俺ガイル二次作   作:ひきがやもとまち

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最近、夜に原作見ながら書いてると目が疲れてしまって眠くなりやすく余り書けなかったんですけど、今日はたまたま眠くならずに書けましたので今作が完成しました。

書けると思ってなかったので、選んだ作品チョイスに意味はありません。そのせいで他の書く時間が残ってない事はゴメンナサイ…。


やはり俺の青春ラブコメはひねくれている。第23話

 

 目を覚ますと、そこに美少女の戸惑った微笑みがあった。

 頭の中が真っピンクになりかける寸前だった。

 

「八幡、朝だよ。やっと起きた。

 みんな先に行ったよ、早くしないと朝ご飯の時間終わっちゃうよ」

 

 ・・・・・・と思ったら、戸塚だった。美少女の笑顔ではあっても美少女ではない。

 寝起きなうえに寝ぼけた頭で女日照りの男が、朝っぱらから見ていい顔じゃなかったな。性別について思い出すのにタイムラグ生じちまって危なくなりかけちまったぜ・・・。

 

「そうか・・・俺、合宿に来てたんだったな」

 

 そして美少女顔の名前と性別を思い出したことで、徐々に情報量が増えて俺の脳味噌も現状を理解し始めてくれるようになる。

 そう。俺たち奉仕部は今、合宿に来ている。

 正確には、合宿に来ている小学生児童のボランティアに来ているのだが、東京ディズニーランドも千葉にあるから誤差の範囲内だろう。

 そして俺は、そのこと忘れて家にいるときと同じ感覚で寝てたせいで寝過ごしてしまい、戸塚も付き合ってくれて朝飯に遅れそうと。

 

「もー。八幡はさ、夏休みに不規則な生活してるでしょ?」

「失礼な。俺を誰の目も気になくていい夏休みだけダラケタ生活を送る半端者みたいに・・・・・・。俺はキチンと毎日、夏休みでなくても不規則な生活を送り続けている、誇り高きエリートひねくれボッチの王子だぞ」

「そ、それは別に自慢することじゃないと思うんだけど・・・・・・」

 

 女の子座りみたいな姿勢で見てくる戸塚を待たせているのは、何というかこう、見た目的に罪悪感があったので俺は起き上がると敷き布団を畳んで部屋の脇に片付けてズボンを履き履き。そうこうしているうちに準備万端、元気百倍な部分があったとしても見えない八幡マンのお色直しが完了した。

 

「でも・・・それなら運動とかも全然してないでしょ? 今度テニスしようよ」

「おう、そのうち適当に連絡くれ」

「うん! それじゃあ・・・・・・八幡のアドレス、教えてもらってもいいかな・・・・・・?」

「・・・・・・え?」

 

 そして気付いたときには、今まで暇つぶし機能付き目覚まし時計兼いざという時にはチェーンメール発信用にも使えるかな?としか扱ってこなかった俺の携帯に、初めて戸塚のメールアドレスが交換されて登録されてしまっていた。

 

 これはアレだな、うん。・・・・・・チェーンメールには使いづらいので、取りあえず保存しておきましたとさ。おわり。

 

 

 んで、食堂。

 朝のビジターハウスの食堂には既に小学生たちの姿はなく、いたのはいつもの面々と平塚先生のみ。

 いやまぁ、平塚先生もいつもの面々と言えば面々なんだけども。一応は先生として立てておこうかと、一応は。

 

「さて、一人とオマケを除いて朝食も終わったようだし、今日の予定を説明しておこう。

 夜に肝試しとキャンプファイヤーをやる予定だ。昼間、小学生たちは自由行動なので、その間に君たちには準備を頼みたい」

「はぁ。キャンプファイヤーっすか」

「あ、フォークダンスやる奴だ」

 

 その単語を聞かされた瞬間、俺と由比ヶ浜が対照的なテンションで声を上げ、それに呼応したように小町もなにか閃いたらしい顔で何かについて語り始める。

 

「おお! ベントラーベントラーとか踊るんですね!」

「オクラホマミキサーと言いたいのかしら・・・・・・? 最後の長音しか合っていないのだけれど・・・」

 

 そして雪ノ下が呆れたような口調で、額に手を当てながらツッコミを入れる。

 いつも通りの面々による、いつも通りの展開だった。

 

 あと、ベントラーベントラーってのはアレである。深夜に公園とかに集まってスペースピープルと呼ばれてる、宇宙人と交信するとか言ってる人たち。そのモドキたちが多用してる呪文である。

