剣キチIF 感度3000倍の世界をパンツを脱がない流派で生き抜く   作:アキ山

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 久々のヤマ無しオチ無し形式の日記文です。

 うんうん、この形式だと本当に描きやすいや。

 あと、仕方がない事だけど、後だしで八将が出てくると扱いに困りますね。

 ほら、葉隠さんとか。

 何とか組み込めるように考えば……。

 しかし、後のふうま八将ってどうなってんだろうか?

 楽しみのような怖いような、とりあえず刮目して待ちましょう。


日記24冊目

■月☆彡日

 

 愚妹の懸案も無事に終わったので、今日は久々に学校へ行ってきた。

 

 中学生が登校するのを久々と評するのは何気にやばいと思うが、ゆきかぜ救出や甲河との会合などと予定が立て込んでいたのだから仕方がない。

 

 移籍組である鹿之助君は五車学園からの転入という形で、隼人学園に通う事になっている。

 

 ボッチになってやしないかと心配していたが、ふうまの面々に上手く溶け込んでいるようで一安心である。

 

 今日も蛇子に骸佐といったいつものメンツと話していたわけだが、その最中に鹿之助君にメールが届いた。

 

 内容を確認した瞬間、味噌やカレーを目の前にしたアシリパさんのような表情を浮かべる鹿之助君。

 

 いったい何事かと思っていると、彼は無言でスマホを差し出した。

 

 そこには『姉ちゃんが妊娠した。タスケテ』という達郎のSOSが……。

 

 あまりのインパクトに固まる俺と骸佐を他所に、オソマ顔で『お幸せに』と返事を送った鹿之助君は凄い漢だと思う。

 

 その後、話の流れで骸佐が『あいつら、結婚式開いたら勇者だよな』と言っていたが、奴は分かっているのだろうか?

 

 俺達も一歩間違うと達郎と同じ世界に堕ちる事に。

 

 『イモウト』爆弾は解体に成功したが、まだ『腐女子』と『ワンコ』が残っているのだ。

 

 小太郎君的にはどっちも嫁にする気はありません。

 

 ヤバくなったら『骸佐防壁』を使ってでも逃げ切ってやる。

 

 

☆月〇日

 

 

 同情するなら金をくれッ!

 

 借金大王こと、ふうま小太郎です。

 

 約6000万という負債を減らすため、任務を増やすなどして日々頑張っているのだが、やはりというかイマイチ成果が上がっていない。

 

 任務報酬って上原家から出る依頼料の大半がふうまの運営費に流れるから、個人に渡るのって微々たるモノだったりする。

 

 具体的に言うと諭吉20人くらい。

 

 下忍の場合はこれを参加人数で分けるから、一回の任務報酬はさらに渋くなる。

 

 だから、この辺の救済措置として宗家から固定給を手当として出しているのだ。

 

 まあ、頭領の俺には救済措置もクソも無いんスけどね!!

 

 しかも、頑張ってたのに『下忍の仕事を取らんでください』って甚内さんから釘を刺されるし。

 

 こんな稼ぎじゃ、日本を離れる前に綺麗な体になるなんて不可能じゃないですかヤダー!!

 

 というワケで、一獲千金を求めて東京キングダムに潜入してみました。

 

 ブラックが淫魔族と遊んでいるのはリサーチ済みなので、早速闇金(潰し)巡りをしていたのだが、ここで意外な人物と出会った。

 

 彼女の名はリリス・アーベル・ビンダーナーゲル。

 

 ノイ婆ちゃんから聞いた魔界の伝説に出てくる、神に反逆し彼等を異界に追いやったとされる伝説の大魔女……の孫娘である。

 

 祖母のような立派な魔女になる為、人間界に武者修行に来たそうなのだが、諸国漫遊をしている内に路銀が尽きたらしい。

 

 で、お金に困った彼女は勧誘に言われるがままに金を借りてしまったそうな。

 

 当然、東京キングダムに潜む闇金なのでその利子はシャレになっていなかった。

 

 当初3万だった借入金が二日目には300万、法外という言葉すら生温いレベルである。

 

 設定した奴は絶対にバカだろ、これ。

 

 しかもこの業者、貸した翌日に取り立てに行くという金融業を舐めた仕事っぷりを発揮。

 

 リリス嬢はリリス嬢で金をパクッて逃げればいいものを、契約を重視する魔女としての矜持ゆえか取り立てに真摯に対応してしまった。

 

 その結果、彼女は借金のカタに捕らわれる事となり、俺が見つけたのは雌奴隷として調教を始めようとした瞬間だったワケだ。

 

