この鎮守府の艦娘は悪役です
イメージが崩れる恐れがあります
(嫁艦が金剛の方は申し訳ないです
この話はとばしていただいた方がいいかも…
結局支援艦隊がくることはなかった
報告では特別捜索艦隊が敵勢力を撃破
駆逐艦1人轟沈したとだけ記載されていた
~工廠前~ 提督
「提督~ワタシがいない間に大変だったみたいですネー」
金剛が飛び付いてくる
第2艦隊で出撃したせいで前夜の防衛戦に間に合わなかった娘だ
「お怪我はありませんデシタカ~?」
彼女は良く私の事を気にかけてくれている良い娘だ
他の艦娘達の纏め役でもある
戦力も申し分なく頼もしい限りだ
「まったく、私の提督を傷つけようなんて不届きな深海棲艦ですネ」
「録な反撃も出来ずにこの鎮守府を危険に晒した遊撃部隊も同罪デス」
工廠の片隅で茫然と海を見つめる魚雷挺を見つけた金剛が話しかける
「HEY!其所のお前!昨日は何処で油を売っていた?」
少女の反応はない
「全くそんなんだから16隻も轟沈するんだ たかが駆逐艦、戦艦、軽巡程度に…恥を知れクズども」
体格が軽巡程度だったと報告があっただけで本当に其であったかは謎だが其については指摘しない
「金剛其処まででいい。コイツらは少しは役にたってくれた」
「もう……提督は優しすぎるのデス。仕方ないデスね私が直々に出来損ないを教育してあげるのデース」
「HAHAHAそれは良い!丁度間引いた所だし少しは骨のあるやつが残ってるだろう」
「足手まといが居なくなると本当らクネ」
相変わらず少女の反応はない
「15:00から実弾を装備して今から指定するポイントにくるデース」
言い終えた金剛は去っていく
反応のない少女を見る
(どうせ昨日が初の実戦とかで死ぬのが怖くなったのだろう)
と当たりをつける
(こんなやつが生き残ったんだ、昨日の第一艦隊は不意を突かれただけだろう)
~ ~
私の艤装は昨日の戦闘で完全に壊れた
修理出来るかもわからない
私は……やり残した事を終わらせよう
・
・
・
~沿岸60km地点~
「ちゃんと逃げずに来たことは誉めてあげるネ!」
今更話し合う気にもならない
………私は探照灯に火を灯す
「それじゃ はじめ!」
(……私は……コイツらを許せない!)
正面からの艦砲
相手との距離5km
流石に戦い馴れしてるだけあって狙いは正確だ
初弾にもかかわらず直撃のコースを辿る弾が5発
1発目……前進しながらサイドステップ
2発目……ステップ後の不安定な体制のまま相手に背を向ける形で着水する
同時に海面に蹴りを入れ反動で回転しながら宙を舞う
3発目……地を這うように着地した頭上を砲弾が通る
4発目…飛来する弾丸にナイフで撫でる様に沿わせる
弾丸とナイフの交わる場所を軸にして回転する形で自身の体を砲弾の進路上から外す
5発目…手榴弾型の機雷を砲弾にぶち当て爆発で弾道をかえる
いつもに比べ無駄の多い回避だったがそんなことはどうでもいい
機雷の爆発煙が残って視界を塞いでる間に距離を縮める
模擬戦闘と言うなの実戦
躊躇なく実弾を放つ相手に遠慮などするつもりはない
煙の先には既に装填の終わった金剛が待ち構えている
スラロームしながら接近する
所々緩急をつけることで相手の感覚を狂わす
斉射を行わず常に砲声を絶やさないようにしているのだろう
息継ぎする事なく次々と砲弾が吐き出されるが当たることはない
砲身の向き角度を冷静に分析する
発射レートを覚え込む
かすかな視線の動き 反動に耐える為の足の力みから発射タイミングを判断し回避する
弛い弾幕では無いはずだが私にはそれらが酷くゆっくりと動くように感じた
~金剛~
名前も知らない少女は探照灯のスイッチを入れていた
(まだ日もくれていないのにバカですネ)
お互いに視認性は良好であり探照灯の灯りをつける必要性など全くなかった
開始の合図と同時に海上を滑る事もなく
少女はゆっくりと[歩いて]いた
(救いがたいバカですネ 沈めてしまった方が皆の為デスね)
(どのみちあの程度の魚雷なら私の艤装は耐えれる
ゆっくりと料理シマショウ)
少女を葬る為に彼女は引き金を引く
~ ~
既に20mを切っている
逃げればいいものを戦艦の矜持か後退しようとはしない
魚雷2発…使い方次第では戦艦を沈める事も出来る
だがそんな簡単に終わらせる気はない
金剛に機雷を投げ機関銃で撃ち抜く
唯の目眩ましだ
同時に艤装の出力を上げて肉薄する
艦娘は艤装がダメージを肩代わりするため魚雷なしでは魚雷挺が戦艦の装甲を抜く事は難しい…本来であれば
