「よっと!」
「ぐはっ!」
「フッ!」
「ガハッ!?」
下位魔術師たちをちぎっては…じゃなかった、俺は殴っては蹴り、セイバーは斬っては薙ぎ払いを繰り返して数を次々と減らしていき最後の一人を片付けた。弱いけど数だけはいっちょ前に多いよな…。
「魔術師だと聞いたが数が多いだけで点で相手にならんな。やはりドラゴンに匹敵するレベルの相手でないと魔力も全く以て発揮できん」
「いや、たかが下位魔術師相手にお前が力を出す理由になるのか?」
「阿呆か。そのような価値などさらさら無いな」
うわぁ、剣ならぬカリバーンの如くスパッと思いっきり言い切りやがったぞ。オルタ化ってキツい性格してるけど、キッパリと正論を出すよな。…いや、ただ期待外れってだけか。
改めて視線を部屋の奥へ向けると十字架のオブジェに鎖で縛り上げられている白いワンピースを着た金髪の少女とさっき消し飛ばした堕天使の仲間らしい女がいた。鎖……うっ、思い出したくない記憶がっ!あれはそう、ランスロット卿…もうロクデナシ上司が原因の話で、そのロクデナシについて相談してきたのが、ロクデナシの息子と言っていい片目隠した騎士、ギャラハッドが危ない瞳で俺を見てきて―
いや、今はトラウマを思い出すんじゃなくてな!?…コホン、まず今することは。
「その鎖を…砕く!」
金髪少女に当たらないよう拳に魔力を溜めて小さな衝撃波を放つ。そして衝撃波が鎖に――
「簡単に助けられる筈ないでしょう、ね?」
バチィッ!!
「…あん♡」
黒い衣装を着た女性が間に入って衝撃波を食らった。
…へ?
(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??)
いやいや!何マトモに当たってんだ!?そこは「フッ、お前の攻撃はこんなものか?」みたいなことになるとこなんだけど!?あと最後の声は何だ!?
「はあ…はあ…ふふ、やはりアンタの攻撃は私にとっては最高のお仕置き(ごほうび)だわ!」
へ、変態だぁぁぁ!!この人、小さいとはいえ衝撃波食らったのに顔を高揚した表情してるぅぅ!?
俺が内心で叫んでいるとセイバー…セイバーオルタが俺の前に進み出た。その表情は嫌なものを見たものだった。え、もしかして知り合いなのか?
「何故、貴様がいる!突撃女!」
「あら?アンタもいたのね冷酷女。勿論、彼を追いかけて来たに決まっているじゃないの。私の彼(ご主人様)に、ね」
(え、俺?)
黒いバトルドレスの女性の視線が俺に向けられる。セイバーオルタの視線もこちらに向いた。
…あの、セイバーさん?その殺気を籠もらせた視線を向けないでもらえません?少しちびりそうなんですけど…。こちらを睨んでいたセイバーの視線が女性に戻る。
「…コイツは私のものだ。断じて貴様のものではない。とっとと消え失せろ」
「それはこっちの台詞よ。なんならここで聖杯戦争の真似事でもする?」
「アンタたち!黙りなさ―」
「「うるさいっ!!」」
セイバーオルタと女性から発された威圧によって堕天使女が気絶した。憐れなり、堕天使…。
「余計な邪魔が入ったわね…それじゃあ改めて、始めましょう」
「良かろう…その首、斬首する!」
「怨念の炎に焼かれて無様に死になさい!」
ガキィン!!!
セイバーの魔剣カリバーンと女性の旗?が鍔迫り合いを起こし、大きな衝撃を周囲に生み出し天井や壁に皹が入り始めた。マズい!このままじゃ少女が危ねえ!足に魔力を込めて、床を蹴って少女の前に立つ。
「そのまま動くなよ!」
「!は、はい!」
少女を繋いでいる鎖を急いで砕いて、助け下ろした。
「あ、ありがとうございます!」
「礼はあとだ。すまねぇが手荒なことをさせてもらうぞ」
「え、一体何を…!」
少女の脇と両膝裏を抱き、いわゆるお姫様抱っこの状態になる。ぐっ、今からやることに罪悪感がハンパねえ!
「今謝っておく…あとはあそこにいる茶髪少年たちに助けてもらえ…っ!」
俺は少女を少年たちに向けて―
「でりゃァァァ!!」
手加減して、投げた。
「ふえぇぇぇぇぇっ?!」
「!アーシアっ!」
投げられた少女…アーシアさんを茶髪少年が見事にお姫様抱っこで見事にキャッチした。ナイスキャッチだ、少年!俺は少年たちに向けて言う。
「お前たちは避難しろ!ここはもうすぐ崩れるぞ!」
「で、でもアンタは…!」
「俺は二人を止めなきゃいけねぇ!早く行け!」
「っ…すまねぇ…」
少年たちは急いで階段を登っていった。……さて、問題は…。
「ハッ!」
ガキン!
「フンッ!」
ガキン!
崩れていく地下の中で闘い真っ最中の女性二人。くそっこれだから…。
女は嫌(にがて)なんだよ。
「うっ…」
あ、堕天使女、忘れた…。