 さすがにそんな場面に乗り込んだからには助けないという選択肢は無く、ついでのばかりに闇金を潰した後は慰謝料としてそこの資産を丸々渡しておいた。

 

 お供の白犬と一緒に何度も礼を言われたが、彼女から漂うポンコツ臭を思うと不安しかない。

 

 ノイ婆ちゃんへの紹介状も持たせたし、こちらとしては無事にアミダハラに辿り着くのを祈るばかりである。

 

 因みに今回の稼ぎは270万。

 

 十件以上も闇金を潰したにも拘わらず、この程度しか実入りが無いのは流石に予想外である。

 

 というか、どいつもこいつもタネ銭まで使い込んでんじゃねーよ。

 

 いくら何でも無計画にも程があるだろ。

 

 これだから魔族はイヤなんだ。

 

 

☆月▲日

 

 

 ふうま小太郎、副業ゲットしました。

 

 『ダークナイト』って芸名でカオスアリーナデビューっす。

 

 黒を基調にした鎧に髑髏を模した兜という衣装に捻りが無さ過ぎると思ったが、こちらは雇用される身である。

 

 こういう本音は心の棚に上げておくべきだろう。

 

 さて、紆余曲折あってコスプレ剣闘士に就職したワケだが、切っ掛けは東京キングダムでの就職活動だった。

 

 なにか儲け話は無いかい? と貧民街で知り合ったオークのジャックと話していると、『オニイサン、おいしい話アルよ。アルアルよー!』と怪しいピエロに声を掛けられた。

 

 俺もジャックも借金で首が回らない者同士、金策という言葉を無視することは出来ない。

 

 そんなワケでそのピエロについて行くと、辿り着いたのは東京キングダムで最もヤベー施設と有名なカオスアリーナでございます。

 

 ジャックと一緒に『(やく)ネタか』と警戒していたのだが、通称マダムと呼ばれているアリーナの支配人を務める魔族、スネークレディの説明を聞いてそうでない事がわかった。

 

 カオスアリーナでは、捕らえた対魔忍や米連兵士を使って悪趣味なショーをしているそうなのだが、近ごろの観客はそれに厭き始めているらしい。

 

 具体的に言うと、女性の虜囚をいたぶった後に性的な慰み者にするという伝統パターンが通用しなくなっているそうな。

 

 で、持ち上がったのが多重債務者や男の虜囚を使ってローマ時代の剣闘士を再現しようという企画。

 

 野郎ばかりという事でエロとお色気ではなくブラッディでゴアが売りなのだという。

 

 ブラッディでゴア、ぶっちゃけ得意分野です。

 

 というワケで俺達も採用試験に参加した訳だが、そのテストというのがスネークレディことマダムと闘うというものだった。

 

 上級魔族であるマダムに勝てる奴なんてそうはいないので、どれだけ耐えられるかが審査基準となるのだが、ここで俺はやらかしてしまった。

 

 ほら、愚妹戦で秘剣に開眼したでしょ。

 

 あれが切っ掛けになって、氣の巡りとか技のキレが滅茶苦茶増したのよ。

 

 前に上原燐と模擬戦をしたときは、10秒で完封できたし。

 

 そういう事に加えて1試合報酬100万って魔法の言葉でハイになった事もあってさ、瞬殺でマダムをダルマにしちゃったワケよ。

 

 スタッフ達の悲鳴を聞いた時には、『アカン! 不採用!?』と頭を抱えてしまった。

 

 幸い、マダムがプラナリア並みの再生能力を持っていたお陰で大事には至らなかったけど、そうじゃなかったら危うく金蔓を失うところだった。

 

 テンションが上がるとロクでもない事をやらかす癖は早めに矯正しないとなー。

 

 あ、念のために言っておくが、これって学長やふうまへの裏切りじゃないぞ。

 

 ちゃんと東京キングダム状況視察って銘打って書類上げてるし。

 

 明日からはちゃんと『カオスアリーナ潜入レポート』も追加する予定だ。

 

 あと身バレについても対策はしっかりしている。

 

 ノイ婆ちゃんが太鼓判を押す変装道具『キン肉マン・グレートマスク』を付けているので、こちらの正体が露見する心配はまず無い。

 

 これ買った時に婆ちゃんから『唯一の弱点がマスク狩りデスマッチだから、巻き込まれないように注意しなよ』って言われたけど、そんなマニアックなイベントに出会う事なんてまずないしな。

 

 というワケで、何とか借金返済の目途が付きそうだ。

 

 これから少々大変になるが、パキッと決めてガッツリ稼ごうじゃないか。

 

 

