攻者。

 名前は・・・藤原っていったか。

「おいおい、こいつマジで素人か?カミラ先輩の連れとか聞いたから期待してみたら、このザマかよ。とんだ期待外れじゃねえか」

 実際そうだろう。

 今回の訓練実習は『異能力を使用して敵を制圧する』ことが目的だ。

 俺は正体能力用途不明の異能力で逃げ回っていただけ。

 対して藤原は対象を加速させる能力(聞いてもいないのに藤原がペラペラ喋った)で、拳や蹴りの速度を上げて攻撃してきたり、小石を高速で投げつけてきたり、自身を加速させて俺を撹乱させてきたり、かなり自身の能力を使いこなしていた。

 俺のみぞおちに入った拳も、恐らく加速させて威力を上げたものだろう。

『そこまで!』

 部屋の天井に設置されたスピーカーから共感の声が聞こえ、訓練の終了が告げられる。

「ケッ!張り合いのねえ。0組ってのはこの程度なのかよ」

 藤原はそう言い放つと、俺を放って出口から出て行った。

 俺には地面を這い蹲りその背中を睨みつけることくらいしかできなかった。

 

 実習終了後、保健室で包帯や痛み止めなどの処置を受けた俺に、カミラさんが言ってくる。

「まあ、藤原は今年の新入生の中でも上位クラスの実力者だ。気にするな」

 カミラさんの慰めの言葉も、今は惨めにしか感じない。

 なんせ、俺が負けたのはこれが初めてではない。

 入学して以来、幾度となく訓練実習をやってきたが、一度も勝ったことはない。

 連戦連敗、このままだと昔に寮長が打ち立てた偉大なる『入学後の実習36連敗記録』を超えてしまいかねない。

 俺が負け続けている理由、それはやはり自分の異能力をうまく扱えていないからだろう。

 自分の能力を使いこなすどころか把握すらできていない出来損ない。

 それが今の俺の評価だ。

 同じ0組のカミラさんやアスラも、戦闘学を専攻しているが、俺とは違って高い評価を得ている。

 アスラの能力である『身体強化』やカミラさんの能力の『火炎』は明らかに戦闘に向いており、その向いている能力を使いこなしている。

 戦闘向きどころか何の役にも立ちそうにない俺の能力とは違うのだ。

 そんな風に考え方が卑屈になっていたのだが、反面どうしても許せないことがあった。

 『0組ってのはこの程度なのかよ』藤原が吐き捨てたその言葉だけは、許すことはできない。

 俺を侮辱したけりゃ侮辱しろ。

 出来損ない役立たずお荷物ポンコツEtc・・・。

 様々な罵詈雑言には慣れている。

 だが、出来損ないなのは俺だけだ。

 ほかの0組メンバーは関係ない。

 絶対にあの言葉だけは撤回させてやる。

 俺は新しくできた小さな目標を胸に、0組寮への帰路についた。

 

 

 明くる日、4月26日。

 再び俺は、藤原と対峙していた。

 本日はルール無用で制限時間なしの一本勝負。

 異能力を使おうが、銃火器を多用しようが、何でもありの勝負。

 だが、結局俺は今現在も圧倒されっぱなしだ。

 例の何だかよくわからないが相手の攻撃を回避するのくらいには使える異能力を使いつつ、防戦一方だ。

 そして、殴り飛ばされて壁に叩きつけられ、肺の中の空気を吐き出す。

 昨日、あのような決意をしたのはいいが、はっきり言って今の俺では藤原に勝つのは無理だろう。

 アニメの主人公よろしく怒りで急にパワーアップ、からの大逆転勝利なんてものも期待する価値すらない。

 純粋にパワーアップできれば、藤原に勝つことも可能かもしれないが、そもそも異能力がどうやったらパワーアップするのかすら、俺は知らない。

 いや、そもそもパワーアップの仕方を知っていたところで、能力を把握していない俺の能力がパワーアップしたところで、余計にわけがわからなくなるのが関の山だろう。

 というか、なんで俺はこんなに必死になって藤原と戦っているのだろう?

 強制的に入学させられた学校の、会って2ヶ月も経っていない奴らのために、俺は必死に戦うような人間だっただろうか?

 そもそも強制入学の事は今でも恨んでいるし、普通の学校に通いたいという思いは今でもある。

 だけど、アスラや俊哉さんやリナさんやカミラさんや寮長や神楽坂先生という普通の学校では出会えなかった人たちと出会えた。

 中学校にいた頃は、異能力者=化物という構図のせいで友人などただの一人もできなかった俺に、新しい出会いをくれたこの学校には、確かに感謝しているが、そんな理由でボロボロになりながらも相手に向かっていくような人間だっただろうか、俺は。

 空っぽで中身のない、楽しさの欠片もなかった中学校生活よりは、遥かに楽しいと思える場所が、今、俺にはある。

 だけど、中学校時代より楽しいからといって、俺は何故戦う?

 0組で騒いでいるだけでも、十分に楽しいだろうに。

 

 って、どれだけ言葉を並べても無意味か。

 だって、俺が戦っている理由なんて、馬鹿みたいに単純な理由だ。

「友人馬鹿にされて、黙ってられるかこのクソがあああ!!!」

 俺の右腕が黄緑色の光に包まれる。

 全身をコーティングしては俺の方が対象から離れてしまう。

 入学してから俺が研究し続けた結果、俺の異能力は『光に包まれた部分が生き物と接触しようとすると爆発的な速度で自分自身か接触しようとした生き物が離れる』というどういうものかは分かったのだが、用途がさっぱり分からない、やはり意味不明な異能力だった。

 生き物にしか効果がないので飛んでくる武器などは避けられないし、メリケンサックなどで生き物が生き物ではないもので攻撃してきた場合も避けることができない。

 このため、寮長の拳骨は回避できない。

 そんな扱いづらいことこの上ない異能力だが、相手が武装していない人間なら多少は役に立つ。

 藤原は加速能力を使って生身で戦っている。

 そして、ボロボロになった俺にトドメを刺そうと、おお振りの拳を叩き込むモーションに入っている。

 俺は、そのおお振りの拳に狙いを定め、カウンターのように右拳を叩き込む。

 能力が発動し、藤原が逆方向に吹っ飛び、壁に激突する。

 そのままミシミシと嫌な音を立てながら壁にめり込んでいく。

 実はこの能力、俺が止めない限り半永久的に発動し続けるので、壁にぶつかると離れようとして体がめり込むことになる。

 苦悶に歪む藤原の顔を見ながら、達成感を感じつつ、俺の意識は途切れていった。




 最近受験も終わり、執筆に割ける時間も増えてきたのですが、何分学生の身のため中々投稿することもできませんが、これからも皆様を楽しませることができる作品作りに邁進する所存ですので、どうぞこれからもよろしくお願いします。
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