【2045年 5月12日 帝王国際学園 合同学年0組】
「おい、俊哉。明日、代理戦争やるらしいぞ」
授業も終わり、寮に真っ直ぐ帰るのも嫌だった俺とアスラと俊哉さんが駄弁っているところに不穏な単語と共にやってきたのはカミラさんだ。
「随分と久しぶりだな、やるの。で、何処と何処だ」
「私も見るのは久しぶりだ。何処がやるんだ?」
完全に順応している俊哉さんとアスラだが、俺はそんな物騒な名前の催しなんぞ知らん。
「ああ、悪い。大河は代理戦争しらねえよな。えーっとどこから説明すれば・・・」
できれば卒業まで知りたくなかったですよ!
「個人同士で対立するのって、喧嘩だろ?それとは違って、クラス同士で対立した時の措置が代理戦争」
カミラさんが説明を始めてしまったので、逃げるに逃げられない。
ああ、どんどん遠のいていく俺の中の平和。
「クラス同士が前面衝突すると、周りの被害がでかい。だから、お互いのクラスから代表者を何人か出して戦わせるのが、代理戦争」
生徒総数10万人を誇る帝王国際学園のクラスは、一クラスにつき生徒が200名ほどいる。
そのクラス同士がぶつかり合えば、ぶつかり合う生徒の数は400名。
確かに、代表同士で喧嘩させた方がまだ平和的だろう。
「で、なんかルールを決めて戦って、勝った方が正しいってことになる。まあ、大概はそのあとにも大小様々な喧嘩が多発するけど、表立っては争わなくなる」
表立っては、ってことは裏では相当喧嘩してるのかよ。
「まあ、大概は三対三の勝ち抜き決闘が主流だな。見た目も派手だし、簡単だし」
「他には、どんなルールがあるんだ?三対三くらいしか、私は知らんのだが」
未だに敬語を使わないアスラが質問した。
「んー・・・まあ、平和的なのだとクイズ大会みたいなのとか、ちょっとした運動会とか」
平和じゃないのと平和なやつとの差が激しすぎる。
「ただ、たまに全員参加の総力戦とかもあるぞ。最早代理戦争じゃないが」
それ、代理戦争のルールから外れてないか?
「まあ、とにかく明日は観戦だな。早起きしろよ」
そう言ってカミラさんが俺とアスラの肩を叩く。
「って、俺もですか!?」
「当たり前だろ、全員参加だ」
休みの日くらい、休ませてほしいのだが・・・。
だが、逆らうのが無意味なのは火を見るよりも明らかだ。
俺は、渋々承諾をするのだった。
「で、結局どこのクラスとどこのクラスがやるのか聞いてないんだが」
翌朝、三対三ルール代理戦争用の特別アリーナの観客席に陣取っている0組メンバーでの朝食中、アスラが言う。
「あれ?ああ、言ってなかったか」
「お前の一人語りのせいでな」
茶々を入れたのは俊哉さん。
確かに、昨日は代理戦争の説明で終わってしまい、今日の内容は聞いていなかった。
「戦うのは、高等部の一年同士。注目はあの転校生だな」
カミラさんが指さす方向には、この前学食で対立していた髪の長い少年がいた。
その少年を反対側から睨む、坊主頭の少年もいる。
「なんか、あのロン毛の持ってる異能力が今回の代理戦争の原因らしいけど、流石に細かい事情までは知らん」
持っているのが原因で代理戦争にまで発展するほどの異能力。
いったい、どういうものなのか、少しだけ興味が湧いてきた。
『さあ、いよいよ代理戦争の始まりだ!対戦するのは一年5組と一年3組の代表者!さあ、戦う奴らも感染する奴らも、盛り上がっていこうぜえー!!』
いきなり大声+マイクで叫び始めたのは、アリーナの一席に座っている眼鏡の男子だ。
最早、声が大きすぎて苦情が出そうなくらいに声が大きい。
「放送部の松田さんですね、あの人」
苦虫を噛み潰したような顔をしてリナさんが説明してくれる。
「代理戦争がある度に出しゃばって、解説だのなんだのやってる歩く騒音問題だ。ちなみに高等部三年」
両手で耳を塞ぎながら、俊哉さんが説明してくれる。
『さあさあ!今回は一体どんな戦いが見られるのか!わたくし、楽しみで楽しみで仕方ありませっがっ!』
