剣キチIF 感度3000倍の世界をパンツを脱がない流派で生き抜く   作:アキ山

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 お待たせしました、最新話の完成です。

 読者皆様から『本番』と認識されている『やきう』会です。

 無い知恵を絞りましたが、これだけしかネタがありませんでした。

 やはりギャグと言うのは難しい。

 ともあれ、これで弾正の会は終了。

 公式が情報を公開する前に始末を付けれてホッとしてます


日記40冊目

 頭領争奪戦決着から約1時間後。

 

 スポンサーを始めとするゲストが帰り、この球場に残っているのはふうま衆だけとなった。

 

 そう、機は熟したと言う奴だ。

 

 そんなワケで約束していたレクリエーション『ふうま忍軍親善ティー・バッティング大会』の開始である。

 

 土遁衆によって武舞台も解体され、ピッチャーマウンドにはぶっとい鉄の柱とそこに鎖で何重にも縛り付けられた弾正の姿がある。

 

 ちなみにこの鎖を提供してくれたのは二車の幹部である鉄華院カヲルの姐さんだ。

 

 巻き付ける際『自分の罪の重さを思い知るがいい!』とイイ顔で笑う姿は、まさに夜の女王様だった。

 

 もちろん楽しいお祭りに万が一があってはならないので、弾正に対するボディチェックを始め安全点検に抜かりはない。

 

 奴さん、四肢を機械に挿げ替えたり皮膚の内側に薄型の装甲を入れることはできても、内臓や骨格に手を加える根性はなかったようだ。

 

 内蔵火器や妙なギミックは発見されなかった。

 

「き……貴様等、なんのつもりだ!? 俺は頭領だぞ!!」

 

 サイバネ義肢には痛覚神経が通っていなかったようで、試合終了からオッサンはわりと元気にがなっている。

 

 最初は『お前は頭領じゃねーよ、負け犬!』などと構っていたふうま衆達も、一時間もすれば飽きたようで今は完全に無視だ。

 

『待たせたな、野郎共! ようやく準備が整った! 今からお楽しみ企画『ふうま忍軍親善ティー・バッティング大会』をおっ始めるぜ!!』

 

「お、MCやってんの銃兵衛か」

 

「アイツこういう祭り大好きだからな。自分の打席回ってくるまで騒ぐつもりじゃねーか」

 

 最終調整として空いた場所で素振りをしていた俺と骸佐は、テンションの高い幼馴染の声に顔を見合わせた。

 

『さて、最初にルールを説明しておくぜ! 打席は一人ワンスイング、ふり直しはナシ。バットは基本市販のモノを使う。多少の調整はOKだが、明らかにヤバいモノはNGだ。注意点はこの二つだけ、サルでも覚えれる代物だから守ってくれよ!』

 

 ストレス解消も兼ねてるし、あんまり縛りすぎても面白くないだろうとルールは少なくしたんだが……

 

 今日のみんなのテンションを見ていると少々不安に駆られてしまう。

 

 こっちがフォローできる程度で収まったらいいなぁ。

 

『そんじゃあ記念すべき最初のバッターを紹介するぜ! いきなり八将の一画が登場だ! 紫藤家当主・紫藤甚内!!』

 

「応ッ!!」 

 

 威勢のいい声と共に現れた甚内殿を見た時、俺は思わず自分の目を疑ってしまった。

 

 以前はちょっとビール腹の人のいいオジサンだった甚内殿が、上着を脱いだ瞬間に現役ヘビー級ボクサーばりの筋骨隆々なボディを露わにしたのだ。

 

 ズルズルとバットを引きずって、弾正が人柱になったピッチャーマウンドへ進む甚内殿。

 

 つーか、なんであの人メリケンサックなんて付けてるの?

 

「甚内、貴様ぁッ! 頼母と同じく俺を裏切るのか!?」

 

「弾正、貴様の為にどれだけ苦労した事か。この十年間で積もりに積もった恨み、ここで晴してくれる!!」

 

 と鬼も裸足で逃げ出すような形相を浮かべ甚内殿はバットを振り上げ……って、なんで捨てるの?

 

「忍法・殴り紫煙!! 殴り紫煙とは私の怒りと悲しみが籠った必殺の拳! 相手は死ぬ!!」

 

「ぐぼぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 そして深々と弾正の脇腹に突き刺さる甚内殿の右拳と、柱に縛られてるにも拘わらずくの字に折れる弾正の身体。

 

「忍法って、ただ普通に殴っただけじゃねーか!?」

 

「というか、バットを使えぇぇ!!」

 

 俺達のツッコミとゲロを吐く弾正などどこ吹く風と、晴れ晴れとした表情で戻ってくる甚内殿。

 

 つーか、ハンマーじゃなくて拳で埋め込んでたのかよ、丸太。

 

 鴨川会長か、アンタは!

