この話のどこが暗い?とかの主観的評価の違いはノーコメントです。
*ようやく気分が持ち直してきたので、次話では『シェイクスピア(偽)』の方を更新する予定です。
川にやって来たものの、水着なんて夏場に出かける予定ないから中学校の校舎に思い出と一緒に置いてきちまった俺にはやることがある訳もなく。
見れば川に遊びに来てた面々が全員、水遊びを始めてたので木によりかかって遠目にボーッと見ていることにした。
「そぉ~れッ!!」
「あははっ、もう小町ちゃんたらー! ビショビショだよ~、あははっ」
小町が戸塚に水をかけてハシャいでいるのが見えた。・・・俺も水着持ってきてりゃあなぁ・・・・・・と思わなくもなかったのだが、無いものは無い。仕方ないので、人間観察を続けることにする。
由比ヶ浜たちに三浦たちも加わって遊び始め、こうやって皆が騒ぐのに慣れてなさそうな雪ノ下だけが対応に困って遠巻きにしてたが、やがて巻き込まれて加わっていく。
余談だが、ボッチには「バカをやる」という行為がなかなか理解できない。ノリが悪いと言われる所以である。まして、捻くれボッチなら尚更だ。
別に恥ずかしい訳ではないのだ。・・・・・・ただ遠巻きに客観視して批評した後だと、入りたい気持ちになりづらくなるだけで。
当事者たちの主観視点で見える範囲だけ見た場合には、それなりに面白く感じるのかもしれないと思うことは出来る。
ただ、木によりかかって遊んでる連中を遠巻きに見た後の場合には。
由比ヶ浜が雪ノ下にバシャッと水をかけて、ムッとした雪ノ下が手裏剣みたいな勢いで水を振り抜いてクリーンヒットさせ。
おでこに食らった由比ヶ浜がワプワプ言ってたら、すかさず小町が援軍に入って二対一になり、ムキになってきて本気を出したらしい雪ノ下に軽くあしらわれ。
それを見た三浦さんがニヤリと笑って、連続エネルギー弾のごとく水をかけまくり、平塚先生が水鉄砲を持ってきて大人げない援護をし始め、対抗したらしい海老名さんも水鉄砲を持ってきて、気付けば一同全員参加のウォーターバトルが小学生の合宿にボランティアできた高校生たちだけで開催されるという事態にまで発展し―――
・・・・・・そんな風に考えちまった後だと、流石に入りたいと思うことが出来なくなってしまうのが、ひねくれ者がノリの悪いと言われる心理である。
ぶっちゃけ、あの輪の中に入って同類の一員になりたくない。そういう気持ちになってしまうと、もう動けん。そういうもんだ。
「とはいえ、戸塚に水かけてみたかったのは本音なんだよなぁ・・・・・・ん?」
皆の様子を眺めながらボーッとしてたら、脇の小道から足音と気配を感じてそちらを見ると、見覚えのある少女がきていた。ルミルミこと、鶴見留美だ。
「よっ」
「・・・・・・」
俺が声をかけると留美は無言のまま、うんと頷いてから、同じ木によりかかって座り込む。
なんとなくお互い無言のまま川で遊ぶ皆を見ていたのだが、先にしびれを切らしたのか留美の方が口火を開く。
「ねぇ、あんた、なんで一人なの?」
「水着持ってきてねぇんだよ。まぁ、持ってきてても一人だったろうけど。お前は?」
「今日、自由行動なんだって。朝ご飯終わって部屋戻ったら誰もいなかった」
「ふーん、そりゃ良かったな。自由行動なのに班で一緒に動かなきゃならん不自由を満喫しなくて良くなった訳だ。
自由なんだから、自由に一人でいるだろ普通なら」
「いや、それはちょっと・・・・・・どうなんだろう・・・・・・?」
ひねくれ者としての正直な感想を素直に語ったところ、微妙に引かれたような反応と共に一歩引かれて、ルミルミが来る前の一人状態に戻る俺。
所詮ひねくれボッチは、一人だからこそボッチな存在である。
