剣キチIF 感度3000倍の世界をパンツを脱がない流派で生き抜く 作:アキ山
とりあえず今回は『父帰還』までのツナギ回。
小物と言われたパパンでも、忍術はわりと一級。
決アナとRPGだとかなり使用は違うようですが、現状は資料のある決アナ仕様で生きたいと思います。
▼月◎日
先代の歓迎に殺気立つ部下たちにほっこりしているふうま小太郎です。
過日に井河から伝えられた『父、帰る』の知らせ。
その反響はなかなかに凄いモノだった。
今までの経緯を思えばこちらを舐めているにも程がある物言いだったが、なにせ差出人はクズっぷりに定評のある弾正だ。
あのおっさんの奇行を愚痴る二車の小父さんや心願寺の爺様に土下座していた日々を思い返せば、この程度は通常運転と言っていいだろう。
この件を受けて今月二度目の緊急幹部会を開く事となったのだが、八将のみんなは満場一致で俺の事を支持してくれるらしい。
まあ、これで弾正を支持するとか言われたら、グレてノマドに走ってるところだが。
とはいえ、幹部連の支持を集めても肝心の部下が付いてこなければ意味が無い。
このところ帝の件などなどで組織運営がブレてる自覚もある。
中忍・下忍の中には『やっぱりガキがトップだと駄目アルよ』なんて考えてる者もいるはずだ。
というワケで構成員にはアンケートを取る事にした。
なんだかんだ言っても対魔忍は命懸けの家業である。
上と下の信用関係がなければ、組織なんて早晩空中分解してしまうだろう。
それを防ぐ為には部下の不満を吐き出させてやるのが一番だ。
彼等の声を聴いて改善できる場所は努力するし、どうしようもない場合は話しあった上で時に送り出してやることも必要となる。
二度の人生で末端の使いっぱしりを体験している身としては、彼等を軽んじるマネはしたくないのだ。
みんなが俺に付いてきてそろそろ二年が経つ。
今度はどのくらい残ってくれるやら……
▼月〇☆日
あのクソ親父が何らかのアクションを取って来る以上は、こちらも対抗策を用意しておく必要がある。
負け犬のロートルなどと侮っていては足元をすくわれてしまう。
忘れてはならない。
この世界で最も恐れるべきは油断と慢心なのだ。
そんなワケで俺が最初に行ったのは弾正の顏を覚える事だったりする。
というか、あのおっさんと一回も会った事ないんだよなぁ。
目抜けの誹りも宗家の使用人から聞いたし。
時子姉に頼んだ資料で奴の顔を見た感想だが、簡単に言えば小物臭い悪人だった。
なんか中年太りで顔もデカいし、映画とかでボスにあっさり切り捨てられる中間管理職にしか見えん。
そんな感想はさて置くとして、資料に目を通していくうちに厄介な情報が目に飛び込んできた。
それは奴が使う邪眼『傲眼』である。
これを一言で説明するなら邪眼殺し。
額に五つ目を宿し、これに目を合わせた邪眼使いの身体を強制的に支配する事ができるという。
また、眼を合わせずとも傲眼の一つを飛ばして埋め込む事で、対象の心理的弱みを虜にすれば同様に肉体を支配できるのだとか。
額に目玉五つとか、性根だけじゃなくてビジュアル的にも汚ったない化け物じゃないですかヤダー!
