だいぶ前に話の内容を思いついてたから後回しにしていたら、いざ書く段になって細かい部分を忘れることに気付いて焦りまくりましたわぁ~(;^ω^)
思いついた話は早めに書いとかないと危ないなと言う事実に気付いた今話の話。
そのせいでネタはともかく八幡のセリフなどが八幡らしくなくなっちゃってますが、どうかお許しください。見直している時間がなかったのです。明日は仕事だ、休みではない~♪
「・・・とは言えだ。身内から探るのを反対しようってつもりはねぇよ」
大風呂敷を広げてはみたものの、俺は直後に前言を翻しざるを得なくなって代替案を提示しておいた。
「限られた人員しかいないことを考えれば、総武校内を漁ってから外に出る方針そのものは間違ってないと俺も思ってる。
近いところからはじめて、その中にいなかったら範囲を広げていけばいいことだしな」
嘘が嫌いな俺が、口先だけみたいなこと言い出したのには当然の如くワケがある。
それは・・・情報収集するには奉仕部は人員が不足しすぎているからだった・・・。
――我々は、一つの依頼を妥協案で解決した。しかし、これは敗北を意味するものだろうか? 否! 始まりなのだ!
リア充な捜査対象である葉山の交友範囲に比べ、我が奉仕部のメンバーはたったの3人しかいない。にも関わらず今日まで依頼を達成してこられたのは何故か?
諸君! 我が奉仕部に持ち込まれた依頼の数そのものが少なかった上に、身内だけで解決してしまえる小規模な事件しか持ち込まれなかったからである!
諸君らが愛して止まない葉山隼人の依頼は妥協案で解決せざるを得ない。なぜだ!?
・・・人数が少なすぎるからッス。いや、本当に。決して俺とか雪ノ下が坊やだから甘えてるわけじゃないんで特攻させないで下さい赤い服着た英雄さん。ああいうのはリア充だけにやって、お願いだから。
「比企谷くんの言うことに従うわけではないけれど、限られた人員を効率的に配分して調査対象を調べ上げるのが捜査の基本なのは確かだわ。
葉山君、とりあえずその人たちのことを詳しく教えてくれるかしら?」
俺の微黒さに当てられたからなのか、雪ノ下が氷のオーラの勢いを弱めさせて葉山に向き直り調査対象という名の粗探し相手について詳細な資料提供を、調査対象たちの親友自身に提示を求めた。
すると葉山は意を決したように顔を上げて、瞳に信念を宿すと友にかけられた疑いを晴らそうという崇高なる信念のもとで彼らの無実を証明するための証言を雪ノ下裁判長に供述し始める。
・・・今思ったんだけど、身内からの証言って証拠能力あったっけ?
なんかメチャクチャ不毛なやり取りが始まりそうな気がしてきたから、イヤになったんで帰っちゃダメなのかなこの状況下・・・。
そうして始まった雪ノ下裁判長VS葉山弁護人との戦いは、結果を予測するまでもなく雪ノ下裁判長の勝利で終わり(勝敗決めるの裁判長だからな・・・)
「葉山君の話だとあまり参考にならないわね・・・」
と、散々話させて非難しまくっておいて「何の役にも立たない情報提供だった」とぶった切るまでしてみせた雪ノ下雪乃裁判長は、俺たち見ていただけの傍聴人まで巻き込んでくれだしたのだった。
「由比ヶ浜さん、比企谷くん。あなたたちは彼らのことどう思う?」
「え、ど、どう思うって言われても・・・」
「俺はそいつらのことよく知らんからな。むしろ、名前を今はじめて知ったばかりだし」
「・・・そこまで薄情なのはさすがにどうかと思うのだけれど・・・まぁいいわ。じゃあ調べてもらっていいかしら?
職場見学のグループを決めるのは明後日よね? それまで一日猶予があるんだもの、調査だけなら十分な時間だわ」
「・・・・・・ん、うん」
雪ノ下に言われて、由比ヶ浜はちょっと戸惑いの表情を浮かべる。
まぁ、クラス内で仲のいい友達グループの素行調査なんて外部の人間から頼まれてやっちまったら普通に裏切りだもんな。そりゃ嫌がるだろ普通に。
「俺がやるよ。別にクラスでどう思われようと気にならんし」
そうなると適材適所という奴が重要になってくる。リスクとリターンを考えるなら適任者は由比ヶ浜より俺の方が少しぐらいはマシになるだろ。
俺が柄にもなく自分から立候補すると、雪ノ下はちらっと俺を見てくすっと微笑んで。
「・・・あまり期待せずに待ってるわ」
「ああ、そうしてくれ。期待されても応えられる自信がないから困ることしかできねぇし」
「・・・・・・」
「一応、引き受けた事の前半分、クラスでどう思われても気にならないって部分までは確約できるんだけどなぁ」
「・・・・・・そうね。前半分については私も比企谷くんの保証を心底から信じて任せられる自信があるものね。後ろ半分についてはあんまり期待できそうにないのが残念だけど・・・」
「なんか言語表現が微妙にランクダウンしてたぞおい」
まったく失礼な奴だ。人の粗探しは俺の百八ある特技の一つだというのに。
ちなみに他の特技だと「あやとり」とかがある。金も友達もない小学生は家であやとりをするしか出来ることがなくて上達する。の○太くんの時代から続いている日本の伝統芸能である。
伝統だからこそ守り抜きたい、このボッチライフ。
「ちょ、ちょっと! あたしもやるよ! そ、その、ヒッキーに任せておけないし!
