剣キチIF 感度3000倍の世界をパンツを脱がない流派で生き抜く   作:アキ山

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 対魔忍四話目でございます。

 今回はヤマ無しオチ無しだったり……早く原作に入らんと……。

 またしても十連やって紅が来なかったのが悔しくて投稿したわけでは断じてない。

 こうなれば新年のイベントに賭けるしか……


日記4冊目

  ▲月〇日(曇り)

 

 

 朝方に夜通しの任務から帰って来たら、銀零が『兄様(あにさま)』と呼んでくれた。

 

 今までは何か用があっても、こっちの服の(すそ)(そで)をクイクイ引っ張って来るだけだったのに、子供の成長は本当に速いものである。

 

 お陰で嬉しさのあまり、抱き上げるだけじゃなく肩車までしてしまったじゃないか。

 

 まあ、あとで時子姉から『女の子に肩車はセクハラです!』と言われたのは地味に堪えたが。

 

 くそぅ……妹に肩車すらできないとは、なんて時代だ!

 

 なんてジョークは置いといて、次に問題となったのは銀零の魔眼が覚醒した事だ。

 

 銀零が未熟な為か効果自体は発動していないようだが、どういう力を秘めていても制御は必ず必要になる。

 

 本人は俺にその為の訓練をつけて欲しかったみたいだけど、悲しいかな俺は未だ『目抜け』の身。

 

 邪眼の制御の仕方など教えようがない。

 

 そういう訳なので、この件は救出時の縁を頼りに災禍姉さんへお願いしておいた。

 

 銀零や、不甲斐ない兄を許しておくれ。

 

 閑話休題。

 

 朝一番から色々とサプライズがあったわけだが、それもあってか今日の銀零は随分と甘えん坊だった。

 

 何処へ行くのにも後ろをついて来て、こちらが暇だと判断すると抱っこやおんぶ、『ギュッとして』などと強請(ねだ)って来る。

 

 遅まきながら人肌が恋しくなったのかな、と要求に全部応えると銀零はニッコリと笑ってくれた。

 

 銀零がこの家に来てから約半年、ようやくこの子の笑顔が見られた。

 

 今まで色々と苦労があったけど、今日の笑顔だけで十二分に報われた気がする

 

 しかし、銀零から『兄様』と呼ばれる度に背中がゾクゾクするのは何故なのか。

 

 この感覚、味わうのは本気で命に危機が迫った時だけと思ったのだが……

 

 銀零の兄様呼びが、アサギの忍法『殺陣華』と同じとか…………そんな事がある訳ないよなぁ。

 

 うん、きっと近頃任務が立て込んでたから疲れてるんだよ。

 

 銀零も一緒に寝たいって言ったし、今日は早めに床に就くことにしよう。

 

 

 ▲月◆▲日(晴れ)

 

 

 何故かはわからないが、三度濤羅(タオロー)兄ィが枕元に現れた。

 

 気にかけてくれるのはありがたいのだが、頻繁に立たれると逆に不吉な感じがする。

 

 今回もありがたいアドバイスを授けに来てくれたようなのだが、物凄く悲痛な表情を浮かべているのが気になった。

 

 『他人の心は掴み辛い物ではあるが、理解しようとする姿勢を失ってはいけない。特に女人の心は傷つきやすい。身内だからと言って常識に阿り、真実から目を逸らせば取り返しの付かない事態に陥る危険性もある。その者を大事に思うなら、常に向き合い心に触れようと努力せよ。己の考えのみを信じて他者の想いを顧みない者には、相応の報いが待っているのだから』

 

 いい話なのは確かなんだが、何ともコメントし辛い教えだった。

 

 要約すると『コミュニケーションは大事だから、おざなりにしないように』という事なのだろう。

 

 ただ、言葉を重ねていくたびに濤羅兄ィの目と表情が物凄い勢いで死んでいくから、見ているこっちはめちゃくちゃ怖い。

 

 フェードアウトする時には『この教えは絶対に護れ! どうなっても知らんぞぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』と魂の叫びをあげてたし。

 

 本当に俺が死んだ後、何があったんだ?

