落ち零れの異能力者たちの学園戦争   作:シドラ

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11.変化と対応と地獄絵図

【2045年 4月30日  帝王国際学園  共同学年0組教室】

 

 さて、藤原との実習訓練が終わったあと、3つほどあからさまな変化が俺の周りに訪れた。

 1つは、周りからの俺の評価だ。

 今ままで『学園最底辺のポンコツ』みたいな評価を受けていた俺の評価は『学園内でレベルの低い奴』程度に格上げされた。

 まあ、実際扱いが悪いのは大して変わらないのだが、それでも0が1になるのは大いなる進歩だ。

 この調子で、いつかは先輩方と肩を並べるくらいに強くなりたいものだ。

 さて、2つ目の変化だが、俺に不用意に触ろうとする人間がいなくなった。

 元々0組を恐れている人が多い中、わざわざ俺に触るなんていう意味のない行為をしてくる人間は1人もいなかったのだが、最近は偶然触れるのも全力で避けられるようになった。

 俺が意識を失ってからも、藤原が壁にめり込み続けた結果、全身の骨を折る大怪我を負い、現在は学園備え付けの病院棟で入院生活となってしまい、その状態を見た生徒が、『秋雨大河に不用意に触ると全身の骨をお折られる』という新しい教訓を作ってしまったためである。

 0組メンバーと神楽坂先生、寮長はそんなもの気にもせず(寮長に至っては異能力効果がないし)、普通に接してくれるが、食堂で肩がぶつかった瞬間に悲鳴をあげられたり、廊下を歩いている時にあからさまに距離を取られたりするのは正直に言うとショックだ。

 益々俺のこの学園での評価や立ち位置が妙なことになりつつある。

 3つ目の変化だが、なんか最近俊哉さんがボコボコにした平井とかいう生徒がなにかと絡んでくる。

 これは、ほかの0組メンバーにも相談したのだが、直接的に何かされたわけでもないのに攻撃したりすると神楽坂先生や寮長が校長に怒られる可能性が高くなってしまうため、これといった対処はできていない。

 『別に寮長の給料が引かれようが、食事が貧相になろうが、クビになろうが知ったこっちゃないが、神楽坂先生に被害が及ぶのは避けたい』というのが上級生組の総意だそうだ。

 まあ、寮長の扱い云々は置いておくとして、不必要に事を荒立てるべきでもない。

『何かあったら即座に連絡しろよ。そいつ血祭りにあげるから』と物騒な約束を俊哉さんとしているため、当面問題はないだろう。

 以上が俺の身に起きた3つの変化だが、正直な話そんなものどうでもいい。

 いや、1つ目は重要かもしれないが、今はそれ以上に重要なことがる。

「皆さーん、ちゃんと一般科目の勉強もしていますか~?来週は中間テストですよ~?」

 神楽坂先生ののんびりとした声が、閻魔の有罪判決にも聞こえる。

 そう、中間テストだ。

 別にテストの成績親に見られても人工島まで怒りにこないからいいんじゃね?という考えの奴もいるだろう。

 だがしかし、俺は普通にこの学校を卒業して後はごく一般的な生活を送りたいのだ!

 中間テストの成績が悪すぎて留年なんてことになったらこの学校に1年間余分に在籍しなくてはならない。

 それだけはなんとしても避けたいのだが。

「今回のテストは一年生の大河君とアスラちゃんがいるので、中学校3年間に範囲を絞ります。まあ、簡単だと思うから頑張ってねー」

 チュウガッコウサンネンカン?

 範囲の絞られていた中学校の定期テストすらで1桁点数常連組の筆頭だった俺だぞ!?

「あ、あと学年平均点の半分以下だと補修になっちゃうので気をつけてくださいね~。俊哉君とリナちゃんとカミラ君は2年生の、大河くんとアスラちゃんは1年生の平均点目指して頑張ってね~」

 この学園の奴らの平均点を知らないから何とも言えないが、俺レベルでアホなやつが何万人もいるとも思えない。

 勉強するしかないのか・・・!?