☆月〇日

 

 

 今日は八将の中で意外な動きがあった。

 

 まず紫藤からだが、甚内殿から4歳くらいの男の子を紹介されたのだ。

 

 その子の名前は紫藤蛍丸(ほたるまる)

 

 甚内殿曰く、彼は次期当主なのだという。

 

 長女の凜花殿はどうしたと訊ねると、候補から外したという答えが。

 

 甚内殿が言うにはこうである。

 

 反乱失敗から主流派とふうまの双方に属する形を取っていた紫藤家。

 

 その立場上、長女の凜花殿は主流派の忍の中で育つ事となった。

 

 当時、蛍丸君を授かっておらず後継が彼女一人ということもあって、井河の上層部からしてみれば人質に近い立場だったのだろう。

 

 そんな環境下であっても凜花殿は瞬く間に対魔忍としての才覚を目覚めさせていき、こちらの脱退前には学生でありながら『鬼腕の対魔忍』という異名で次代のエースとして期待される立場となった。

 

 そうして主流派の中で確固たる地位を築きつつあった凜花殿だが、その中で彼女の根幹を揺るがす事件が発生する。

 

 ふうま一党の対魔忍離脱である。

 

 当時、凜花殿は主流派に傾倒していた事から、甚内殿は離脱については何一つ教えていなかった。

 

 仮に彼女の口からふうまの企みが主流派に露見した場合、全面戦争は避けられないと判断したためだ。

 

 結局、改めて彼女にこの話をすることになったのは、移籍から一週間ほど経ってからだった。

 

 当然ながら凜花殿は大激怒。

 

 主流派の中で蔓延していたふうまへのネガキャンも相まって、家を出て主流派として生きていくと縁切り宣言をされてしまったらしい。

 

 その話を聞いた俺が、甚内殿に深い深い土下座をしたのは言うまでもない。

 

 次は心願寺の爺様だが、こっちは日に焼けたヤンチャそうな女の子だった。

 

 彼女の名前は心願寺龍。

 

 楓殿の弟で今は分家を起こしている心願寺帯刀殿の一人娘で、爺様のもう一人の孫娘である。

 

 それで、何故この子を紹介したのかというと、なんと彼女が心願寺の次期当主になるからだと言うではないか。

 

 いやいや、紅姉はどうすんだ?

 

 そうツッコむと爺様は呵々と笑いながら、『あ奴は宗家に嫁ぐから問題ないわ!』などと戯言を言い始めた。

 

 宗家に嫁ぐって、俺の嫁に出すってことかいな。

 

 ……爺様、ついにボケたか。

 

 思わず口から出そうになった言葉を飲み込んだ俺は爺様を説得する事に。

 

 政略結婚なんてノーサンキュー。

 

 こういうのは紅姉本人の気持ちを確認して行うべきで、外堀を埋めてから強要するなんて以ての外。

 

 俺に報告する前に家族会議を開かんかい、等々。

 

 いつの間にか傍に来た龍ちゃんが、『頭領の兄ちゃんって、スゲエ剣術の達人なんだろ。アタイと勝負しよーぜー』と服の裾を引っ張っていたが、構っている余裕はない。

 

 考え付く限りの言葉を並べたものの、暖簾に腕押し・糠に釘。

 

 爺様の頬に張り付いた笑みは一向に消える事は無かった。

 

『本人の意志など聞かんでも分かっておるわ! あ奴はお主に────』 

 

『お爺さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 結局、この話は全身に紅いオーラを纏った紅姉が乱入したことで有耶無耶になってしまったが、爺様は何が言いたかったのだろうか?

 

 ともかく、紅姉にその気がないのなら、この話はボツにする必要があるだろう。

 

 余談だが、置いて行かれた龍ちゃんは迎えが来るまでウチで面倒を見ました。

 

 軽く手合わせしたけど、心願寺の血族だけあって剣の才はかなりの物だった。

 

 真面目に修行したら、アサギとまではいかなくても凜子には届くのではなかろうか。

 

 

☆月▽日

 

 

 ふうま小太郎、現在多忙にございます。

 

 約一年ぶりの繁忙期ですが、懐かしくも大変である。

 

 学生に対魔忍の頭領、さらには土日はカオスアリーナで剣闘士。

 

 アメコミヒーローでもここまで七変化してないのではなかろうか。

 

 まあ、自分が蒔いた種なので文句は言わんけどさ。

 

 この頃、俺を見る骸佐の目もどんどん鋭くなっている。

 

 野郎、『お前、またロクでもない事してるだろ』って圧を掛けてきやがる。

 

 いつからお前の邪眼は人の心胆を看破できるようになったんだ。

 

 というか、兄弟。

 

 俺って一応お前らの頭領なんだから、もう少し信用してくれてもいいと思うんだがね。

 

 え、今までの行いを顧みてみろ?

