あるいは、それはあったかもしれないお話   作:街をさまよい歩く亡霊

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久しぶりにポケモンUSUMやって、ポケアニ見て
作者「スイレンチャンカワイイヤッター」
となり勢いで設定を作った小説です。

なおスイレンはしばらく出てこない模様。





プロローグ「旅立ちまで」

 

 

 今は昔、三、四年くらい前に、‘彼’は生まれ育った地を離れざるを得なかった。

 よくある、‘親の都合’というヤツである。

 

 

 子供は色々無力だ。親が「A」といえば「A」というしかなく、反抗して「Z」といっても、親に「A」と上書きされる。

 親とは本来ありがたい存在の筈だ。だが、子供がそれに気づくのは、いつも子供が大人になってからであるのが普通。故に親の「お前のため」という言葉は子供には理解されない。

 

 例えば‘彼’は「優秀なトレーナー」として育てられるために、仲のいい幼馴染もいた、生まれ育った地を離れさせられた。

 親と子、血は繋がっているとはいえ、所詮は考えの読めない他人。強制的に引っ越しさせられた子供にとって、それがいくら将来の自分のためになるとしても、たまったものではない。

 

 そのためか、彼は自分自身の殻に閉じこもってしまった。自分に関係ないことには、とことん興味を示さなくなった。

 例え、目の前で転んで怪我をしてしまった同級生がいても、目を向ける事なく通り過ぎる。そんな「冷たい」人間になった、なってしまった。

 

 一方で、彼はポケモンに対しては優しかった。それが自分のポケモンじゃないとしても、凶暴な野生のポケモンだとしても、ケガをしていたなら手当てをし、落ち込んでいたら慰め、困っていたら手を伸ばす。

 

 なぜか。彼自身よく分からなかった。人がいくら怪我しても気にならないのに、ポケモンが怪我するとどうしても放って置けなかった。

 

 ……そんな人の行動は、誰かが必ず見ているもので、

 

「ねぇ! キミ、なんていうの? あっ、あたし、‘サナ’。よろしくね!」

 

 そして、人が変わるきっかけは、結構単純なものだ。

 

「……‘カルム’」

「じゃあ、カムル(・・・)、サナ達とあそぼーよ!」

「……カムルじゃなくてカルム」

「あれ? 間違えちゃった? ごめんね、カムル!」

「直す気ある?」

「何が?」

「……何でもない。悪いけど、遠慮……」

「よーし、それじゃ、サナに付いてきて!」

「人の話を聞け、というか引っ張らないで」

「サナのほかにね、ティエルノとトロバがいて、あっ、二人ともあたしの幼馴染なんだけどね! ティエルノはすっごくダンスが上手いんだよ! トロバはポケモンが大好きで、見たことないポケモンがいるとすぐ写真撮るんだ!」

「……はあ」

 

 彼を引っ張る小さな手は、彼が抵抗すればすぐに払えることは明確だった。

 けれど彼は抵抗せず、引っ張られるがままにしていた。仕方ないから付いていくか、と考えながら。

 ……数ヶ月ぶりに人前で浮かんだ笑みに、彼自身は気づくことはなかった。

 

 

 サナ、ティエルノ、トロバと彼……カルムは、意外とすぐに仲良くなった。

 カルムはただ自分で塞ぎ込んでいただけで、他人との関わりを拒絶していた訳ではなかったし、その上、四人とも一緒にいるとはいえ全員が全員、個性的というかマイペースなせいか、同じ場所で別々の事をするという、それ一緒にいる意味あるのかと問いたくなるようなグループだった。けれど、彼にはそれが心地よかった。「他人に合わせなくてもいい」。その環境が、カルムには適していたからだ。

 

 一度、彼らは自分の‘夢’について語り合った。

 サナは「ポケモンパフォーマーになる」と言い

 ティエルノは「ポケモンとダンスチームを作る」と言い

 トロバは「図鑑に載っている全てのポケモンの写真を撮る」と言い

 カルムは「特にない」と言った。

 

 

 その後、「見つかるといいね、夢」なんて慰めがあったとか、無かったとか。

 

 

 

 そして、カルムが10歳になった春。

 彼が友人達と共に旅立つ、その前日。明日の旅立ちに備えて、彼の引越しする前からの相棒2体と一緒に準備していた時、彼の父はこう言った。

「その2体は連れて行くな」と。

 父はカルムが連れている2体のポケモンはカロス地方では珍しいため、悪い大人に狙われ、カルムが被害を被る事を心配してのことだったが、その時のカルムにとっては、何よりも父が「悪い大人」に見えたに違いない。

 当然のように猛反発。しかし父は「手持ちのポケモンを守るのはとても難しい事」となんとか説得しようとする。しかし、なかなか上手くいかない。

 そして、ついに彼の父は、今後のカルムの目標を決定してしまう一言を滑らせてしまう。

 

『チャンピオンでも、難しいんだぞ』と。

 

 発言した本人にとって、それはポケモンの精神的なケアについてのものだったが、この言葉を受け取る側はどう思うか。

 ……カルムは、こう解釈した。

 

『チャンピオンレベルの実力が最低条件』と。

 

 そこから、今まで空白だった彼の「夢」が埋まった。

「チャンピオン打倒」という、目標とともに。

 

 

 

 日が昇り、ついに彼等の旅立ちの日がやってきた。プラターヌ博士からのポケモンは、すでにポケモンがいるという事で、カルムは辞退していた。

 用意された3匹のポケモン、ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネのトレーナーはそれぞれトロバ、ティエルノ、サナとなった。

 

「じゃあ、ここでお別れだね」

 

 ミアレシティのプラターヌ博士の研究所の前で、サナが確認のように呟く。もっとも、彼女の声色は寂しそうなものではなく、旅が楽しみで仕方ないというようなものだったが。

 

「次このメンバーが揃うのは、夏にあるキャンプですかね」

「ばったり会うかも知らないけどね」

「その時はその時だよ! というか、あたしとしてはカルムがちゃんとキャンプ来るか心配なんだけど……」

「ちゃんと行くよ。……近かったら」

「ティエルノ、夏までカルムについてってね!」

「オーライ! カルムの料理は美味しいからねえ」

「…………冗談だよ」

「訂正までかなり間があったような気がしますけど……?」

「気にしちゃダメだ、トロバ」

 

 いつものように軽口を叩きながら、彼等はそれぞれの夢の一歩を踏み出す。

 

 

 ーーカルムの旅の目的は「チャンピオンの打倒」。

 その目的を成し遂げるには、4つの壁がある。

 1つ、カロス地方各地にいる8人のジムリーダーを打倒する事。

 

 2つ、ジムリーダーを打倒した猛者たちとカロスリーグで戦い、全勝する事。

 

 3つ、四天王に勝利する事。

 

 4つ、そして何より、チャンピオンに勝利する事。

 

 1つ目の壁を突破する者は、割と多い。人数制限があるわけでもなし。それなりの実力があれば、誰でも突破できるからだ。

 とはいえ、今のカルムはジムリーダーに認められた証、ジムバッチを8つ集める必要がある事には変わりない。

 

 カルムは、一番近くのジムがある街、ハクダンシティに向かった。

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