俺ガイル二次作   作:ひきがやもとまち

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やはり俺の青春ラブコメはひねくれている。第2話

「ーーなるほどね、今までの会話でよく分かったわ。

 私が見たところによると、どうやらあなたが独りぼっちなのってその腐った根性と捻くれた感性が原因みたいね」

 

 しばらくの間、沈黙をおいた後。雪ノ下は気を取り直したように話を仕切り直してくれた。正直言って助かったと思ってる。・・・さっきまで続いていた微妙すぎる沈黙の重みはマジきつかった・・・・・・。

 

「いや、それ言い出したらお互い様って事になっちまわないのか?

 2年J組は女子生徒が大半のエリートクラスなのに、そこに所属している学年主席が放課後の空き教室で一人本読んで過ごす部活動やってるって時点で独りぼっちの問題抱えてんのは俺じゃなくて雪ノ下の方だと思うんだけど・・・・・・」 

「・・・・・・(キッ!!)」

 

 ・・・また睨まれた。なんかこの人、イヤなことがあると直ぐにブリザードの視線を送ってくるんだけど、言葉自体ではあんまり反撃してこないのは何故なんだろうか?

 オフェンス時には生き生きしながら攻めてくるのに、凌がれて反撃されるとアッサリ崩れるあたりが超攻撃型で防御なんか「俺の性には合わない!」とした相楽左ノ助を思いだしてしまった俺は、世代違うけどあの頃のネタ詳しかったりする引き籠もり系ゲーマースキル持ち。

 

「・・・ふん。ーーこれで、とりあえず人との会話シミュレーションは完了ね。

 私のような女の子と話が出来れば、大抵の人間とも会話ができると思うわ。少しは更正したんじゃないかしら?」

 

 再び気を取り直した雪ノ下からの、右手で髪を撫でつけながら放たれる極上スマイル。

 慈愛に満ちた微笑みを前に思わず背中の羽を幻視してしまいそうなったが、よく考えてみれば今の言葉って『自分よりかは他人の方が話し易くて難易度が低い。ラスボスの攻撃を受けた今なら、そこらのモブがしてくる攻撃なんて屁でもないわ』って事になっちまうんじゃないだろーか? 言わないけどな。下品すぎるし。

 つか、どう考えても今のやりとりでは雪ノ下の方に更正の必要ありだと感じたのは俺だけなんだろうか・・・・・・?

 

「いや、ごめん。特殊例すぎてあんまし普通の女の子たちと話すのには役立ちそうにない経験だったんで、活かせる自信ないです。更正するためには、もう少し公正な普通の女の子シミュレーションをやらせて欲しいとお願いしたい・・・・・・」

「・・・・・・(ギッ!!)」

 

 ・・・もう勘弁してくれないかな、マジで・・・・・・。

 

 と、心の中で打電していたSOS信号が聞こえてでもいたのか平塚先生が「雪ノ下。邪魔するぞ」と言いながら荒々しくドアを引いて無遠慮に入ってくる。

 

「ノックを・・・」

「悪い悪い。まぁ気にせず続けてくれ。様子を見に寄っただけだけなのでな。

 しかし、どうやら比企谷の更正に手こずっているようだな」

 

 ため息混じりの雪ノ下に鷹揚な態度で微笑みかけながら壁によって背を預ける平塚先生。一見するとマンガみたいで格好のいい絵になるポーズではあるのだが。

 

「・・・って言うか、先生。今の今まで教室の外でずっと近くから中の話に耳傾けてたでしょ。あまりにもタイミング良すぎますし、なにより出てってから全然時間が経ってないですし・・・」

「うっ!?」

 

 あからさまに狼狽えまくる平塚先生。・・・どうして気付かれないと思っていたのか不思議でならない。

 普通に考えて初対面の生徒同士の会話が一段落するまでの間に、出てってから帰ってくるまでにこなせる社会人の仕事なんて実在しないことぐらい誰でも分かると思うんだけどなぁ・・・。

 

「ち、違うぞ比企谷? 私は本当に仕事のついでで寄っただけであって、ここに来るのが本命の目的などではなくてだな・・・」

「じゃあ、その仕事内容いってみてください。言える範囲の概要だけでいいんですんで」

「職務規程により教師の仕事内容の詳さ・・・い・・・を・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ・・・・・・この人、焦りすぎて話し最後まで聞かずに自分から墓穴掘りやがったよ・・・。

 どうすんのこれ? どうすればいいの、この状況・・・・・・。ぼっちには解消不可能な微妙に重い空気に包まれた空き教室マジ居心地悪すぎるんですけども・・・・・・。

 

「本人が責任を自覚していないせいでしょうね。・・・・・・平塚先生と同じように」

「ちょっ!? 雪ノ下! お前まで私のことを問題児扱いするつもりなのか!?」

「では、まず部屋に入るときにはノックをするという常識を覚えてください。社会人として守られて然るべき当然のマナーです。

 それをしなくても問題ないと思いこんでいる点が問題ないと言い切れる理由と根拠についてお聞きしてみたいのですけれど?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 平塚先生、四面楚歌ならぬ二面楚歌状態。

 格好付けたくてタイミング計ってから入ってきたのかもしれんが、完全に逆効果だった。逆効果すぎていた。・・・飛んで火に飛び込むムシケラみたいになっちゃってるんですけど、ここは俺がフォロー入れなきゃダメなところなん? めっちゃくちゃ入り込みたくない雰囲気MAXなんだけどなぁ・・・。

 

 

 ーー仕方がない。少し真面目な話をすることで場の空気を重くしてみよう。

 今の場に満ちてる空気はちょっと・・・微妙すぎてて息苦しい・・・。

 

