落ち零れの異能力者たちの学園戦争   作:シドラ

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07.カミラ・ロックバードと敵対するな

【2045年 4月14日  帝王国際学園  学食】

 

 『この学校で霧島俊哉に無益な喧嘩は売るな』という警告の意味を理解したのが一昨日、存分に恐怖を味わい、もう二度とああいうのは御免こうむりたいと思っていたのだが、そうもいかないらしい。

 本日、リナさんから新たに聞いた有難い警告がこれだ。

 『この学校でカミラ・ロックバードと敵対するな』

 またこういう物騒な警告である。

 一昨日の俊哉さんの警告と何が違うのだろうか。

 そんな事を思いながら、今日も今日とて変わらぬ食事を学食でとっていた。

 メンバーと場所は一昨日から変わらず、変わっているのはメニューと話題くらいだ。

 何故か3日連続で生姜焼き定食を食べている俊哉さんは置いといて、俺は麻婆豆腐と白飯。

 アスラは全部言うと途轍もなく長くなるので割愛、カミラさんは牛丼を頬張っており、リナさんは優雅にサンドイッチと紅茶を食べている。

 なんだろう、この全然揃ってなさは。

 いや、別に食事のメニューなんて個人の好みだけどさ。

「で、どうだ秋雨。この学校には慣れたか?」

 生姜焼き定食をもしゃもしゃと咀嚼しながら、俊哉さんが聞いてくる。

「あ、はい。なんとか」

 って、あれ?

「何で俺だけに聞くんですか?アスラも新入生なんじゃ」

 俺だけにこの学校に慣れたかと聞いてくるのは不自然ではないだろうか。

「あれ、言ってなかったか?帝王国際学園は小中高等部まであってな。アスラは中等部から上がってきたんだとよ」

 なるほど、中学の時から帝王国際学園ここにいたから俺の捕獲任務にも駆り出されたわけか。

「ん?ってことは俺がお前にボコボコにされた日、お前まだ中学生じゃねーか。何であそこにいたんだよ」

 流石に学校をサボってまで俺を捕獲しに来ることもあるまい。

 というか、捕獲しに来る理由がわからん。

「毎回の恒例行事みたいなものだ。エスカレーター式以外の新しい生徒が入る時に暴れられたり逃げられたりしないように中等部の生徒が黒服のおっさん達とは別に派遣されるんだ。まあ、毎年人数足りなくて高等部の奴らも駆り出されてるがな」

 珍しく多く喋ったアスラの説明によると、早い話が対逃走者用捕獲者みたいな役割だそうだ。

 偶然俺の担当になったのがアスラだそうで、それが俺とこいつの奇妙な縁の始まりだった。

「あー、あったあったそういうの。俺のところにも来たわ」

 こういう会話で一番危険極まりない俊哉さんが言う。

「ちなみに、俊哉さんの時はどんな感じだったんですか?どうせ反抗して暴れたんでしょうけど」

 もう重力制御をフルに使って暴れまわる俊哉さんの姿が目に浮かぶ。

「いや、俺は当時はそんなに多くなかったぞ。大体20人くらい」

 十分多いです。

「いやいや、カミラなんて凄かったらしいぞ。何人だったっけ?」

 なんでもっと多いんですか。

 最強クラスで戦術兵器級の異能力者の俊哉さんより捕獲人数が多いってカミラさん一体何者ですか。

「大体だと・・・200~300人くらいか。まあ、半分くらいが異能力者じゃなくて武装した普通の人間だったが」

 戦術兵器級異能力者の十倍以上の戦力投入しないといけないって・・・。

「カミラくんの家は、有名なマフィアの総本山だそうで、とても警戒されていたんですよ」

 今さらっと凄いこと言いましたね、リナさん。

 で、敵に回すなって、そういうことですか。

「まあ、もっと凄い理由があるけどな。確か今日から専攻授業始まったよな。秋雨、お前戦闘学の授業前見てみろ、凄いぞ」

 嫌だ、そもそも戦闘学なんていう物騒な授業を専攻したくない。

「まあ、諦めろ。そう悪いところでもないから、な」

 朗らかに言ってくる俊哉さんの言葉が死刑宣告のように聞こえた。

 

【2045年 4月14日  帝王国際学園  高等部戦闘学教室】

 

『お疲れ様です、兄貴ぃ!!』

 午前中の授業を終えて、戦闘学の教室に入った瞬間、聞こえてきたのが今の大合唱である。

 上級生下級生関係なく俺の後ろに立っている人物、カミラさんに頭を下げている。

 まるでヤクザの挨拶のように。

「おう、お疲れ」

 そんなことは一切気にしていないような雰囲気のカミラさんが席に着くと、頭を下げていた集団の一人の角刈り上級生が俺に向かってきて、いきなり胸ぐらを掴んできた。

「おいテメエ、なにカミラさんの前歩いて入室してんだ?ああ?」

 うわー、そういう事か。

『カミラ・ロックバードに敵対するな』

 こんな感じの地位築いてるから敵対すると厄介。

 って意味ですかリナさん!

「やめろ。俺の連れだ、手出しすんじゃねえ」

 俺が顔面蒼白で胸ぐら掴まれていると、カミラさんが助け舟を出してくれた。

 その声を聞くやいなや、速攻で手を離す角刈り上級生。

「すいませんでしたー!!」

 九十度を超えてカミラさんに頭を下げている。

顔色はさっきの俺以上に悪く、真っ白どころか青くなっている。

「すまねえな、大河。こいつも悪い奴らじゃねえんだ。許してやってくれ」

 コクコクと俺が頷くと、カミラさんはにやりと笑ってそのまま席に着く。

 さっきの上級生は魂が抜けたように崩れ落ちている。

 本日の教訓、『カミラ・ロックバードに敵対するな』。

 俺の心にしかと刻みましたよリナさん。

 カミラさんには人を惹きつける才能がある。

 それが、最大限に生かされているから、敵に回しちゃいけないんですよね?

 

 その後戦闘学の先輩に聞いたのだが、この学園で喧嘩を売ってはいけないやつランキングというものが存在し、二位は直接的に潰されるから俊哉さん、三位は社会的に潰されるからカミラさん。

 そして、堂々の一位が何故かリナさんだった。

 一体、明日はどんな警告を聞かされるのだろうか、いや体験させられるのだろうか。

 それを考えているだけで、俺は胃痛を催すのだった。

 

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