 

 幹部の中でも随一の良識派である甚内殿がはっちゃけるとは、予想外にも程がある。

 

『早速のハプニング! 最高幹部がいの一番にルールを破っちまった!! しかぁし! お祭りだから気にせず次に行くぜ!!』

 

「いや、気にしろよ。MCって運営側だろうに」

 

「深く考えるな、骸佐。あいつは基本ノリで生きてる男だ」

 

『二番手はふうま衆ぶっちぎりの最年長! みんなのおばあちゃん、八百比丘尼だ!』

 

「女性に対して歳のことを口にするなんて……あの小僧はあとで半魚人の刑にしましょう」

 

 指名をうけて、物騒な言葉と共におばば様が一塁側のベンチから現れる。

 

 銃兵衛のバカに関してはお祭りという事で大目に見てあげてください。

 

「若様に骸佐様、お先に失礼いたしますね」 

 

 打席に入る前に此方へ来たおばば様は優雅な所作で俺に頭を下げる。

 

 礼を尽くしてくれるのはありがたいけれど、ちょっと待ってみようか。

 

「おばば様、そのバットは何なん?」

 

 彼女の手にあるバットはなんというか……異様の一言だった。

 

 グリップ以外の側面がフジツボや鮫と思われる鋭い歯でびっしりと覆われ、さらに先端にはカジキマグロの頭が装着されている。

 

 もうバットというより、ヤヴぁい邪神を呼び出す為の儀式道具みたいになってるんですが。

 

「───デコレーションです」 

 

「「えぇ……」」

 

 俺の問いをバッサリと切り捨てて打席に入るおばば様。

 

 普段から錫杖を使ってるからバットの扱いもイケるかと思いきや───

 

「このロクデナシがぁ! 死ねやぁぁぁっ!!」

 

「ぎゃあああああああっ!?」

 

「うわあああああああっ!? おばば様が弾正をカジキマグロで刺したぞ!!」

 

「しかも一回、あの呪われそうなバットで顔面フルスイングした後でだ!!」

 

「放しなさい! プッシュバントです、プッシュバント!!」

 

「そんな物騒なプッシュバントがありますかっ!? 退場、退場!!」

 

 てな感じで惨劇を引き起こすこととなった。

 

 二打席目にして刃傷沙汰とは、みんなエンジンフルスロットルすぎである。

 

 カジキマグロの角が心臓モロだったので念のため確認してみると、やはり弾正は生きていた。

 

 血飛沫は残っているものの、傷一つないオマケ付きでだ。

 

「ぐうぅ……どういう事だ、目抜けぇ……。何故、俺に傷一つ無い?」

 

 さすがに致命の痛みと死を体験しているせいか、奴に先ほどまでの元気はない。

 

「その答えはコイツさ」

 

 俺は仕合後に返してもらった例の羊皮紙を弾正の前に見せつける。

 

「なんだ、その薄汚い紙は?」

 

「俺との会合の際にお前が署名した書類の正体だよ。コイツはアミダハラにすむノイ・イーズレーンお手製の魔術が仕込まれていてな、俺との勝負に負けるとお前にある呪いが掛かる様になっている」

 

「呪いだと……!?」

 

「ああ。お前が致命傷を受けると、クローン達が肩代わりをして死んでいくって代物だ」

 

 俺の言葉に弾正の顏から色が消えた。

 

 魔術界では他殺や事故に備えてスペアボディや自分の複製を制作するのは、手垢でベタベタになるほどポピュラーな手段らしい。

 

 当然それに対するカウンターも山のように開発されており、この羊皮紙に刻まれた魔術式もその一つというワケだ。

 

「ふぅん……クローンは百体もいるのか。随分と貯め込んだようだが、ここで全部使い切る事になるな。───オッサンも含めて」 

 

 ニッコリと笑いかけてやると、発作でも起きたかのように弾正は体を震わせた。

 

 手足が無いのによくやるわ。

 

 これで奴と話す事もなくなった。

 

 あとはみんなのストレスを昇華する生贄となってもらうだけだ。

 

 ようやくデカいヤマが解決したことで、我知らず安堵の息が漏れる。

 

 だがしかし、俺はこの時重大な事を見落としていた。

 

 今までの真面目な態度によって、すっかり忘れてしまっていたのだ。

 

 ウチの面々は一皮剥けばヒャッハー上等集団である事を。

 

