落ち零れの異能力者たちの学園戦争   作:シドラ

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05.0組の昼食

【2045年 4月12日  帝王国際学園  合同クラス0組教室】

 

 暖かな春の日差しが教室に差し込む中、俺は頬杖を付きながら、神楽坂先生の授業を聞いていた。

「現在、世界人口の4割が異能力者と言われていますが、その中でも戦闘に用いることができる異能を有した異能力者は、ごく少数です」

 現在は、異能力者の学ぶ基礎知識のようなものを学んでいる。

 合同学年である0組は、新入生が入るたびに授業内容がループするらしく、先輩方はかなり退屈そうにしている。

 初めて聞いている俺でさえ眠くなってきているのだから、内容を知っている先輩方はさぞかしつまらないのだろう。

 しかし、真面目に授業を聞いている俺の隣の席で、とてつもなくいい笑顔で寝ている馬鹿がいた。

 普段不気味なまでに無表情な、アスラである。

 授業が始まると同時に、アスラは机に突っ伏して寝始めた。

 今は寝返りをうったのか、こちらを向いている。

「なので、世界中の軍、組織、団体などが、戦闘に用いることができる異能力者を欲しています。戦闘に用いることができる異能力者の皆さんは卒業後、どこかの軍に就職もできますよ~」

 正直言って、神楽坂先生の授業はつまらない。

 俺にとってどうでもいいことを延々と講義されるのは、拷問にも等しい。

 以前通っていた中学でも、授業は退屈だったが、神楽坂先生の授業は退屈なだけではない。

 間延びしたその口調のせいで、すんごい眠くなる。

 隣で幸せそうに眠っている馬鹿(アスラ)がいるので、余計に眠くなってくる。

「現在、異能力者は一般の人間にも広く認知される存在となりましたが、20年ほど前は、異能力者=排除すべき異端、と一般的に考えられていましたが、現在は一部の差別的な人以外は、表立った差別は無くなりました」

 いきなり話が飛ぶのも神楽坂先生の特徴らしい。俊哉さんが言ってた。

 そんな退屈な授業を受け続け、ようやく授業終了の鐘が鳴った。

 キーンコーンカーンコーンというお馴染みの音楽が、今となっては福音に聞こえる。

 これで、午前中の授業は終了だ。

 午後からは、学校側から勝手に決められた俺の専攻科目、戦闘学の授業が始まる。

 帝王国際学園では、午前中に座学を、午後からは実技を行う。

 これも憂鬱なのだが、机に向かって退屈な授業を受け続けるよりはマシなので、幾分か気が楽である。

 戦闘学の講師である先生は、鬼のように怖いが、常にニコニコしていて得体の知れない戦術的異能戦闘学の講師よりはマシだ。

「おい、秋雨。何をやっている、飯を食いに行くぞ」

 授業が終わって昼飯時になった途端に起きだしたアスラが、俺の制服の裾を引っ張る。

「何でお前と一緒に行かねばならんのだ。お前と一緒に食いに行くと、俺の飯盗るだろ、お前」

 アスラは見た目に似合わず、かなり食う。

 一昨日、昼食を一緒にしたところ、軽く10人前は食った上で、俺の昼食を盗んで全て食いやがった。

 合計にして11人前は食ったにも関わらず、晩飯も再び俺の分ごと食い漁り、夜食まで食うという大食感である。

 おかげで一昨日は、朝飯以外何も食っていない。

 そんな地獄はもう懲り懲りなので、アスラとだけは一緒に飯を食わないと決めたのだ。

「俺はお前とだけは一緒に食わん。午後の授業でひもじい思いなどもうご免だ」

 一度弱みを見せれば確実にそこを狙ってくるので、しっかりと突き放す。

「・・・・・・」

 アスラが涙目でこっちを見ているが、気にしたら負けだ。

 俺の昼食が無くなる。

「せんせー、秋雨君がアスラさんをなかせてまーす」

 リナさんがチクった。

「秋雨く~ん?なんでアスラさんを泣かせてるのかな~?」

 いつもは眠気を誘う間延びした声が、今は恐怖を煽ってくる。

 俺は即座に抗議の視線をリナさんに向ける。

 テヘッと舌を出して笑っているのは可愛いのだが、流石にイラっときた。

 リナ・フェルミンさん、通称リナさんは、基本的にいつも優しく、大らかなとてもいい人なのだが、俺とアスラがいがみ合っていると、逐一先生にチクるので、そこは苦手だ。

「いや、ちょっと待ってくださいよ、先生。俺はアスラの昼食の誘いを断っただけです。一緒に食いたくないから誘いを断ったのに、泣かれて迷惑しているのはこっちのほうです」

 さらに言うと、アスラは泣いてなどいない。

 明らかに嘘泣きだ。

 だが、神楽坂先生はそれに気づいていない。

「まあまあ、そのくらいでやめとかないと昼休み終わるよ?」

 仲裁してくれたのは、0組が誇る最高戦力、霧島俊哉さんだ。

 いっつも本読んでて話に参加してくることは少ないが、平等に物事を見てくれるので、俺に非がない時には、とても頼りになる。

「つーか、秋雨がアスラと飯食いに行けばそれで済む話だろうが、何で断ってんだ」

 俺を避難したのは、カミラ・ロックバード先輩。通称カミラさん。

 いかつい見た目に赤髪、乱雑な口調や行動という、不良生徒のような人だが、実際は女子に対して優しい、根は真面目な人である。

 気性は荒いが。

「カミラさん、こいつは俺の分の昼飯を全て盗むような人間です。一緒に飯を食いに行ったら俺の分が確実になくなります」

 俺の発言を聞いて、納得したようにため息を吐く俊哉さん。

「じゃあ、もう面倒だから全員で食いに行くか?0組所属が少数で食いに言ってたら確実に他の生徒に難癖つけられるんだし」

 そう、これも俺がアスラと一緒に飯を食いに行きたくない理由の一つだ。

 アスラは、2人以上であまり飯を食わない。

 よって、前回の昼食の時、見事に他の生徒に絡まれて、俊哉さんたちが助けてくれるまで何人かに殴られ続けたのだ。

 怪我はなかったが、複数で昼食を取れないアスラと一緒に行っても、また絡まれるのがオチだ。

「嫌そうな顔してるけど、秋雨はアスラが絡まれてる中で、美味しく昼食を頂けるか?」

 いや、無理だが・・・。

「じゃあ、決まりだ。リナ、カミラ、学食行くぞ。場所取りは頼んだ」

 さっさと役割分担を決めると、俊哉さんは車椅子を器用に動かして出て行った。

 俺たちも、その後を追って、学食へ向かう。

 

 

 帝王国際学園は、日本が出資、運営しているため、共通言語が日本語だ。

 故に、リナさんやカミラさんやアスラと会話できる。

 そのためか、学食のメニューも日本食が多く、箸が使えない生徒は苦労しているらしい。

 学食は、昼食時のため、混み合っているが、俺たちの座っているテーブルの周りには誰もいない。

 近くを通る生徒は、逃げるように通っていく。

 0組は嫌われていると思っていたが、こうまで露骨に避けられるとちょっと傷つく。

 まあ、ほかの面子はそんな事を一切気にしていないようなので、俺も気にせず食事を続けていたら、今まで誰も近づいてこなかったテーブルに、近づいてきた奴らがいた。

 以前、俺たちに絡んできた奴らだ。

 どうやら、俺たち0組は、昼食すら平和に取ることができないらしい。

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