 

 というか、あんだけ必死にアドバイスするなら、もうちょっと具体的に教えてもらいたいものである。

 

 大事な事だからって自分が教材にならなくてもいいじゃないか。

 

 弟弟子としては例を挙げて説明してほしいと思います。

 

 

 ▲月◆〇日(晴れ)

 

 

 こちらで保護していた対魔忍界の核弾頭、クローンアサギことアサ子(仮名)さんの処遇が決定した。

 

 結論から言えば、彼女には別人となってふうまの保護下に入ってもらう事となった。

 

 以前、井河を追い落とす切り札になりうる等々と言ったことがあるが、事が対魔忍全体に波及する事を思えば現在のふうまにはどうにも手に余る案件だ。

 

 さらには真相を知らないままに井河に探りを入れた事で、アサ子さんの存在を知られてしまった危険性もある。

 

 一族郎党の命運を賭けるには、少々分が悪すぎるだろう。

 

 とはいえ、この事件をこちらの胸だけに収めるわけにもいかない。

 

 と言う訳で、本件をふうま八将との会合の理由に使わせてもらったのだ。

 

 未だ二車・紫藤の両家とは接触を許されていないし、その為の監視も付いているようだが、こちらとて忍である。

 

 薬、暗示、もしくは脅迫や金。

 

 老人たちの目として派遣された下忍ごとき、黙らせる手はごまんとある。 

 

 そんな感じでふうま壊滅後第一回目となる宗家と八将の会合が開かれた訳だが、参加者は以下の通りである。

 

 まず宗家からは俺と時子姉、あと災禍姉さん。

 

 心願寺からは爺様、紅姉、槇島あやめ。

 

 二車は頭首である小母さんと骸佐に執事の権左兄ィ。

 

 紫藤からは当主の甚内氏。

 

 各々の挨拶もそこそこに、数年ぶりに集まった面々が和気あいあいと食事を摘まみながら話は進んだ。

 

 時代劇にあるような『蝋燭一本に火を灯した薄暗い部屋で、しかめっ面で顔を突き合わす』なんて雰囲気は微塵もなかったわけだ。

 

 まあ、今回の会合自体がアサ子さんの件をダシにした懇親会みたいなものだったので、そうなるのも当然と言えば当然なのだが。

 

 開始から20分にして、日本酒の一升瓶を空けて見せた爺様や甚内さん。

 

 そのペースの速さにベロベロになる前に議題を片付けねばヤバいと思った俺は、アサ子さんの件について切り出すことにした。

 

 この会合の前にアサ子さんには将来的な希望を聞いておいたのだが、彼女としては一般人として静かに暮らしたいのだと言う。

 

 米田のじっちゃんの検査結果では、クローンである彼女は意図的に成長を促進させられており、現在の彼女は肉体年齢的にはオリジナルより10歳若い18らしい。

 

 アサ子さん曰く物心ついた時にはこの体だったらしく、訳の分からない内に奴隷娼婦として魔界医学での肉体改造に調教を施され、東京キングダムのごく限られた店で客を取らされていたそうだ。

 

 因みに、彼女の記憶ではアサギクローンは6体存在しており、そのいずれも奴隷娼婦として使用されていたのだという。

 

 うん、一言言わせていただきたい。

 

 ノマドの首脳陣は揃いも揃って頭パープリンなのか?

 

 なんで最強の対魔忍のクローン作って、それをみんな奴隷娼婦にしてんだよ。

 

 兵士とか特殊エージェントとか、そういった方面に使用するだろ、普通。

 

 ここ数年で魔界の奴らに接触する機会が増えたけど、奴らの下半身直結思考には閉口する事が多々ある。

 

 オークや淫魔族に限らず、女でも気に入った男に躊躇なく跨るし男の方は言わずもがなだ。

 

 東京キングダムやヨミハラでは、道行く人が路地に引き込まれてあっという間にアヘっているなんて事はザラに起きてる。

 

 俺自身、撤退時の追撃を撒く為に立ち寄った教会でシスターの格好した女魔族に襲われそうになったし。

 

 つーか、なんで一目見ただけでこっちが経験なしだって分かったんだよ!?

 

 まあ、未だ小学生の体躯だからそう思ってもおかしくないけど、『前世でも童貞でしょ!』とかズバリ言い当てるのはおかしいだろ!

