落ち零れの異能力者たちの学園戦争   作:シドラ

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09.0組は学生寮でも変わらない

【2045年 4月25日  帝王国際学園  0組学生寮(早朝)】

 

「グッッド、モオォオオニィイイング!!学生諸君!!」

「五月蝿いんだよ寮長、ゴルアアア!!」

 騒がしいというより鬱陶しい挨拶と、怒鳴り散らすアスラさんの声で俺は目が覚めた。

 季節は春、ここでの生活にも慣れ始め、大抵のことには慣れてしまい、驚かなくなった俺も、朝っぱらからの寮長のモーニングコールだけは慣れることはない。

 元帝王国際学園生徒である寮長こと春坂友一さんのモーニングコールは、人が熟睡している時間帯を狙って大音量の挨拶から始まる。

 そこからモーニングコールに対して怒り狂った俊哉さんとカミラさんが寮長に対して攻撃し、その騒がしい音で俺とアスラとリナさんが目覚めるというのが、最近の0組学生寮のパターンである。

 尚、学生寮というのは、『他者と協力しながら、出来る限りのことは自分でやることによって、自主性と生活能力を高める』という名目上作られた施設である。

 クラスごとに別々の寮があり、そこでの共同生活というのがルールなわけなのだが、この0組寮、とにかくボロい上に狭い。

 昔はエリートの集まりだった0組だが、最近は問題生徒ばかりが集まっているため、待遇も悪い。

 その扱いの悪さが最もわかり易く出ているのが、この0組学生寮だ。

 元々は倉庫だったのを無理矢理寮にしたため、とにかく狭い。

 さらに、他の場所の修理に金がかかっているため、ここの修理に回される金がなく、結果的に築十数年の間雨ざらしになっているボロボロの建物である。

 リナさん曰く、梅雨になると雨漏りが、夏になると湿気が、冬になると寒さがとても辛いらしい。

 建物の構造は、一階に俺と俊哉さんとカミラさんが寝ている男子部屋、寮長の寝ている管理人室の他には、リビングが一つあるだけで、他には何もない。

 二階にはアスラとリナさんが寝ている女子部屋の他に、物置と常にギシギシ言ってるベランダがある程度。

 いつ倒壊するかも分からない0組寮では、毎朝欠かさず寮長と上級生男子二人組による戦闘が繰り広げられている。

「押しつぶされて死ね!!」

「あっはっは!!効かない効かない!」

 俊哉さんの重力制御をくらっても、ケロッとした顔で動き回っている寮長。

 寮長さんは、厳密には異能力者ではなく、異能力が効かない特異体質の持ち主である。

 2000年代のフィクション作品に寮長のような能力を持った主人公のキャラクターが存在したらしいが、はっきり言って寮長は俊哉さんが言っていたそのキャラクターよりも。

「いい加減にしろ、テメエ!」

 遥かに弱い。

 今現在も、カミラさんに思いっきりぶん殴られて、吹っ飛び、廊下で泡吹きながら失神している。

 寮長の体質は異能力者相手に絶大なアドバンテージを取れるとして、発見当初は大層期待されていたのだが、在学当時の戦闘能力は何の訓練も受けていない小学生にも劣っていたため、問題外の弱さとして、在学中も0組に所属していたそうだ。

 それがきっかけで、現在は0組寮の寮長となっている。

「毎朝毎朝、よく飽きませんね~二人共」

 二階からあくびをしながら降りてきたリナさんが、半ば呆れながら言う。

 自慢の金髪が寝癖で大変なことになっており、今にも寝てしまいそうなとろーんとした目をしている。

「呆れるくらいなら寮長をなんとかして下さい。正直、毎朝の寝起きの気分は最悪なんですが」

 毎朝毎朝あの馬鹿でかい声で叩き起され、それに対してキレる俊哉さんとカミラの怒鳴り声で眠気を飛ばされるのは本当に最悪だ。

「嫌ですよ、私寮長苦手ですし」

 こういう時に一切手伝ってくれないのがリナさんだ。

 一見するとすぐに助けてくれそうな性格だが、自分のメリットにならないことは絶対にやらない現実主義者。

 それが本来のリナさんだ。

 その性格と異能力のせいで、通常クラス在籍中も好かれてはいなかったようだ。

「おい、誰か泡吹いてる寮長を管理人室に放り込んどいてくれ。そろそろ学校に行かないと遅刻する」

 最近手動式から自走式に買い換えた車椅子に乗りながら、俊哉さんが廊下で横たわっている寮長を堂々と轢きながら、寮を出る。

「んじゃ、よろしく頼むぜ」

 カミラさんは鞄を持ってさっさと行ってしまう。

「お先に失礼しますね」

 一瞬で髪の毛と服装を整え、セーラー服姿で陽光を浴びながらリナさんも行ってしまう。

「まあ、頑張れ」

 いつの間にか起きていたアスラにも先に行ってしまい、結局俺が運ぶことになる。

 しかしこの寮長、在学中に馬鹿なことに右腕の表面を鋼鉄でコーティングし、その上に人口の皮膚をかぶせて少しでも自分の戦闘能力を上げようとしたらしく、実際寮長の拳骨はありえないほど痛いのだが、その後調子に乗って両腕をコーティングしているので、寮長は重い。

 現在は在学当時とは違い、両腕を自由に振り回せる筋力があるので、高速で放たれる鉄拳(比喩ではない)と鍛えられた身体能力があるのでそこいらの軍人より遥かに強いのだが、見た目細いのに筋肉質なせいで重い。

 尚、先ほどカミラさんにぶん殴られて失神したのは寮長が弱いわけではなく単純にカミラさんが強いのだ。

 っと、そんな話はどうでもいい。

 無駄に重い寮長を引きずりながら、管理人室に文字通り放り込む。

 2~3時間くらいしたら復活するだろう。

「行ってきます、寮長」

 俺たちの家を、今日も頼みますよ。

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