近い内に正式な書き方で書いた次話を投稿して謝罪の証とさせていただくつもりでおります。申し訳ございませんでした。
奉仕部に強制入部させられた翌日のこと。
ホームルームを終えて教室から出た俺を、平塚先生が待ち構えていた。
腕を組み、仁王立ちになった姿はさながらドラクエのモンスターみたいで、杖とか持たせたら似合いそうな気がしなくもない。
って言うか、ホームルーム終わった直後なんですけど、なんで既にスタンバってんの? 暇なの? 自分が担当しているクラスとか授業とかなかったとしても授業が終わるまでは仕事してくださいよ先生。
まぁ、学校なんて言っても働いてる人にとっては、ただの勤め先だからな。会社と同じで自分の仕事が終わったら先輩とかが仕事してても「定時になったんで帰りま~す」が若い社員の基本スタイルなのは同じなのかもしれないが。
「比企谷。部活の時間だ、行くぞ」
そう言って平塚先生は「にこり」と無機質な笑顔を浮かべて俺の腕を取って肘関節を決めてホールドし、奉仕部の部室へと強制連行されていく。
先生の胸に肘が当たっているけど嬉しくない。痛みの方が先に立つ。痛みより胸の感触を優先できる性欲過剰な対応はラブコメラノベの主人公たちに求めてもらうしかない。もやしっ子の俺じゃ無理。
「あの、先生。別に逃げたりしないんで離れてもらえませんか? 俺一人でも大丈夫ですよ?」
「そう寂しいこと言うな。私が一緒に行きたいのだよ」
ふっと先生が優しげに微笑んだのを見て、俺は若干キョドってしまう。
「いえ、その・・・こんなところ誰かに目撃されて、俺が平塚先生と知り合いなんじゃないかとか誤解されて噂されたりすると恥でしかないんで・・・」
「乙女みたいな態度で言うに事欠いてそれか!? せめて仲良いんじゃないかと噂されるのを恥ずかしがって欲しかったぞ本当に!!
と言うか誤解も何も、私とお前は歴とした知り合いだろうが!?」
誠に不本意ながら相手の言っていることは事実ではあるので、俺としてもそれ以上の抵抗や反論を続けることは出来ず大人しく力尽くで連行されるに任せるしかない。
ここら辺もドラクエだよな、しょっちゅう自動操縦でサブキャラの後を付いてかされるシーン多いし。
「まったく・・・さっきの言い訳といい君は捻くれているなぁ・・・。捻くれすぎて秘孔が逆の位置にあるんじゃないかと? 聖帝十字陵とか作るなよ?」
あんたジャンプの読書率高すぎるだろ・・・。いくら銀さんが『男はいくつになっても心は少年のまま』って言ってたからって、年齢イジられそうなネタを自分から提供しなくてもいいでしょうに・・・。
「もう少し素直なほうが可愛げがあるぞ。世の中を斜に構えていても別に楽しくはないだろう?」
「少なくとも俺は楽しいですね。むしろ、男が可愛さ振りまく世の中なんて真っ正面から見たくありませんし、斜めからじゃないと見たくないです。気色悪い」
「いや、そういう意味で言ったのではなくてだな・・・? ――ハァ。斜に構えているのは若者にはよくあることだが、君のそれはもう病気だな。やはり君は『高二病』だ」
平塚先生から、とっても素敵な笑顔で勝手に病気と決めつけられてしまった。しかも聞いたことのない病名で。
なに、その奇病? 鼻の長い麦わら海賊団の狙撃手が考えた脳内設定病気?
「君、マンガやアニメは好きかね?」
「まぁ、嫌いではないですね。
もっとも、しつこいぐらいに北斗の拳やスクライドの番宣しまくる熱狂的ファンの人と比べたら、にわか以下なんだろうなーと自覚できる程度ではありますけどね」
「ゴホンゴホンゴホン!! ・・・えーと、コホン。――では、一般文芸はどうだ? 東野圭吾とか伊坂幸太郎は好きかね?」
「読んじゃいますけど、あんま好きになったことはありませんね。なんか合わなかったんで。売れる前のほうが、まだしも性にあってた気がします」
「好きなライトノベルのレーベルはどこかね?」
「ガガガ・・・・・・と、初期の電撃文庫。それから講談社BOX。まぁ、最後のがラノベかどうか知りませんけど」
「ふむ・・・君は本当に悪い意味で期待を裏切らないな。立派な高二病だ」
先生は呆れた様子で俺に顔を向ける。
「だから、高二病ってなんだよ・・・」
「高二病は高二病だ。高校生にありがちな思考形態だな。捻くれてることがかっこいいと思っていたり、『働いたら負け』とかネットなどでもてはやされているそれらしい意見を常に言いたがったり、売れてる作家やマンガ家を『売れる前の作品のほうが好き』とか言い出す。みながありがたがるものを馬鹿にし、マイナーなものを褒め称える。そのうえ同類のオタクをバカにする。変に悟った雰囲気を出しながら捻くれた論理を持ち出す。一言で言って嫌な奴だ」
「お、おおぉぉ・・・・・・」
思わず俺は目をパチクリさせて相手を見つめ返してしまった。
一応言われたことへの反論も考えてみたが、全く思いつかない。
これは・・・奇跡だ!!
