虫喰いでないフレンズ   作:ヘキサノイック

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フロ、メシ、ネル

 

マイ「それじゃあ、これからしなければならないことをこの三人でする…いや君たちが先にすることだ」

 

ドブネズミ「なんだ?」

 

マイ「二人とも外に行っただろう。体をキレイにしなければならない。その直後のいいことのためだ」

 

ドブネズミ「…」

 

アフリカゾウ「いいこと!なにかな?」

 

マイ「晩御飯だ。せっかくココまで来てもらってるから夕食を一緒に食べようと思っていたんだが、どうだ?」

 

アフリカゾウ「わーい!食べるー!ドブネズミちゃんもどう?」

 

ドブネズミ「どうと言われてもだな、ここの事はまだほとんど何も知らない。しばらく様子を見る」

 

マイ「ふむ、君ならそう言うだろうと思っていた。今夜はいいものが食えるはずだから楽しみにしていてくれ」

 

マイはそう言うとドブネズミとアフリカゾウを連れ近寄りがたい雰囲気の部屋に来た。

 

マイ「ここの機械に少し入ってじっとしてればいい。アフリカゾウは知らなかったか」

 

アフリカゾウ「うん…わたしも初めて」

 

ドブネズミ「箱…?」

 

マイが解錠して扉を開けると部屋には大きな箱が2つある。

どちらも天井ギリギリまで高く幅はアフリカゾウ(もちろんフレンズの)が腕を広げた程度に見える。

マイは壁の操作盤を開いて箱を起動した。

起動した箱は前面の観音開きの扉が開き、いかにも一人でそこに入って使うという空間になっていた。

さらに箱からは運転音がして、静かなときよりも物々しさを増したように感じられる。

 

ドブネズミ「ひょっとすると、ここの機械ってこれか?」

 

マイ「ああ。すぐ始めるから二人は一つずつ入ってくれ」

 

ドブネズミ「何をさせるかと思えば、こんなに見え見えの罠にそう安安とかかりにいけというのか?」

 

マイ「私をまだ疑っているようだな。わたしがこれに入っても何も起きないが、君たちには外の汚れが付着している筈だ。その場合洗剤を浴びてもらうことになる。その後自動で元の乾いた状態に戻される。当然死にはしない」

 

ドブネズミ「わたしにはそれを確かめる術がない」

 

結局、ドブネズミの要求によりアフリカゾウと同時に入ることになった。

ドブネズミは二人一緒に出てこられれば安全とみなすと言い、マイは了承して二人で入ることにしたのだ。

箱の扉が閉じ完全に入ると予想通り外が何も見えない閉鎖空間になっていて入ったことを後悔しそうになったが、万が一にはラットで脱出する覚悟を決めた。

一人で考え込んでいると知らない誰かの声が聞こえてきた。

 

《FCB(フレンズクリーニングボックス)へようこそ。これからスキャンを開始します。合図があるまでなるべく直立の姿勢を保ってください。座り込んだり、壁に貼り付いたりしないでください。スキャン終了後は洗浄を行います》

 

《「楽勝楽勝!大丈夫だよ、ドブネズミちゃん!」》

 

ドブネズミ「その声は、アフリカゾウ?」

 

《アフリカゾウ「こっちは誰か知らないヒトの声がしたんだけど何か言ってた。せんじょー?だとか」》

 

《マイ「聞こえるか?二人とも。暫くじっとしてくれればいい。スキャンが完了したと言われたら首から下、頭、顔の順番で洗われる」》

 

《アフリカゾウ「そうなの?あっ、何か出てきて…」》

 

ドブネズミ「アフリカゾウ?どうした!?あっ」

 

《スキャンが完了しました。洗浄を開始します》

 

洗浄が終わって二人とも出てきたときには入る前より小綺麗になっていた。

 

アフリカゾウ「いやー、またすぐ入りたくなるとはねー。せまいところだと思ったらジャバジャバってなってブワーだもんね」

 

ドブネズミ「わ、分からなくはない」

 

マイ「フフフ。気に入って戴けたようでなによりだ」

 

