「私の名前は九条梓苑です。みなさん、一年だけの期間ですがよろしくお願いします。」
新しく着任した教師がオレの前世の妹だった。
いやほんとにどうなってんだよチキショー!と、心の中で吠える。
妹(前世)はめんどくさい女で、彼女いないオレを毎日煽ってくるようなやつだったけど、一緒に買い物に行ったり親戚のニート君をからかったりして遊ぶぐらいには仲が良かった。だからなんだと言われたら口を噤むしかないが、転生してから妹(前世)の事を気にかけなかったワケではないということだ。
にしても随分と成長したものだ。背丈もかなり伸びているし、どことなく垢抜けた感じもある。今日で初めて教鞭をとるハズななのに何故か堂に入って見える。胸の大きさは変わってないようだけど。
「せんせぇ、実は兄貴いたりしますぅ?」
無いと思うが人違いかもしれないので聞いておこう。
「まぁ、死にましたけどいますよ。ブレーキが効かなくなった軽自動車にぺしゃんこにされたんですよ。おもしろいですよね。」
「えぇ…?」
…………こんのクソアマァー!
前言撤回だ前言撤回!妹(前世)の事なんて気にかけるべきじゃなかったぜチキショー
しかもおもしろいポイントがいっちょんわからんぞ…
「さて、そんな事は置いておいて。みなさんの事は何も知らないので、自己紹介よろしくお願いします。では、出席番号一番の安藤さんから。」
というか自己紹介なんてするのは久しぶりだな。
何事もなかったかのように自己紹介をさせる梓苑改めクソアマさんは淡々と出席番号順に名前を読み上げていく。
もうこいつに対して言及する時は地の童貞男子校生臭漂うこの口調でいこうと思う。
おっと、遂にオレ達の番だな。葵は何事もなく終えた。なら後はオレも無難に自己紹介をしてとっとと終わらせてくるとするか。
「えー、三葉桔梗です。好きな事は音楽鑑賞です。よろしくお願いします。」
決まったぜ。お嬢様らしい最高に無難な自己紹介だな、と我ながら惚れ惚れしている
と梓…クソアマさんから声をかけられた。
「左向け左」
「右向け右だよ馬鹿野郎」
……はっ?!
「………?なんで兄貴以外知らないこの合言葉を知ってるんですか?」
「あはは、え、いやぁ?なんででしょうねー?たまたまですよ、たまたま。あっ、昔読んだ本のセリフにあったんです。そうです。」
「そうでしたか。それなら仕方ないですね。」
あぶねぇ、間一髪だったぜ。にしても梓苑のヤツ、昔に遊び半分で決めた合言葉をまだ覚えていやがったとは……女って怖い。あいや、オレ今世では女だったわ。
葵が不思議そうな顔でオレを見つめてくる。
違うからね?オレ、こんなクソアマさん知らないからね?
あな恐ろしや。
この一年は波乱万丈になりそうだなぁ…ちゃんとやっていけるかなぁ…
「せ、せんせぇ。先生は今日から正式に先生になったっけ聞いたけど本当ですか?」
「ええ、本当ですよ。教育実習ではある程度学ばせてもらいましたが、正直何も覚えていません。0からのスタートですね。よろしくお願いします。」
こいつ使えねぇ。
教育実習の内容すら覚えていない我が妹(前世)の頭脳に戦慄しながら、オレは妹(前世)から視線を背けて机に突っ伏した。
こいつ、教師としてもダメダメなんじゃないだろうか…
そんな不安を抱えながら、恐ろしい一年が始まった。
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