もしエロ作の更新待ってる方がいた場合には、申し訳ありません…。
「さて、君たちの最初の仕事はオリエンテーリングのサポートだ。一緒に行動してトラブルのないよう見守ってくれ」
という平塚先生の言葉で始まった俺たち奉仕部一行と葉山グループの数人欠けてるメンバーによる小学生たち相手のボランティア活動。もしくは雑用、奴隷とも言うらしい(平塚先生談)
それが始まる前には、校長先生から「それではオリエンテーリング、スタート」という短いセリフの前振りとして「はい、みんなが静かになるまでに3分かかりました」と絶対計ってなかっただろ毎回3分しか言わねぇしな言葉を聞かされ、それに続く説教を聞き流させられ。
長ぇよとか、本題より長すぎるだろとか、そっち系のツッコミを心の中で罵声と一緒に言いまくる恒例行事もこなした後での話だったが、余談である。
小学校の頃は誰もが通り、誰もが学び身につける、説教好きな先生たちと上手くやる術を披露するだけのイベントだから特別なことは何もない。なので割愛。
「い~や、小学生マジ若いわー。俺ら高校生とかー、もうオッサンじゃね?」
「ちょっと、やめてくれない? あーしがババアみたいじゃん」
「いや、マジ言ってねーから! ちげーから!?」
山道から眼下に望む小学生たちがはしゃぐ光景を見下ろしながら、戸部が何気なく口にした一言に三浦さんが不機嫌そうに返して慌てて戸部がフォローするというプチ漫才を見させられながら俺たちも葉山に続いて山道を登っていく。・・・もう既に先導役のリーダー奪われちゃってますね。
って言うか、三浦さん。歳上げすぎ上げすぎ。中年から一気に老婆まで拡大解釈しすぎだから。実年齢20代中盤でオバサン呼ばわりされるのが大嫌いなラノベのお色気悪女キャラの言い分になっちゃってるから。高校生の時点で、どんだけ歳気にしてんだよこの人は・・・。
まぁ、化粧ケバいし見た目ソレっぽい人だなーとは思わなくもなかったが・・・思うだけで口にしないリスクリターンの計算だけは太鼓判を押されている俺は黙ってついてく道を選ぶ。
――敵対するのではなく、無視するだけなのも、上手くやってく術の一つである。比企谷八幡ココロの感想文。
「でも、ぼくが小学生くらいの頃って高校生は凄く見えたなぁ」
「小町から見ても、高校生って大人~って感じしますよ? ――兄を除いて」
そんな先の会話を受けてか、戸部を救ってやるためなのか、戸塚が懐かしそうに話し出して小町が乗っかり、最後に兄をディスるいつもの展開。
それに俺がオチをつけて比企谷家のコミュニケーションは成り立っている。
「おい。俺、めちゃくちゃ大人っぽいだろうが。愚痴をこぼしたり、汚い嘘吐いたり、卑怯なことをしたり」
「ヒッキーの大人のイメージって、そんな悲しいものなんだ・・・」
「・・・・・・いや、ほんと言うと場に合わせて十五の夜っぽく子供が抱いてる大人のイメージ使って語ってみただけだ。あいつらも多分みんな気づいてるぞ? 気づいてて無視し合ってるだけで。
嘘吐きあって、陰口言い合って、卑怯なことして身を守るのが子供の処世術ってもんだ」
「ヒッキーの子供のイメージって、そんな悲しい上に最底辺の扱いされてたの!?」
「・・・・・・相変わらず、完全には否定しづらいところが、この男の一番最低なところなのが面倒よね・・・」
「いやユキノン! そこは完全否定しておくべきだと私は思うよ!?」
小町と由比ヶ浜から散々に言われ、俺は二人よりももっと散々な言いようで扱き下ろし、そっちの話題好きな雪ノ下が乗っかってきて戸塚がクスクス笑ってフォローしてくれて話題終了。これが比企谷家+奉仕部で上手くやってくコミュニケーション術っす。
