剣キチIF 感度3000倍の世界をパンツを脱がない流派で生き抜く   作:アキ山

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 お待たせしました。

 対魔忍も十話を超えましたので独立です。

 これが最新話となりますので、よろしくお願いします。

 あと、11連ガチャでひまわりは悪い文明。

 知ってるか? 対魔忍RPGは11連でオールRって地獄があるんだぜぇ


日記11冊目

×月〇□日(晴れ)

 

 

 どーも、十四歳にして学校デビューを飾る事となったふうま小太郎です。

 

 豪快なリベンジと共に対魔忍にオサラバしてから二週間、全てが終わった時は解放されたテンションとコアな長渕ファンである権左兄ィに引っ張られた事もあって、『とんぼ』から『しゃぼん玉』さらには『乾杯』まで歌ってしまった。

 

 一回寝て冷静になったら、死ぬほど恥ずかしかった。

 

 つーか、アサギとかいたのに酔っ払いよろしく大合唱とか、恥以外の何物でもないだろうに。

 

 ………うむ、いい加減にこの事は忘れよう。

 

 黒歴史とは封印する為にあるのだから。

 

 そういうワケで閑話休題。

 

 あれから数日も置かずにふうま一党の宮内庁、正確に言えば北絵女史が当主を務める上原家の経営する退魔師育成学校『隼人学園』への移籍が決まった。

 

 それに伴って俺達は五車の里を出る事となり、現在は宮内庁が用意した官舎で暮らしている。

 

 里に残した不動産については公安と対魔忍によって適正価格で買い取ってもらったので、固定資産やら何やらといったややこしい事も起こらないだろう。

 

 さて、今回の移籍に伴い新たな雇い主である上原学長より一つの条件が出た。

 

 それは18歳までの子供は全て学校に入れるというものである。

 

 この提案を切っ掛けに調べてみて分かったのだが、実はふうま一党の通学率はそんなに高くなかったりする。

 

 頭領である俺を筆頭に上忍では十分の一、中忍で四分の一で下忍に至っては半分の就学年齢の若者が学校に通っていなかった。

 

 まあ、さすがに義務教育期間に行っていないのは俺と紅姉くらいで、上記の割合に当てはまる者達は総じて中卒の面々であるが。

 

 中忍以下の子供達の進学率が悪いのは、単純に人手不足だったから。

 

 主流派連中の無茶ぶりに加えて、頭領で最年少であった俺が率先して現場に駆り出されている事も影響したのだろう。

 

 正直、これについては申し訳なく思っている。

 

 まあ、俺や骸佐のように小学校の時分から鉄火場に出るなんて無茶をやらかしてる奴がいない事には安心したが。

 

 話を戻そう。

 

 今回の指示によって、俺と紅姉が遅まきながらの学校デビューと相成った。

 

 前世も学校なる物には行っていないので、俺としては二生初の快挙と言える。

 

 また、今回の指示によって銀零も小学校に行くことが出来るようになったのは本当にありがたい。

 

 正直、この案をねじ込んだという神村東教諭には頭が上がらない。

 

 そんなワケで『隼人学園』の門を潜ったのだが、この時ある事を失念していた。

 

 そう、カーラ女王と共に画策したメディア戦略によって、俺はある有名人となっているという事だ。

 

 ちなみに学校にいる間は馬鹿正直に「ふうま」を名乗るワケにはいかないので、先祖に倣って『風間太郎』の名で在籍している。

 

 まあ、分かる人には分かるだろうから偽名としては弱いのだが、あまり突拍子も無いモノを付けても後々困るだろうし、この辺が妥当であろう。

 

 学年はじめに合わせて中学二年のC組に転入したわけだが、教壇の前で紹介されると同時に質問攻めにあった。

 

 大体が忍者についてだったので守秘義務を盾に返答は断っておいたが。

 

 その後、骸佐と久方ぶりに会う蛇子、あと二歳年上のはずなのに何故か俺と同じ学年に転入してきた紅姉と共に初日は過ごした。

 

 ふうまの子供達はいずれも転入生扱いになるので、そういったコミュニティを造っても違和感が無いのはありがたい。

 

 その後は問題なく授業を熟し(苦悶式を続けていたのは伊達ではないのである)、人生初の登校日は問題なく幕を閉じた。

 

