「何なんですかこれは……!?」
「くそ……どういうことだ……!」
俺はUSPを構えて照星越しにゾンビの頭へと狙いをつける。一方でアーノルドはSIGPROを構えるだけでトリガーには指を掛けていなかった。
「アーノルド!!武器を構えろ!死にたいのか!!」
俺はアーノルドにそう言うとゾンビの頭に向けてトリガーを引く。使い慣れた銃の好ましい反動と共に弾丸が頭へと命中しそのまま崩れ落ちた。
「あ……あぁ……」
「……くそ」
俺はUSPをホルスターにしまうと未だ呆然としているアーノルドの頬を張った。受けたアーノルドはやっと正気に戻ったようで俺のことを睨みつけてきた。
「そうだ、その意気だ。これから先……こういう事態になった時に対応できればいい」
「……すみません」
ひとまずそのゾンビを放置して俺は1度パトカーに戻りトランクにしまってある武器を取り出してフル装備に切り替えた。
「なるほど、だから先輩はこんなに武器を……」
「そういうことだ、ほら」
トランクにしまってあったMP5をアーノルドへと渡した。
「いくぞ」
こうして体制を立て直すと再び民家の中へと入っていく。扉をあけると先程倒したゾンビは起き上がること無く死体を跨いで部屋を調べる。喉付近を噛みちぎられた死体に近づくとまだ新しいのか血液などの凝固は起き始めたばかりだった。
「……なんで惨い……」
「最近起きてた猟奇事件はこれが原因だったのか」
「それにしても……署長は何も対策しないんですかね」
「どうだろうな……」
ひとまず部屋の中にあるものを色々と調べるものの特にめぼしい証拠などはなかった。
「なぜゾンビがここに押し入ったんだ……」
捜査を終えて帰ろうとした時に後ろの方からうめき声とともに噛みちぎられた死体が起き上がり、襲いかかってきた。たまたま近くにいた俺は振り返るも組みつかれてしまう。
「先輩っ!!」
「くっ!早くこいつを撃て!!」
思いのほかゾンビの力が強く油断しているとすぐに噛みつかれてしまいそうだ。アーノルドは撃つのに躊躇っているらしくMP5を構えているものの銃身が震えていた。
「早く!!」
だんだんと力が無くなってきてゾンビの頭がすぐそこまで近づいたところで銃弾がゾンビの頭を貫いた。アーノルドの方を見ると肩で息をしながら狙いをつけていた。
「……よくやった」
「あ、ありがとうございます……」
寄りかかってきているゾンビを引き剥がして地面へと投げる。
「とりあえず帰るか」
調査結果を報告するために署へ帰ることにした。
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ひとまず警察署へと引き返し今回の事件の報告書を書くことにした。目の前で起きた異常事態にアーノルドはかなり憔悴しており警察署に行く前に家へと送り返していた。そして、オフィスに帰り机に向かうこと1時間、なんとか報告書を完成させたものの内容に信憑性があまりなかった。
「はぁ……ほんとにやれやれだ……」
その日の夜、俺は1人で行きつけのバーに行き酒を引っ掛けていた。この報告書を出すということを考えると誰にも信用されないだろうことは100%分かってはいたがそれでも書かざるを得ない。
「これがあいつらが経験した疎外感ってやつか……」
きっと、洋館事件から帰ってきたあいつらも疎外感を味わっていたと考えるとよくやってると思う。
そんなことを考えながらお酒を飲み終えると家への帰路につくのだった。
1998年 8月1日
結局のところ報告書は受理はされたものの誰の目にも触れることなく処分された。本来ならば一介の警官には知らされないであろう事実だが、文書係にちょっとしたコネがあり教えて貰えたのだった。
「やれやれ……どうにかならないのかね」
俺は休憩室で1人コーヒーを飲みながら誰にも聞こえないため息をつく。すると、その横に誰かが来た。
「はーいジャック」
「ジルか」
隣に座ったのは洋館事件で無事に生還したジル・バレンタインだった。
「隣、失礼しても?」
「ああ構わないぜ」
コーヒーを片手に持ったジルが隣に腰掛けてくるとコーヒーと香水の匂いが絶妙に交じったいい匂いが漂ってきた。
「そう言えば聞いたわよ、ゾンビと遭遇したらしいじゃない」
「……だが、誰も信じちゃくれないがな」
「実際そういうものなのよ。私たちだって未だにホラ吹き扱いされてるし」
「なかなかにきついものがあるな」
正直な話、対策を立てなければいずれはとんでもない事態になることは目に見えているのだが、如何せん誰も協力しようとしない。その事に苛立ちを覚えることもある。
「ねえ、ジャック……貴方私たちと一緒にアンブレラを潰さない?」
「どうしたんだ、突然?」
「私達は、あの日地獄を見たの。でも誰にも信じてもらえずに仲間が死んだことすら事故死扱い……だからこそ、仲間の為にもあれは倒したいのよ」
「……それで、理解のある俺を引き込みたいと」
「ええ、そういうことよ」
ジルの話を聞いて目を瞑り思案してみる。確かに言い分も分かりはするものの個人的な意見としては未だに動機としては不十分ではあった。
「……すまない、今はまだ先送りにさせてもらってもいいか?」
「そうね、いつでも待っているわ?」
そういうとカップに残ったコーヒーを一気に飲み干したジルはカップを捨てて優雅に立ち去っていった。
そのあとは特に何も起こることなく平凡な日常が過ぎていったのだが、水面下ではとんでもないことが起きていたなど、知るよしもなかった。