虫喰いでないフレンズ   作:ヘキサノイック

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ラッキーさんの企て

ラッキー

「『ラッキー』。ラッキー・ビーストの略称じゃあない。『ラッキー』がボクの正しい名前だ。正確に憶えるんだ」

 

ドブネズミ

「な、なんだぁこいつァ!?」

 

アフリカゾウ

「さっきとは喋り方も、口調もまるで違う………こんにちは!私はアフリカゾウ。こっちはドブネズミちゃん。君をラッキーって呼んでいい?」

 

ラッキー

「ああ、アフリカゾウ。そうしてくれ。ドブネズミちゃんもそうしろ」

 

ドブネズミ

「お、ぉ、オイ!ちゃんはやめろ!アフリカゾウが呼ぶときはちゃんが付くんだよ!お前は付けなくてもいい!なんだかお前からのその呼び方はこっ恥ずかしいんだよ!」

 

アフリカゾウ

「あ、気にしてた?ごめんね、クセなの」

 

ドブネズミ

「いや、アフリカゾウは呼びやすいように呼んでくれていい」

 

アフリカゾウ

「そう。ラッキーさんは…」

 

ラッキー

「お前がドブネズミなのは知っている。そう呼ばせてもらう」

 

アフリカゾウ

「だって」

 

ドブネズミ

「こっ、コイツゥウゥゥ〜〜〜〜〜〜ッ」

 

アフリカゾウ

「気難しいんだね。ねえラッキー、今のドブネズミちゃんの体調はどうなってる?」

 

ドブネズミ

「どんだけ【多機能】なのかを確かめるのか」

 

ラッキー

「分析中……分析中……完了。ドブネズミは、至って健康。不調はみられないよ」

 

アフリカゾウ

「は〜、良かった!」

 

ドブネズミ

「そういや、降りてきてちょっとしか経ってないのにめまいも吐き気もしないな。高山病っていうものはこんなものなのか?」

 

ラッキー

「言われただろう。フレンズの身体的な能力についてはほとんど分かっていないと。急速に快復しているようだが念の為暫くは安静にしておくんだ」

 

ドブネズミ

「ラッキー……」

 

アフリカゾウ

「うん、そろそろ夕方だし寝るのがいいと思うよ。でも休むならもっといい場所を探さない?ここはゴツゴツしてて寝心地悪そうだよ」

 

ドブネズミ

「わたしもそう思っていたところだ。ラッキー、近くにいいところはないか?」

 

ラッキー

「いいところ?何がどうなってるのがいいのか具体的に説明してくれ」

 

ドブネズミ

「ぐっ……近くにいて話聞いてるならわかるだろ!?」

 

アフリカゾウ

「ごめんごめん。えっと、地面が柔らかくて平らな場所がいいんだけど」

 

ラッキー

「了解。ラッキービーストたちの集めた情報から検索中……む、あったみたいだぞ。そちらにすぐ向かうからついてこい」

 

ドブネズミ

「お、助かるな」

 

アフリカゾウ

「ありがとう、ラッキー!」

 

アフリカゾウには友好的だがドブネズミには見下したような態度で話すラッキービーストは、二人を率いて歩き出した。

高いところに行けないドブネズミのアシストをするためにラッキービーストを仲間にするということ自体が疑問で、更にそれがアシストされる自分の言うことを聞かないかもしれないときている。

ドブネズミは疑問を解決できるような相談相手を探すが、まともに話せるアフリカゾウはこのことを知っているわけが無いしマイはこれを説明しないで遣わしたということは「知らなかった」で済まされる恐れがあるので諦めた。

『ご本人(ラッキー)』に聞くことは最初選択肢に上がらなかったのだが、まだ会話ができないとも限らないとして試すしかなかった。

 

ドブネズミ

「ら、ラッキー。聞きたいことがあるんだが……いいかい?」

 

ラッキー

「なんだ」

 

ドブネズミ

「ラッキーはアシストをするためにわたし達の元へ派遣されたんだろ?」

 

ラッキー

「そうだが、何が言いたい?」

 

ドブネズミ

「高いところに行けないわたしのアシストって、どんなことをしてやるんだ?具体的にどうやってアシストするんだ?」

 

