落ち零れの異能力者たちの学園戦争   作:シドラ

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14.新しい強敵

【2045年 5月9日  帝王国際学園  体育館】

 

「はい、皆さん。今日はお互いを敬いつつ、全力で交流してくださいね~」

 体育館でジャージを身に纏った神楽坂先生の号令に、俺たちはやる気のない返事を返す。

 今日、俺たちが体育館に体操服姿で整列しているのには、一応理由があった。

 先日、俊哉さんが口にしていた『他クラス交流会』の参加である。

 様々な生徒や職員に忌み嫌われている我らが0組と交流したいというクラスなど、ほぼ0に等しいのだが、それでも物好きなクラスが1クラスだけあった。

 『第二種合同特別編成戦闘技術講習クラス』通称『二種組』の皆さんだ。

 俺たちのクラス、0組は二種組の生徒たちから見れば第一種の合同学年であり、二種組とは似て非なるものである。

 0組が異能力を重視して育てるのに対して、二種組の生徒は純粋な戦闘技術を叩き込まれる。

 異能力無しの戦闘では、最強と呼ばれる二種組。

 ただし、それ以外の技能は使い物にならないくらい低レベルという偏った能力を持っている。

 そんな特異な人たちと交流会を行うのは、少々不安だが、はっきり言ってそんなものは対して問題ない。

 何より問題なのは

「・・・・・・」

 尋常じゃないくらい機嫌の悪い俊哉さんが隣にいることだ。

 最近足の怪我が治り始めたらしく松葉杖で参加している。

 それ自体はいいことなのだが、俊哉さんの本日の不機嫌面が物凄い。

 さっきも、体育館に移動している間にほとんどの生徒が俊哉さんをすごい避けていたし。

 まあ、俊哉さんの機嫌が悪いのはこの前の会話で予想できたのだが。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 なんでカミラさんとリナさんまで二種組の人たちが入ってくる予定のドアを親の仇を見るような目で見ているんですか。

 駄目だ、空気悪すぎる。

 交流会とかいう雰囲気じゃねえ。

 その辛気臭い雰囲気は一瞬で破壊された。

「はっはっは!!何だお前ら、その辛気臭い顔はよぉ!」

 ドアを蹴破りながら金髪の少年が入ってきた。

 制服を着崩し、明らかに染めているであろう金髪、乱雑な口調。

 古い時代に存在した『DQN』というものを体現した少年。

 そのDQN(仮)は、俊哉さんを一瞥すると、にたりと笑った。

 その直後

「中崎ぃいいいい!!」

「来たか、霧島ああああ!!」

 DQN(仮)改め中崎と呼ばれた少年と俊哉さんがいきなり喧嘩を始めた。

 俊哉さんの重力制御を受けて、中崎が地面にめり込むが、獣人化して人間の数倍の筋力を得た状態の平井ですら地面に倒れながらめり込んだ超重力下で、両足を踏ん張って立っている。

「テメエ!いきなり重力制御とか使ってんじゃねえよ!」

「黙れ!お前などに容赦などッ!」

 あろうことか叫んでいる。

 どんな体の構造しているのだろうか。

「って、こらあああ!中崎やめろ!」

 中崎が蹴破ってきたドアから、黒髪の少女が入ってきた。

 そのままドアノブ(金属製)を中崎にぶん投げて中崎が倒れる。

 後頭部から少々出血しているが、黒髪の少女は気にも留めない。

 しかし、この少女も恐らく化物だ。

 超重力下で軽いドアノブをぶん投げて対象の頭にぶつけるなど人の技ではない。

「いてえ・・・・!」

 俊哉さんがのたうち回ろうとして重力でのたうち回れない中崎を生ゴミを見るような目で一瞥した後、超重力を解除する。

「霧島・・・テメエ・・・」

 中崎がまだ俊哉さんに食って掛かろうとするが、黒髪の少女がそれを止める。

 そんなやりとりをやっていたら、ぞろぞろとドア(全壊)から数人の男女が入ってきた。

 髪の色も目の色も肌の色も違う少年少女たちには、一つだけの共通点があった。

 言葉では言い表せない、謎の恐怖を抱く気配。

 それは先に入ってきた中崎という少年と、黒髪の少女も同じだ。

「はいはい、じゃれ合いはそれくらいにして、早く始めましょ~」

 ただ一人呑気な神楽坂先生の合図で、お互いに整列して向かい合う。

「それじゃあ、自己紹介から始めましょうか~。お互いに一年生もいますしね~」

 そんな神楽坂先生の指示に従い、不機嫌極まりない俊哉さん、二種組の皆さんを睨み付けるカミラさん、いつもの笑顔とは程遠い無表情で挨拶するリナさん、いつも通りの仏頂面で挨拶するアスラ、そして至って不通を装うとして逆に不自然になっている俺、という順番で自己紹介を済ませる。

「じゃあ、次は俺らだな。俺は中崎陽斗、三年。沈黙する重力支配者の両足を潰した伝説の男だ。存分に尊敬してくれたまえ」

 中崎さんが(一応敬称)ふざけた挨拶をする。

 ようやく俊哉さんがあれだけ機嫌が悪く、即座に攻撃したのか分かった。

 『ちょっとした理由』としか聞いていなかったが、俊哉さんの足はこいつのせいらしい。

 悪くなった空気を晴らそうとするように、二種組の人たちも自己紹介を始める。

「私は黒宮ゆかり。二年生です。先ほどは中崎がご迷惑をおかけしました」

 黒髪の少女改め黒宮さんが頭を下げる。

 だが、二年生組はそれを華麗に無視し、アスラは何も考えてなさそうにぼーっとしている。

「だ、大丈夫ですよ」

 何か、可哀想だったので俺がそう答える。

「ありがとうございます」

 黒宮さんがそう答えると別の人が自己紹介を始めた。

 アスラ並に無表情な、金髪の少年だ。

「シガ・アライム。一年」

 シガと名乗った少年は、それだけ言って黙り込んだ。

 本当に口数が少ない。

 そのくせ殺気に満ちた目でこちらを見ているのだから、とても怖い。

「ヴァリアント優作。三年」

 黒髪に赤目の少年がぶっきらぼうに言う。

 恐らくハーフなのだろう、名前と見た目からして。

 この人もなんか凄い怖い。

 俺より身長小せえクセに。

「ダシル・クイーン。三年です。よろしく」

 優作さんより背の低い金髪の少女が自己紹介した。

 もう小学生くらいにしか見えない。

「誰が小学生だ?テメエ」

 貴様もエスパーか!

「私は正真正銘心を読む能力者だ。文句あんの?」

 なんでそんなのがいるんだよ。

「はいはい、それくらいにしとけ。ああ、俺は宮居敦哉。2年な、よろしく」

 唯一まともそう黒髪の少年が自己紹介した。

 敦哉と名乗った少年の時だけ、二年生組の目つきが鋭くないのを、俺は見逃さなかった。

 やはりまともな人間なのだろうか。

「それじゃあ、自己紹介も終わったし、ドッジボールやろうぜ!」

 中崎の言い出した一言を理解するのに、俺は一分を要したのだった。

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