俺ガイル二次作   作:ひきがやもとまち

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原作にあってアニメにはなかった場面の内、一番好みなシーンを番外編的ストーリーとして描いてみました。
川なんとかさんとシェイクスピア(偽)との出会いの回です。FGOの幕間みたいな話ですがよければお楽しみくださいませ。


やはり奉仕部にシェイクスピア(偽)がいるのはまちがっている。幕間劇

 ゴールデンウィークも過ぎて、じわりじわりと暑くなりはじめてくる今日このごろ。シェイクスピア(偽)は屋上の踊り場へと向かっていた。

 特に理由はない。本能的な行動である。

 

 美しいものと面白そうなネタを求めて学校内を旅して彷徨い歩くのは彼の本能であり、ライフワークなのだ。特に意味など求めたことすらない。結果的に面白けりゃそれでいいのがシェイクスピア(偽)という男の本質なのだから。

 

「むむ? 普段は閉まっている屋上の南京錠が開いておりますな・・・」

 

 屋上につながる扉に、外された南京錠がぷらぷらと揺れていた。

 いつもなら形式的にちゃちい南京錠で形ばかりの施錠がされている屋上が、これでは入り放題である。

 

「ふむ。ならば今日は普段いそうな方々とは別の人に出会えそうですな。楽しみです。いざ参らん、とぅっ!」

 

 普段入れなくされてる屋上が、自由に出入りできるようになっていたら俄然興味がわくのがシェイクスピア(偽)である。

 なぜなら屋上に人が来るのは立ち入りが禁止されているからだ。入ってもいいなら普通は誰も来ようと思わない。おかしな話だがリア充と呼ばれる凡人たちの典型的思考パターンだと屋上という場所は立ち入り禁止にされてるからこそ青春を謳歌するに相応しいと認識されているらしかったから。

 

 扉の先に広がるのは青いだけで空っぽの空と、そしてガリレオ・ガリレイの時代には地動説提唱に役立ったらしい水平線。

 どちらも今となってはどうでもいい代物なので、無視して自分好みな人間を探してキョロキョロしていると風が吹いた。

 

 たまたま持ってきてしまっていた職場見学希望調査票が風に乗って飛ばされていってしまうのを見送りながら、なにかしら詩的に表現して別れを告げようかなと思っていた彼に

 

「これ、あんたの?」

 

 上から声がかかった。ややハスキーな、どことなく気だるげな声の持ち主を探して周囲を見渡すが誰もおらず、殺された父親の亡霊が真犯人を指名するために戻ってきたのかなと埒もない妄想を楽しんでいたところ。

 

「どこ見てんの?」

 

 ハッとバカにし腐った感じで笑う声が、上からもう一度聞こえてきた。

 見上げると屋上からさらに上へと突き出した梯子を登った先にある給水塔に寄りかかるようにして一人の少女が彼を見下ろしていた。

 

 長く背中まで垂れ下がった青みがかった黒髪、リボンはせずに開かれた胸元。ぼんやりと遠くを見つめるような覇気のない瞳と、泣きぼくろが印象的な女子生徒が安っぽい百円ライターを弄びながら佇んでいる。

 

「これ、あんたの?」

 

 そう言ってピラピラと振ってみせる紙切れは、紛れもなく先ほど風に乗って飛ばされた自分の職場見学希望調査票。

 

「・・・ちょっと待ってて」

 

 溜息交じりにそう言うと、梯子に手をかけてするすると下りてくる。

 

 ――その時。イタズラな風が吹いて、重く垂れ下がった暗幕を取り払うかのように、男の夢を託した一枚の布きれがシェイクスピア(偽)の瞳に映り込み、彼はその感動を詩的に表現するため情緒たっぷりに朗々とした口調で絶賛し始めやがった。

 

「おお! 地獄のように黒く! 闇の夜の如き貴女の穿いている下着を、私は美しいと思い、輝いているとすら感じる始末!」

「本気でどこ見てんのよアンタ!?」

 

 慌ててスカートを押さえるため両手を離して梯子を飛び降り、頬を若干赤く染めながら女子は「すとっ」と屋上へと降り立ったのである。

 

「無論、貴女のスカートの中身で御座います。他に誰の何がありますか? 黒レース下着の女子高生よ」

「・・・・・・っ!!」

 

 具体的にセクハラ発言をしてくる癖して、全然欲情した気配は見せない嫌な意味で訳が分からない男から目をそらすようにして、自分の持っていた相手の希望調査票を一瞥した少女は、

 

「・・・・・・ふんっ! バカじゃないの?」

 

 ぶっきらぼうにそう言って、投げつけるように持ち主の手元へ押しつけると、踵を返して足早に校舎の中へと消えていこうとしていたのだが、しかし。

 

「いや、お恥ずかしい。実は我が輩、エッセイだのアンケートだの自分の気持ちを書いたりするのは滅法苦手でして。神々は我々を人間にするために適当な欠点を与えてくるもの・・・。

 つまり我が輩は、自分自身のことは書かないのですよ。我が輩は他人の物語を紡ぐしか能がなく、それ以外に書きたいものがないのです。

 ――なのでまぁ、ぶっちゃけこの紙に書いてある内容は前の席に座っていた適当な女子生徒の書いてた回答をカンニングして書き写しただけの代物ですので、あんまり返してもらう必要はなかったのですがな・・・・・・」

「・・・なんてモン見せんのよアンタは!? 名前も知らない赤の他人の職場希望調査票の笑える中身、見ちゃったじゃないのあたし・・・! 知りたくもない赤の他人の秘密なんか事故で知る羽目になったあたしに、アンタなんか言う言葉ないわけ・・・っ!?」

「ハッハッハ! 勿論のこと、心の底よりお詫び申し上げますとも! 申し訳ない!」

「・・・誠意がない! 誠意が! 1ミリグラムも! これっぽっちも! 欠片ほども・・・っ!」

 

 静かな声で、可能な限り激情を表に出さないよう注意しながら、それでも内心の怒りは抑えきれないと言った風情でひとしきり声量低くシェイクスピア(偽)を罵倒した後、少女はくるっと踵を返して今度こそ本当に校舎の中へと消えていってしまった。

 

 

 表面上はクールでハードボイルド。

 だが、その下にある内面はホットで熱く女の子らしい。

 

 

 ――なんだか、とんでもなく面白そうなラブコメキャラっぽい人に出会ってしまったなぁと、シェイクスピア(偽)は今日もご機嫌のまま放課後の帰路へ着く。

 

「人との出会いの縁は素晴らしい。やはりこれも全て我が輩の日頃の行いがいいという証なのでしょうなぁ。――あんまりいい事している自覚はないのですが」

 

 なんだかんだ言いつつ、一応自分のことも客観視は出来てる安田の平凡で何のイベントもない一日は、こうして過ぎていって終わる。

 

つづく

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