相手の胸に掌底を見舞う
膝を正面から蹴り抜きへし折る
(装甲は防弾チョッキを着ている様なもの…衝撃までは吸収出来ない)
実際にチョッキ越しにマグナム弾で撃たれた人間がその衝撃で肋骨を骨折した事例がある
慌てて殴り飛ばそうとする金剛の右拳を掴み
そのまま自身の体を支点がわりにしテコの原理で肘の関節を破壊する
そのまま相手の顎を裏拳で弾き
脳を揺さぶる
(反撃の余地など与えない)
再度胸に膝蹴りを入れ肺に溜まった空気を吐き出させる
空気を吸い込む前に首を鷲掴みし海面に顔から叩きつける
背中からマウントをとり相手の頭が海面から出ないように押さえ込む
~金剛~
勝負は一瞬だった
瞬く間に手足を折られ海面に顔を押さえ込まれる
胸に打撃を受け呼吸も録に整っていない
肺に水が入り反射的に咳き込む
例え水の中でも
結果更なる水を吸い込むことになりパニックになる
一方的だった
模擬戦でも勝負でも殺し合いにすらなっていない
時折空気を吸わせた後 再度水の中へ入れられる
何時間も何時間も続いた
上からの圧力が消えて慌てて顔を上げる
必死で呼吸して息を整える
顔は自分の意志とは関係なく涙と鼻水でぐしゃぐしゃになってしまっているがそれを気にする余裕などなかった
当たりを見回すと辺りは暗くなっていた
新月が過ぎて間もないため辺りに光などない
……目の前で探照灯をつける少女を除いては
「こんな事をしてタダで済むと思っているのデスか!?」
「……私と仲間達はこんな奴等の為に命をかけて戦った
私達の意志など関係なく強制させられた
虐げられ 守るべきものに価値などなく 唯一私達が持っていた物すらお前達は奪っていった」
(…成る程 目的は復讐だったか
確かに報告は上がっていないが犠牲が出たことは知っている)
「戦場では犠牲は付き物デス 先に逝った子達も貴女が仲間の血で手を汚すことは望まないデショウ
こんな事をしてもムナシイだけデス」
少女はクスクスと笑いながら振り返る
闇に溶け込む黒髪
探照灯の明かりを全く反射しない紅眼
開いた瞳孔
「そうね…あの子やあの子達はこんな事を望んではいないでしょうね
人は復讐者を止めるときよく「何も残らない、虚しい、望んでない」とか口にするけど……
その人達は其をわかった上で復讐をしてるのよ?
悩んで…苦しんで…哭いて…どうしようもない感情と向き合って
それでも復讐を選んでるの」
「私が血を流しながら泣いているのに奪ったお前達は楽しそうに笑っている」
弱々しい探照灯の明かりのせいか
園児服のシルエットが心なしかゴシックドレスのように見えた
微かに透き通った鈴の音が聞こえる
少々は膝をつく私の顔を覗きこむ
「ねぇ、知ってる?」
「死者にとって生者は羨ましくて…妬ましくてどうしようもないものなのですよ?」
少女は笑う
「ねぇ……どうして貴女は……
少女は嗤う
「………まだ生きてるの?」
・
・
・
・
私は逃げたした
折れた手脚を引きずりながら
光の元から逃げるように
何分か何時間かもう時間の感覚はない
追手の気配はなく辺りは静寂に包まれていた
(私は夢をみていたのでしょうか?)
折れた手脚は痛むけれど普通に考えると
魚雷挺が戦艦を沈めるなんてあり得ない話だ
[チリン]
微かに鈴の音が聞こえる
遠くで探照灯の弱々しい光が見える
(あちらは私の位置に気づいていはいはず)
(回り込んで至近距離から砲撃すれば倒せるはず)
違和感に気づく
(あの探照灯…全く役目を果たしていない)
その光には直進性はなく
割れたレンズ 歪んだ反射体は光を乱反射している
出力の低下したユニットは弱々しい光を出し使用者の足元を照らす程度であった
[チリン]
(まっすぐ近づいてくる!)
[チリン]
待ち伏せを断念し
再び息の続く限り走り出す
[チリン]
光がおってくるのがわかる
・
・
・
・
灯台の光が見えた
もうすぐで鎮守府周辺だ
元より砲撃の流れ弾で被害が出ない程度にしか鎮守から離れていない
後ろを振り向き追手がないことを確認する
(やっと帰ってきたんだ……)
[チリン]
安堵する彼女の耳元で
音のなる筈の無い鈴の音が終わりを告げた
人は皆繋がりを持って生きています それは他人とて同じことです
[故に問うなかれ誰かが為に鐘は鳴るやと]
誰かが亡くなった時に鳴る鐘を他人事の様に感じてはいけません
[其は汝が為に鳴るなれば]
それは貴方にとっても繋がりが消えてしまった事を告げる悲しい音色なのですから
ヘミングウェイの一説ですね