それに、それにっ! ゆきのんのお願いなら聞かないわけにはいかないしね!」
由比ヶ浜が顔を赤くして語尾をごにょごにょさせながらも、次の瞬間には拳をぎゅっと握って雪ノ下に超接近して、迫られた雪ノ下は「・・・そう」と顔を背けながら夕焼けとは別の色に染まった頬を朱に染めている。
そんな二人の様子を見ていて葉山が爽やかスマイルで笑う。
「仲良いんだな」
「・・・そうか?」
俺は懐疑的な表情を浮かべて疑問の声で返してやると、葉山は俺にも笑顔を向けながら褒めるように言ってくる。
「もちろん、ヒキタニくんもだよ」
いい笑顔で言ってくれるが、葉山よ。
目の前の二人が友情のため調べ上げようとしているのは、お前の身内の素行調査なんだけどな?
あと、いい加減人の名前を読み間違える礼儀知らずをやめんかい。どこの坂本辰馬だ、このヤロウ。
それともここは平塚先生風に、ストレイト・クゥーガーの方がたとえとして正しくなるのかな? 先生曰く、この部室は隔離病棟みたいなものらしいからな。
彼女の独断と偏見でしょっちゅう宇宙の法則が乱されるから、判断基準を決めにくいのが難点である。
翌日の教室で、由比ヶ浜が燃えていた。
そして、無駄な熱量を発散するだけで何の成果も上げられぬまま、虚しく鎮火させられていっていた。
――まっ。判りきってた結果だから、いいっちゃいいんだけどな。
話題を昨日に戻して根本的な話しをするならば、なぜ奉仕部のメンバーが調査や捜査をするのに人員が足りないのか? と言う問題についてこう答えられるだろう。
・・・適正のない人間しか部員にいないから・・・。
まさにこれが致命的な問題だった。
現実の警察がよく行う捜査は、基本的に人海戦術で大量の情報を片っ端から取ってきて、玉石混合した中から宝石のみを探り出すのに特化して育成されたエリートたちによって容疑者が絞られていく二段構えが基本形になっている。
頭を使う連中と、足を使いまくる連中とで役割分担して互いの得意分野を活かしているわけだな。この場合、頭を使う頭脳労働担当の方が数が少ないのは考えるまでもない。頭数をそろえるだけじゃ戦力にならん分野だからだ。
そして現状、奉仕部メンバーの内訳は、頭脳労働が得意な文系と理系が一人ずつ。ただしどちらもコミュ障気味で、自分が欲しいと思った情報を自分で取ってくるのが超苦手。
残る一人はコミュニケーション能力の高い会話に不自由しなさそうなリア充だが、基本的にはアホであり、欲しい情報を手に入れてくる話術と頭脳がない。熱意だけが空回りしている。・・・あと人海戦術の役職なのに一人だけだ。頭脳労働系よりも少ねえ・・・。
ようするに奉仕部には、今回の依頼を達成できる条件が揃った人材が一人も在籍していない。
由比ヶ浜のときや戸塚のとき、あと前例として採用していいのか微妙だが材木座とかと比較していい問題では全然ないのである。
前提条件が変われば、達成可能条件も上限も変化していくのが当然だし、その変化に対応できるほどの多様性が奉仕部にはほとんどない。
「変われ変われ」と言うだけで自分は変わろうとしないソレスタルビーイングな部長が火元責任者になってる部活動だもんなぁー。そりゃ変化には弱いだろう、普通に考えて。
「悪い、ちょっとごめん」
そんなことを考えていた俺の方へと葉山がやってきて話しかけてきた。
「・・・んだよ?」
「いや、なんかわかったかなって思ってさ」
「いいや・・・」
と言うか、たった一日(もう少し具体的には半日未満)で何が判ることを期待されたんだろうな、俺たち奉仕部って。
あと、もし仮に今まで一緒にいた葉山が気付かなかったことを、昨日の今日で赤の他人の俺が気付いてしまった場合、俺は声に出して言ってしまっても大丈夫なんだろうか? 却って関係がこじれそうな気がするのは俺の考えすぎる誇大妄想なのか?