 

 だって普通、宇宙人と交信したいと本気で思ってんだったら、近場の公園なんかでやらねぇし。ビルの屋上に忍び込むなり、富士山の頂上まで登るなり、宇宙に近い高さの場所はいっぱいあるし。UFOウォッチングの名所も在日米軍基地で有名なところ多いしな。

 手近なところで安全に、リスクなく宇宙と交信しようとしてる連中が唱えてる呪文が、モドキじゃなくて一体何なんだ?と俺的には聞いてみたい。

 

 まっ、もっとも。

 

「まぁ、相手にすんのは宇宙人みたいなもんだし、大して変わんねぇならいんじゃね? マイムマイムじゃなくてベントラーでも別にさ」

「八幡、言い方がひどいよ・・・」

「いや、違うんだ戸塚。俺にも言い分があるんだ」

 

 戸塚に注意されてしまい、不名誉かつ不本意な誤解をされていることに気付かされた俺は、慌てて発言の真意を知ってもらうため説明を開始した!

 

 そう・・・・・・あれは小学生のときのキャンプファイヤーだった。

 最初は良かったのだが、4番目くらいの女子が『別に手を繋がなくてもいいよね?』って言い出して、それ以降の女子もそれに倣えで、そこからはエアオクラホマキサーになっちまった辛い過去の記憶話を・・・・・・。

 

「そして俺と相手の女子は、周りの全員がペアで手を組んで踊ってる踊り方を、一人ずつ並んで別々に踊ってる、変な男女二人組に巻き込まれちまったんだ・・・・・・」

「う、うわぁ・・・・・・」

「全体の中で二人だけ変なダンス踊るくらいなら、嫌いな相手でも周りに合わせて我慢した方がマシだと考えるのが普通の人間の思考だろ?

 その程度のことも考えられずに、自分が余計に恥かくだけの提案を自分から言い出したがる奴なんて、俺には全く理解できん。だから奴らは人間とは異なる、宇宙人の常識と近いものを持っているに違いないと、子供の頃の俺は確信させられたんだ・・・・・・」

「うん・・・まぁ、ヒキタニくんはもう少しその・・・・・・子供らしくても罰は当たらなかったと俺は思うよ・・・?」

「比企谷ー、目と根性が腐っているぞ。・・・・・・いや、それは今更過ぎる部分なのか・・・」

 

 平塚先生や葉山からさえ何か言われた挙げ句、同情めいた可哀想なものを見る視線で見つめられてしまったが、この件に関しては俺は悪くない。全面的な被害者であると声を大にして言いたい!

 なぜなら女子たちは代わる代わるだったが、俺は4人目以降の全員から同じ変な一人ダンスに巻き込まれ続けてたんだからな! あれほどの辱めを受けさせられた側が被害者でないことなどあるだろうか? いや無い!

 

「まっ、その目と中身ならお化け役にはピッタリか。肝試しの準備もよろしく頼む」

「ってことは肝試し、俺らが脅かす役ってことッスか?」

 

 小学校合宿の肝試しで、ボランティア高校生たちの方が驚かされる役ってのも無理があるだろうってのは分かってはいたのだが、念のため一応聞いておく俺である。

 まぁ、林間学校のイベントとしては定番なのだが、夜の森にずっといなきゃいけないってのは、明らかに脅かす方が辛い。

 

 ・・・ヤブ蚊が五月蠅すぎるし、刺されるし、痒いし、良いことねぇんだよなぁ・・・夏の夜の森ってさぁ。

 昨日の夜に雪ノ下と話したときにも気付かない間に刺されてたみたいで、朝になった今になって痒い痒い。

 幻想的な雰囲気の中で、月明かりに照らされた妖精との出会いも、現実にやった場合はヤブ蚊を従えた女王様との出会いでしかなくなっちまうのか・・・・・・現実のファンタジーは夢見る心に厳しい。

 

「ああ。といってもコースは決まっているし、お化けの仮装セットも置いてあるそうだ。直前にちゃっちゃとやってくれればいい。では準備の説明をする、手分けしてやってくれ」

『はーい』

 

 と、小学生みたいな返事をみんなで返して、食堂でのスケジュール説明会はお開き。

 俺たちは、やる直前にちゃっちゃとやるだけでいいらしい肝試しと違って、準備時間がそれなりに必要そうなキャンプファイヤーの方から片付けようと、周囲を森に囲まれた大きな広場の方へ移動したのだった。

 

 そして今。

 

 

 

「せいやぁぁーッ!!」

 

 

 ・・・・・・なぜだか戸部が、やったら生き生きして掛け声叫んで斧振り下ろして薪を一刀両断する木コリになっていた・・・・・・。

 え? 何これ? あの人って東北出身で、マタギの息子かなにかだったの?