あのおっさんと血が繋がってることにいい加減嫌気が差してきたが、個人的感想を言っている場合ではない。
問題は八将を筆頭とするふうま幹部が奴の能力に対してすこぶる相性が悪いという事だ。
極端な話、奴だけ日本に潜り込んで来た場合、骸佐を始めとする幹部を邪眼で操り人形にされる危険性も否めない。
邪眼を潰した俺には弾正の忍術は効かないだろうが、そうなってしまえばふうまは大打撃だ。
奴がこの国の土を踏む前に早急に対抗策を考えねばなるまい。
▼月〇△日
弾正関係でゴタゴタしているが、今日は少し違った事を書こうと思う。
今回取り上げるのは銀零と龍ちゃんの事だ。
ウチの愚妹は以前のようなイタい言動は鳴りを潜めたものの、それに代わってイタズラだのなんだのとヤンチャが目立つようになってきた。
それだけなら年相応と微笑ましく見守っていたのだが、イタズラに邪眼を使うのはいただけない。
あいつの邪眼は『冷眼』と言って、ふうま宗家の記録では視線で射抜いた相手を氷漬けにする強力な代物らしい。
もっとも銀零はまだまだ未熟なので、現状では背筋に寒気がして動きが鈍る程度だが。
効果の程はさて置き、こちらとてふうまを纏める頭領・剣キチ白雲斎である。
未熟な邪眼如きに後れを取る訳にはいかない。
そんなワケでマジックペンや筆を手に襲ってくるおてんば小動物共を、毎日エアプレーンスピンやメキシカンタイフーン甘口バージョンで迎撃しているのだ。
現場を見ていた災禍姉さんの『そうやって構ってやるから懐かれるんですよ』という指摘は無視の方向で。
ともかくだ。
銀零の忍術制御に役立つとはいえ、こうもポンポン邪眼を使われるのはいかがなものか。
万が一訓練をしている者に使おうものなら、大事故に繋がりかねない。
その辺の事はゲンコツと一緒に常々言い聞かせてるのだが、今の悪ガキまっしぐらな愚妹はその程度では効かないだろう。
どうやら、こっちの意味でも邪眼対策が必要らしい。
今度米田のじっちゃんと災禍姉さんも協力してくれるっていうし、今一度邪眼の仕組みを詳しく解析する事にしよう。
▼月〇×日
今日は三日ぶりに行った学校で興味深い事を知った。
昔に失伝してしまった退魔術の一つに『血玉』という技法があるそうだ。
これは自らの血液を霊力で結晶化し、装飾品として身に着ける事で霊力を貯蔵するというモノ。
溜めのいる術を即座に発動させたり霊力切れを起こした際の備えにしたり、あとは複数を並行励起して術の威力を大幅に高めたりと、実に汎用性に優れた技術なんだそうな。
聞けば江戸時代辺りで継承者が途絶えたそうなので、担当していた講師も豆知識的な意味で教えてくれたのだろう。
しかし、こういうモノを知れば試したくなるのが人の性。
近頃は退魔術にも力を入れている事もあり、善は急げとばかりに昼休みを利用して試してみた訳だ。
とはいっても、授業で言っていたのは血を氣で固めるという触りだけ。
『血玉』の具体的なHOW TOについては言及できていなかった。
当然ながら、そんな状態で一発成功するほど技と言うのは甘くない。
針で指を突いては出てきた血に勁を込めるものの、出来るのは明らかに失敗作である赤黒い血の塊ばかり。
感触としては悪くないとは思うのだが、どうもやり方が違うような気がするんだよなぁ。
まあ、こういった過去の技術のサルベージは試行錯誤が付き物だ。
焦らず地道にやっていこう。
▼月〇◇日
えー、昨日の今日でなんだが『血玉』の再現に成功しました。
切っ掛けは米田のじっちゃんと共に行った邪眼の構造解明だった。
実験は俺が災禍姉さんの邪眼を受け、そのデータをじっちゃんが解析するいうモノ。
姉さんの邪眼は『掛かった者の視界と認識を乗っ取る』という効果を持つのだが、掛かりながらも俺はそれを打ち消すべく抵抗を試みるつもりだった。
