俺ガイル二次作   作:ひきがやもとまち

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やはり奉仕部にシェイクスピア(偽)がいるのはまちがっている。第2幕

 トントン。

 

「どうぞ」

 

 その日、放課後は部室に引きこもる『家に帰ると気まずくなる系』のボッチだった雪ノ下雪乃部長を筆頭に、ひねくれボッチの比企谷八幡と、己を前面に出しまくる系の厨二病ボッチなシェイクスピア(偽)の二名を新たな部員として加えた奉仕部は久方ぶりの来客――奉仕の依頼人を迎えたのだった。

 

 ガララ。

 

「し、失礼しまーす・・・。平塚先生に言われてきたんですけど―――な、なんでヒッキーがここにいんの!?」

「・・・いや、俺ここの部員だし・・・(つーか、ヒッキーって俺のこと? その前にコイツ誰?)」

「2年F組、由比ヶ浜結衣さんよね? とにかく座って」

「あ・・・っ♪ アタシのこと知ってるんだ♪」

「全校生徒覚えてんじゃねーの?」

「いいえ、あなたたちのことなんて知らなかったもの。でも、気にすることはないわ。あなたたちの存在から目を逸らしたくなってしまう、私の心の弱さが悪いのだもの」

「なるほどなるほど! では、その謝罪と懺悔を受け入れて許して差し上げましょう、雪ノ下さん。

 表現は悪いですが、成績的には取るに足らない由比ヶ浜女史のことは覚えているのに、文系だけとはいえ学年三位の男子生徒の名も顔も覚えることが出来ていなかったというのは、好き嫌いで物事を記憶するか否かを決めてしまう幼児性の現れですからなぁ。自分の子供っぽさから目を逸らしたくなる理由としては十分すぎるほど説得力を有しております。

 納得できましたので、どうぞ今後は我が輩のことなどお気になさらず、気の済むまでお忘れください奉仕部内限定の女帝殿」

「・・・・・・」

「ちなみにですが、我が輩は全校生徒だけでなく教職員から用務員に至るまで一人残らず余すことなく記憶しておりますぞーっ! 人間、いつどのような切っ掛けが原因になって面白おかしく化けるか想像できないところが最大の魅力たり得る生物ですからなぁ! ハッハッハ!」

「・・・・・・」

 

 今日もまた、シェイクスピア(偽)はシェイクスピア(偽)節を遺憾なく発揮しまくり、部長を務める雪ノ下雪乃の怒りメーターを押し上げまくっているのであった。

 

「・・・なんか――楽しそうな部活だねぇ!」

「お前それ、褒めてるつもりかもしれんけど、ただの皮肉にしか聞こえないから止めてやれ。いや、マジで」

 

 

 大変珍しいことに、八幡による他人を守るための気遣いによって由比ヶ浜結衣は雪ノ下雪乃に拒絶されることなく、奉仕部の客人になることが許されたのである。

 

 

 

「それにしてもヒッキー、よくしゃべるよね」

「あぁ?」

「ああ、いや何ていうかその! ヒッキーもクラスにいるときとは全然違うし-、なんつーかいつもはキョドりかたキモイし。安田君は・・・・・・いつも通りみたいだね・・・・・・」

「はっはっは! なにしろ我が輩、なんの役にも立たぬ、しがない厨二病患者ですからな!」

「・・・てゆーか、悪意なしでナチュラルに罵られた俺に対するフォローはなしかよ、このビッチめ」

「はぁ!? ビッチって何だし! アタシはまだ処・・・うわぁーっ!? 何でもない何でもない! 今の忘れて!」

「別に恥ずかしいことではないでしょう? この歳でバージ――――」

「うわあぁぁぁぁっ!? ちょっと何言ってんの!? 高二でまだとか恥ずかしいよ! 雪ノ下さん、女子力足んないんじゃないの!?」

「くだらない価値観ね」

「にしても、女子力って単語がもうビッチくさいよな」

「ですな。高校生で性行為を経験しているかどうかで上がり下がりするのが女子力と呼ばれるステータスであるなら、ビッチステータスの類いと見て間違いないでしょう。

 ほら、素人サークルが通販サイトで売ってるRPGツクールで作った同人エロゲーでよくある奴です。エロい服着たりエロい事したりすると上がるんですよなアレって」

「思いっきりビッチ呼ばわりしてるし!? 人をビッチ呼ばわりとかマジあり得ない! ヒッキーと安田君、マジでキモイ!」

「ビッチ呼ばわりと俺のキモさは関係ねぇだろ。それとヒッキー言うな、ビッチ」

「こ・・・のっ! ほんとウザい! キモイ! つーか、マジあり得ない!」

 

 今度は立場が一転して、一方的に集中砲火を浴びせられることになった由比ヶ浜結衣だが、彼女は肝心なことを一つか二つか三つばかり失念していた。

 

「とゆーか、校則違反な長さになるまでスカートを短くして、胸元が開かれるまで制服を自主的に着崩しておきながらビッチ呼ばわりされたくないというのも理解しがたい心理なのですがな。

 言われたくないなら、せめて制服のボタンは上までキチンと止めてから来られれば済む話だったのでは?」

「う゛。そ、それはー・・・その~・・・・・・はい。その通りですごめんなさい・・・(しゅん)」

 

 

 こうして奉仕部は、制服を一応ながらもキチンと着直した由比ヶ浜結衣からの依頼を受けて、調理実習室へと移動したのでありました。

 

 

「はぁ? クッキー?」

「手作りクッキーを食べて欲しい人がいるのだそうよ。でも『自信がないから手伝って欲しい』というのが彼女の願い」

「そんなの友達に頼めよ」

「う。それはその・・・あんまり知られたくないし、こんなマジっぽい雰囲気友達とは合わないから・・・」

「そーですか」

「それに平塚先生から聞いたんだけど、この部って生徒のお願い叶えてくれるんだよね?」

「いいえ、奉仕部はあくまで手助けするだけ。飢えた人に魚を与えるのではなく、取り方を教えて自立を促すの」

「な、なんかスゴいね・・・」

「まぁ、どっからどう見ても奉仕と言う言葉の定義からは逸脱しすぎたトンデモ解釈ですがな!

