落ち零れの異能力者たちの学園戦争   作:シドラ

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19.略奪者の片鱗

【2045年 5月13日  帝王国際学園  特設アリーナ】

 

「大番狂わせって、こういうものを言うんだろうな」

 代理戦争1年3組大将対1年5組中堅戦を見ていた俊哉さんがそう呟いた。

 大番狂わせ、確かにそうかもしれない。

 1年5組の先鋒が、1年3組の先鋒と中堅を破竹の勢いで倒し、大将を引きずり出した。

 この時点で3対1となった3組に勝ち目はないと誰もが思っていた。

 だが、現実は違った。

 大将対先鋒戦で、柏原は右眼を紅く発光させ自身の影の中に消え、先鋒の少年の影から這い出てくるというホラーまがいな事をした後、左手を緑色に発光させエネルギー弾をゼロ距離で放ち、先鋒を沈黙させた。

 しかし、沈黙したのは先鋒だけではない。

 いや、沈黙というよりは絶句したのだ。

 俺たち観客や1年5組の代表たちは。

 異能力を複数持った人間は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 通常、異能力は一人の人間に一つしか宿らない。

 それは、異能力がこの世に現れて数十年間続いた絶対の常識。

 だが、柏原は影に潜る異能力とエネルギー弾を放つ異能力を使った。

 そして、二つの異能力を使うときの発光色と部位が違った。

 異能力者は異能力を使うときに、必ず体の一部や全体が発光する。

 俺だったら全身が黄緑色に、俊哉さんだったら左目が蒼色に、カミラさんだったら両目が赤色に。

 それぞれ様々な光り方をするが、発動時に発光する色と部位はいつも同じ場所だ。

 だが、柏原は違った。

 つまり、紛れもなく別の能力。

 唯一平然としていたのは俊哉さんくらいだろう。

 他人にあまり興味のない俊哉さんだからなのか、それとも別の理由があるのかは知らないが。 

 しかし、俺たちは次の大将対中堅戦で、更に言葉を失った。

 エネルギー弾をカウンターで跳ね返した1年5組中堅だったが、柏原はそれを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これには、隣の席に座っていた俊哉さんも絶句した。

 影の中に入る能力、エネルギー弾を発射する能力、幕のようなものを張って攻撃を逸らす能力。

 三つの、いやもしかしたらそれ以上の能力を持つ少年。

 最早、期待の転校生とかそういうレベルじゃない。

 もし、あれが本当に複数能力の所持者なら世界レベルの大発見だ。

『さあさあ!いよいよ大将対大将のクライマックスだ!盛り上がっていこうぜえええ!!』

 いきなりの松田先輩の大声によって現実に引き戻された観客は、数十分前までの低いテンションからは想像がつかないほどのハイテンションで歓声を上げ始めた。

「やってやらあ!複数の異能力がなんぼのもんじゃい!」

 気合の入った声と共に西園寺がフィールドに出る。

「これより、1年3組大将対1年5組大将戦を行う。両者、準備はいいか?」

 無言で頷く西園寺と、柏原。

「では、最終戦、開始ッ!!」

 教師の声と共に、西園寺が地面に拳を叩き付ける。

 瞬間、地面を馬鹿でかい揺れが襲い、西園寺と対峙していた柏原は勿論、観客やステージの外の敷地にいる生徒まで、全員が平行に立てなくなった。

「あの一年の能力・・・地震か?」

 冷静に能力を分析しているのはカミラさんくらいだ。

 いつもであればカミラさんが言ったことを言うはずの俊哉さんは車椅子がひっくり返って動けなくなっている。

「転校生の影に入る能力、一応地面に入ってる感覚みたいだな。影に入ったら別空間、みたいな扱いだったら地震を避けるのに一番最適なはずの能力だが・・・それをやってない」

 車椅子の下敷きになっているのに冷静な俊哉さんがそう言う。

 だが、正直車椅子の下敷き状態では格好がつかない。

 むしろ格好悪い。

「おい、秋雨。車椅子どかせ。動けん」

 俊哉さんの命令を遂行し、車椅子をどける。

 だが、その作業をしているたった数秒の間に、戦況は動いた。

 もう一度、柏原が影に入ったのだ。

 入ったのは自分の影、つまり。

「完全に姿が消えた・・・」

 柏原は先程対戦相手の影から出てきた。

 日の傾き具合のせいで、絶対に後ろを取られる状況。

 西園寺はこの瞬間、詰んだのだ。

 西園寺が対応する暇もなく、西園寺の影から出てきた柏原は西園寺の後頭部にエネルギー弾を叩き付け、昏倒させた。

『しょ、勝者・・・柏原裕大---!!』

 大番狂わせの代理戦争は、終幕した。




 ほんと、遅くなってすみません。
 クオリティ低くて、すみません。
 ほんとなんかもう、生まれてきてすみません。

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