 

 まぁ、どっちにしてもインドア派の俺には、話しかけたくない理由が増えただけだったので別にいいとして。

 戸塚とのテニスぐらいだったら許容範囲内でも、マタギや木こりは流石に遠慮したい。どう考えてもインドアから掛け離れ過ぎちまってるとしか思えねぇ。

 

 なので俺はせめて、木材を井の字形に組み上げていく、キャンプファイヤーの炎を閉じ込めておく部分作りを担当することにした。

 

「こうして一人で黙々と木を積んでいくと、まるでジェンガみたいだな」

「え? ジェンガって一人で遊べるの?」

「・・・え? ジェンガって二人以上で遊べるもんだったのか? ――どうやってだ?」

『え・・・・・・』

 

 俺の独り言が聞こえたらしい葉山から真顔で聞かれてしまい、思わず俺も驚きながら振り返って、トランプタワーと同じカテゴリーなんだと確信していた存在が、実は違っていた可能性に初めて気付かされて驚愕してたら、なぜだか相手もビックリした顔で俺を見つめ返してきて、

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 

 突如として訪れる謎な気まずい沈黙・・・・・・。

 まさか奉仕部の部室から遠く、こんな山の中の森の中でも似たような沈黙に包まれるとは・・・・・・俺の青春ラブコメはつくづく間違ってるとしか思えねぇ。ってゆーかそもそもラブがあった事ねぇし。

 

 まぁ、いいか。

 

 

 

 

 

「・・・・・・あちぃ」

 

 そして作業が終わって時間余ったから、葉山たちと一緒に部屋まで戻ると間が持たなくなっちまって逆に気まずくなりそうだと自覚した俺は、どっかテキトーに涼しそうな気がする音が聞こえてくるような錯覚に導かれながら、森の中の道をフラフラと歩いていたところ。

 

「つっめたーい!」

「気持ちいいですねー」

 

 閑静な森の中に、きゃぴきゃぴして女子女子した今時の女子らしい、アホっぽく楽しそうにはしゃぐ声が聞こえてきたのだった。

 声のする方に行ってみると、河原に出た。結構いい感じの場所である。二メートルほどの川幅はあっても深さは腿ぐらいまでしかない穏やかな水流の川だ。

 

 これなら急な雨が降って増水しても水死する心配は、ほぼ無さそうだ。水難事故で森の川と山の川はマジやばい。お化け役やるより先に死んでお化けになるとか洒落にならんし、少なくとも夜までは、この川以外の水辺には近寄らんようにしておこう。

 

「あ、お兄ちゃんだ。おーい! こっちこっち!」

「・・・・・・へ? ヒッキー?」

 

 そして川に入って遊んでいた女子らしい女子たちが、妹の小町と由比ヶ浜だった。遠目にも分かる水着姿でである。しかも、ビキニ・・・。

 

 森の中に流れる小川で、水着姿で楽しそうにはしゃいでいるビキニ女子二人・・・・・・最近では熊だけじゃなく、オオカミさんとか仮面とマスク付けた犯罪者さんとか変質者とか、果てはジョーズも海から出張してくることあるって聞いたし、これは紳士として注意しに行かなければならない危険な状況といえるだろう。

 

 まったく、何しとんだあいつらは、まったく。これだからまったく、うむうむまったく。

 

「何してんのお前ら? っつーかなんで水着なの?」

「準備で暑くなったから水浴び中だよ☆」

「水着は、平塚先生が川で遊べるって言ってたから・・・・・・ってか、ヒッキーこそなん――」

「そんなことより! ほらほら、お兄ちゃん。新しい水着だよ!!」

 

 そう言って由比ヶ浜の話の途中で小町がカットインしてきて、ぐいっと見せつけるように、グラビア写真集でも見て真似したんだろうこと疑いなしなポーズを取って、俺に見せてきて。

 

「は~い、感想は?」

「ん? ああ。そうだな。世界一かわいいよ」

「わぁー、適当だなー」

 

 小町があからさまにガッカリした仕草で肩を落とす。

 いや、そう言われても。お前、普段から家でもそういう格好だしな。ってのもあるんだが。

 