 そして他の勢力とは違って、テンションが上がると馬鹿+バカでも馬鹿×バカでもなく、馬鹿2乗となることを。

 

 さて、ここからはダイジェストで行かせてもらおう。

 

 人数が多いのもそうだが、各人のやらかしがアレ過ぎて思い出すと頭痛がするのだ。

 

 

 

 

(例1)

 

「ガハハハハハハハッ!! ワシの特製バットをくらえぇぇぇぇい!!」

 

「ぶげぇああっ!?」

 

『二車家屈指のスラッガー、矢車弥右衛門の特大アーチ!! 弾正の首がライトスタンドに突き刺さったぁ!!』

 

「それ、ただの丸太じゃねーか!?」

 

「普通バットを使えって言ったろうが!!」

 

 

(例2)

 

「さあ、無様な悲鳴を上げなさい! 天国の先々代に聞こえるように!!」

 

「ぎゃあああああああっ!?」

 

「楽尚之助、両手に持った短めのバットで乱打! 乱打!! 乱打ぁっ!!! 弾正の顏が見る見るうちに変形していくぅ!!」

 

「なんか太鼓の達人みたいだな」

 

「フルボッコだドン!じゃねーよ。一人一振りだっつーの! なにしてんだ、尚之助兄さん!?」

 

 

(例3)

 

「見てろよ、静子! これが俺のラブ・アーチだぁ!!」

 

「ひげぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

『本日二度目のホームラン! 結婚が控えている権左の兄貴、弾正の首をバックスクリーンへとぶち込んだぁぁぁ!!』

 

「ラブ・アーチにしては物騒すぎる。アレ土遁でコンクリの塊付けてメイスにしてんのか?」

 

「だからバットを魔改造すんな! あと静子さんは人間の首をスタンドに放り込んでも喜ばねーから!!」

 

 

(例4)

 

「ゆくぞ! 心願寺の新奥義、ヴァイス・フリューゲル!!」

 

「ヤメッ……あぎゃあああああああああっ!?」

 

『心願寺の爺さん、二刀流のバットに風を宿して弾正を斬り刻んでいるぅ!!』

 

「忍法使ってソシャゲーの必殺技を再現すんな!!」

 

「一部の女性陣からブーイングが凄いんだが、どうなんてんだコレ?」

 

 

(例5)

 

「行きますよ、タイガぁぁぁぁぁッショットォォォォッ!!!」

 

「ひぎゃああああああああっ!?」

 

『ふうま災禍、掟破りの金的ぃ!! 鋼の足が深々と弾正の股間に突き刺さったぁ!!』

 

「エグい……。あれって骨盤まで逝ってるだろ」

 

「いや反則以前の問題だから、コレ。つーか災禍姉さん、やっぱり言い寄られた事を根に持ってたのか……」

 

 

(例6)

 

『おおっと! 当代三郎がバットを振る前に、鬼蜘蛛が弾正を喰っちまった!! いくらなんでもソレはマズいだろ!?』

 

「大五郎、お腹壊しちゃうからぺっ! ペッしなさい」

 

「カーーーーーーーッ………ぺぇっ!!」

 

「……おい、今タンと一緒に吐き出したぞ、あのバケモノ」

 

「後ろ足で砂を掛けてるし……何やったら大五郎にあそこまで嫌われるんだ?」 

 

 

(例7)

 

「我等、ふうま童帝隊!」

 

「俺達に純潔を強要しておきながら、自分は妾ハーレムを作った弾正!」

 

「その恨み、今ここで晴らす!!」

 

「ぎぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

『おーっと! 謎の三人組、弾正の身体へ次々とバットと釘で藁人形を打ち付けていく!!』

 

「なに、あの貞操帯付けた変な集団?」

 

「下忍の一団だったはずだぞ。弾正と同じ世代で、性欲を我慢する事で忍術を高めるとかなんとか……」

 

「まって、超まって。二回ほどウチの構成員全員と面談してるけど、あんな濃いヤツ等知らないんですけど」

 

「さすがに頭領の前で貞操帯は見せんだろ」

 

「しかし、あの年まで童貞とは……。あとで風俗代でも出してやるか」

 

「いや、その前に解禁宣言してやれよ」

 

 

(例8)

 

「ふうま同志の会、行くわよ!」

 

「若様に悪影響を及ぼす老害に死を!!」

 

「ふがぁっ?!」

 

『月影・桔梗・左近のくノ一三人組、手にしたサイリウムを弾正の鼻と口に突っ込んだぞぉ!!』

 

「爆散ッッ!!」

 

「ついに火薬まで使い始めたか……」

 

「あんな殺意に塗れた邪悪な『キラッ☆』、初めて見たわ」

 