「――ねぇ、あの子たち何してるのかしら?」
やがて山道を進んでく途中で雪ノ下が小学生グループの一つが固まって何かに怯えている姿を発見し、「ちょっと見てくるよ」と不穏な空気に気づいた葉山が真っ先に駆けだしていくのを見送りながら、雪ノ下はちょっと不機嫌そうな表情でそっぽを向く。
・・・どうも雪ノ下は葉山に対して棘がある。俺に対してもトゲトゲだが、それは攻撃的な棘で、何か言う前には悪口言ってからじゃないと死んじゃう奇病みたいなもので、麦わら海賊団の狙撃手と同じ体質ってだけのレベルだが・・・・・・葉山への棘には排他的なものを感じさせられる。
俺と同じで、リア充アレルギーなのかとも思ったのだが、どうにも情がこもっていてアレルギーってのとはちょっと違う気がしなくもない。
何故ならアレルギーは体質だ。脊髄反射的に悪口言ってからじゃないと会話が始められない雪ノ下の奇病も体質の問題だ。どっちも感情は関係しねぇから多分アレルギーじゃねぇ。
なので俺がリア充アレルギーなのも体質ですんで治せません。平塚先生はやく諦めて。
「大丈夫、ただのアオダイショウだったよ」
『お兄さん、スゴ~イ!』
「平気だよ。噛まないし、毒もないから」
「噛まなくても触りたくないし~」
『ね~~☆☆』
そして総武高校でよく行われている、葉山love応援団によるエール大合唱・女子小学生バージョンが山の中で展開される光景を見せつけられるっと。
・・・やっぱただのリア充アレルギーが原因ってだけかもしれねぇな・・・。こんなモンこんな場所きてまで見せつけられたら、やっぱヤだし・・・。
――と、思っていた時期も俺には一秒前までありました。
「・・・ん?」
ふと、葉山エールのリア充ウゼ~オーラに目と意識を奪われて、視界から外れていた一人の生徒の姿が目についた。
「・・・・・・」
5人一組の班で、一人だけ輪から外れて離れた位置で背を向けている女の子だ。
すらりと健康的に伸びた手足と、紫がかっているストレートの黒髪、フェミニンな服装で周囲より垢抜けていて、首から提げたカメラを両手に持って「ギュッ」と俯きがちに握りしめている。
他の子供たちよりかは少し大人びた印象を受ける子だ。・・・あるいは、大人びて見せることで身を守らなければ生きていけなくされた子か、そのどちらかかもしれない。
「・・・・・・はぁ」
俺の横で雪ノ下が小さく溜息を吐くのが聞こえた。どうやら彼女も気づいてたようだ。
スタンド使いとスタンド使いが引かれ合うように、ボッチはボッチを発見する能力に長けているらしい。
――まぁ、「同類相哀れむ」とか「類友」とか、別の言い方もあるのかもしれんけども同じボッチとして、それは不許可だ。
スタンド使いがスタンド使いを厨二呼ばわりしないように、俺もボッチの悪口は言わない。リア充の悪口を心の中でソッと言うだけの平和主義を貫いている。口に出さなきゃガンジ~。
『お兄さん、チェックポイントってどこにあるの? 一緒に探してよ~』
「どこだろう? ――じゃあ、ここだけ手伝ってあげるね。でも他のみんなにはナイショな?」
『わ~~いッ♡♡』
そうこう下らんこと考えてる内に、葉山の方は葉山の課題を解決しちまったらしい。さすが葉山・・・、コミュ力高い・・・。小学生まで射程内とは守備範囲広すぎだろ・・・ストライクゾーンどんだけだよ・・・。
「ヒミツの共有」これも人と上手くやるためのテクニックの一つなのだろう。