「っつか、下手に俺がベタ褒めして興奮しまくったら、お前の方が居心地悪くならないか? 俺たちって他の奴らと違って、この合宿終わったら同じ一つ屋根の下に帰って、他人同士だったら同棲生活状態送らにゃならん関係なんだが・・・・・・」

「あー・・・・・・それは確かにキツいね。って言うかイヤだね、もの凄く。一緒に暮らしてる兄弟から、そういう眼で見られてるって気付かされた後の状況はイヤだわ。うん、スッゴく嫌」

「だろ?」

 

 最初は俺の反応がご不満な様子だった小町も、説得によって同意を得られ、互いに納得し合う形で一端距離を置き合うと――それならばとでも思ったのか、キランと目を輝かせて自分の後ろに手を回し、

 

「じゃあじゃあじゃあ! 結衣さんは!?」

「ちょ!? 小町ちゃんひゃあ!?」

 

 背中に隠れていた由比ヶ浜を、不意打ちで前に引っ張り出してきて、急なことで対応できなかったらしい相手はおかしな悲鳴を上げながら胸の前で手を合わせる。

 

 ・・・・・・そのせいで余計に視線と意識が、そこに集中してしまったのは決して俺だけのせいではないと、強く無罪を主張したいところである。もしくは情状酌量の余地ぐらいなら。いや、極刑だけは免れる程度の温情判決を・・・・・・。

 

「「え、ええーっと・・・・・・えっと・・・・・・」」

 

 由比ヶ浜はもごもごしながら顔を真っ赤にし、俺は俺で目が離せなくなってる部分から思考を撥ね除けることができておらず、結果的に互いに同じような意味の無い言葉を言い合ってしまう醜態をさらしてしまった末に。

 

「その、なんだ・・・いい感じだと思うぞ? 似合ってるとも思うし・・・・・・」

「そ、そか・・・・・・ありがとう」

 

 はにかむように笑い顔を見せられてしまって、余計に混乱する俺。

 ・・・く、くそぅ。朝から美少女顔で始まってるせいなのか、今日はいまいち捻くれ思考が働きにくい。少し頭を冷やしてクールダウンする必要がありそうだ。

 そのためにも、この水深の超浅い川は使いやすい・・・っ。

 

 バシャバシャバシャと、盛大に水しぶきを撒き散らしながら、煩悩を振り払って純粋なる捻くれ思考へと回帰するため滝行の真似事にいそしむ俺。

 

 

「ゴベバばん乳ばぶのばばおぶば(これが万乳引力の法則か)

 さぶば乳ドンべんべいダナ(さすが乳トン先生だな)」

 

 

 そして声に出すことで煩悩をさらに振り払っていると、背後から不意に聞き慣れた声が聞こえてくる。

 

「あら、川に向かって土下座?」

「んなわけねーだろ。川に向かって土下座してる時点で、ソイツ謝る気0以下じゃねぇか。せめて有機物相手に・・・・・・」

 

 冷たく挑発的な言葉っつーか、普通に罵倒してきた相手に対して反射的に顔を上げて回復し始めてきた捻くれ思考を試すには丁度いい相手かと返事をした瞬間。

 

 ・・・・・・相手の姿を直視してしまい、思わず言葉が途中で止められてしまった。

 

 雪ノ下雪乃は、その名の如く雪の化身であるかのように見える少女だった。

 性格に多大な問題があり、人格的には誰かが修正しないと社会的にまずいレベルなのは本人だろうと思っているくらいなのだが・・・・・・それでも見た目の良さに関しては議論の余地がないほどに美しい。

 

 しょうしょう癪ではあったが、それが事実なんだと言うことを、このとき俺は改めて理解させられた瞬間だったのだ。

 

「なんだ、比企谷も来ていたのか」

 

 そうこうしていると、肩をポンと叩かれながら話しかけてくる女声がして、振り返ってみれば平塚先生が、三浦と海老名さんを引き連れて一緒に来ていた。

 小学生の林間学校ボランティアメンバー女子だけ全員集合である。

 

 平塚先生は白のビキニ姿であり、三浦は紫のラメ入りビキニ。海老名さんは、まさかの競泳水着である。

 ここに小町の薄いイエロービキニと、由比ヶ浜の鮮やかなブルーのビキニが目に映える。

 