 放課後に理事長室に呼ばれて、北絵女史と神村教諭から学校初体験の感想は? なんて聞かれたのには流石に困ったが。

 

 あと、実技担当の教諭の中に一人だけ気になる人物がいた。

 

 その人の名はモーラ・ハールマン。

 

 本人曰く二十五歳という話だが、外見的には小学校高学年くらいにしか見えない彼女からは紅姉によく似た気配を感じたのだ。

 

 彼女の方も紅姉を注目していたようだし、もしかしたらそういう事なのかもしれない。

 

 今後の事も考えて探りの一つも入れたいところだが、彼女の授業の始まりから終わりまで隣の棟の屋上から物騒なモノを突き付けていた用務員のおっさんも気に掛かる。

 

 俺だけを狙ってくるならまだしも、蛇子にターゲットを移されては事だしな。

 

 ある程度の情報が集まるまで、当面は様子見に徹するべきだろう。

 

 最後に初登校から帰って来た俺を迎えたのは、如何にも不機嫌ですと頬を膨らましていた銀零だった。

 

 学校で何かあったのかと思って聞いてみれば、俺と同じクラスじゃない事にご立腹な様子。

 

 銀零や、日本においては学年の壁は超える事の出来ないモノなのだ。

 

 学校自体は同じなんだから、それで手を打つがよい。

 

 え、飛び級?

 

 そんな制度は日本には無いよ。

 

 ……無いよね?

 

 

〇月〇□日(くもり)

 

 

 移籍からはや一月、俺達は普通に学生生活を満喫している。

 

 平和なのは結構だと思うのだが、生憎とこちらの本業は荒事である。

 

 定期的に鉄火場へと行かないと腕が鈍ってしまう。

 

 この件は上原学長へも打診しているのだが、ふうま衆の運用体制が整っていないのを理由に許可が出ていないのが現状だ。

 

 訓練名目で神村教諭と模擬戦をしているので決定的に錆付く事はないだろうが、実戦と訓練は別物。

 

 勘を鈍らせない為にも、早急に任務を頂きたいものである。

 

 因みに現状における神村教諭との模擬戦における勝率だが、なんと10:0で勝ち越していたりする。

 

 世界最強の吸血鬼ハンターを相手にしての勝率としては出来過ぎだが、しっかりと理由はあるのだ。

 

 神村教諭は吸血鬼をも上回る超人的な身体能力を駆使して、力でねじ伏せる戦い方をメインとしている。

 

 相手からの攻撃は上記の身体能力と異様に鋭い動物的勘で対処しているものの、こと技量についてはそこまで高くない。

 

 使っている『鬼切』という得物が金属バット型である事も相まって、戦闘スタイルも道場剣術+喧嘩殺法と言った感じだ。

 

 なにが言いたいのかというと、力でゴリ押しする彼女は戴天流のカモなのである。

 

 いかに肉体的ポテンシャルが高くても、フェイント無しなうえに『意』を隠そうとしないのは当たってやる道理はない。

 

 むこうもいなしてカウンターを取るこっちの戦い方が苦手なのか、近頃ではガチンコ勝負が出来る夜叉髑髏(やしゃどくろ)の骸佐に模擬戦のメインが移ってしまった。

 

 この世界の強者は基本的にパワーファイターばかりだからなぁ。

 

 もしかして戴天流って異端なのかもしれん。

 

 

〇月〇▼日(雨)

 

 

 今日は妙な夢を見た。

 

 夢の中では俺は五車の里にいて、何故か猪になっていた。

 

 襲い掛かってきた対魔忍をブチのめして得た情報によると、どうやらこの猪ボディは奴らが儀式に呼び出した瑞獣(中国の伝説に出てくる吉兆を告げる聖獣)であり、奴等は幸を得る為に年始の行事で呼び出した俺を狩ろうとしているんだそうな。

 

 なんというか、ツッコミどころ満載である。

 

 正月なんて四か月前の話だし、それ以前に今年の干支は猪ではない。

 

 そもそも、五車の里にそんな妙な年始行事があったなんて聞いた事も無いんだが。

 

 こちらの意見は置いておくとして、事情はいまいち掴めないが奴等が俺を殺そうとしているのは分かった。

 

 よろしい、ならば戦争だ。

 

 さすがに猪ボディでは剣を振ることはできないが、それでも戦いようは幾らでもある。

 

