剣キチIF 感度3000倍の世界をパンツを脱がない流派で生き抜く 作:アキ山
緊急事態宣言の収束して色々とあわただしい中、夏も目前となってますがコロナだけでなく体調を崩さぬよう皆様もお気を付けください。
対魔忍RPGですが、ライブラリーに続いてオーガ奴隷がまさかのプレイアブル化。
これは決戦アリーナのようにブッさんも仲間になる可能性が微レ存か!?
女ばかりの世界で一際男が映えるのが対魔忍の華。
期待して待っていたいと思います。
◎月☆▼日
勉強、仕事にコラボ……じゃない。
例のアイドルイベントの調整と今日は忙しい日だった。
今日から再度手を付け始めたけど、神田旅団の一件があったから、正直すーぱーそに子のことなんて忘却の彼方でした。
宮内庁の広報担当が半ギレで電話してこなかったら、準備ゼロで当日を迎えるとこだった。
ちなみに今回のウチの役割は会場の警備や雑踏整理、そしてそに子嬢の護衛とライブショーの出演である。
…………一か所おかしいって? 皆まで言うな、わかってるから。
担当との打ち合わせの時に聞いたんだが、出演に関しては先方の出した条件らしいのだ。
おっと、勘違いしないでくれ。
例のカオスアリーナでのヤンチャがバレたワケじゃない。
むこうさん曰く、今回のショーで本物の対魔忍と直に触れ合う事でそに子嬢の芸の幅を広げたいのだとか。
言わんとする事はよくわかるのだが、大前提が致命的におかしい。
ウチは汚れ仕事もこなす裏の組織であって、警察とか消防とかの正義のミカタ的な存在じゃないはずなんだが……
というか、下手に女の子がウチの業界に関わると最悪『いつものアレ』コースですわよ?
個人的には対魔忍という存在から手を引いた方がいいとアドバイスしたかったが、立場上その言葉を吐くのは憚られた。
こうなったら、これっきりでバッサリ縁が切れるように立ち回るしかない。
アイドルと裏の世界って、関わると変な化学反応起こしてシャレにならん悲劇を引き起こしそうだしさ……
◎月☆◆日
朗報である。
この前拾った魔剣サハール・スレイヴと俺との相性が最悪という事が判明した。
何故それが朗報なのか、それを今から説明しよう。
事の起こりはもう習慣となってしまった週一のアミダハラ修行。
美術品よろしく部屋に飾っていた駄剣から『暇だから外へ連れて行け!』とクレームが来たので、調査と点検も兼ねてノイ婆ちゃんの魔法堂へと持っていった事だった。
サハール・スレイヴは本人の言う通り魔界では有名だったようで、その名を聞いたノイ婆ちゃんは糸みたいな目を丸くしていた。
でもってノイ婆ちゃんに精査してもらったところ、呪いやら何やらといった物騒なモノはなし。
俺が使用しても問題ないというお墨付きが出た。
某全裸誘発刀の件もあったので持って帰ったモノの警戒はしていたのだが、これで一安心である。
そこから流れで一度使ってみようという話となり、どうせならと婆ちゃんが呼び寄せたのが数年ぶりの御無沙汰となる鋼鉄の魔女アンネローゼだった。
向こうも伝説の魔剣が相手ならとノリノリだったので、こっちも遠慮なく手合わせしてもらう事になった。
悪を食らうという魔刀・金剛夜叉を構えるアンネローゼを前に、こちらも抜身のサハール・スレイヴを手に調息したのだが、ここで思わぬ事実が判明した。
なんと手の中にある駄剣は内勁の通りが滅茶苦茶悪かったのである。
考えれば当然の話だ。
邪眼の時にも語ったが氣と魔力は水と油以上に相性がよろしくない。
ムラマサを買った時は内勁の出力を上げて押し切ったが、今回の相手は生粋の魔界産でしかも屈指の名剣ときた。
込められた魔力が段違いだった所為で全力で内勁も込めてもどうにもならんかった。
そんな事情もあって、俺の氣とサハール・スレイヴ内に宿っていた魔力が相殺し合った結果、なんとひのきの棒以下のナマクラに化けてしまったのだ。
普通なら『こんなナマクラ使ってられるか!? 俺はムラマサを選ぶぜ!!』となるのだろうが、当方はそんじょそこらの剣キチではない。
頭蓋の中をクルクルと回る梅干し大の脳みそがはじき出した答えは『メッチャ丈夫な練習刀キター!!』であった。
今は豆腐すら刃が通らないウ●コ剣だが、これで何かが斬れるようになれば即ちそれは俺の氣が更なる進化を遂げた証。
言わばこの剣は内勁強化ギプスのようなモノなのだ。
