【2045年 5月1日 帝王国際学園 0組学生寮】
「で、なんだ?この結果は」
俺の前で青筋を浮かべているのは俊哉さんだ。
その手には先程俺がやったテストの答案が握られている。
正確には怒りのあまり握りつぶしている。
「秋雨・・・お前真面目にテスト受けたんだよなあ?」
やばい。滅多に怒らない(寮長のモーニングコール以外では)俊哉さんが怒っている。
理由はやはり俊哉さんが手にしているテストだろう。
中間テストまでの間、上級生組とそこそこに勉強はできたアスラによって勉強を教えてもらっているのだが、その途中でやった模擬テストがまずかったらしい。
「はい!中学校3年間のテストよりも遥かに真面目に受けました!」
「じゃあ何でこんな答案になるんだ馬鹿野郎!!」
ついに俊哉さんがキレた。
「おかしいだろ!どうしてこうなるんだよ!訳分かんねえよ!」
俊哉さんがテストを机に叩きつける。
そのテストの点数は、どれも100点満点中10点や5点などの絶望的な点数ばかり。
だが、恐らく俊哉さんが怒っているのはそこではないだろう。
「どう考えたらこんな回答に行き着くんだよ!」
そう、もはや才能の域といっても過言ではない珍回答の数々だ。
『Q 次の漢字の読みを書きなさい【頑固】 A かたくなこ』
「どうやったら片栗粉みたいな読みができるんだよ!」
『Q 2011年の東日本大震災以来、使用が危険視されているエネルギーを答えなさい【原子力】 A 希望と絶望の相転移』
「古いアニメの見過ぎだバカが!」
『円周率を数字で書けるだけ書きなさい。なお、小数点第2位までは必ず書く事【3.1415926535・・・etc】 A π』
「数字で書けって書いてあるだろうが!」
『Q 長篠の戦いで織田軍が武田軍に勝つために使った南蛮より伝えられた武器を答えなさい【鉄砲】 A 気合』
「そんなもので勝てるか!つうか武器ですらねえ!」
『Q 裸子植物は被子植物とどのように違っていますか?簡単に説明しなさい【胚珠が子房につつまれていない】 A こうなっている(イラスト付き)』
「文字で説明しろ文字で!しかも無駄に上手いなイラスト!」
『Q 次の英文を訳しなさい I have a pencil【私はえんぴつを持っています】 A 私はハブをペンシルしています』
「直訳にすらなってねえ・・・!」
と、このように馬鹿としか思えない、いや実際に馬鹿なのだが・・・ともかくふざけているとしか思えない珍回答を連発したせいで、俊哉さんがキレてしまった。
「なんなんだよ、ハブをペンシルしていますって!」
「自分にも分かりません!」
実際、本当に分からないからそう書いたのだ。
というか、分かるわけがない。
中学校時代に真面目に受けた授業が体育だけという実績は伊達ではないのだから。
当時から馬鹿として周りに認識されていた俺は、体育以外の授業は常に寝ていた。
よって、小学校くらいの勉強しかできない。
「
前にも言ったように、帝王国際学園の共用語は日本語だ。
というよりも、学園関係者が断固として日本語を使い続けるので、いつの間にか日本語に定着してしまったらしい。
「いっそのことテストに細工を・・・いや、バレたらただじゃ済まなくなるしな・・・となると別の方法で・・・」
俊哉さんはどうやら俺がどうやって勉強できるようになるかじゃなくてどうやってイカサマするかに焦点を切り替えたようだ。
まあ、あれだけお馬鹿な回答をしていれば諦めるのも無理はないだろう。
「秋雨、俺はイカサマの会議をやってくるからお前はリナとカミラに勉強教えてもらっとけ」
どうやらイカサマをやることを隠す気もないようだ。
「了解しました」
「じゃ、行ってくる」
時速6km程の速度で最近走り始めた俊哉さんの乗った自走式車椅子を見送ってから俺は今後のことを考えた。
カミラさんかリナさんに勉強を教えてくれと頼むなら、殆どの人はリナさんを選ぶだろう。
明らかに頭良さそうだし、人あたり良さそうだし、美人だし。
そんな事を考えているうちに、アスラに捕まった。
最近あんまり関わりがないのが嫌なのか、率先して首を突っ込んできた。
このアスラ、授業中はいつもそれはそれは可愛らしく忌々しい寝顔で俺の睡魔を刺激してくるのだが、勉強はそこそこできたらしい。
ついでに言えば、アスラは美少女である。
同じクラスの贔屓目かもしれないが、まあ可愛い顔立ちをしている。
俺がリナさんに教えてもらおうと思っていた理由のうち2つは、意外にもアスラにも当てはまった。
が、3つのうち最後の1つだけはこいつが当てはまることはない。絶対ない。
こいつのどこが人当たりがいいんだよ。
(他人に)無口、無愛想、(私生活に)無頓着の無が三拍子揃っているアスラに人当たりなど求めるのは殺生な気もするが・・・。
「何か失礼な事を考えなかったか、お前」
貴様もエスパーか!(比喩)
と、そんなじゃれあいをしながらも、案外教え方の上手いアスラに勉強を教わること2時間。
「お前には無理だ。諦めろ」
さじを投げられた。
逆によく2時間も付き合ってくれたと感心する。
「霧島に聞いていたが・・・お前は相当の馬鹿だ。多分お前のレベルで勉強のできない人間はまずこの学園にはいない」
ひどい言われようだ。
というか先輩を呼び捨てにするな。
「このままではイカサマをしたところで乗り切れるかどうかわからないぞ。お前」
そこまで言うか。
「たっだいまーー!!」
妙にテンションの高い俊哉さんが帰宅した。
その時、俺は知らなかったのだ。
比較的まともだと思っていた俊哉さんの頭が結構イカれていた事を。
そして、0組にまともな人間など1人もいないことを。
満面の笑みを浮かべる俊哉さんが実行した、恐ろしく阿呆らしい計画を。
先日、友人に借りていたライトノベルを明日返しに行こうと決意しました。
翌日大雪で返しにけなくなりました。
先日、USBをポケットにいれたまま洗濯してしまいました。
翌日データが何故か生きていることを喜びました。
本日、USBが行方不明になりました。
やはり最近運が悪いような気がします。