 そもそも『助けを求められたときだけ手助けしてやろう』などというスローガンのボランティア活動などあり得ないですし! 自分から率先して手助けしに行ってこそボランティア精神あふれる奉仕活動というものです!」

「・・・・・・キッ!(睨み付ける)」

「・・・・・・(相変わらず仲悪い以上に、相性悪いなこの二人・・・)」

 

 

 こうして比企谷八幡、シェイクスピア(偽)が参加した新奉仕部として初めての依頼遂行が始まったのであったが――――。

 

「ごほぉっ!? な、なんですかな! この毒物一歩手前っていうか、もう人間が食べるものとして超えてはいけない一線越えまくっちゃってね!?的な味のするダークマタークッキーもどきは!? 本当にこれはクッキーの概念に当てはめていい存在なのでしょうな!?」

「そこまで言う!? さすがにそこまで酷くないし! 普通の材料使って作ってるんだから毒ができあがるはずない・・・・・・・・・やっぱ毒かなぁ、これ・・・?」

「いや、聞かれましても・・・」

 

 由比ヶ浜の調理スキルは絶望的すぎていた。

 

「とゆーか、由比ヶ浜殿! あなた実はクッキー作り教えてもらう気ないでしょう!? 『クッキー作れないけど、教えてもらってまで好きな人のために努力できる私は、なんて健気でかわいい女の子なんだろう☆』的な自己陶酔に浸りたいだけでしょうが! 誰がどう見ても間違いなく!」

「ち、違うし! 結果的に上手くいかないだけで、ちゃんとやろうと頑張ってるし!」

「どこがですか!? 指示してもいない調味料を自己判断で入れて、砂糖と塩間違えて! ラベル見れば済む話でしょう!?」

「そ、それは・・・・・・」

「どれもこれも自分一人では作れないから、教えを請いに来た人間がしていいミスでは断じてない! 最後のなんて悪意百パーセントじゃなければ間違えようもない、二次元住人のみに許された現実では絶対不可能なミスです! 意図的でなしに塩と砂糖を間違える人間など、この世に実在しないのですよ!」

「う・・・ぐ・・・そこまで建前も何もない本当のことをズケズケ言ってこなくたっていいじゃん・・・私だって頑張ってるんだし・・・」

「頑張ってるだけではダメなのです! 思いを伝えるための努力なのですから、成就を目指して努力しなければ半端になるのが当たり前!

 あなたは、好きな人の体内に入るものの構成素材に自分が何入れてるか確かめもしない行為を、ミスで済ませる程度の想いでクッキー作りを習う自分が『頑張っている』『努力している』と胸を張って恥ずかしげもなく宣言できるのですか!? クッキーを渡される当人である好きな人の目の前で堂々と想いを伝える瞬間に!」

「・・・・・・っ!!!」

 

 シェイクスピア(偽)の放った最後の一文が、由比ヶ浜の心を覚醒させた。

 それを見抜いた奉仕部部長の雪ノ下雪乃は、あえて厳しい言葉を由比ヶ浜に告げることを決意する。

 

 

「解決方法は努力あるのみよ。最低限の努力もしない人間に、才能がある人間をうらやむ資格はないわ。

 成功できない人間は、成功者が積み上げてきた努力を想像できないから成功できないのよ。自分の不器用さ無様さ愚かさの遠因を他人に求めるなんて恥ずかしくないの?」

「・・・・・・・・・」

 

 ハッキリと言い切った雪ノ下に、由比ヶ浜はショックを受けたのか顔をうつむかせていたが、やおら小さな声でつぶやきを発した。

 

「カッコいい・・・・・・」

 

 ――と。

 

 

「安田君じゃなくても、建前とか全然言わないんだ。なんていうか、そう言うの格好いい!

 ・・・確かに言葉は酷かったけど、でも本音って感じがするの。アタシ、人にあわせてばっかだったから・・・」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

 由比ヶ浜の思いが伝わったのか、黙り込んで考え込む奉仕部所属の三人。

 そんな中、微妙に付き合いが濃くて短い八幡がシェイクスピア(偽)に疑問の声を投げかける。

 

 

「どうした? なんか別のことが気になってそうな顔してる様に見えるが?」

「・・・いえ、実は気になることがあり、記憶を逆に回して巻き戻していたのですが・・・雪ノ下殿。一つ質問よろしいですかな?」

「・・・これから由比ヶ浜さんの前で一度クッキーを作って見せなければならないんだけど、手早く済ませてもらえるのでしたら」

「感謝します。

 ――あなた先ほど『自分の不器用さ無様さ愚かさの遠因を他人に求めて恥ずかしくないのか?』と聞かれていましたが・・・・・・自分が自信過剰になった理由として、小学生時代にあったイジメの話をされてませんでしたっけ?」

「・・・・・・」

「あと、そのとき比企谷殿から毒を吐かれて『少しは歯に衣着せた方が身のため』とかなんとか仰っていましたような気が・・・・・・気のせいでしたかな?」

「・・・・・・・・・・・・気のせいよ。それじゃ、由比ヶ浜さん。さっさとクッキー作りを再開しましょう。どんな悩みや問題も解決するには努力あるのみよ」

「う、うん・・・。なんか微妙に信頼度が下がっちゃった気もするけど、頑張ります!」

「・・・・・・(忠犬ハマ太郎・・・)」

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