 

 反論できねーよ、チクショウ……。

 

 ワリと危険な事をしているのは百も承知だが、今の俺に副業を辞めるという選択肢はない。

 

 ホラ、頭領の借金の所為で移籍をダメにしました、なんて格好悪くて言えんでしょ。

 

 なんか見てると、上原学長も割と本気で俺等を自分の下に置こうとしてる気配もあるし。

 

 カーラ女王と話が付いてるなら別にいいんだけど、そうでないなら流石に拙い。

 

 これが原因で揉め事とかになったら目も当てられん。 

 

 そういう事もあって、弱みは極力排除しておきたいのだ。

 

 下部組織にとって、上のゴタゴタに巻き込まれるのが一番キツイんだから。

 

 愚痴はこの辺にして、今日の出来事を書く事にする。

 

 早速でアレなんだが、マダムからクレームが付きました。

 

 どうも、俺の試合が客にウケていないらしい。

 

 今までの戦績を振り返ってみると、開始2秒で首ちょんぱ。

 

 それを6回繰り返しただけ。

 

 瞬殺劇といえば聞こえはいいけど、観客的には見応えないわな、うん。

 

 とはいえ、カオスアリーナの試合は真剣勝負。

 

 命が掛かってるのにショーマンシップなんて発揮してられまへん。

 

 マダムの情報では、俺の固定ファンもそれなりに出てきているらしいので、早々に干される心配は無いようだが。 

 

 なんにせよ、これについても対策を考えねばなるまい。

 

 週二日労働で400万のバイトなんて、探したってあるもんじゃないんだから。

 

 

☆月◇日

 

 

 本日、主流派から合同訓練のお誘いがありました。

 

 アサギが言うには、主流派とふうまの交流と次代を担う若手育成の為に、現役対魔忍による模擬戦をメインとしたイベントを行いたいとの事なんだが……。

 

 正直、こっちとしては賛成しかねるところである。

 

 移籍してもうじき一年が経とうとしているわけだが、ウチと主流派の確執を埋めるにはまだまだ時間が足りていない。

 

 むこうには弾正の起こした反乱で犠牲になった者の遺族がいるだろうし、ウチだって隷属時代の無茶ぶりで命を落とした者も多い。

 

 上層部的には密接な交流があれば助かるけど、下の者達の中には二度と関わりたくないという意見も一定数あるようだ。

 

 というか、この手のイベントに過去の遺恨が絡むとヤバいレベルの事故に発展する可能性もある。

 

 そういうワケなので、今回については時期尚早としてお断りさせていただいた。

 

 アサギもその辺は弁えていたようで割とアッサリ引き下がってくれたのだが、そういう事ならと示された代案がまたアレだった。

 

 今回のイベントを五車学園の学校行事にする代わりに、ふうま頭領がその視察に来ること。

 

 アサギさんや、五車の里が俺等にとって敵地同然ってことを理解してますか?

 

 招待した俺に何かあった場合、戦争待ったなしなんですが……。

 

 聞けば、甲河の方にも同様の要請を出しており、向こうからは色よい返事を貰っているとの事。

 

 どうやって米連に与している奴等に渡りを付けたのかを訊ねれば、CIAが公安に食い込んでいるのなら逆もまた然りという答えが。

 

 マジかよ。

 

 アスカはともかく、あの仮面のマダムがこんな企画に参加するなんて波乱の予感しかしないんだが……。

 

 『Team Ninja』と化した事に加え、ジジイ共がノマドに甲河の情報をリークした件を思えば、彼女達には井河を潰す理由はあっても協力する義理は無いのだ。

 

 イベント中に破壊工作を仕掛けて、五車学園ごと次代を担う生徒を一掃とか普通にやりかねんぞ。

 

 奴等の思惑がどうであれ、甲河が動く以上はこっちも知らぬ存ぜぬというワケにはいかん。

 

 奴等が主流派へなんらかの工作を画策していても、第三勢力である俺達が参加すれば思い止まるかもしれんしな。

 

 しかし、思えば皮肉なこともあったもんだ。

 

 日本の為の退魔と諜報機関として公安主体で統合したはずの対魔忍が、ものの十年足らずで3つに分裂しているんだから。

 

 日本の井河、米連の甲河、ヴラド国のふうま。

 

 企画立案した山本は、はたしてどんな面でこの状況を見ているのかねぇ。

 


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