 

「そうじゃねぇんだよ。なんだ、そのー・・・変わるだの変われだの他人に俺の自分を語られたくないんだっつの」

「あなたのそれは逃げでしょ?」

 

 はい、そうです。この場の微妙な空気から逃げ出そうとしてました。でも、本当のこと当事者本人から指摘されたんで言えません。誤魔化します。

 

「変わるってのも現状からの逃げだろ。どうして今の自分や、過去の自分を肯定してやれないんだよ」

「それじゃあ・・・・・・」

 

 俺の言葉の何に刺激されたのか、雪ノ下の声にまでブリザードの冷気が混じる気配を感じさせられる。今までの毒舌とは違い、どこか切実さを感じさせられる心からの言葉ーー少なくとも今の俺の耳にはそう聞こえた気がした。勘ですらない、本当にただそう思ったってだけだったから言うつもりはないけどな。

 

 

「それじゃあ悩みは解決しないし、誰も救われないじゃない」

 

 

 『救われない』。そう口にしたときの雪ノ下の怒ったような表情には鬼気迫るものがあって、思わず俺は怯んでしまう。

 なんなら「ごごごごめんなさい!」と謝ってしまいそうな心理状態だったのだが、身体に染み着いた『捻くれ癖』がこんな時でも全周囲に自動感知、自動対応してしまい余計な一言をまたしても口にしてしまう。ーーもういい加減黙ってくれ、俺の口。今日はさすがにシンドいから。

 

 

「い、いや・・・変えようとしてくれてる今の俺の現状が救いから一番遠い、救済を掲げる聖者に追いつめられてる、よくある主人公的窮地にある訳なんだけど・・・・・・?」

「・・・・・・はっ」

 

 急に正気に戻ったような声を出す雪ノ下。・・・マジで興奮して我を忘れてたんだな。次からはこの地雷は避けて通ろうと心に決めた俺、危険からは逃れる保身に長けた小悪党比企谷八幡、高校二年生。

 

「二人とも、落ち着きたまえ」

 

 微妙な空気じゃなくなったけど、剣呑な空気にはなりかけてるっぽい現状になってからようやく調停に乗り出してくれた平塚先生。・・・と思ったら。

 

「面白いことになってきたな。私はこういう展開が大好きなんだ。ジャンプっぽくていいじゃないか」

 

 真逆だった。たんに煽りに来ただけだ、この人。生徒同士で揉め事が起きたときの調停役として機能する意志が微塵もねぇ。第三者視点の野次馬根性でビール片手に見物して楽しむ気満々だ。

 

 古来より読者とは、作者の書いた作品群に自分の主観でいろいろ言ってきはするが、決して責任を問われることがない立ち位置につけられた名称である。

 

「古来より、互いの正義がぶつかったときは勝負で雌雄を決するのが少年マンガの習わしだ」

「なに言ってるんですか? 古来の人々に少年マンガの文化は存在しませんけど・・・」

「たとえだよ! た・と・え! 比喩表現だと言うことぐらい言われずとも察しろ! 高校生だろ!?」

「は、はぁ・・・」

「・・・・・・・・・うざ」

 

 小声でつぶやかれた雪ノ下の毒舌が、平塚先生の耳に届いてないことを祈りたい。他の誰より先生自身のプライドを守ってやるために・・・!!!

 

「つまり、この部でどちらが人に奉仕できるか勝負だ!

 勝った方が負けた方になんでも命令できる・・・という条件付での勝負はどうだ?」

 

 強引すぎる・・・。あと、教師の言っていい内容を逸脱しまくり過ぎている・・・。

 あ、後それからもう一つだけ。

 

「先生、その勝負方式だと相手の命令に自分がどれだけ奉仕できたかで競った方が白黒付けやすいのでは? どのみち勝負終わったら勝った方の言うことを負けた方が聞かなくちゃいけなくなるなら結果は大差ないような気が・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「と言うよりも先生、ボランティア目的の部活動で奉仕を競い合わせるという矛盾について聞いてみたいんですが、あなた一体うちの部の活動内容をなんだと思ってらしたんですか? 

 優れた人間には哀れな者を救う義務があると仰っていたのは先生のはずですけど・・・完全に見返り求めさせてますよね、その奉仕勝負で競わせて優劣を決めさせると言う方法論」

 

 

「う、う、う・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっん!!!!!!!

 理屈ばっかり言って熱血のすばらしさを忘れやがって!

 これだから理系と文系の頭いい奴らはイヤなんだぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」

 

 

 だだだだだだだだだだだだっ・・・・・・・・・!!!!!

 

 

 

 ・・・・・・嵐のごとき勢いで走り去ってしまって平塚先生。

 あの人はほんと・・・なにしに来てたんだ? いったい・・・・・・

 

 

「・・・悪い人ではないのだけれどね、頭も人柄も。

 ただ・・・ノリと勢いでの言動が目立ちすぎると言うだけで・・・・・・」

「ああー・・・なる、ほど・・・」

 

 大いに納得させられる俺。

 要するにあれだ、ドラゴンボールZの名台詞を無印みたいな展開の時に言ってしまう奴と同じ原理だわ、たぶんだけども。

 

 シリアスバトルが大好きなのに、自分の性質自体はギャグの方が合ってるタイプの人。好きなものと自分のキャラとが合ってないタイプとでも言えばいいのかなー。・・・なんかそう言うのだよたぶん。うん、きっとそう。

 

 

 結局、平塚先生の醜態によって微妙すぎる空気がどうしようも出来ない水準に達したため今日はお開きと言うことになった。

 

 

 もうホント・・・あの人は一体ぜんたい何をやらせたかったんだ?

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