秘剣習得以来の剣腕上達案件にフィーバー状態になった俺は、秘剣以外の全ての技を連環套路でこれでもかと繰り出した。
アンネローゼもアミダハラ屈指の剣豪の名に恥じずにしっかり切り結んでくれたものだから、更にテンションが上がった事でブラック戦以来になる分身殺法『四凶貫光迅雷』を解放。
その結果、受け損ねた刺突がアンネローゼの胸を直撃し胸骨をヘシ折ってしまったワケだ。
いくら切れ味ゼロといっても持っているのは鉄の塊、直撃したら魔族でも骨くらいは折れる。
というか本当は寸止めするつもりだったけど内勁全開にしていたので加減を間違てもうたわ。
ノイ婆ちゃんの治療を受けている彼女に頭を下げると『剣客同士が刃を合わせたんだからこの位の怪我は当たり前。その剣じゃなかったら心臓串刺しだったんだから、それを思えばかすり傷よ』と笑って許してくれた。
代わりにミチコとかいう使い魔の姉ちゃんには滅茶苦茶怒られたけどな。
これで終わったらいい話で済んだのだが、ここで新たな問題が浮上した。
今回の一件でサハール・スレイヴが『これほどの使い手と巡り合えたのに露ほどの力も振るえんとは……』とガチヘコみしたのである。
奴曰く自分を十全に振るえる剣客を探して長い時を旅してきたそうなので、ようやく見つけた候補者と相性最悪という事実は余程堪えたのだろう。
ブツブツと漏れる独り言を聞いていると『こんな生き恥を晒すなら』と俺の元を去ろうとしていたようだが、そうは問屋が卸さない。
お前のような極上のトレーニング機器を手放すハズがないだろう。
なので『俺は聖魔の理を超えてこの世界を断つ剣腕を手に入れる。その時、お前はただ指を咥えて見ているだけか。それとも俺と共に世界へ刃を通すか。どちらか選ぶがいい』と煽ってやったのだ。
ぶっちゃけ自分でも大風呂敷だと思ったが奴の方はそう感じなかったようで、『そんなもの、貴方と共に極みに至るに決まっている!』という答えが返ってきた。
こんな口車にホイホイ乗って来るとは、最初にあった時から分かっていたがチョロい奴である。
負荷の塊なお前で世界を斬れるなら、ムラマサでもその辺の数打ちの刀でも斬れるという事なんだがな。
とはいえ、本当に内勁養成ギプスとするのも芸がない。
コイツを使って内家剣士とは別の境地を目指すのも面白いかもしれん。
人と魔、相反する力を束ね合わせて更なる高みへと至る。
よく考えたら、これって幻庵の爺様が紅姉に言っていた『人魔合一』という奴ではないか。
紅姉も未だ到達していないようだし、俺が一足先にその境地へと辿り着くのも一興か。
新たな目標も定まった事だし、明日からは鍛錬の時間を伸ばす事にしよう。
◎月☆◆日
今日も鍛錬に勤しむふうま小太郎です。
前回のアミダハラ訪問から5日、四六時中腰に差し暇を見ては魔剣をブンブカ振り回していたお蔭で、奴への内勁の通し方が少しだけ掴めてきた。
要は奴から放たれる魔力を見の内に取り寄せて経絡を循環させる事で浄化、そこから内勁へと昇華させる過程で氣と練り合わせ、刀身へと伝わらせればいいのだ。
こうすれば元より奴から出た物を混ぜているので拒否反応も抑えられ、以前よりも氣が通りやすくなるというワケだ。
このお蔭で今は錆びた包丁レベルまで切れ味も回復、試し切り用の巻き藁を断った時はサハール・スレイヴは泣いて喜んでいた。
とはいえ魔界産である奴は素材レベルで魔力を生成する機能を備えているようで、その所為で内勁が減衰してしまう事についての解決策は見いだせていない。
その辺は氣脈を鍛えて内勁の出力で押し通すか、もしくはなかなか進まない『人魔合一』で対処する事になるだろう。
『人魔合一』で思い出したが、この前幻庵の爺様にこれについて問いただしてみたのだ。
しかし帰ってきた返答は爺様も分からないというものだった。
爺様が紅姉にこの言葉を言い聞かせていたのは通常の対魔忍に比べてより『魔』に近い立ち位置である彼女が、将来的に巨大な力を手に入れても人の心を忘れないようにという戒めとしてだそうな。
氣と魔力を両立させる云々といった技術的なモノを期待していた身としては肩透かしだが、紅姉の今後に役立つと言うのなら大いに結構だ。
技法である『人魔合一』に関してはこの手で確立させる事にしよう。
★月◆日
実は近頃レトロゲーなるものに手を出している。
切っ掛けは遊びに来ていた紫水ちゃんから『クリアできないからやってくれ』と頼まれた事だ。
ちなみにソフトの名前は『NINJA GAIDEN』という。
