そういや兄貴と姉貴が5年生になった。
今まで学校の中で全く兄貴と姉貴に会ってなかったが、2年生からは上級生用の校舎に行って良いらしく、葵に誘われたので行ってみることにした。
「にーちゃんとねーちゃんどこにいるんだろ?確か3組と2組だったハズなんだけど合ってるかな?」
「菫姉が2組で誠一が…あー、3組かな?わかんないや」
「にーちゃんにホントに興味無いんだね…」
軽く引き気味の葵だが無論兄貴になぞ興味は無い。イケメンだからね。嫉妬の対象なんですよ。
かと言って嫌いなワケではないのだが、家の中でもほぼ話をする事がないので兄貴の人柄がよく分からない。姉貴ならたまに話をする事があるからまだ興味も湧くというものだ。
まぁなんでもいいや、行ってみたら何かがあるだろう。
貴部隊は勇躍、一路高学年校舎へ進撃を開始せよ。目標は三葉菫と三葉誠一との邂逅である。
大本営は貴部隊の目覚ましい戦果を期待している。
前世で聞き齧った大本営特有のフレーズで実況をしようとしたが知識が足りないのでやめることにした。
違うからね?めんどくさくなったワケじゃないからね?ね?
前世でもっとちゃんと戦史関係の本読んどけばよかったなぁ…
閑話休題。とりあえず時は遡り1時間前に戻る。
「あら?三葉さん達も高学年校舎に?私も一緒に行ってもよろしくて?」
葵と高学年校舎に行く打ち合わせを教室でしていると、この学校に入学して初めてできた友達の辻堂凛音が話かけてきた。
「やぁ、辻堂ちゃん。オレ達はいまから行くけど予定は大丈夫?」
「辻堂さん、無理に来なくても良いんだよ?」
「いえいえ。予定は入っておりませんわ。貴方達しか友達はいませんもの」
「「………」」
話が重い…
ここでぼっち系主人公なら共感できたのかもしれないが、生憎とオレは友達いっぱい夢いっぱいの人間だったのでぼっちに共感はできない。
辻堂ちゃんは溢れ出る良家のお嬢様オーラのせいで友達ができないのだろうか。
やっぱり、老舗の辻堂百貨店のお嬢様だし安易に近付けないのだろうか。
それでも、オレ達は結構話しかけられたりするし、友達も結構いる。
急に台頭した三葉ブランドなんて彼らからしたらゴミカスなのかもしれない。
この学校には他にそういう良家のお嬢様お坊ちゃまはごまんといるのだが、線引きでもあるのだろう。
オレはわからないけどね。知らないってワケじゃないからね。
「ま、まぁ辻堂ちゃんが一緒にいて困る事は無い…というか助かるし、行こうか」
「そ、そだねー、むしろ助かるもんね!さぁレッツゴー!」
「あ、ちょっと待ってください!!置いてかないでー!!」
というわけでオレの両横には葵と辻堂ちゃんがいる。これが前世で成し遂げられなかった両手に花ってやつか。
高学年校舎は昼休みなだけあって、とても賑やかだった。しかし、5年生の階層に入ると異様に、不気味なほどに静まり返っていた。
「……誰もいないのかな…………?」
葵がぽつりと呟いたハズなのに、廊下には不気味なほど響いた。
すると突然、
「あらぁ三葉君ではないですか!!女の子を侍らせてハーレム系主人公気取りですかー!?」
「おやまぁ辻堂さん!!今日もひとり哀しくぼっち飯ですかぁ?!!?」
三人揃って立ち竦んでしまったが、オレ達に向けられた声ではないと気付き、ホッとした。
じゃあ今のなんだ??
「お姉様だ…」
「にーちゃんだ…」
葵と凛音が呟く。確かに誠一のような声だった。声の聞こえた教室をそっと覗くと、
オレ達の兄貴は。オレ達が覗いてることにすら気付かず。縦ロールのお嬢様と。
口角泡を飛ばして喧嘩をしていた。