「科目は国数理社英の5教科で、全部で500点満点です。皆さん、頑張ってくださいね~」

 神楽坂先生はそう言うと教室を出ていき、俺は死刑宣告を受けた囚人のような陰鬱な顔でうなだれるのだった。

 

 

「なんだ、秋雨。お前そんなに勉強できないのか」

 0組学生寮で晩飯を囲んでいたところ、カミラさんが聞いてきた。

 よほど暗い顔をしていたのだろうか、カミラさんは心配そうな顔をしている。

「中学校の定期テストの合計店が100点を超えた事が一度もないくらい勉強できません」

 俺がそう呟くと、他のメンバー全員がドン引きするような、具体的に言うと「うわぁ・・・」といった声を上げた。

「そんなにか・・・寮長よりひどくないか、それ」

「俺の定期テストでも100点はいってたぞ」

「威張るな寮長。大して変わらん」

 カミラさん、寮長、俊哉さんの順番での発言だが、まさか寮長以下の烙印を押されるとは思わなかった。

「そういう皆さんはどうなんですか、テストの成績」

 授業をほぼ寝て過ごしているアスラ(バカ)はともかく、上級生組が賢いなら是非とも勉強を教えていただきたい。

「教科にもよるが、大体平均点は取れてるぞ、俺は」

 カミラさんは見た目に反して結構勉強はできるようだ。

 赤毛に着崩した制服に乱暴な口調にキツイ目つきと、2000年代初期にいた不良にしか見えない見た目に反して。

「何か物凄い馬鹿にされたような気がするんだが」

 その上エスパーである(比喩)

「私も大体平均点以上は取っていますよ。国語はちょっと苦手ですが」

 お次はリナさんだ。

 やはり平均点以上は取れているらしい。

 なんだかんだ言っても、やはり優秀な人が多いのだろう。このクラスは。

「で、最後に俊哉さんですが」

 珍しく率先して話に入ってこなかった俊哉さんである。

「俺の場合は・・・参考にもならないし教えることもできないぞ?」

 そう言いながらリビングの端っこにあったファイルを取り出す。

 それを俺に放り投げる。

「食事中に物を読むのは感心しませんよ?」

「いいんだよ、そんな風習は日本だけだ」

 寮長の注意に、カミラさんが反論する。

 俺は一度箸を置くと、ファイルを開く。

 中には過去のテストの答案が入っていた。

 名前の欄には、全て『霧島俊哉』と記入されている。

 だが、問題なのはテストの点数だ。

 100点満点のテストもあれば、一桁の点数もあり、ひどいと0点のテストもある。

 しかし、補修で出されているテストは全て満点である。

 はっきり言って、何故こんなに落差があるのか分からない。

「俺は模範解答を全部頭の中に叩き込んである。だから模範解答通りのテストではいい点が取れるんだが、他ではからっきしだ」

 ああ、確かに参考にはなりそうもない。

 早い話が答えを全部覚えて、そこから応用できるやつは応用するってことだろう。

 無理だ。

 そんな馬鹿げたテストの乗り切り方できるわけがない。

「だから言っただろう。参考にもならないし教えることもできないって」

 それだけ言うと俊哉さんはファイルを回収し、食事を再開した。

「まあ、テストまで一週間はあるんだ。頑張れよ」

「頑張って下さいね。わからないところがあったら教えますので」

 結局、俺は頑張るしかないようだ。

 ここからが、帝王国際学園に入学して、初の暴力的ではない俺の地獄となるのだった。




 最近、私生活であまりいいことがないような気がします。
 ライトノベルを一気買いしようとしたら友人の策略で2巻だけが買われていたり、別の作品を一気買いしようとしたら友人に3巻だけ買われていたり、漫画の最新巻を買いに行ったら売り切れていたり、知り合いの男子が卒業メッセージに「好きです」とかいう気色の悪い冗談を書いてきたり・・・。
 ですが、そのような作者の運のなさ分だけ、この作品で皆様が幸せになっていただければと思います。
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