松田先輩が途中で変な言葉を発したのは、アスラが近くに落ちていた空き缶を投げて松田先輩の顔面にぶつけたからだ。
俺らのいるアリーナの観客席から、松田先輩のいる臨時解説者席までは、軽く300mはあるのだが、アスラは難なくクリーンヒットさせた。
絶対に異能力は使っているだろうが。
『いたたたた・・・ったく、妨害はあったが、そろそろ代理戦争スタート時刻だ、さあ張り切って戦ええええ!!』
テンションが下がるどころか、余計に鬱陶しくなってしまった。
「空き缶をぶつけたくらいじゃ、あの馬鹿は止まらん。もう流せ」
カミラさんが溜息を吐きながら言ってくる。
そんなやり取りをしているうちに、開始時刻となった。
今回は、三対三の勝ち抜き戦。
先鋒、中堅、大将の順番に出場し、勝てばそのままフィールドに残り、負けたら出る。
これを繰り返して先に相手を全滅させた方が勝ち。
至ってシンプルなルールだが、戦力性はある。
順番は最初に提示したものが適用されるため、相手との相性を考えて提示しなければならない。
故に最初から勝負は始まっていると言っても過言ではない。
「期待の転校生の実力次第ってところか、この代理戦争」
俊哉さんがそう呟く。
既に提示されてる順番では、明らかにロン毛(名前は柏原というらしい)のクラスのメンバーと坊主頭(西園寺って名前)のクラスのメンバーの相性は恐らく悪い。
柏原の先鋒と中堅は戦闘学の授業で見たが、近接戦闘を得意とする生徒。
対して、柏原の先鋒と中堅はリナさん情報だと、遠距離攻撃とカウンターの異能力を持つ生徒。
柏原と西園寺の能力は知らないが、他のメンバーの相性はどう見ても西園寺の方が有利だ。
「これより、1年3組と1年5組の代理戦争を開始します。互いの先鋒は戦闘フィールドに出てください」
審判兼司会進行である教師が、そう促すと古代ローマのコロッセオのような戦闘フィールドに二人の生徒が出る。
互いに準備は終わっているのか、ただ静かに睨み合う。
「両者、準備はできていますね。それでは、先鋒戦、開始!」
開始の宣言と共に、両クラスの威信をかけた決闘は開始された。
「本当に、相性悪かったんですね」
柏原側中堅VS西園寺側先鋒の決闘が終わってから、俺はそう呟いた。
負けた先鋒も中堅も、頑張ったとは思うが、致命的に能力相性が悪かった。
掌からビームを発射する異能力者に、どうやって近接戦闘型の異能力者が勝つというのだ。
基本スペックが大きく違うなら結果は変わっただろうが、異能力以外の実力は戦闘学の生徒だから少し上という程度。
ぶっちゃければ、そこまで大差はない。
「大分会場も白けてきたな。帰る奴までいるぞ」
カミラさんが周りを見渡しながら、そう言う。
しかし、それは仕方のないことだろう。
柏原側は圧倒的に不利どころか崖っぷち。
先鋒だけで大将を引きずり出されてしまったのだから、見てる方も興醒めだろう。
「はてさて、期待の転校生君はどんな活躍を見せてくれるのやら」
準備時間中なので、暇なのか本を読みながら俊哉さんが言う。
「あ、もうすぐ始まりますよ」
リナさんが指をさす方向には、柏原と先鋒の少年(柴田っていったかな)が向かい合っていた。
「お互いの準備が終わったようなので、これより1年3組大将対1年5組先鋒の決闘を行う。大将対先鋒戦、開始!」
恐らく、観客席のやつらも、西園寺側のやつらも、みんな思っていたことだろう。
『いくら柏原が強かったとしても、3人抜きは厳しい』と。
しかし、俺たちは見ることになる。
略奪者の、圧倒的な力を。
タグを増やしたり、初めて三千文字突破したりしました。シドラです。
今回は連載開始時からやりたかった代理戦争の話を書かせていただきました。
続きを読んでみたいと思っていただけたなら、とても幸せです。
ご意見、ご感想、誤字脱字報告などがございましたら、是非お願いします。
最後に、この作品を読んでいただいて下さる読者の皆様がこの作品を楽しんでいただけることを願います。
シドラ