 むしろ猪の馬力のおかげで、靠はいつもより冴えているくらいだ。

 

 襲い来る対魔忍達を猪の巨体と強靭な脚力をフルに使った体当たりで蹴散らしていく。

 

 四つ足震脚からの一撃の威力は凄まじく、食らった対魔忍達は文字通りゴミ屑のように吹き飛んでいった。

 

 さらに軽功術を加味すれば、その健脚が齎すスピードによって亜音速からの分身殺法まで可能となり────

 

『フハハハハハハハ、怖かろう!!』

 

『質量を持った残像だと……ッ!? 化け物か!!』

 

 なんて具合に上忍レベルも瞬殺することも可能だった。

 

 そうして井河の本家に乗り込んで大将首へと突進していると、俺の前に立ちはだかる者がいた。

 

 そう、井河の頭領アサギである。

 

 しかし、晴れ着を着こんだアサギは俺の知る彼女とは少々趣が違っていた。

 

 一目見て分かったが随分と若いのだ。

 

 現実のアサギは三十路に突入したところなのだが、夢のアサギは多く見積もっても十台後半くらいの外見だった。

 

 大将首が来たか!と気合を入れていたのだが、こちらの意に反して若アサギは話がしたいと持ち掛けてきた。

 

 普段であれば『もはや分かり合えぬ』と一蹴するところだが、ここは夢の中である。

 

 猪的な巨体に免じて話を聞いてやることにした。

 

 若アサギの話によると俺は瑞獣『清麻呂』本体ではなく、奴が自分が狙われないようにと異界から呼び出した身代わりなのだと言う。

 

 で、清麻呂によって呼び出された俺は奴の気配を追う事が出来、さらには人間に戻って元の世界に帰る為には俺達の手で清麻呂を倒す必要があるそうだ。

 

 にわかに信じられない話だが、それを言うならこの世界で猪をやっていること自体が荒唐無稽である。

 

 元の世界に戻る指針がない以上は若アサギの言葉を信じるしかないと考えた俺は、稲毛屋の婆さんの依頼でこの騒ぎを解決したいと言う彼女と手を結ぶ事にした。 

 

 その後はこの身を瑞獣と勘違いして立ちはだかるお邪魔虫共を蹴散らしながら、件の清麻呂の気配を辿って東京キングダムまで足を延ばす事となった。

 

 戦闘狂の槇田(なにがし)を銀零がやっていたゲームのキャラ『E・本田』の技であるスーパー頭突きで蹴散らすと、ヨミハラで出会ったフェリシアという魔族の少女を『ハリケーンミキサー』で天空高く弾き飛ばす。

 

 さらに立ちはだかる晴れ着姿の甲河頭領を、『スーパー百貫落とし』からの震脚ストンピングで打ち砕く。

 

 獣の身に人の頭脳と技を持った夢の中の俺は、獣を超え人を超えた神の戦士だった。

 

 ちなみに若アサギはと言うと『静まり給え! さぞかし名の有る山の主とお見受けするが、何故こうも荒ぶるのか!?』と何故か俺を鎮めようとしていた。

 

 お前はアシ●カか。

 

 そんなこんなで気配の出所である東京キングダムの倉庫街に到着すると、中では俺の身体に入り込んだ『清麻呂』がナンパしていた女に振られていた。

 

 奴の話では女の子とイチャイチャしたいが為に俺を呼んだそうなので、お礼として身体が元に戻ると同時に食肉加工してあげた。

 

 最後はアサギに見送られながら、元の世界に帰るべくブタ肉となった『清麻呂』の身体から抜け出る『幸』で歪んだ時空の渦に飛び込んだワケだが───

 

 ……アサギよ、なぜここにいる?

 

 人の寝床で夢で見た晴れ着のまま眠っていた若アサギを起こして問いただしたものの、彼女は自分が何故ここにいるのか分からないという。

 

 ぶっちゃけ超常現象どころの騒ぎじゃないのだが、一度は世話になった事もあって放り出すのも気が引ける。

 

 時子姉を始めとした家の者に相談した結果、彼女の世界に帰る方法が見つかるまで家に置く事となった。

 

 さて、八将の面々には真実を伝えるとしても対外的にはどうするか?