潰したとはいえ俺も邪眼持ち、万が一『傲眼』が効いてしまった時の備えは必要になる。
話を実験に戻すが、事前に聞いていた通り邪眼の効果が発動した直後から、肉体はこちらの認識から乖離してしまった。
同時に意識も靄が掛かったように鈍化したのだが、思考の方は停止した訳ではなかった。
言葉にすると難しいのだが、例えるなら何かを考えながら歩いている時に『歩く』という部分を感覚ごと奪われたと言えばいいだろうか。
なので当時の俺は肉体制御の認識を災禍姉さんに掌握されても、小賢しく回る脳みそは健在だったワケだ。
さて、ここからがこの実験のミソである。
邪眼の具体的影響を探るべく経絡操作の要領で体内をサーチしてみると、異常はすぐに発見することが出来た。
循環する氣が見つけた異物の在処は脳でいう所の前頭葉の運動を司る部分、そして感覚と肉体操作を担当する前頂葉の一部。
そこに魔力・米連で言うところの対魔粒子が付着していたのだ。
他の邪眼も検証しないとはっきりとした事は言えないが、災禍姉さんのような瞳術系の邪眼は対象と目を合わせる事により、視線によって眼球を介して脳内に対魔粒子を送り込んでいるのではないだろうか。
そうして脳内をハッキングする事で忍術の効果である肉体の支配や洗脳を行う、というのが俺の仮説である。
これに関しては対魔粒子の流れを検証していたじっちゃんも同じ意見だったので、ある程度は信ぴょう性が置けると思っていいだろう。
さて邪眼についてはここまでにして、次は『血玉』について記そう。
これについては全くの偶然による産物だった。
邪眼の仕組みもある程度掴めたので、次のステップとして術を破る為に俺は内勁を巡らせた。
ムラマサの時と同様に氣によって魔力を中和しようと試みたワケだ。
此方の思惑は見事に的中し、ほどなくして肉体の感覚が戻ってきた。
しかし邪眼の効果が切れる瞬間、肉体の主導権に刹那の空白が出来てしまったのだ。
木偶のように身体が崩れ落ちる中、何とかギリギリで受け身は取れたものの、床に手を付いた際に何処かで切ってしまった。
災禍姉さんは『若様、申し訳ありません!』と取り乱していたが、そもそもこちらが言い出した事なので彼女に非は無い。
手の方もかすり傷だったので気にしないように言っていたところ、傷口から漏れた血の雫がカランと床で乾いた音を立てた。
首を傾げながら拾い上げてみると、手の中にあったのは昨日量産した赤黒い出来損ないではなくルビーを思わせる紅玉。
これを見て、俺は漸く昨日の違和感の解を得た。
血玉の正しい精製方法は体外に排出した血に氣を込めるのではなく、体内で十分に氣を込めた状態で血を出す事だったのだ。
こんな偶然でこの事実に気付くのは、いくらなんでも出来すぎのような気がするが、技術というのは得てしてこういうモノなのだろう。
余談だが今回生み出した血玉はじっちゃんにあげた。
術の詳細を聞いたじっちゃんが『なにか上手い使い方があるかもしれん』と言っていたからだ。
じっちゃんなら間違っても悪用なんてしないから問題ないだろう。
なんだったら、静子さんのお守りにしてもいいし。
とりあえず、日記をつけ終えたら今度は学長に報告書を書かねばならん。
めんどいがこれも仕事だ。
▼月〇▽日
昨日作った報告書の件で、案の定上原学長から呼び出しをくらった。
要件は言うまでもなく『血玉』の説明と実践について。
言われるがままに目の前で造ってみれば、盛大な溜息と共に『貴方、生まれる家を間違えたんじゃない?』なんて言われてしまった。
どういう意図かといえば『退魔師の家に生まれていれば稀代の天才として持て囃されたのに』という意味らしい。
いや、今更そんなことを言われても対応に困るのだが……
そもそも退魔師も本業じゃないし。