かなり前に出たゲームで、リュウという忍者を操作して敵をバッサバッサと薙ぎ倒していくアクションゲームである。
忍者がニンジャのゲームをするのはいかがなモノかと思ったのだが、いざプレイしてみるとなかなかに面白い。
つーか、敵を斬ると血飛沫とかバンバカ出るんですけど。
これって小学生がやってはダメな代物ではなかろうか。
残っていた攻略サイトを見ながら進めていて思ったのだが、このゲームの動きって軽身功とか使ったら実際に出来そうな気がする。
さすがにあそこまで武器を使い分けるのはしんどいけど、ネタとして絶技を再現するのはアリかもしれん。
さしあたっては『人魔合一』の息抜きがてらにヌンチャクとトンファーの練習から始めてみるか。
★月○日
五車の里の件でアサギを庇った事について、二車の小母さんから説教を食らいました。
言われてみると確かにそうだ。
思い返せば組織間の関係保持とはいえ、向こうから何か頼まれるのが当たり前的な感覚が俺にもあった。
アサギの件にしても対魔忍の評価が掛かっているとはいえ、俺達の信用が下がるリスクを負ってまで隠蔽する事柄では無いのだ。
物心ついた頃から延々と使われ続けたから、そういった認識が抜けなかったのかなぁ……
頭領として、これは猛省しなければいかん。
今までは骸佐や天音姉ちゃんを補佐に付けて井河と話をしていたが、こう言った事が消えるまでは幻庵の爺様や甚内殿などの認識に汚染されていない人間にも立ち会ってもらう事にしよう。
あとは彼等を前にしても変だと思ったらツッコんでくれるようにしておかんとな。
なに、奴等の目の前で叱られたとしても下がるのは俺の評判だけだ。
組織の正しい運営に比べたら軽い軽い!
★月▼日
ついにやってきたすーぱーそに子ショー。
個人的には正規の忍務よりも厄ネタなんだが、しがない宮勤めとしてはお上には逆らえんのだ。
そんなワケで会場の警備は骸佐に任せ、俺はザンギャックとかいう敵役として舞台に立つことに。
まあ衣装が着ぐるみなので身バレしないのはいいのだが、打ち合わせで先方が言っていた対魔忍と触れ合う云々の白羽の矢が俺に立つとは思わんかった。
とはいえこれでもエンターテイナーの端くれ、任された役割は熟さねばなるまい。
事前に読んだ台本だと対魔忍そに子は歌で敵と相対するらしい。
それを見た時は破壊音波でブチコロスのかと思ったが、それは勘違いで正確には歌の素晴らしさで改心させるのだという。
なんとも都合のいい能力だが、本業がアイドル歌手である彼女のイメージを崩さない為の処置なのだろう。
……対魔忍に関わってる時点でアウトなどとは断じて思ってないですよ、ハイ。
俺がそんな風に気を揉む中、幕が上がったステージは順調に進行していった。
そに子嬢もノリノリだし、サクラと護衛の最終ラインとして参加していた銀零や龍ちゃんも楽しそうだった。
だがしかし、こういった任務は無事に終わらない物である。
今回もご多分に漏れず、アクシデントに見舞われる事になった。
具体的に言うと会場となった遊園地のマスコットキャラであるクマ達が、ステージのそに子嬢に襲い掛かってきたのである。
観客やそに子嬢を避難させながら迎撃に当たる俺達。
プロデューサーがクレームを言っていたがそんなのは知った事ではない。
こうなった時点でステージはご破算、ならば俺達が最優先するのは一般人の安全だ。
とはいえ今の俺は悪党ザンギャック、着ぐるみな上に丸腰である。
白打が不得手というワケじゃないが、外の全自動機械なクマたちを倒すのは少々しんどい。
かと言ってあの数を電磁発勁で倒していては俺の身が保たん。
こういう時に限って鹿之助君が非番なんだから、不運というのは重なるモノだ。
得物を取りに行く時間も無い中、俺の目に留まったのがセットとして飾られていたヌンチャクだった。
レプリカではなく鋼鉄製の実戦使用な代物をチョイと拝借し、俺は外で暴れるクマちゃん迎撃の最前線へ飛び込んだ。
前世でもそれなりに器械武術を修めていたことに加えて、例の絶技を再現する遊びにハマっていた事もあって俺の振るうヌンチャクは冴えに冴える。
形だけとはいえヌンチャクやヴィゴリアンフレイルの絶技である『叢雲(偽)』も成功し、最後の巨大クマロボも骸佐と俺の連携でスクラップへと還った。
ショー自体は残念な結果に終わったが、一般人に怪我人はなく施設の損傷は最小限。