 

 上原学長やカーラ女王に異世界からの迷い人なんて与太話、通じるとは思えない。

 

 ここは静子さんの例を取って、ノマドで生み出されたクローン・アサギが生きていたって事にしておこうか。

 

 

〇月〇×日(晴れ)

 

 

 平和な日々よ、さようなら。

 

 誠に遺憾だが事件発生である。 

 

 今日、登校した際に不審な人物を見つけたのだ。

 

 それは学園の清掃員の作業着を着た20~30代の男で、一見すれば何の変哲もない一般人だった。

 

 だが、異常は奴の身体にあった。

 

 本人は少々足取りが覚束ないながらも普通に学園に入ろうとしていたのだが、その体の中では周囲に何かを為さんとする『意』を持った何者かが血流に乗っているかのようにグルグルと回っているのだ。

 

 危険を感じた俺はその清掃員の意識を氣脈操作で奪うと、門の横にある警備員詰め所へと引きずり込んだ。

 

 学園警備責任者の権左兄ィと上原理事長に連絡を飛ばすと、理事長は学園の地下にある研究施設に運ぶように指示。

 

 魔界技術がらみの可能性があると踏んだ俺は米田のじっちゃんにも連絡を入れると、指示された通り物販搬入ルートから男を研究室に運び込んだ。

 

 すぐさま駆けつけてくれた米田のじっちゃんを交えての隼人学園研究班による緊急検査が行われたのだが、最初の採血の時点で調査対象の血液から多量の寄生虫が発見されたのだ。

 

 俺が感じた人体を巡っていた『意』とは、こいつ等のことだったらしい。

 

 この時点で上原理事長は学園の緊急隔離閉鎖を決定。

 

 他の感染者がいる可能性も視野に入れ、生徒や教職員はもちろん現在学園にいる全ての者の移動を禁じたのだ。

 

 こちらも手すきのふうま衆を使って学園に包囲網を敷き、こちらの許可なく脱出しようとする者は制圧捕縛するように指示を出した。

 

 その後、学園内にいた者は講堂に集められ、上原理事長から事情の説明を受けた。

 

 そして学園所属の医療班によって感染の有無を調べる検査が行われたのだが、実はこれはブラフであり本命は寄生虫の放つ『意』を感じ取れる俺が感染を見分ける事だった。

 

 二時間に及ぶ検査の結果、感染者は追加で5名発見された。

 

 内訳は外部業者が三名の女生徒一名、そして教師が一名。

 

 ふうま衆や神村教諭を始めとする退魔師の実働班に被害者がいなかったのは不幸中の幸いだったが、感染が始まっていた事には変わりない。

 

 感染の確認された者達は直ちに地下の研究施設へと隔離され、宮内庁を通して報告を受けた政府からは『寄生虫の安全性が確認されるまでは、関係者の学園からの移動を禁ずる』という指示があった。

 

 そういうワケなので今日は学園で寝泊まりする事となる。 

 

 講堂の中を毛布一枚で雑魚寝することになるが、野宿が常であったこちらにとっては全く問題ない。

 

 とはいえ、隼人学園はふうま衆のような劣悪な環境に慣れた者ばかりではない。

 

 突然の事に加えて、隔離と言うストレスの掛かる環境である。

 

 内部の秩序が崩れる前に寄生虫について調査が進めばよいが……。

 

 初等部からやってきた銀零がしがみ付いて離れないので、今日はここまでにしよう。

 

 

〇月〇☆日(暗雲)

 

 

 隼人学園内に隔離されて1日が経った。

 

 じっちゃんと研究班の努力のおかげで、例の寄生虫の正体が徐々に分かり始めて来た。

 

 あの寄生虫は魔界技術の産物であり、人間の体液を媒介に感染するものらしい。

 

 感染した際の影響だが、初期においては男性に影響はないものの女性の場合は快楽神経を刺激して強制的に発情を促される。

 

 寄生虫は元々淫魔族が女性を調教する際に使用する種をベースとしているようで、女性に対する影響は原種から受け継いだものなんだそうな。

 

 というか、なんで奴らは事あるごとにエロ方面に繋げようとするのか?