検査という入浴を追えると三人は食堂へと移動した。

食堂着くと丁度ディナータイムでヒトがごった返している。

ドブネズミはそこに自分の姿を見た者がいることを記憶していた。

少なからず白い目で見られることを覚悟していたはずだったのだが…

 

マイ「わたしはここではそれなりに強い権力を持っていてね。ドブネズミ君のようなフレンズには手出しをゆるさないんだ。新しく生まれたフレンズがジャパリまんじゅう以外の美味しいものを食べられないのはかわいそうだからと思ったから、ここの食堂に連れてくることにしている。君も脱走したとはいえフレンズだ。軋轢が生じてはならない。いつも余計なことでなく新しいフレンズとの思い出作りを考えてもらってるんだ」

 

ドブネズミ「流石にあんだけ暴れたわたしにそう易々と馴れるのか自分でも疑問なんだが」

 

マイ「なあに、君のことなら心配無用だ。その脱走劇そのものが思い出だからな。何度も施設を破壊されると流石に困るが」

 

ドブネズミ「悪い気がしてきた…」

 

マイ「フッ、みんな本当はフレンズが大好きだから気にしないでいい。そろそろ順番だ」

 

教わってもいないのにドブネズミは自分とアフリカゾウに倣って列に並んでいた。

食堂に来る前から列になってはいたのだが、ドブネズミは集団に馴染んでいるかのようかな行動を無自覚にしている。

ドブネズミという動物の習性から社会性の高い行動をするのは難しいという予測であったにも関わらずだ。

マイはそれに疑問を抱くが、ここで触れることではないとして食堂の案内に専念することにした。

 

マイ「ここではメニューから一品ずつ選んで自分の献立を決められる。だがドブネズミ君は今日が初めてだからわたしと一緒に選ぼうか」

 

ドブネズミがタッチパネルのメニュー表を見て写真から興味のある品を指差すとマイは動物性か植物性かや味付けなどを解説した。

食べられるものは食べてきたドブネズミは好み通りに選べることを久々の幸せのように感じながら説明を聞く。

こうしてドブネズミの献立は好み、もとい食性から肉が多めのチョイスになった。

 

ののののののののののののののののののの

 

ドブネズミのチョイス:カツカレー、魚のフライ、ポトフ、ビーフステーキ

 

アフリカゾウのチョイス:野菜スティック(大根と人参とキュウリ10本ずつ)、オニオンスープ、カットリンゴ一個分

 

マイのチョイス:白米、大根とじゃがいもの味噌汁、小松菜と油揚げの煮浸し、白身魚のムニエル、キュウリとレタスのサラダ、ヨーグルト

 

ののののののののののののののののの

 

この研究所の食堂はある程度まで調理された状態から自動で仕上げた料理が出てくる。

マイとアフリカゾウはプレートに乗った料理を受け取ったりコップに水を汲んだりしてドブネズミの分を運ぶのを手伝った。

 

ドブネズミ「ありがとう、アフリカゾウ」

 

アフリカゾウ「いいのいいの!私にはこのマフラーがあるからね」

 

マイ「ドブネズミ君、まだまだ料理はあるぞ!」

 

食堂を見渡すと長いテーブルの端の方が空いていたのでアフリカゾウが席をとった。

ドブネズミは座るとき尻尾を気にしたが、イスはベンチのような背もたれが無いもので圧迫されず後ろの席との感覚は十分に広いので踏まれる心配もないとマイは説明した。

 

マイ「ここのイスの背もたれは尻尾をもつフレンズが座ることを想定しているんだ」

 

アフリカゾウ「助かるよ〜。背もたれのあるいすは尻尾が潰れて座りにくいよね〜」

 

ドブネズミ「わたしの尻尾はアフリカゾウのよりも長いから、背もたれなんかあったら余計無理がありそうだな」

 

そのときのマイはドブネズミセレクションの相当な量を食べ慣れていないヒトが胃もたれしそうな迫力に圧倒されそうになっていた。

そこにいつの間にか置いた食器について説明しておかなければならなかったため、マイは気を取り直してドブネズミに話しかけた。

 