さらには犯人も捕まえる事が出来たと、俺達のお仕事としては最上の結果となった。
因みに今回の下手人に関してだが、どこぞの組織の手のモノかと思われていたその男は予想に反してまったくの一般人だった。
テンプレアイドルオタクなその兄やんはそに子嬢の大ファンだそうな。
それで今回の騒動を引き起こした動機だが、そに子嬢が対魔忍を演じるのがどーしても我慢ならなかったらしい。
曰く『僕のそに子ちゃんが対魔忍なんて公営風俗嬢になるなど認められるかぁぁぁぁッ!!』とのこと。
トンデモナイ言われようだが、東京キングダムの風俗店のHPを開かれて目元を手で隠した女対魔忍の姿を見せられては、悲しい事にぐうの字も出せなかった。
理由はどうあれバッチリ犯罪なので下手人はタイーホとなったのだが、今回のような悪名を灌ぐ為にも魔界都市3つの風俗店をガサ入れしないといかんのではなかろうか。
…………今度上原学長に相談しよっと。
★月●日
だいぶ間が開いたものの、さくらから五車の里救援に関して感謝の意があった。
礼の文言に関しては定型文そのまんまだったのだが、それよりも目を引いたのは参謀として付いていたのが八津愛子(仮)ではなく、高坂静流だった事だろう。
気になったので聞いてみると、今回の件でさくらの方も思うところがあったようで井河衆のアサギ脱却を図るつもりらしい。
で、その第一歩が熱烈なアサギシンパだった八津を上層部から排除する事というワケだ。
まあ八津に関しては名無しの権兵衛になった時点で上層部との関わりは切れていたそうなのだが、その割に虎視眈々と復帰を狙っていたそうなので、ここでバッサリと芽を摘んだ形になる。
後釜である高坂に関しては諜報畑の人間である事から情報の重要性をしっかり把握しており、アサギの年代から蔓延っていた戦闘力偏重主義に異を唱えている変わり種とのこと。
それとあの超ド級の蔑称である『井河【アへ顔】アサギ』の発案者は彼女なんだとか。
アサギシンパに知れたらガチで命を狙われるだろう代物なのに、なんとも肝の据わった女である。
そんな内部改革の事を俺に漏らしていいのかと懸念を露わにすると、今回の事で信用失墜のリスクを背負ってまで自分達を庇ってくれた礼と、今後はアサギを始めとする主流派の暴走で迷惑を掛けないという意思表示だという答えが返ってきた。
高坂を補佐に据えてからさくらも相当耳に痛いことを言われたようで、井河衆の中に蔓延している『ふうまが自分達の下』という認識が大問題だと熱弁していた。
何だかんだ言ってもアサギやさくらもその認識から完全に抜け出ていなかったようで、高坂曰く『ゆきかぜ拉致みたいな身内の失態のフォローを他の組織に頼むなんて普通ならあり得ない』だそうだ。
まあ、これに関しては安請け合いした俺も悪いと釘を刺されてしまった。
あの時点で『自分のケツくらい自分で拭け』と突っぱねていれば、少なくともアサギの目が覚めていた可能性は高いとのこと。
小母さんに続いて相手からも同じ事を言われるとは思わなんだ。
しかも横にいた甚内殿も頷いてたし。
もしかしなくても俺って外交の才能は無いのかなぁ。
組織の中で対外折衝を任せられる人間を探しておいた方がいいかもしれん。
この後、甚内殿も参加した両組織のダメ出し合戦が始まり、残りは俺やさくらにとって針の筵のような時間となってしまった。
なんとも耳と心に刺さる意見の数々だったが、こういうのをくみ取っていかないければ組織運営なんて立ち行かんのだろう。
井河との通信が終わった後で『なんで幹部会でツッコんでくれなかったのか?』と聞いてみると、甚内殿は笑って『あの時はみんなが手一杯だったと言うのもありますが、若様を始めとした若い世代の資質を今一度確かめようと年長者達で決めていたのですよ』なんて答えが返ってきた。
知らん間に評価を付けられてたとか、ぶっちゃけ背筋が寒くなったんですが。
ちなみに現状では一応及第点だそうだ。
悪い予想だと待遇の悪さに八将が謀反を起こしたり、下忍に総スカンくらったり、嫌気が刺した俺が頭領の座をほっぽって逃亡するケースも想定していたらしい。
さすがは小母さんを始め、おむつしてた時から俺を見てた連中なだけあるわ。
最後のケースとか、割と本気で考えたことあるしなぁ。
ともかく、こんなチャランポランな頭領っぷりでも赤点じゃなかったのだ。
今一度身を引き締めてやっていかねばなるまい。