 

 女性の調教用に蟲を造るとか技術の無駄遣い過ぎるだろ。

 

 俺の所感はともかく、問題はここからである。

 

 体内で増殖した寄生虫が一定数に達すると、奴等は中枢神経に癒着するようになる。

 

 そうして神経と脳の間に別の脳に似た器官を形成するようになり、寄生主の身体を乗っ取ってしまうそうだ。

 

 最初に俺が見つけた被害者は、その補助脳の形成にまで症状が進んだ患者らしい。

 

 件の寄生虫による補助脳君だが、拘束して経過観察しているとなかなかに面白い情報を漏らしてくれた。

 

 乗っ取りが完了したのか、虚ろだった表情に感情の色が見え始めて呂律も回るようになると、例の清掃員はこう名乗った。

 

『この下等種族共が! 私を誰だと心得る!? 私は誇り高き吸血鬼の王族、グラム・デリックだぞ!!』と。

 

 はい、馬鹿決定。

 

 このグラム某、上原理事長を通して学園に逗留中のカーラ女王に尋ねたところ、犯罪結社を造って裏商売をしていた事で彼女に断罪された叔父なんだとか。

 

 奴の発言で分るように寄生虫の主はグラムである。

 

 思念波か、もしくは眷属契約か。

 

 方法は分からないが、奴は寄生虫が宿主に形成した補助脳をさらに乗っ取る事で自身の手駒を増やしているのだ。

 

 今回、寄生虫のキャリアーでもある傀儡を学園に潜り込ませようとしたのも、カーラ女王への怨恨ゆえである。

 

 ようやく話の全貌が見えてきたところだが、ここはさらに情報を絞り出す必要があった。

 

 とはいえ、宿主は罪の無い堅気さん。

 

 当然の事だが肉体言語は厳禁である。

 

 さらに情報を握っているのが補助脳であることから自白剤などの薬物も効果が疑わしい。

 

 となれば、ここはふうま衆の層の厚さを雇い主に見せねばならないだろう。

 

 そこで呼び出したのがふうま下忍に属する蜂矢利助である。

 

 この蜂矢は呪詛系の異能の使い手で、自身の血液を媒体として相手に房術を掛ける事が出来る。

 

 本来の使い方は女性に忍術を掛けて快楽によって情報を聞き出す変則的なハニトラなんだが、今回は男性にそれをやってもらう。

 

 『郷に入っては郷に従え』ではないが、ここは魔族の流儀に則って吸血鬼の王族様には快楽堕ちしてもらおうというワケだ。

 

 一説によると、男性は女性よりも格段に快楽に耐性が無いと聞く。

 

 一個人を快楽に狂わせるのだから与える刺激は相当厳しいものとなるだろう。

 

 しかし、宿主さんに関しては問題は無い。

 

 補助脳ことグラム君が肉体への刺激を肩代わりしてくれるからだ。

 

 人体を乗っ取り脳を作ると言っても所詮は寄生虫、神経を通ってくる刺激や情報の取捨選択ができるほど高性能ではないのは確認済みである。

 

 というワケで女性陣には退席してもらって作業開始。

 

 高貴なる吸血鬼の王族様は、キッカリ30分で完堕ちと相成った。

 

 文章にするとたった三文字だが、実際に現場にいた者にとっては結構キッツイ時間だったようだ。

 

 権左兄ィと骸佐は15分でギブアップ。

 

 研究員も次々と鬼太郎袋のお世話になる中、しっかりと観察できたのは俺と責め役の蜂矢、あとは米田のじっちゃんだけだった。

 

 米田のじっちゃんは魔界医療に携わっているので、この程度の絵面は見慣れてるそうな。

 

 俺は前世の上海でこれよりエグイのなんて幾らでも見た事があるので、この程度では何とも思わない。

 

 蜂矢については簡単、俺が逃がさなかっただけである。

 

 いい年したおっさんが本気で泣きながら勘弁してくださいと言ってきたのはアレだが、リバースしながらも最後まで仕事をやりきった蜂矢にはねぎらいの言葉を送っておいた。

 

 まあ、魔界関連と聞いて帽子とマフラーの変装で様子を見に来ていた若アサギを指差して、『口直しにあの娘を調教させてください!!』などとのたまった結果、思い切り蹴り倒されたのは擁護できないが。

 

 方法の是非は置いておくとして、今回の件における決定的な情報を得ることに成功したのは大きい。

 

 この寄生虫に気づくことなく学園内でアウトブレイクが起きた場合、ヴラド国の女王を巻き込んで日本の退魔師に壊滅的な被害が出ていただろう。

 