その後は俺の指導の下、学長も『血玉』の精製に成功したのでお役御免と相成った。
割と簡単にできたと学長は言っていたが、伝承によれば『血玉』は使い捨てアイテムだ。
一々作るのに苦労していたら割に合わんだろう。
本来の要件が終わったので、学長に弾正の件を伝えておいた。
彼女も奴の悪評を聞いていたらしく、名前が出た瞬間に物凄く嫌な顔をしていた。
弾正が彼女に何かするというのは考えすぎかもしれないが、上原家と宮内庁は現状におけるウチのスポンサーだ。
万が一を想定して、念には念を入れておくべきだ。
それから学校を終えた後、俺は家に帰ってアサギに連絡を取った。
理由は勿論、アレすぎる手紙の内容で聞きそびれてしまった『反乱時、弾正の死亡を確認したかどうか』についてだ。
これに関してのアサギは『あの時、確かに弾正を討った』とはっきり答えた。
となれば、考えられるのは二つ。
一つは今回動き出した弾正が偽物、もしくは米連が作り上げたクローンである事。
もう一つは奴は生きており、反乱時に死亡した弾正こそが影武者かクローンという可能性だ。
どちらにしても、カギは弾正が当時から接触していた米連が握っていると考えていいだろう。
こうも奴に振り回されるのは実に業腹なのだが、言ったところで詮無い事だ。
たまには忍らしく奴の背後関係もしっかりと洗う事にしよう。
これは余談だが、アサギ曰く浩介君が俺の弟子になりたいと言ってるらしい。
前回の騒動で忍術には懲りたものの、アサギの役に立ちたいという思いは変わらない。
だったら、忍術無しで活躍している俺の弟子になればいいじゃないという事だそうな。
派閥とか利権とかそういったモノを一切合切無視した意見に開いた口が塞がらない俺。
こっから先の会話はこんな感じだった。
「なんで俺が浩介君に剣術教えにゃならんの?」
「えっと……あの……コウくんも言ってるだけで本気じゃないだろうし、気にしなくていいと思うの」
「前回の事を見るに彼って割と暴走するタイプだろ。じゃなかったら自分の頭領寝取るとかしないって」
「すみません。しっかり釘を刺しておきます」
「つーか、俺が教えたら促成栽培になるから80%で死亡・10%で廃人・9.9%で発狂する事になるけど」
「なによ、それ!?」
「ただし、成功したら1時間で基礎は使えるようになる。ちなみに長期コースだと卒業まで40年は掛かるぞ。もちろん才能が無かったら容赦なく切るけどな」
「……絶対に諦めさせるわ」
言うまでもないが前世では俺は促成栽培コース、名家出身の濤羅兄や豪軍は長期コースでした。
才能がある者でも40年掛かる道のりを15年かそこらで駆け抜けたあの二人が、如何に天才だったかが分かる話である。
◇
みなさん、ごきげんよう。
東京キングダムのスラム地区あらためゾンビパラダイスで、最大級の厄ネタと遭遇しているふうま小太郎です。
あ~とかう~とか呻きながら俺の生肉を狙って押し寄せてくる屍生人の首を刎ね、その眉間に拾ったH&K MARK23・通称ソーコムの45ACP弾を叩き込む。
片手に刀・もう一方に銃とか、どこのスーパーウルトラセクシーヒーローなのか。
俺には『ヒーローメーター』なんて愉快な代物は存在しません。
愚痴はこの辺にしてどうしてこうなったかを説明しよう。
原因を一言で言うと仮面のマダムからの依頼である。
弾正の背後を探るためアメリカ繋がりで甲河に連絡を取ったのだが、奴の後ろにいるのは少々厄介な連中だったらしい。
特務機関『G』
魔界技術を積極的に取り入れてサイボーグや人工魔族なんかを生み出している、米連内でもかなりダーティな組織だ。
甲河が所属するDSOが魔族排斥派ならば、奴等は魔界技術やそれが生み出す利権を目的とした魔族利用派。
分かりやすく言えば同国内でのライバルという事になる。