マイ「うん、ドブネズミはよく食べるというのは分かっていたつもりだったがここまでとは驚きを隠せないな。

でもいいかいドブネズミ。この箸とナイフとフォークとスプーンという道具を使って食べるんだ。素手で食べた後あちこち触られたら汚れて困るし洗ってない素手で食べることは病原体を体に入れることになる。さっきキレイになってもらったとはいえ用心するに越したことはない」

 

ドブネズミ「この変な棒がしらんうちに置いてあるから何かと思えば全部使うんだな」

 

マイ「そうだ。あとは、挨拶を食べる前にしておこう。アフリカゾウは憶えているかな?」

 

アフリカゾウ「あっ、『いただきます』だっけ?!忘れてたー!」

 

マイ「案ずることはないよ。簡単だから忘れさえしなければすぐできることだ。さあ、手を合わせて」

 

マイ「いただきます」

 

アフリカゾウ「いただきます!」

 

ドブネズミ「いた…だき…ます?」

 

マイ「よし!食べるぞ!君たちを待ってる間お菓子を切らしてたことを思い出したから空腹感でいっぱいだったよ」

 

アフリカゾウ「やー、私に負けず劣らずよく食べるねえ。ドブネズミちゃんは」

 

ドブネズミ「なあ、こいつらどうやって使うんだ?」

 

ドブネズミは箸でステーキを捲り上げてかぶりつこうとしていた。

そのままではステーキはテーブルの上に滑り落ちてしまうだろう。

 

マイ「そうだったな、使い方を言っておかなくては。ステーキはこの先が分かれたフォークで押さえて、ギザギザしたナイフで引き切ると上手く小さくできる」

 

マイは一つずつ持って指差しながら説明した。

おかげでドブネズミは間違った使い方をしなくて済んだ。

 

ドブネズミ「じゃあこれはいつ使うんだ?」

 

マイ「それはな……」

 

ドブネズミはマイの口頭での説明と実際の使用風景から食器の使い方を憶えていった。

しかし食器を全て使ってもガツガツとした食べっぷりのままだった。

その夕食に町のゴミを漁りタンパク質を求める生活を忘れさせられていた。

 

ドブネズミ「ふう、食ったァ!肉を満足に食ったのはいつぶりか忘れるくらい美味かった」

 

マイ「それは良かった」

 

アフリカゾウ「ムグムグ…あんなに多かったのに早いなんてムグムグ…私には無理ぃ~ムグムグ…」

 

アフリカゾウは大量のキュウリと人参のスティックをマフラーで持ってボリボリと押し込んでいた。

それはまるで自動の鉛筆削り機に鉛筆を押し込んでいるようだった。

一方マイは既に完食していた。

 

ドブネズミ「アフリカゾウ、おまえがうまそうに食べてるの見てるとなんだか羨ましくなってくるな」

 

アフリカゾウ「そぉ?これ食べる?」

 

ドブネズミ「いや、大丈夫だ…」

 

アフリカゾウ「?」

 

マイ「ドブネズミ君、食べ始めるときに挨拶すると言ったが食べ終わったときの挨拶もある。」

 

ドブネズミ「それはどんなんだ?」

 

マイ「『御馳走様でした』」

 

ドブネズミ「『ごちそうさまでした』…」

 

マイ「この一連の挨拶は外でもやれと強制するわけじゃないから忘れても気に病むことはない。ただ、心の整理をつけ食事の時間を楽しむためになることだとわたしは思っている」

 

ドブネズミ「そうか。わたしも今度からやろうかな」

 

アフリカゾウ「ふぅ、ごちそうさま。わたしから教えてあげられたらよかったんだけど、あのときはセルリアンが来てて余裕がなかったよねドブネズミちゃん」

 

ドブネズミ「うんまぁ、そうだったな。すぐボスがうるさくなってセルリアンが来てたからな」

 

マイ「ん!そのときのセルリアンのことを詳しく聴きたいんだがいいか?」

 

アフリカゾウとドブネズミは思い出せるだけ詳しく話した。

ドブネズミはフレンズの姿での初陣であったからか、鮮明に憶えていた。

話していくうちにアフリカゾウをよく知るマイもいるのでアフリカゾウが豹変したことについて聞こうと思った。

 