 

 しかも思わずツッコんだこっちに返ってきたのが『生まれついてのチ●ポハンター』だからで、人間界に来たのも『チ●ポ狩り』の為だぞ!

 

 あの時は今までとは全然違う理由で身の危険を感じたわ!!

 

 こんな経験をしたお陰で確信したんだが、種族としても上で技術も優れてる魔界の奴らが人間界を征服できないのは、あの脳みそピンク色具合が原因なんだろう。

 

 閑話休題。

 

 さて、アサ子さんの処遇について本人の希望を代弁したわけだが、これについてはすんなりと通った。

 

 というのも前述した通り、この件をふうまとして利用することは出来ないからである。

 

 先立って井河の方に探りをいれてみたのだが、むこうはクローンアサギの事を掴んでおり公安の山本にも報告が行っているらしい。

 

 さらにはアサ子さんの証言にあった他のクローン達は、オリジナルであるアサギの手によって抹殺されたそうだ。

 

 まあ、本件はあくまで井河と山本までで情報を止めているようなので、甲河や他の政府高官に流せばそれなりに効果はあるだろう。

 

 ただ、それに伴う対魔忍の信用失墜を思えば賢い手とは言えない。

 

 ふうまとて一応は対魔忍の端くれ、対魔忍自体がクライアントに必要とされなくなっては路頭に迷うことになる。

 

 内ゲバで全体を吹っ飛ばすなんて馬鹿丸出しでしかないからな。

 

 と言う訳でアサ子さんの処遇についてだが、整形で顔を変えたうえで宗家預かりとする事に相成った。

 

 整形に関してはふうまがアサギクローンである彼女を保護している事実が露見するのを避けるだけでなく、アサギが彼女の暗殺に乗り出すのを防ぐ為である。

 

 その後は異母妹である銀零の事を匂わす程度で、怒涛の飲み会へとなだれ込む事となった。

 

 うわばみのようにガバガバ酒を飲んでは弾正を罵倒しまくる小母さん、据わった目で主流派の脳筋ぶりを愚痴る甚内さん。

 

 爺様にいたっては楓さんの名を呼んでマジ泣きする始末である。

 

 宴もたけなわとなった頃には代表である三人は赤い顔で高イビキをかいており、素面だった俺達が後始末をすることになったのだが、これも仕方がないだろう。

 

 ふうまの反乱から五年余り、風当たりの強い中で俺達の代わりに主流派やら何やらと戦っていたのだ。

 

 しのぶと書いて忍とはいえ、偶にはハメを外さなければやっていられまい。

 

 漸くというべきか、現在では魔界からの侵攻が年々加速度を増している事もあって、老人達の目も徐々にふうまから逸れ始めているのは間違いない。

 

 今回の事に関して、潰した目付役の少なさがそれを表している。

 

 これを機に対魔忍でも有数の大家である二車・紫藤と連携が取れれば、宗家と心願寺でチマチマ進めていたふうま復興の作業も進展することだろう。

 

 後はアサ子さん本人に整形の話をするだけだが、これが何とも気が重い。

 

 こちらの都合で女性の顔に刃物を入れる事を強要するのだから当たり前なのだが、この辺は平穏に生きる為と勘弁していただきたい。

 

 最後の方は何故か俺の嫁というワケの分からない方向に話が飛んだりしたが、初回としては悪くない会合だったと思う。

 

 さあ、明日はアサ子さんに神レベルの土下座というモノを見せねばなるまい。

 

 

 ▲月◆×日(雨)

 

 

 アサ子さんの説得がなんとかなった。

 

 話を切り出した時には悲痛そうな表情を浮かべた彼女だが、現状の危険性や他のクローンの最後を聞くと決心してくれた。

 

 手術については、ふうまの息がかかった病院で米田のじっちゃんの知り合いに渡りを付けてもらって行う予定だ。

 

 なんでも整形外科の権威だそうなので、腕の方は心配しなくていいそうだ。

 

 あと国籍の方は米田のじっちゃんの隠し子という事にして、届け出で取得する方向で行くそうだ。

 

 顔を変えたうえに正式に国籍を取得するなら、そうそうバレる事はないと思うので頑張ってほしいと思う。

 

 さて、アサ子さんの事はこの辺にして現在の戴天流の進捗具合について話そうと思う。

 