そんな奴等の内情を探れと頼む以上、こっちだってロハでやってもらう訳にはいかない。
結構むこうには貸しがあった気がするが、いつぞやの『頭領アルハラ事件』を持ち出されては口を噤まざるを得ない。
まあ、あれだ。
上司ってのは部下のケツを拭いてやってナンボである。
この程度でヤイヤイ言うなんて器が小さいマネはするべきではない。
そういう経緯もあり、俺は特務機関『G』の情報を探ってもらう代償として、マダムからのお願い(笑)を受ける事となった。
で、依頼の内容は東京キングダム郊外で『G』が生物兵器を運び込んだとの情報があるので、証拠かあわよくば現物を押さえてほしいというモノ。
てなワケで俺は久々に東京キングダムへお邪魔する事となった。
宮内庁の方から『任務に出んな』という通達があったような気がするが、まあ気のせいだろう。
任務に出ない対魔忍なんて飛べない豚と一緒だし。
マダムからの情報を元に磨きを掛けた圏境を駆使して色々と探っていたところ、スラム地区に足を伸ばした辺りで俺の直感がガンガンと警鐘を鳴らし始めた。
具体的に何が来るのかは分からなかったが危難が近いと判断した俺は、地面に突き立てたムラマサを中心に結界を形成。
それから少しして眼に見えない何かが結界の周りを吹き抜けると、無駄に活気があったスラムはゾンビの巣窟へとビフォーアフターしていた。
おそらくはマダムご依頼の品の仕業だろうが、一つ言わせていただきたい。
こんなB級映画的な展開ありか、と。
その後は念のために持ってきていたガスマスクを被って任務を続行していたのだが、米連の最新型はマジで凄いな。
レンズの下の投影ディスプレイが出てきて、空気清浄機能の残量や周辺の汚染度まで表示されるんだから。
不幸中の幸いは、原因となった恐らくはガス状の生体兵器の持続時間が短い事か。
たった数分で周辺の汚染度が一桁まで落ちてるし。
とはいえ、スラム街が未だ地獄である事には変わりない。
周辺では建物に入って難を免れていた住民たちが次々とゾンビのエサになっているし、何時の間にやらスラムを囲むようにでっかい壁が生えてきてる。
まあ、東京キングダムの特性を考えれば、防護・防疫用の障壁が用意されてもおかしくないけどな。
そんなことを考えながらも、某サバイバルホラーよろしく武器を現地調達して進んでいたのだが、ここで思わぬ人物と遭遇する事になった。
それが現在俺の前に立っているエドウィン・ブラックである。
「ほう。誰かと思えば、ふうまの若頭領ではないか」
「ご無沙汰かな、Mr.ブラック。つーか、ガスマスク付けてんのによくわかるな」
「私は興味を持った人間の気配を忘れない質なのだよ、ダークナイト君」
あらま、そっちもバレバレか。
「で、アンタはどうしてここにいるんだよ。少なくともセレブが足を踏み入れる場所じゃないと思うけどな」
「米連の羽虫共がなにやら楽しそうなことをしていると聞いてな。イングリッドが煩いので護衛を連れてきたのだが……」
「この騒ぎで見事にゾンビになった、と」
「さらには防疫用の障壁も作動しているようだ。マニュアル通りなら、あと二時間もすればあそこからナパーム弾が投下され、この地区はキレイに焼き尽くされる事になる」
世間話をするような口調のブラックに俺は思わず天を仰いだ。
いくらゾンビ映画っぽいシチュエーションだとしても、ここまで同じにしなくてもいいだろうに。
「で、アンタはどうするんだよ?」
「炎で焼き尽される程度、どうという事は無い。しかし、ここは私の街だ。無為に灰に帰すのは見過ごせん」
そう言うとブラックは、懐から取り出した妙にデッカイ化け物銃をこちらに突き付けてきた。
同時に俺も奴の眉間へソーコムをポイントする。
ぶっちゃけ45口径なんて銀玉鉄砲以下だろうが、ポーズと言うのは大切である。