ドブネズミ「アフリカゾウ、ちょっと聞きづらいことを聞くがいいか?」

 

アフリカゾウ「なあに?」

 

ドブネズミ「セルリアンが来たときあたりからアフリカゾウのしゃべり方が変わったんだが、なぜだ?」

 

アフリカゾウ「それは…」

 

マイ「ドブネズミ、それを今聞くのは良くない。また今度にしてくれないか?」

 

ドブネズミ「お、おぉ」

(やっぱりこれは何かあるのか…?隠したいのか、聞かれるのが嫌なだけかわからん。

しつこく聞くのはいい気がしないしマイのいないところのほうが聞けるかもしれないからいつか聞いてみるか)

 

食事を終えた三人は食器を下げた。

何の違和感もなくドブネズミがプレートを持って下げる。

フレンズ化したばかりなのにもかかわらずここまで器用なことについてマイは考え込み、食器が危うくプレートから落ちそうになった。

器を割らずには済んだが、勘の良いドブネズミに気づかれそうになったことの方を心配した。

ドブネズミ達は三人で食堂から出ると共に宿舎へ移動した。

 

マイ「ところで君たちは眠くないか?フレンズがここに寝泊まりするために余分に宿泊用の部屋があるんだが、今からそこに行って使い方を教える。宿舎の使い方を知らないまま使わせたくはない。アフリカゾウは憶えているかな?」

 

アフリカゾウ「もちろん!憶えてる…と思う」

 

マイ「建物中がまた穴だらけになるとドブネズミ君を一日でさえここに居させるのはわたしでも厳しいからな。守ってもらわなければならないルールを覚えてもらいたい」

 

ドブネズミ「ああ…わかってる」

 

ドブネズミにわかりやすいよう、マイが直接ドブネズミが使う部屋で部屋中の物の目的・使用法・注意事項を説明した。

 

ドブネズミ「これは何だ」

 

マイ「あぁ、テレビだ。映像を観ることができる。一番右の小さいボタンを押すと点く。もっかい押すと消える。地理的な理由と予算の都合上、JPHK(ジャパリ放送機構)のチャンネルしか流れないのは許してくれ。ニュースはヒトのことがわかるから詰まらなくはないだろう。あとは何か」

 

ドブネズミ「こっちは」

 

マイ「あぁそれは…」

マイ「これで一通り説明し終えたかな」

 

ドブネズミ「まったく、どんだけあるんだよ」

 

マイ「全部使ってる物だから仕方ないが、壊されては堪らない。分からなければ電話すれば答える」

 

アフリカゾウ「私もここを使ってたことはあるとはいえ大変だったこと思い出してきて不安になるっ…」

 

マイ「まぁ、最悪力任せに使わなきゃいいってことだな。そろそろわたしは用事があってここにずっとは居られない。朝になったらまた会おう。じゃあ、二人ともお休み」

 

そう言ってマイはどこかに行ってしまった。

アフリカゾウは背中に向けてマフラーを振って見送ったが、ドブネズミは相変わらず棒立ちでマイを睨んでいた。

 

アフリカゾウ「おやすみ、マイ!」

 

ドブネズミ「…アフリカゾウ、わたしはまだ眠れそうにない。気になることがありすぎる。心配をかけるが気にせず眠たかったらすぐ寝るんだ」

 

アフリカゾウ「大丈夫だってば。ドブネズミちゃんもすぐねて明日元気に出発しようね。それじゃあおやすみ」

 

ドブネズミ「『おやすみ』」

 

ドブネズミは部屋に入るなりテレビを点け夜中じゅう観ていた。局自体は一つだが3チャンネルあり番組の内容で飽きなかったせいで時計の短針が右側に傾いても眠らずに視聴していた。

ようやく眠気を覚えたときには短針が下側を向いていたという。

 

 

その何時間も前、自分の個室にいたマイはある書類になにかを書き込みながら独り言を呟いていた。

 

マイ「まだドブネズミ君の『お仲間』が必要だ…より戦力を増やさねば…」

 

←to be continued…

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