「スゲぇ・・・“あの”平塚先生が言ったことが大体合ってる・・・ッ!! 明日は雨か槍が降ってくるんじゃないですか!?」
「私の言うことは普段からそこまで滅茶苦茶で、見当違いな暴論だと思ってたのかお前は!? せっかく褒めてやったのに褒め損した気持ちになってる私の傷心を返せぇ!!」
俺は思わず心からの賞賛を平塚先生に投げかけてしまっただけなのだが、先生のほうは微妙に納得がいかなかったらしく噛みつくように反論してこられた。
もし奉仕部の部室に監視カメラが設置されていて、昨日の映像を録画保存してくれているのなら今すぐ証拠VTRを持ってきて彼女に提供したいところなのだがないものは仕方が無い、諦めよう。無い物ねだりは子供だけで十分だ。
「まったく・・・近頃の生徒は実に器用で上手に現実と折り合いをつけてしまうから教師としては張り合いがなくて、工場で働いてるような気分になるから考えることを放棄しないお前のような人間は好きだと言ってやるつもりだったというのに、全くお前は捻くれてるぁ本当に・・・」
「ハッ。近頃の生徒は、ですか」
思わず苦笑してしまった俺は、続く言葉で論破しようとしてやろうとしたところで平塚先生がジッと見つめてきていることに気づいて思いとどまる。
「何か言いたそうにしているが、君のそう言うところがつくづく高二病だと私は思うよ」
「・・・・・・そ、そうっすか・・・」
「勘違いしないでほしいのだが、私は割と比企谷のことを本気で褒めている。お前のような人間は好きだよ。捻くれていると思っているのも本当だが、ね」
「・・・・・・」
好きだ、と直接的に言われてしまうとこちらとしてはうぐっと言葉に詰まるしかない。この状況下でとても言える言葉ではないとを言おうとしたなどとはとても口に出来ない。
仕方が無い、さっき思いついた言葉は墓の下まで持っていく死語確定ってことで容認しておこう・・・。
「ああ、念のために一応聞いておきたいのだが。さっきお前何言おうとしてたんだ、比企谷?」
「・・・・・・オバサン教師役が多用したがる常套句だなぁ、と・・・ぐふぇっ!?」
答えるや否や拳が飛ぶ。ごすっと抉り込むように打たれたボディブローが決まって、俺はリングじゃなくても立っていられなくなり廊下に沈む。・・・言えっていったの、あんたじゃなかったのかよー・・・。
「はぁ・・・つくづく比企谷は捻くれているなぁ・・・。そんなだから君だからこそ、高二病だとさっきから言ってやっているのだからな? 本当に解っているのか全く・・・」
「ゲホッ、ゴホッ、・・・そ、そうは言いますけどね平塚先生・・・」
弱々しくフラフラと立ち上がりながら、弱々しい声で俺は反論というか質問をする。
「そもそも、その高二病ってなんなんですかね? 根本的な部分がよくわからなかったんですけども・・・」
「・・・なに? さっき一度説明してやっただろう? 忘れたのか? 仕方ない、もう一度言ってやる。『高校生にありがちな思考形態で――』」
「ああ、いえいえ中身の話じゃなくて。名前の話です。なんで高二病なのかと不思議に思いましたんで」
「・・・・・・??? すまん、よく質問の意味が分からなかった。どういう意味の質問なんだ? それは・・・」
「いえ、ですから・・・」
痛む腹に頭痛の痛みをさらに加算させられて地味にキツい中で、俺はなんとか相手にも解りやすく説明できるよう無い知恵を必死に巡らせてみる。
「言ってる内容は正しかったと思いますし、俺にも当てはまってる部分は多かったなぁとは思ってるんですが・・・なんで『高二』にピンポイントで限定している病名なのかなと疑問に思いましたので聞いてみたんですよ。
別に高一でも、高三でも中三でも中一でも、それこそ小五や小四の奴らだって今どき似たようなガキがいっぱい大量生産されてる時代ですし、間口を広げればネットでもてはやされるようになった『働いたら負け云々』とかの言葉を最初に売り物として本やテレビで偉そうな顔して語ってたのは大手新興企業の若手実業家とか業界の革命児とかいうクリエイターとかであって、高二だった過去はあっても今は高二じゃない奴ばっかでしたのでね?
それで、どうして今の俺の学年である高二にピンポイントで絞って命名したのか聞いてみたくなったんです。ただそれだけですよ。
正直、俺に当てはまる特徴だけを病状として採用した平塚先生オリジナルの病気設定で責められると、俺には反論する余地なんてどこにも残ってるはずないんで考えるだけ無駄でしたし、それだったら名前の命名理由でも考えてたほうが少しはましかなと思いましたので、それで・・・・・・あれ? 先生? 平塚先生? もしも~し?」
ズンズンズンズンズン!!!!
「これで勝ったと思うなよ、比企谷!!!
私はやはり、可愛げのない子供なんて大っ嫌いだ――――――ッ!!!!!」
ダダダダダダダダダダダッ!!!!!!!!
・・・行ってしまった。相変わらず嵐みたいな人だったな、天災的な意味でだけど。
あー、しかし。これからどうするか・・・?
とりあえずは一先ず――
「・・・奉仕部の部室行っとくか・・・」
他に行く宛もない、放課後を誰かとティータイムする仲間も友達もいない捻くれぼっちで帰るタイミングを逃した俺は、仕方なしに比較的近くまで来てしまってた奉仕部の部室へと向かって歩き出す。
俺にとっての部活動、空き教室内にボッチたちが無意味に集まって、無駄に時間を潰すだけの奉仕部で過ごす日々は、こうして始まっていたのであった。まる。