「────だから、邪魔な俺を先に排除する、か?」
こちらの問いかけにブラックは口元を吊り上げると、躊躇なく引き金を引いた。
彼我双方同時に放たれた弾丸はお互いの頬を掠めるように背後へ逸れ、迫り来ていた屍生人の頭蓋を粉砕する。
それが始まりのゴングだった。
生き残り達を食らい尽くしたのか、一斉に群がってくるゾンビの群れ。
ブラックが放つ銃弾が一発に付き3,4体打ち倒す中、奴の背後に回り込んだ俺はソーコムを連打して間合いを確保して踏み込みざまの一閃で5体の首を刎ね飛ばす。
「いいのかね? 私に背中を預けるような真似をして」
轟音じみた銃声と共に楽し気な様子で問いを投げるブラック。
「遊び相手を不意打ちで仕留めるような性格じゃないだろ、アンタは。つーか、そんな化け物銃でギリギリ狙うんじゃねーよ!!」
それに対して俺は崩れ落ちる死体を踏み台に跳躍し、前宙しながら次々とゾンビの頭部に銃弾を浴びせていく。
「とある国教騎士団に所属する吸血鬼が使うモノを再現してみたのだ。なかなかに良い玩具だぞ」
「国教騎士団って、最悪のヴァンパイアって言われてる奴かよ!?」
「あの男はなかなかに面白いぞ、危うく私も首を狩られるところだった。君も一度挑んでみてはどうだ?」
「それも面白───却下でヤンス」
うっかり俺の剣がどれだけ通用するかなんてやる気になったけど、今の立場を考えたらナイワー。
そんな真似したら日英の関係がエライ事になる。
そんな感じで雑談を交えながら暴れまわっていると、数分ほどでこの辺のゾンビは品切れになった。
「さて、小太郎君。提案なのだが、ここは協力しないかね?」
銃口から立ち上る硝煙を吹き消すと、化け物銃を懐に収めながらブラックは意外な申し出をしてきた。
「急な話だな。俺に何をさせようってんだ?」
「なに、大したことではない。この一件の収束を手伝ってもらいたいだけだ。もちろん、この場を火の海にせずにね」
なるほど、ソイツは渡りに船である。
「けどよ、後2時間くらいでナパーム弾が落ちるんだろ。それまでに収束させるのはキツイぞ」
「それに関しては外部に連絡を取れれば何とかする。今は壁からの妨害電波で通信できんが、スラムとの境目にあるビルに行けば携帯が繋がる筈だ」
「まあ、過保護な騎士様やお抱えの魔界医師も動いてるだろうからな。けどこっちだってガキの使いじゃない。ロハじゃ動かないぜ?」
「私の娘を───」
「却下」
「むう、気立てもいいのだが……」
「まずはマトモな常識を頭に叩き込んで来い、話はそれからだ。それで他には?」
「では、ふうま弾正についての情報というのはどうかね」
「相変わらず耳が広いね。そんなことまで知ってんのかよ」
「アメリカも私のホームグランドでね。君に介入しようとしている者がいると小耳に挟んだので、確かめてみたのだよ」
ドヤ顔のブラックに俺は小さく肩をすくめてみせた。
なんか妙な縁が出来てるような気がするなぁ。
厄介なネタにならなければいいけど……
「OKだ。アンタに力を貸そう」
「色よい返事がもらえて何よりだ」
「それで、まずはどうする?」
「時間を確保する為に外部へ連絡を取らねばならん」
「つーことは、あのビルに突撃か」
軽身功で上に行ければ楽なんだが、吸血鬼のブラックに勁を通したらどんな事になるか分からん。
死んだら儲けものだけど、敵対行動だなんて取られたら面倒だ。
「しかし死者の蔓延る街で敵同士が手を組むとは、まるで映画ではないか。帰ったら部下に作らせてみるか」
ふむ、現状を纏めてみよう。
少年忍者が敵対組織のボスである吸血鬼と協力して、ゾンビだらけの街でサバイバル。
なんてことだ、完全にZ級じゃないか。
「作ってもいいけど、ラズベリっても俺の所為にしないでね」
高笑いするブラックに俺はそう呟いた。