なにしろ「みんなにはナイショな?」と教えてやった内容が、「他のみんなにはナイショだけど特別に教えてあげるね?」とか言って周囲に拡散していき、気づかない内に誰もがみんな知ってる「みんなにはナイショの話」が出来上がっちまってるのが社会ってものだからな。
ナイショの話として美談が広まれば「謙虚なイイ奴」として認知され、悪い噂として広まれば真相に関係なく「悪い事した癖して隠したがるイヤな奴」になり、堂々とやっても「少しは隠す努力しろよイヤな奴」になる。
どっちにしろ、彼らのご都合主義で決めつけられちまうのが青春を謳歌してる連中の悪徳である。
やはり青春とは悪であり、嘘でできている。比企谷八幡、心の中での感想文。
「お兄ちゃーん! 大変大変!!」
「どした、小町?」
「あのイケメン相手にしたら、お兄ちゃんに勝ち目ゼロだよ! 危険信号だよ!」
「フッ・・・甘いな小町。俺が葉山に敗れることなどありえない・・・・・・なぜならスペック差がありすぎて勝負を挑む気ゼロ以下だからな・・・リスクリターンを考える君子は危うきに近寄らない」
「お兄ちゃーん!? 諦めないで! ちょっとぐらいは抵抗して!? 落ちこぼれでも運次第で勝つこともたまにはあるからネバーギブアップ!!」
「うるせ。ほっとけ。超ほっとけ」
そして小町から余計なツッコミをもらって、超余計なツッコミまでもらって俺まで雪ノ下並みに不機嫌にさせられて話題も無理矢理終わらさせられ―――
「――たしかに大変かもしれない」
・・・と思ってたら、今まで黙り続けてた葉山グループ最後の一人の女子メンバーがいきなり話題に入ってこられて気圧されちまって捻くれ理論も展開している余裕もなく、
「ヒキタニ君、受けオーラ凄くてヘタレ受けって感じの見た目印象と違って、中身ドS天然外道の毒舌責めキャラだったし、葉山君の表面爽やか実はタカビーの纏綿ドSなエリート商社マン責めと被っちゃってカップリングが・・・・・・ああッ!でもでもそれはそれで新しい世界とジャンルが開けそうな気がッ!?」
「そ、そうですか・・・」
先手取られてBLトーク展開されて、入り込む余地どこにもなく、入り込みたい気持ちはもっとないし入らない話題を語られまくり、ドン引きさせられることになる俺であった・・・。
思えば、これが俺と彼女――海老名さんとの初会話だった。後から思い出せば感慨深くなるのかもしれないが、今この時点では二回目の会話が訪れないことを切に願う程度の苦手印象しか持たされようもないファーストインプレッションだったよな、本当に・・・。
・・・って言うか俺って、中身ドS天然外道の毒舌責めキャラだったんだ・・・初めて知ったわー・・・。わ~、ハチマン的にポイント超低ーい・・・。低くしたーいイヤすぎる評価だったわ・・・。
ま、それはそれとして置いといてだ。(少しだけ現実逃避と自覚はしている)
・・・やはり先ほどの女の子のことが気にかかる・・・。
「チェックポイント、見つかった?」
「・・・・・・いいえ」
葉山にしても気づいてはいたらしく、積極的にその子に対してはアプローチを続けており、俺が見ている前でも何度か「みんなと仲良く出来るきっかけ作り」に勤しんでいる姿が目に映っていた。
――しかし・・・。
「そっか、じゃあみんなで探そう。名前は?」
「鶴見、留美」
「俺は葉山隼人、よろしくね。あっちの方とか隠れてそうじゃない?」
そう言いながら、葉山は留美の肩に手を置き、背中を押して誘導していき同じ班メンバーの輪の中へと戻れるようにしてやっていく。
葉山・・・・・・SUGEEEEE!! そしてカッコYEEEEE!!!