・・・まぁ、仕方がないか。当初の想定通りにあの手でいこう。アレが一番楽だし、面倒がなくていい。
「・・・謎は全て解けた! 推理を披露するのは放課後の奉仕部部室でだ!」
こうして、俺の推理もどきの脚本通りな演技と詭弁によって葉山グループの危機は免れた。
どうやったかと聞かれたら。
「や、おはよ。おかげで丸く収まったサンキュな」
そう言って近づいてきた葉山の言葉に応えることなく黒板の方へと視線を向けると、葉山の愉快な仲間たち三人が微妙な表情を浮かべ合って自分の名前を自分たちのグループの一員として記している姿が目に入ってきた。
俺が提案したのは、今回の職場見学で葉山が三人の誰とも組まないことを本人の口から明言させる、という手法だ。
取り合っている葉山がいなくなれば、普段コミュニティ仲間としか行動しない彼らにとって組める相手は互いしかいない。
誰が葉山と一緒にいるためスパムメールを流したのか? あるいは全員か? それとも全員無実なのか? そんなことを言ってる余裕は時間的にもない状況下で選択の余地などどこにもない。彼らは否応なしに互いに手を取り合ってリーダーの葉山に捨てられた者同盟を築く以外にボッチになる道から外れる術はなかったわけである。
「別に俺はなんもしてねぇよ」
「そんなことないって。ああ言ってくれなきゃたぶん今もまだ揉めてただろうし。
俺があいつら三人とは組まないって言ったら驚いてたけどな。これをきっかけにあいつらが本当の友達になれればいいなってそう思うよ」
「・・・・・・そーだなー」
棒読みで返すだけの俺。
いや、正直ここまでいい奴だと何かの病気か何かかと思えてきて困るんだけどな。
――だって俺、今回本当になにもやってないぜ?
あいつら三人とも、互いが互いに何やってるか知らない上に確かめようがない状態になってたから、そのままなし崩し的に無かったことにさせちまっただけだからな、本当に。
実証できない犯罪なんて、起きてないのと同じだ。人が殺されても死体が見つからない限り、殺人事件は成立しないのと同じようなものである。
被害者が被害届を出すから、事件は事件として成立して捜査がはじめられる。
被害者たちが裏でコソコソ暗闘し合っているか、互いに疑心暗鬼に陥って「相手が何かやってるんじゃ無いか?」と疑いあってるだけの状態なら、被害者たちそれぞれの勝手な解釈でどうとでも決着はつけられる。
「アレはきっとコイツがやって来たことだと俺は知ってるけど、証拠がないから実証できない。証拠もないのに犯人扱いするのは可哀想だしな。
ここは俺が気を遣ってやって無かったことにして、握手の手を差し伸べてやるか。優しくて大人だなー、俺って。さすが俺」
・・・おそらくは、こんな感じの内容を三人とも相手に対して抱きながら握手を交わし合っているんだろう。
そんなもんだ、葉山と組むつもりだったのにドタキャンされて余り者と組むしか無かったから組んだだけな即席の人間関係なんて。
三分で作ることが出来るインスタントな関係性なんて、三分で伸びる。そして不味くなる。
即席麺の友情を永続的に続けていきたいのなら、早いところ本当に仲良くする理由でも探してみることだな、葉山以外にさ。
赤の他人の差し出口がなけりゃ仲良くなれなかった人間関係に、本当の友情なんてものはない。今の時点では受け皿としてできた入れ物だけがある状態。中身を満たせるかどうかは本人次第。
まぁ、頑張れや。どのみち他人事の俺にはこっから先は関係ないし、出来もしない。
「ありがとう。それでさ、俺、まだグループ決まってないんだけど、一緒にどう?」
「・・・それは嫌味か? それとも皮肉なのか? 俺は今、この手を振り払ったら残っているのが女子しかいない教室内でボッチになっている男子生徒状態なんだが・・・・・・」
「あ・・・」
一日だけあったグループを決める前の余裕を、葉山グループのために費消した俺に選択肢などどこにも残されてはいなかったことに昨日の夜気がついた俺は、人を呪わば穴二つと言う言葉の意味をようやく正しく理解できたのだった。
・・・葉山グループの呪いで出来た穴に落ちた二人、俺と葉山。
人を呪わば互いを落とすために掘った穴二つ。
だが、掘られた穴に落ちるのは、落ちようとした者たちを救おうとした善意の考えなし二人である。
――そういう意味の言葉だったんだろう。昔の人はよく分かっているよな、嘘だけれども。
つづく