実技試験から一週間、私は仕事に打ち込んでいた。業務の引き継ぎ自体は終わっているのだが、正直試験の結果が不安で仕方が無かった。試験官であろう教員との会話が原因だ。この世界のヒーローはあくまで職業だ。私の…否、私が憧れたヒーロー達のように、善意(と一部は復讐から)の行い、その生き様を持ってして人々にヒーローと
「ままならないものだな」
「社長?どうされました?」
「
狐塚さんとは初めに会社に訪れた時からの付き合いだ。また彼は開発部の部長でもあり、会社きっての天才でもある。何せコミックのガジェットを実際に開発して欲しいと言う私の無茶振りに対応仕切ってしまうのだから。
「社長…いえ、長治君なら大丈夫だと思いますよ?」
「そうですかね?」
「面と向かって言うのは恥ずかしいのですが……、あの『事件』で会社が傾いた時、あなたは父を喪ってとても悲しい思いをされた事でしょう」
「…………」
「しかしながら、会社の為……いえ…私たちの為に尽力して下さった。救われましたよ。少なくとも私は」
「あの時は父が遺した会社を守る一心でしたが……それならよかった」
本当に。私の行動で救われた人が居たという事実は、私の心に空いた穴を少なからず埋めた。
「下手すれば路頭に迷ってたんですから。感謝してますよ?」
「こちらこそありがとう。狐塚さんがいなければ、私もここには入れなかったでしょう」
「まぁ、後は普段の無茶振りが無くなれば良いんですが」
「それは無理です」
「でしょうね。まあ、やるだけやりますよ」
「ありがとうございます」
その後暫く休憩ついでに雑談していると、今私たちがいる第一開発室では普段は見ることの無い人物が入ってきた。
「母さん?」
母は膨らんだ封筒を手に持っていた。
「届いたわよ。雄英の合否通知」
「それはそれは……私は外した方がいいですかな?」
「遂に来たか……せっかくだから見ていって下さい。落ちてたら慰めて下さいよ?」
「社長命令とあらば」
母から受け取った封筒を開けると、そこには一つの装置が入っていた。
「投影装置?……ただの合否通知にコストを掛けるのね雄英って」
「再生ボタンは……これか、再生と」
『私が投影された!!』
「は?オールマイト?」
私は目を疑ったが、ウサギの耳のような髪に分厚い筋肉、そして彫りの深い顔は間違いなくオールマイトだった。
『何故私が雄英からの合否通知に出ているのか疑問に思っているだろう。それは私が雄英に勤める事になったからだ』
「これは大ニュースね」
『さて、君の試験の結果だが…筆記は問題ない』
「これは予想通り」
『しかし実技が問題だった。君は戦闘向きの個性ではないものの、よく頑張った。が!君は試験中の行動を覚えているかね?』
(糞!やっぱりか!)
『実は、
(思っていた……?)
『しかし、君の今までの行動、つまりは社会貢献度からすると落とすのは社会に対する損失が大きかった。特別措置として新たに枠を設ける事とした。つまり……』
そう……か。今までの行動は無駄にならなかったか。良かった、本当に良かった!
『合格だ!!来いよ、社少年!
父さん、やっと第一歩が踏み出せそうです。
狐塚さん:開発部の天才。航空宇宙工学からバイオ工学まで何でも出来る怪物。主人公の父がスカウトしてきた。基本的に各部署の部長は父が見付けて来た人材、そしてその分野の天才。つまりは庶務の天才とか、人事の天才とかもいる。