ニート提督の日常   作:n番煎じの戦闘員

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2023年度版

遅めのバレンタインです(なお一切関係ない模様)



提督:糞ニート。時雨に借りを作る。地獄耳。
時雨:素直になれない思春期。提督への好意はそこそこ。つい意識しちゃう系

本編?知らない子ですね

だから早いって……C〇ニキ(又はネキ)よぉ……ありがとうございます。


本編から逃げるな
番外編SS:時雨と外出


 

「で、今日俺たちは何をしに行くんだ?」

「それは着いてからのお楽しみだよ。提督」

 

 満天の雲の下、俺は時雨と雨の中を歩いていた。

 この間、色々と世話になった時雨へのせめてものお礼として、俺があげられる範囲の報酬で何が欲しいかを時雨に訊ねたところ、『提督と外出したい』という時雨に何の利点があるのか分からないお願いを受けたのが少し前。

 まぁよく考えてみれば、すぐには思いつかないから外出先で奢らせたいのだろうというのは想像に易く、俺は二つ返事で了承した。

 時雨は『え!? ほ、本当にいいのかい?』と何故か慌てていたが、それは俺がここ提督室の外に出ている姿を見たことがないからと判明。別に俺が出てはいけないなんて規則はなく、ただ面倒だし生活物資は運ばれるし食事は作れるし酒も鳳翔の店があるしと外に出る理由が(俺目線では)ないことを説明した。一介の軍組織の長だとは思えない意識の低さを聞いて時雨は暫し固まっていたが、『……むしろチャンスかも……』と小声で呟いていた。なんだろう、提督更生計画とかが存在しているのだろうか。ぜひとも阻止したい。

 

 なお、外出に必要な書類等はすべて時雨に作ってもらった。時雨は「こういうの得意なんだ」とノリノリで作っていたし、俺の下がりようがない評価も変わらないだろう。その後二人で執務室(すぐ隣)に行ったのだが、書類を渡した際の大淀の表情がめちゃくちゃ面白かったことを告げておく。

 

 だいぶ動揺した大淀は、なんか誇らしげな表情の時雨に詰め寄って俺から離れ小声で会話していたが、流石に盗み聞きするのはできてもやめておいた。大方俺という糞ニートをどうやって外に連れ出せたのか気になったのだろう。

 

 

 

 

 

 閑話休題

 

 

 俺たちは鎮守府を出て、時雨の案内で店や娯楽施設が多く賑わっているという港町に向け歩いていた。

 お互い私服姿で傘をさしている。俺はラフなズボンに襟付きシャツ(要はいつも通り)、対して時雨は制服を着崩したようなデザインの服装だが、メガネと言い洒落たカバンに首からカメラをかけており、素人目にも気合が入っていることが分った。

 

「というより、随分と今更な質問だね」

「いや……まぁ……」

 

 明らかに外出に乗り気な時雨を見て、朝から雨で憂鬱だった俺も「面倒くさいし今度にしない?」とは言えなかった。

 あと時雨の格好が中学生、せいぜい高校生のため行く場所によっては周囲の目が気になるくらいか。そんなことを考えつつ時雨を眺めていると、視線に気が付いた時雨が俺に訊いてきた。

 

「うん? 僕の格好が気になるのかい?」

「まぁ随分と気合入ってんなーとは」

「そう、かな? そう思ってくれると嬉しいね」

「その格好でどこ行くのか気になってはいる」

「そうだね……うーん……」

 

 時雨は歩きながら考えるように下を向いた。「前を見ないと危ないぞ」とは俺が言える立場ではないが、そう思ってしまうのは時雨を見た目で子供だと下に見てしまっているのだろうか。

 

 その幼い見た目だけで、想像も出来ないほど活躍しているであろう彼女たちに対して俺は……

 

「時雨」

「うん? なんだい提督、呼んだ?」

「……いや、なんでもない」

「そうかい? ならいいけど」

 

 

 ……「外出の時くらい鎮守府や仕事のことは忘れてくれ」なんて俺には口が滑ってでも言えないことだ。ただ、本来の目的であるお礼以外でも、時雨に何かしたいという感情が芽生えた。こんな考えは俺らしくもないが。

 

「はぁ……」

「提督? さっきからどうしたの? 体調でもわるいのかい?」

「いんや……せっかく外に出たら雨なもんで憂鬱でよ」

「僕は嫌いじゃないけどね。それに、止まない雨はないよ」

「……せめて室内に入りてぇ」

「そうだね……なら、夕立が言っていた最近できたショッピングモールに行ってみようか」

「おん? 行先決まってんじゃなかったのか?」

「実はさ、候補はいくつかあったんだけど……ちょっと悩んでいたんだ」

「ふーん」

 