 

(例9)

 

「弾正死すべし!」

 

「「「「ビッグ・ボンバー!!」」」」

 

「ぐぎゃああああああああっ!?」

 

『弥太、篝火、岩丸、右近の中忍4人組ぃ! なんと弾正にむけて忍術で作った大砲を発射ぁぁぁぁっ!!』

 

「おいぃぃぃぃっ! なにやってんだ、アイツ等ぁぁぁっ!?」

 

「しっかりコスプレまでしやがって! つーか、ジャッカー電撃隊なんて今どき誰も知らねーよ!!」

 

 

(例10)

 

「弾正ぉぉぉぉっ! よくも私や綾女をぉぉぉっ!! 死ね死ね死ねぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「ぐわああああああああああっ!?」

 

『二車の奥方、隠し持っていた短刀で弾正の腹をめった刺しぃぃぃっ! これはいいのかぁ!?』

 

「いいワケねーんだけど、これは止められないよなぁ……」

 

「お袋、例の件の他にお前の母親の扱いにもキレてたのか……」

 

 

(例11)

 

「おぼぼぼぼぼぼぼぼぉぉぉぉっ!?」

 

「小太郎! 空からレーザーがッッ!?」

 

「何事ぉぉっ!?」

 

『今の一撃はふうま宗家の時子からだぁ! 運営に送られたメッセージだと「バットを振る力は無いので、米連の攻撃衛星パクって【サテライト・レーザーの極み】で代行しました」とのこと! さすがは宗家、スケールがデカぁぁぁい!!』

 

「何てこと仕出かしやがる、あのタイムマン!?」

 

『それと若様に伝言だ! 「尻尾を掴まれるようなドジはしてないから心配ご無用」だってよ!!』

 

「本当かよ……」

 

 

(例12)

 

『さて残り人数も少なくなってきたが、ここで宗家執事の登場だ! 【ふうまの狂犬】ふうま天音!!』

 

「ふうまの狂犬って……あ、納得したわ」

 

「だぁぁぁんじょぉぉぉぉぉッッ!! ふうまの名を貶めた罪、その身にしかと刻み込めェェェェッ!!!」

 

「あばっ!? へべっ!? うぼっ!? ぶべらっ!?」

 

「バットをヌンチャクみたいにつかってボコボコに……フォローできねえよ、天音姉ちゃん」

 

 

 

 

 とまあカオス極まりない状況を経て、ようやく俺と骸佐の出番がやって来た。

 

「さてと兄弟、用意はいいな?」 

 

「応よ」

 

 夜叉髑髏を纏った骸佐と俺は弾正が立つピッチャーマウンドへと足を進める。

 

 俺達の手にはあの日、弾正の墓を壊すのに使ったスレッジハンマーが握られている

 

 羊皮紙の上で変動していた奴のクローンはさっき打ち止めになった。

 

 つまり、残る『ふうま弾正』はヤツ一人というワケだ。

 

 思えばこのオッサンには心底苦労させられた。

 

 生まれた時からのネグレクトに加え、反乱のツケを全て俺等に押し付けて自分はアメリカでほっかむり。

 

 ようやく独立したかと思ったら、今度は頭領の正当性を謳って簒奪騒ぎときた。

 

 さっきの闘いで少しは返したが、奴に掛けられた迷惑を思えばまだまだ足りない。

 

「くだらない事考えてんじゃねぇよ。墓壊した時と違って、今回は本物をブン殴れるんだ。一切合切借りを返してスッキリしようぜ」

 

「そうだな。そんじゃ俺は胴体を狙うから、お前が顔面な」

 

「了解だ、頭領殿」

 

 そういって左拳を軽く合わせると、俺達は左右に分かれて弾正の前に立つ。

 

『波乱ずくめの親睦会! トリを務めるのはガキの頃はヘタレで泣き虫だった二車骸佐!! そして忍者のクセに銀幕デビューとか、どう考えても頭がおかしい我等が頭領、ふうま小太郎だぁ!!』

 

「……あとで銃兵衛の奴は殴ろう」

 

「ああ」

 

 テンションが上がりすぎてダメな方向に行ってしまった幼馴染にクロスボンバーを決める事を誓って、俺達はバットを構えた。

 

「や…やめてくれ……助けてくれ……」 

 

「心配すんな、これが最期だ」

 

「もうお前さんを肩代わりする奴はいない。安心してあの世に逝け」

 

 手向けの言葉と共に俺達は同時にバットを振った。

 

 結果?

 

 ゴア表現なので自主規制させてもらいます。

 

 一つ言える事は、イベントの締めくくりに相応しい一打だったという事だ。

 

 


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