「見た今の? あいつ超ナチュラルに誘ったぞ。さりげなく名前聞き出してるし。イケメンだけができる特権行使だよな。
ブサイクおっさんから同じことやられたら、『キモイ、あっち行け死ねば?』とか返されて人生終わってたシーンだったぞアレって」
「・・・あなたの捻くれた解釈も度を超しすぎてきた気がするけれど・・・見てたわよ。少なくともあなたには一生かかってもできない芸当ではあったわね」
「そして、お前にもだけどな」
ふっ、と雪ノ下が小馬鹿にしたように言った直後に俺が返して、キッ!と睨み付けられる毎度のパターンを山の中でまで繰り返す。一生かかってもリア充葉山と同じことできそうもない非リア充コンビの奉仕部メンバーな俺たちでっす。
「でも、まっ―――」
「ええ・・・・・・けれど」
期せずして俺と雪ノ下は同じ結論にたどり着き、葉山に誘導されて『みんなの中』に戻されていった鶴見留美の迎えさせられる終わり方――正確には葉山が去った後、ハッピーENDを迎えたはずの後に待っていた彼女の『その後』について、異口同音に同じ言葉で批評する。
「「あまり良いやり方とは言えないわね(だろうな)」」
案の定、葉山に連れ戻されてきた直後は暖かく迎え入れてくた“フリをしただけ”の少女たちは葉山がいなくなった直後から露骨にイヤな雰囲気を醸し出し始める。
あからさまに避けたりはしない。
いや、実際にはあからさますぎるほど非好意的な対応しかしてないんだけど、感情を露わにして舌打ちしたり、苛立たしげに地面を蹴ったり、入ってきたことを口に出して咎めたりとかの分かり易く判定しやすい、『自分たちが悪い証拠になるようなこと』は何もしない。
ただ、空気だけで『自分の意思で出て行け』と無言のまま語るだけだ。
声を荒げずに弾劾して、空気読めと強制して、『鶴見留美はみんなのために出て行かない勝手なヤツ』とレッテル貼り付け、『みんなで』それを守れば嫌われ者一人だけが排除されて他のみんなが幸せになれる優しい世界が完成する。
「やっぱりね・・・」
「やっぱ小学生でも、ああいうのはあるもんだよな」
「小学生も高校生も変わらないわよ。等しく同じ人間なのだから」
雪ノ下が、どこかしら切実さの籠もった声で世間一般が子供たちに対して抱いているイメージを酷評し、遠目に見た留美は誰にも話しかけず話しかけてももらえることなく自分と隅へと追いやられ、他の四人が時折振り返って彼女のことをクスクス噛み殺した笑いを浮かべて見下している。
そのことに他の子供たちも気づいているようだったが、誰一人として彼女たちの関係性に関わってこようとはしたがらず、気づいている素振りすら見せようとはしたがらない。
そういう、非言語的、非肉体的、非行為的な暴力で、今の圧力は成り立っている。
平塚先生が言うように、最近では肉体への暴力すると周囲が小うるさいから、こういう手段がオーソドックスになって、逆に分かり易い暴力なんて選ぶヤツは馬鹿扱いされて久しい昨今。
まっ、どっちにしろ見てるだけの他人共からはバカ扱いされてんだろうけど。見てるだけの連中は助けてくれるわけじゃないから見てるだけの連中でもあるわけで。
バカな虐め行為を見て「バカだバカだ」と論評して陰口たたくだけで黙認する大多数によって、こういう行為は維持されてくもんなんだろうな、きっと。
まぁ結局のところ、こういう問題ってのは。
「『隣の芝生は青く見える』ってだけが原因なんだろうな、きっと。
小町たち中学生から見た高校生が大人っぽく見えたように、汚い大人から見りゃ子供は純粋無垢で綺麗なもんだと思いたいから綺麗に見えてるだけで、夢を壊す現実は見たがらない。
んで、身近にいる実物の高校生の俺だったら、正しく汚い現実の姿を見ることできるって感じで」
「・・・・・・身も蓋もなさすぎて反応に困るのだけれど・・・・・・それが正しい人の見方のような気にもなってくるから、あなたは本当に面倒な人だと心からそう思うわ・・・・・・」
つづく