 少しだけ候補の内容が気になったが、聞くと「じゃあ次の機会にね」とまた外に連れ出されるような気がしたため聞くのはやめておいた。

 

 ……が、ふと隣から雨に溶けてしまいそうな小声が耳に入る。

 

「……雨だし、遊園地は無理そうだもんね」

 

 ……気づかれないようにそっと横を見ると、さっきよりも時雨の姿が幾分か小さく見えたような錯覚に陥った。

 

「はぁ……」

 

 ……ふと俺の脳裏に浮かんだ考えに、自分でもらしくないと思ってしまう。……だが言わないとそれはそれで後悔しそうで、俺は聞こえないように言ったであろう時雨の独り言にあえて返事をした。

 

「遊園地は別の日に行けばいんじゃねーの」

「……っ!? き、聞こえていたの?」

「偶然だ、偶然」

 

 前を向いていても、声と視界の端で揺れる傘で時雨の動揺が伝わってきた。ごめんな地獄耳で。

 

「それに礼が一回で終わりとも言ってないしな」

「それは……随分と提督らしくないというか」

「雨のせいだな。数分後には後悔する」

「それなら早く返事をしないとね。……行こう、提督と一緒に」

 

 打って変わって明るくなった声色とは逆に、また外に出る予定を作ってしまった俺のテンションは降下の一途を辿る。早速後悔し始めた。何言ってんだ俺……

 

「遊園地、ね……」

「……やっぱり、提督も子供っぽいと思うかい?」

 

 今度は俺の呟きに時雨が反応した。時雨の問いに、俺は自分の青年期を思い返す。平日のガラガラな遊園地で独りジェットコースター巡りをしていた記憶が蘇った。一人だけを乗せて動き出すジェットコースターに乗るのは最高で優越感が凄まじかった。

 そして、人が少ないのをいいことに公然とイチャつくカップルを何組か見かけ殺意を覚えた。リア充滅ぶべし。

 

「……さぁな、デートにも使われるくらいだし子供っぽいとは一概にも言えないんじゃね」

「デート……うん、そうだね。提督と行く日を楽しみにするね」

 

 あー、俺と時雨が行くとえんこ……カップルと間違われるかも知れん。実際俺は財布役だし似たようなもんだが……俺はどう思われても良いが、時雨まで巻き込むわけにはいかないため、俺は付け加えて言った。

 

「夕立とかも連れていくか? あいつなら喜んでついてくるだろ」

「……提督はよく『デリカシーがない』って言われないかい?」

「だからこうしてリカバリー&フォローしてんだろ」

「……はぁ」

 

 時雨が呆れたようなため息をつく。なんでだよ。

 

「まぁいいよ。夕立も誘っておくね」

「なんで不満げなんだよ」

「そんなことないよ? それはそうとして先ずは今日を楽しもうか」

「あー……また出んなら今日はもう帰っても」

「僕もちょっと思ったけど……ううん、やっぱり止めた。行くよ、提督!」

「……はぁ」

 

 雨の中、憂鬱な気分で満たされていた俺だが、時雨の顔を見ると「帰ろう」なんて言う気になれなかった。

 

 

 

 

「……せめて帰るころには止んでねーかな、雨」

「雨はいつか止むさ。遊園地に行くまでにはきっと止んでるはずだよ」

「遅すぎんだろ……」

「でもほら。あそこ、雲が途切れてるよ。意外とすぐに止むかもしれないね」

「あー、確かに」

 

時雨が指している西の空に浮かぶ雲の切れ端を眺めていると、俺は少しだけ雨が嫌いではなくなった気がした。

 

 

 

 

 

 




ショッピングモールのとある雑貨店にて


「あ、提督。僕このアクセが欲しいかも」
「よりによってブランドもんかよ。ちゃっかりしてんなーおい」
「まぁね。これが一番壊れにくそうだったからさ」
「ほれ……大事にしろよ?」
「うん、大切にするね」



「……提督、ところで夕立に渡した指輪、ほかの娘にはあげないのかい?」
「うげ……その話はやめろ。俺に効く」
「具体的には僕とか……なんて冗談だよ。そんなに嫌そうにしなくてもいいじゃないか……」
「……(見た目JCが俺のあげた指輪つけてうっとりと眺めてんだぞ。犯罪臭がやばい)」


なお見切り発車
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