 奴の情報にどこまでの信ぴょう性があるかは今のところ分からないが、早急に潰す必要があるのは間違いない。

 

 今から動けば情報の裏取りと襲撃を含めても明日の朝までには終わる。

 

 善は急げだ。

 

 久々の鉄火場に向かうとしよう。

 

 

〇月〇●日(快晴)

 

 

 寄生虫騒ぎは一応の解決を見た。

 

 情報と研究結果が出ると同時に学園を発ったのだが、情報の裏取りを終えた時には日はとっぷりと暮れていた。

 

 相手は目に見えない寄生虫という事で慎重に慎重を期した為に時間がかかったが、お陰で聞き出した情報の正しさは確認できた。

 

 グラムの所有する実験施設は東京キングダムの郊外にひっそりと建つ洋館だった。

 

 館内にはグラムを支持するヴラド国の貴族が配置した吸血鬼の警備が付いていた。

 

 夜は奴等の時間と言われているが別段恐れる事も無い。

 

 女王の話では、高位の者以外なら吸血鬼は首を刎ねると死ぬそうだ。

 

 ならば境圏で気配を断って後ろからばっさり行けばいいだけの話である。

 

 そうして外周を護る護衛を全滅させて内部に足を踏み入れた俺は、補助脳グラム君の情報通りに地下に建造された研究施設の隠し階段を下りた。

 

 するとそこには攫われてきたと思われる人間や魔族が、等身大のシリンダーに収められて部屋中に並べられていた。

 

 制御用のPCを確認してみると、そこにいた者全てが寄生虫の苗床でありグラムの傀儡であった。

 

 PCから抜き出したデータによると寄生虫はグラムの眷属であり、本来は目や鼻の粘膜や傷口に感染者の体液が付着した場合に感染するモノを皮膚からの体液感染に強化しているのだ。

 

 そして補助脳にグラムの人格を形成するのもまた、虫共が奴の眷属故である。

 

 とはいえ、それも終わりを迎えた。

 

 研究施設の最奥にはシリンダーに入れられて保護液に浸かった脳髄、グラムオリジナルの脳があったからだ。

 

 如何に眷属とはいえ、寄生虫に自身の思考形態を記憶させ続けるなど出来はしない。

 

 主従間の思念波による統制の傍ら、奴は常に自分の情報を寄生虫に刷り込ませていたのだ。

 

 つまり、このオリジナルが消えれば寄生虫たちはグラムの個体情報を維持し続けることが出来なくなるということである。

 

 もっとも、補助脳形成からの肉体の乗っ取りは寄生虫の特性なので消えることはないが、その特異な生態ゆえにこいつ等は原種に比べて非常に脆弱であり、感染が確認された場合も駆虫薬を処方すれば簡単に死滅させられるらしい。

 

 というワケでデータを根こそぎ引っこ抜いた後、米連特製爆薬で思いっきり『たまやー』してあげたワケだ。

 

 『汚物は消毒だ!!』を行うのは世紀末から大火力と相場が決まっている。

 

 これだけド派手に送ってやったのだから、グラムも未練なくあの世に旅立ったことだろう。

 

 廃ビルの屋上から任務の終わりを告げる紅蓮の華を見ていた俺は、ここで思わぬ人物と再会する事になる。

 

 それは秋山達郎である。

 

 黒い対魔スーツの上に黒の外套を羽織り、何故か顔を半分近くまで覆うバイザーで隠した達郎。

 

 声を掛けてみると───

 

『君の知っている秋山達郎は死んだ』

 

 開口一番にこれである。

 

 そりゃあ倫理的には惨殺されたのは知っているが、数か月ぶりにあった知り合いに言うセリフでは絶対ない。

 

 軽いジャブはともかく、奴がここに来た目的は俺と同じく寄生虫の撲滅であった。

 

 なんでも東京郊外に現れた魔族を紫が退治したのだが、その魔族の中に例の寄生虫が仕込まれており、返り血をこれでもかと浴びた紫はあっさり感染したのだという。

 

 以前書いたが、この寄生虫は女性に感染した場合は初期でも快楽神経を刺激して発情を誘発させるという効果を持つ。

 

 それが原因であっさり感染が発覚したのだが、ここでハッスルした馬鹿が一人いた。

 