 日々修行と鉄火場を潜り抜けているお陰で、腕の方は前世にかなり近づいた。

 

 この調子なら再び秘剣に開眼するのも遠くないだろう。

 

 次に例の概念を斬る件だが、ようやく物になりそうだ。

 

 オーク汁集めのストレス解消で東京キングダムの犯罪組織を潰していた際、結構な数の魔族を狩る機会があったのが功を奏したのだろう。

 

 奴等が魔術や異能をバンバンぶっ放してきたから、概念斬りの練習には打って付けだったのだ。

 

 『意』を介してこちらに向かってくる暴威の根幹を掴み、練り上げた内勁を刃に乗せてその理を断つ。

 

 言葉にすれば簡単だが、これを掴むまで三回は死にかけるハメになった。

 

 決して楽に習得したわけではないのだ。

 

 あとはこの概念斬りを任意で出せるように習熟するだけである。

 

 理論上はあのエドウィン・ブラックの不死も断つ事が可能な技なのだ。

 

 最優先で磨くべきだろう。

 

 さあ、今日も修羅場が俺を待ってるぜ!

 

 

 ▲月◆▽日(くもり)

 

 

 今日は骸佐と一緒にアミダハラに行ってきた。

 

 目的は観光……などではなく、概念斬りの最後の仕上げみたいなものである。

 

 先日、ノイ婆ちゃんに概念斬りが形になったと報告したら『確かめてやるからアミダハラに来い』と呼び出しを食らったのだ。

 

 どうしたものかと考えているところ、先日の会合で引く事になったふうま独自の秘匿回線のテストで骸佐が連絡してきたので、これ幸いと誘ってみた訳だ。

 

 アミダハラ初体験の骸佐はお上りさん丸出しだったのだが、前回の俺も似たようなものなのであえてツッコまなかった。

 

 で、ノイ婆ちゃんのところで概念斬りを披露する事になったのだが、なかなかにスリリングな体験となった。

 

 方法は婆ちゃんが放つ魔術を全て技を使って切り払うこと。

 

 通常、魔術を剣で対処する場合は魔力を帯びた魔剣、もしくは同質の力である対魔粒子が必要となる。

 

 さらに言えば剣で対処できるのは火球のような物理的作用を持つモノだけで、呪詛等々の対処は不可能だという。

 

 つまり、魔剣も無く忍術を使えない俺が婆ちゃんの魔術を斬ることが出来れば、それは概念に刃を通した事の証明になるということだ。

 

 単純明快な試しではあったが、ノイ婆ちゃんは魔術師組合の重鎮であり、アミダハラトップクラスの魔術師である。

 

 それを相手に剣一本で挑むなんて、普通に考えれば自殺行為以外の何物でもない。

 

 当然のごとく骸佐は猛反対したが、俺は自分の意見を押し通した。

 

 『目抜け』の俺がふうまの頭首を張るには忍術に代わる異能が必要になる。

 

 そうでなくとも俺は戴天流の剣士なのだ、自身の剣腕に命を懸けなくてどこにかけるというのか。

 

 と言う訳でチャレンジが始まったのだがマジで肝が冷えた。

 

 自分の3倍以上の火の玉や氷の塊、廃ビルを両断する真空刃やマジの落雷と来て、最後は超重力のブラックホールに即死の呪詛である。

 

 今生きてるのが不思議なくらいの大魔術の連打だったが、そのお陰で概念を捉える心眼というべきものも鍛えられたし、例の秘剣にもまた一歩近づくことが出来た。

 

 因みにこの試し、アミダハラの住人たちから注目を浴びていたらしく、終わった後は大喝采を浴びてしまった。

 

 そんなこんなで無事報告も終わったのだが、最後に何故かノイ婆ちゃんから仮面を渡された。

 

 何でも魔界に伝わる伝説の剣士が着けていた物で、婆ちゃんからの剣豪認定の証だそうな。

 

 『これがあれば魔界の武闘派共は何らかの便宜を図ってくれるじゃろう。もっともこの仮面を身に着けているという事は、我は大剣豪なりと声高に名乗っておるようなモノじゃからのう。腕に覚えのある輩からちょっかいを掛けられるかもしれんがな』

 

 婆ちゃんは呵々と笑っていたが、それが本当ならむしろご褒美です。

 

 魔界の剣豪七番勝負とか胸が熱くなるな!!