ラッキー

「それか。ボクにはお前のようなある環境への適応力が不十分なフレンズの生存を助ける機能が備わっている。ボクを抱えて持っていればエベレストの頂上でだって年中暮らせるようになるし、水中では何キロ先だって見通せるようになる。ボクの能力を疑っているというのなら証明してやろうか?」

 

ドブネズミ

「説明ありがとう。わたしには、それのどこがすごいのかイマイチピンと来ない。でも期待してるから拗ねないでくれよ」

 

ラッキー

「期待してるなどと…慰めのつもりか……」

 

ドブネズミ

「お、おい。ラッキー、何でそんなに拗ねてるんだ」

 

アフリカゾウ

「ラッキー、ごめんね。ドブネズミちゃんがまた何か傷つけるようなこと言っちゃったみたいでさ。ちょっと離れて二人だけで話したいから止まっていい?」

 

ラッキー

「構わない」

 

アフリカゾウ

「ありがと。こっちきて、ドブネズミちゃん」

 

ドブネズミ

「な、なんだよ」

 

アフリカゾウ

「あのさ、あのラッキーさん、ボスとすごく似てる形をしてるじゃん?色は全然違うけど」

 

ドブネズミ

「おお、確かにそうだけどそれが何だって?」

 

アフリカゾウ

「ボスたちと同じくずっと外にいて何かしてるならその分汚れるはずだけどさ、すごくキレイで、如何にも『出荷直前』って感じだったじゃん」

 

ドブネズミ

「そ、それで?」

 

アフリカゾウ

「う〜ん、つまりさ、『初仕事で張り切って出てきたら役立たず呼ばわりされた』って思ってるんじゃない?」

 

ドブネズミ

「え、え!?どこが!?」

 

アフリカゾウ

「みんなきっと自分は仕事ができることがわかってくれるって思ってるのに、説明したことにピンと来ないって言っちゃったのがマズかったのかなって」

 

ドブネズミ

「あ〜〜っ。そうか。なんとなくわかった。気をつけるよ」

 

ラッキー

「おい、そろそろいいか?」

 

ドブネズミ

「ああ!待たせてごめんな、ラッキー。さっきのわたしが言ったことで傷つけてしまった件について、わたしの失言だったと理解したよ。すまなかった」

 

 

 

ラッキー

「……『ロボットのボクに一々謝るなんてな。こいつはなんとも滑稽だ。そんなことを気にしているなどと聞いてしまっては、ボクまで恥ずかしくなりそうだ』」

 

ドブネズミ

「………………なんだと?」

 

アフリカゾウ

「え…………?」

 

 

 

   ゴニブゴニブゴニブ        

     ゴニブゴニブゴニブ      

       ゴニブゴニブゴニブ    

 

 

 

アフリカゾウは、ラッキーが発した毒のある言葉に耳を疑った。

そして顔に風を感じたとき、すでにドブネズミがラッキーに掴みかかっていた。

両手でがっしりと、捕えた獲物を逃がすまいと地面に押し付けて捕らえている。

ラッキーのボディーは爪が食い込みギシギシと凹んでいた。

 

アフリカゾウ

「あ、あわわ……どうしてこんなことに……

取り敢えず、抑えて!ドブネズミちゃんっ!そんなことしてもなにもかいけ……あれ?」

 

アフリカゾウは、初めてそれを目撃した。

目は光り、手からは光る粒子がこぼれ落ち、静脈血のように赤黒く妖しいオーラを纏いながら『ラット』が出現する。

髪飾りの目すらも、ドブネズミの意思に呼応しているかのように赤く光っていた。

アフリカゾウからは背中側だけ見えていて、手元も顔も見えていない。

しかし、手から溢れるサンドスターが舞い上がるのが見えて唖然とするしかなかった。

一方、ラッキーは言葉を発してドブネズミと会話しようとした。

 

アフリカゾウ

「これが………ドブネズミ……ちゃんの…『野生開放』…………」

 

ラッキー

「ドブネズミ!ドブネズミ!ボクから言うことがあるよ!聞いて!」

 

ドブネズミ

「…………………話せ」

 

ラッキー

「ボクは『君を怒らせる』ようにプログラムされていたんだよ。口調を変えたのも、親しみやすさを覚えさせないためだよ。でも、プログラムに完全に従っていたら、まだまだ君を罵ることを言っていたんだ。目的は君の『野生開放』を起こさせることだから、これ以上は必要ないんだ」