 対魔忍お抱えの魔界医師、桐生佐馬斗である。

 

 紫に異常な愛情を抱いている奴は、寄生虫によって発情した紫を見て発奮。

 

『俺以外の手で紫の身体が改造されるなど、許ざんッッ!!』と斜め上の独占欲を発揮し、治療と称して紫を抱きまくったらしい。

 

 そんなことをすれば当然桐生にも寄生虫は感染したのだが、奴は自分の身体を餌にしてあっという間にその特性を炙り出し、一晩で駆虫薬を開発。

 

 さらには寄生虫同士が情報交換目的に発する思念波の種類まで割り出したのだ。

 

 米田のじっちゃんと上原の研究チームが出した成果を、たった一人で上回った奴には割と本気で脱帽した。

 

 で、達郎はその思念波を捉えるレーダーを頼りにここまで来たというワケだ。

 

 まあ、来た瞬間に研究所は灰塵と化したので無駄足と言えば無駄足なのだが。

 

 ちなみに達郎が何故にベラベラと機密を話しまくったのかというと、奴は未だに俺の事を『世良田次郎三郎』と思っていたからだ。

 

 『ふうま小太郎』と知っていれば、こうも簡単に口は割らなかっただろう。

 

 さて、本来であれば解散すべき状況だが、生憎とそうはならなかった。

 

 そこから30分ほど、何故か俺は達郎の人生相談を受けるハメになったのだ。

 

 相談したい事があると告げた奴はバイザー越しに死んだ目でこちらを見ながらこう言った。

 

『俺……姉ちゃん以外に勃たなくなったんだ』

 

 この時、いったい俺はどんな顔をしていたのだろうか?

 

 開幕同時のビッグパンチに言葉が出ない俺を尻目に、表情を虚ろにしながら言葉を紡いでいく達郎。

 

 完全に瞳孔が開いているのがバイザー越しにもわかるので、闇夜で見るとその顔は物凄く不気味だった。

 

 あと、そんな顔なのに頬を染めるな。

 

 生々しすぎるので詳しい表記は避けるが、とりあえず達郎が凜子に朝昼晩と時間や場所を問わず搾り取られているのは分かった。

 

『「くやしい! ……でも感じちゃう」って台詞をさ、まさか自分が言う事になるとは思わなかったよ……』

 

 ────俺は泣かなかったと思う。

 

 この後も散々近況と姉弟のタブーを事細かに聞かされたのだが、最後に『ゆきかぜは、こんな僕を許してくれるかな?』と何とも返答に困る言葉を残し、奴は空遁の術で現れた姉の手に捕らえられて虚空に消えていった。

 

 色々と言いたい事はあるが、まずは一言。

 

 ゆきかぜって誰やねん。

 

 

 

 

 【弟は】姉弟の仲の良さを赤裸々に晒すスレ【私に夢中】

 

 

 

 

 

121 斬鬼の対魔忍

 

そんな感じで、私は弟を手に入れたワケだ。

 

唯一譲ってもいいと思っていた幼馴染とは縁を断ち、弟の初めてを奪ったアバズレはモウイナイ。

 

コレデTロウは私ノモノダ。 

 

 

122 名無しの対魔忍

 

仲良しエピソードを聞いてほっこりしに来たのに、背筋が凍った件

 

 

123 名無しの対魔忍

 

タイトル詐欺にもほどがある……

 

 

124 名無しの対魔忍

 

禁断の関係って燃えるよね!

 

私もお姉ちゃんを狙ってみようかな

 

 

125 名無しの対魔忍

 

おいやめろ

 

 

126 名無しの対魔忍

 

相手にその気が無かったら、自分の姉を地獄に突き落とすことになるぞ

 

 

 

127 名無しの対魔忍

 

大丈夫!

 

お姉ちゃんが敵におっぱいが出るように改造された時、私が吸ってあげてたもん

 

 

128 名無しの対魔忍

 

なん……だと……

 

 

128 名無しの対魔忍

 

こんなに兄弟のタブーを超えようとする奴等がいるとは……

 

ああ、世も末じゃ。

 

 

128 ぎんせいごー

 

ざんきさんにききたい。

 

あにさまをわたしのものにするほうほう、ある?

 

 

129 斬鬼の対魔忍

 

ふむ……

 

詳しく聞こうじゃないか

 

  


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