 

 そんな素敵アイテムを貰ったのはありがたいのだが、ブツのデザインについては是非とも言いたい事がある。

 

 だって、コレどうみても『ムジュラの仮面』だし。

 

 付けたら呪われないだろうか……

 

 

 ▲月◆◎日(くもり)

 

 

 今日も今日とて任務にござる。

 

 どうせ東京キングダムに行くのなら、と普段素顔を隠すのに使っている物と例のムジュラの仮面を交換したのだが、早速効果が現れた。

 

 街を歩いていると、日本刀を差した武者風の女魔族に絡まれたのだ。

 

 女はアスラ・ヒューリードといい、魔界で武者修行をしている剣客らしい。

 

 曰く『その面を着けているという事は、そうとう腕に覚えがあると見た! さあ! 私と立ち合いなさい!!』

 

 任務も終えた後だし、立ち合えと言われて背を向けたのでは戴天流免許皆伝の名が泣く。

 

 と言う訳で、一勝負死合う事となった。

 

 結果は日記を書いているのでわかると思うが俺の勝ち。

 

 うん、実直でいい太刀筋だったんだけど、遊びがなさ過ぎた。

 

 分類するなら日本の示現流のような一撃必殺の戦場剣術だったんだが、悲しい事にそういう手合いは戴天流のカモだ。

 

 一刀目を外し、返しで跳ね上がった二刀目を波濤任櫂で受け流す。

 

 三手目で刀を持っているのとは逆の手に魔力刃を生み出しての二刀流となったのには驚いたが、振るわれる刃は速さ重さは増しているものの捌けないほどではなかった。

 

 十手ほど斬撃の連打を凌いだ後、本身の一撃を躱すと同時に振り下ろそうとしていた魔力刃へ概念斬りを一閃。

 

 手にあったはずの得物が文字通り消滅したことに驚愕している隙をついて、腹へ胴薙ぎを叩き込んだわけだ。

 

 いやはや、鬼の血を引いてると言っていたが魔族の生命力は大したものである。

 

 腸零れてたのに、普通にしゃべってくるもんなぁ。

 

 再生の呪詛が刻まれているらしい符を当てたらあっという間に治ったし。

 

 いや、これは一撃で胴を両断できなかった俺の未熟を恥じるべきだな。

 

 次はブラック対策も兼ねて、魔族の概念そのものを狙ってみるか。

 

 ともあれ、立ち合いも終了したのでその場を去ろうとしたのだが、アスラとかいう姉ちゃんは『死合いに勝ったのだから、自分のことは奴隷でもなんでも好きにしろ』などと言い始めた。

 

 こちとら一応は対魔忍なので魔族の奴隷とかマジ迷惑なんですが。

 

 いらんと言っても『それでは私の気が済まない』と、何故か一向に退こうとしないアスラ(なにがし)

 

 面倒くさくなった俺は、相手も好きにしろと言っているので後腐れのないように頭をカチ割ろうとした。

 

 すると、何故かギャラリーだったオークから『その娘を殺すなんて勿体ない!!』と某有名RPGの道具屋のようなセリフを掛けられることに。

 

 話を聞いてみると奴はゾクトとかいう奴隷商らしく、俺がいらないならこの女を奴隷としてもらってやるぜ! と提案してきた。

 

 もちろん、人身売買が大嫌いな俺の取る行動は一つしかない。

 

 『どうだ?』とドヤ顔を浮かべた阿呆の首はその表情を浮かべたまま宙を舞い、それを見た事でギャラリーからのブーイングは潮が引く様に消えてなくなった。

 

 周りの反応も静まったところで、俺は圏境を使ってその場を後にした。

 

 アスラ某の件に関しては放置する事となったが、好きにしていいとは向こうの言だ。

 

 なら、生き恥を晒してもらっても問題あるまい。

 

 飄々としながらも武人の心意気は持っている女だったので、次に会ったら雪辱を晴らそうとするだろうが、その時はしっかり止めを刺せばいい。

 

 あれくらいの使い手と斬り合えばこっちだってさらに腕が上がるだろうし、練習相手として勝利と放流を繰り返すのも悪くないかもな。  


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