 ・・・・・・って言うか、ビキニ率高くね? いや、男としては嬉しいんだけどさ・・・。

 単に、高校生女子と、高校勤務の女性教師と中学生女子とが、小学校の林間学校ボランティア参加で着てきていい露出度の水着なのかなって、そう思っただけなんだけどさ。

 最近だとPTAとか色々うるさそうだから、そういう時には生徒たちを守ってくれるとありがたいです、平塚先生。

 

「えー? じゃあ、アキハバラとか行くんじゃないの~?」

「違う違う! 池袋よ池袋!全然違うから! だいたい場所が全然違うでしょ!? 秋葉原は山の手の右、だから受け! 池袋は―――」

 

 そして俺と奉仕部女子たちとが馬鹿話をしていた横を、俺たちより更にバカらしい内容の話を交わし合いながら通り過ぎていく三浦と海老名さんの葉山グループの女子たち二人組。

 

 通り過ぎざま、三浦は雪ノ下とすれ違った際にチラリと、その胸元に視線をやってニヤリと笑い。

 

「ふっ、勝った・・・・・・」

 

 と、勝利の感動を声に出しまくりながら通り過ぎていって、言われた雪ノ下の側は怪訝そうな表情で小首をかしげる。

 

「? 何かしら?」

「まぁ、ほら。お前の姉ちゃんはああだから、お前も遺伝的には可能性0ってことはねぇんじゃねぇの?」

「姉さん? 姉さんが何か関係がある話題だったのかしら?」

「雪乃さん、大丈夫ですよ! 女の子の価値はそこで決まらないですし、個人差ありますし! 小町は雪乃さんの味方ですよ!」

「は、はぁ・・・・・・? 姉さん、遺伝、価値、個人差・・・・・・あっ!」

 

 俺たちが気付く前の雪ノ下に先んじてフォローしてやっていると、途中から本人も小声で何度か呟きだして最後には気付いたらしく、真っ赤な顔になって睨み付けながら鋭い表情と口調で、

 

「別に本当にまったく気にしていないけれど、そうした外見的的特徴によって人の勝敗など決まるものではないし、もし仮にそれによって人の評価が決まるのなら相対的になされるべきで、一部ではなく全体のバランスが対象になるのが普通なのよね。だから私は全然気にならないし、むしろ本当の勝者は果たしてどちらなのかしらという話にな――」

 

 壮絶な勢いで、怒濤の言い訳というか自己正当化のための理論武装を展開し始める雪ノ下。

 だが、その止まる事なき流れを止めたのは、平塚先生の猛々しい拳を開いた優しい手のひらが彼女の肩をポンと叩いたからであり、彼女に続くように声をかけた由比ヶ浜の労りの言葉あったらればこそであった。

 

「雪ノ下。まだ諦めるような時間じゃない」

「ゆきのん、ゆきのん凄く綺麗だし、気にしなくて平気だよ!」

「・・・気にしていないと言っているでしょう・・・?」

 

 二人から慰められて、流石にうなだれる雪ノ下。

 まぁな。現時点で胸デカい二人から慰められても、哀れまれてるだけとしか解釈しようもないのが、互いの立場だもんね。分かるよ雪ノ下、今のお前の気持ちだけは俺にも心から理解できる・・・!!

 

 ―――って、あれ? そう言えば前になんか似たような場面で・・・・・・。

 

「俺の記憶違いかも知れないなんだが・・・・・・俺と会った最初の頃に確かお前、こんなこと言ってたことなかったっけ?

 “美的感覚なんて主観でしかない。つまり、あなたと自分の二人しかいないこの場では、自分の言うことだけが正しい”とかなんとかって言葉を言われたような気が・・・・・・あったような無かったような・・・? どっちだっけか?

 正直、色々あったせいで今では良く覚えていないんだが・・・・・・」

「・・・・・・私もよく覚えていないけれど、言ったような気もするし、言ってないような気もするわ・・・・・・でも少なくとも今このタイミングで思い出した貴方のことを私は決して忘れない・・・っ」

「・・・ですよねー・・・」

 

 うん、自分でも流石に空気読めてない発言だったなと思ったわ。言ってから思ったわ。

 言わなきゃ伝わらないことはあるけど、言い終わってから後悔しても遅いことも沢山あるのが現実の人間関係なんだよなと、雪ノ下からの凄まじい恨みオーラ視線を浴びせられまくりながら思わずにはいられない俺であったとさ・・・・・・。

 

 

 

 

続く




本当は、ルミルミと河原での会話シーンまで行ってから終わらせる予定だったんですが、区切りが良いのと次話の始まりに持ってきたかったのの二つの理由で今話はここまでになっております。
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