 

アフリカゾウには、ドブネズミのオーラが薄まるのが視えた。

 

ドブネズミ

「そうか。お前自身は言いつけられたことをやっただけだから非はないと?悪気はなかったと?お前のことを攻撃するのはおかしいというのか?」

 

ラッキー

「たしかにボクは攻撃されても文句は言えないくらい悪意の籠もった発言をしたよ。でも、初め君はボクのことをからかおうとしてたね。ロボットだから謝罪はもとめないけどね。まあ、いつだってこんなとき過去のことを引っ張り出すと後が大変だからここまでにしておくよ。

本当は『野生開放』のデータが必要だからこの状態で戦いに行ってほしいんだけど、さらにこちらから頼み事をするのは嫌がらせしてきたクセに図々しいと思うだろうね。気が進まなければ何もしなくていいよ」

 

ドブネズミ

「なるほど。先にわたしを怒らせたらどうなるか見たいとでも言っておけばよかったものをこうしたことはなんとも思わないのか。お前は戦えるのか?わたしは相手がお前なら十分に戦えるが」

 

ラッキー

「目的を先に説明してしまうと、怒りを引き出すのが困難になるからという理由があって説明なしに実行させてもらったよ。

あと、ボク自身は無力だし君の能力は危険極まりなくてデータが取れなくなるという理由で戦闘は許可されていないよ」

 

ドブネズミ

「ふん、残念だな。ここにいるのがわたしとお前だけなら、お前がわたしを怒らせた時点でお前はカップからブチ撒けたゼリーになってたところだ。もっとも、そんなゼリーはすげー不味そうだから啜ろうとも思わないがな」

 

アフリカゾウ

「うぅっ……」

 

アフリカゾウはドブネズミが説明した光景を想像してしまい嗚咽を漏らす。

それを聞くとドブネズミの妖しいオーラが弱まりかけから完全に消え失せる。

 

ドブネズミ

「アフリカゾウ!どうしたんだ?」

 

アフリカゾウ

「心配してくれるの?ありがとう。ちょっと気分が悪くてね…」

 

ドブネズミ

「そうか。無理するんじゃあないぞ?わたしみたいなことになるかもしれないからな」

 

アフリカゾウ

「そうだね。休憩が必要だって言ってこうして歩いてきたのにね」

 

ラッキー

「………すぐそこが目指していたところだよ。休憩を取ろう」

(いつか、戦闘のデータもとらせてもらうよ。ドブネズミ。さっきの言葉が威圧するためだけの脅しなのか、それとも本当にやるつもりのあることの予告なのか、見極めなきゃあいけないからね…)

 

「見つけた………!あれ?なんでアフリカゾウと一緒なの………?とにかく、あれこれ考えるよりも先に捕まえないと………」

 

 

 

 

のののののののののののののののののの

 

 

 

 

ちょうどその頃研究所では、モニターに向かってブツブツと独り言を発してノートをとる研究者がいた。

 

マイ

「まずは想定通りか。状況から分析すると

 

『自分のことを貶されると怒り相手を攻撃する』

 

『怒りによって昂ぶり所謂野生開放と呼ばれる状態へと移行する』

 

『他人の声を聞くと怒りが抑えられる』

 

『声の主へ心を許しているほど抑制作用は強い』

 

『スタンドのパワー上昇の有無、変化の大小は未知だが本体と同様に基礎能力の向上があると思われる。両手でラッキーを締めつける力は数百キログラムにも達していたからである』

 

というところか。

凶暴化の進行が浅かったようだな。もっと、さらなる激しい怒りを誘って尚かつ安全にデータを取らなくてはならないのが今後の課題、と。

ふむ、スピードワゴン財団による情報だと命の危機を感じさせる程追い込まないと能力は向上しないそうだが?

やはりフレンズのスタンド使いであるドブネズミ君のことについて考えるには、フレンズの枠に囚われない想定が必要なのかな?それとも、フレンズではなくビーストだと?いや、これまでの行動が理性的過ぎるな………特にこの辺りのデータを取らなければ………

ん?フレンズが一人、低い姿勢でドブネズミ君の方を睨んでいるな。狩りのつもりか?本気で狩ろうとしているようには見えないが…」

 

←to be continued…

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