とは言え、彼女には他に行くところも無いのか、行きたいところも思いつかないのか、場所そのものは移動せず俺と留美はしばしの間、ボーッと川の方を眺めるだけで時間を過ごす。
「あの・・・・・・留美ちゃんも一緒に遊ばない?」
そうこうしている内に、由比ヶ浜と雪ノ下がそろって川から上がってきて、俺たちの前でしゃがみ込みながら尋ねるが、留美からすげなく首を振って拒絶され、目を合わそうともしてもらえない。
・・・しゃがみ込んで言ったのが良くなかったのかもしれない。胸の差が強調されすぎる座り方だったからな・・・・・・一緒に遊んだりすると先程の雪ノ下の悲劇を自分も味わうかもしれないと思って恐れている可能性も0ではないだろう。
小学生とは言え、雪ノ下のボッチ感知レーダーに引っかかるほどの類友である可能性が高い、雰囲気的にも似てる女の子。負けず嫌い度とかプライドの高さとかも似てないとは言い切れない。
「そ、そっか・・・・・・」
「ね、八幡はさ」
しかも、誘い断られた由比ヶ浜が目の前でしょげてる中での、俺指定。
ルミルミちゃん天然Sっ気が少しあるのかもしれないな。ますます雪ノ下との親和性が高くなりそうだわ。
そして俺は名前で呼び捨てですか、そーですか。
これは、雪ノ下を恐れているからこその人選なのか。
それとも、俺を舐めてるから話しかける相手に選ばれてるだけなのか。
呼び方で分かりやすそうな問題ですね。
「八幡は、小学校のときの友達っている?」
「いない。ただ、どこからどこまでが友達と呼べる定義かによって、変わると言った奴ならいたが・・・・・・」
「――(キッ)!!」
「・・・ッ(ササッ)!!」
そして毎度のように行われる、雪ノ下と俺との過去話題を絡めたブリザードの視線と黒歴史合戦。これはこれで毎度のように掛け合い続けてる関係性ではあるんだろうけれども、雪ノ下に友達と表現したら多分怒られると自分でも思う。
なので取りあえず誤魔化しっつーか、フォローはしとこうと思う。べ、別にビビった訳じゃないんだからね?
「ま、まぁ多分だいたい皆そんなもんだろう。だから、ほっといていい。どーせあいつら卒業したら、一人も会わない」
「そ、それはヒッキーだけでしょ!」
「あるいは、卒業した直後は会うだろうし、電話や手紙を送ったりもするだろうが、それ以降は数が一気に減って、半年後ぐらいには年賀状だけの関係になる。
来年には年賀状も出さなくなって、携帯にアドレスだけが残ってる状態になり、同じ学校に進学した奴とだけ交友関係続いてって、そいつらとも進級でクラス別になったら同じルートを辿る。例外はほとんど無い。
そして、別の学校になって会わなくなった奴も、自分が入った先の学校で出会った奴らと同じことやって、手紙来なくなった元友達のことは2年後ぐらいには、『色々あったけど今では良い思い出です』になって、過去の人扱いされてるに決まってるんだ。間違いない」
「なんか急にリアルな話になった!? ヒッキーだけじゃなさそうな話はやめてよね! 私まで怖くなっちゃうじゃん!?」
「・・・しかも相変わらず否定しきれない部分もあるから厄介なのよね・・・。
ちなみに私も、一度も会っていないわ」
縁はあったが疎遠になったらしい雪ノ下から間髪入れずに付け加えられると、さすがの由比ヶ浜も諦めたように溜息を吐いて、返事することなく留美の方へと振り返って声をかける。
適切な対応だった。この場合、無視という名の戦略的撤退以外にはない。由比ヶ浜も段々と分かってきたようで何よりである。
「留美ちゃん、この人たちが特殊なだけだからね? マネしちゃダメだよ? 悪い大人とダメな大人になっちゃうからね?」
「失礼な。特殊で何が悪い。英語で言えばスペシャルだ。なんか優れてるっぽいだろう。
日本語の特殊のままでも、響きはいいじゃねぇか。特殊部隊とか」
「日本語の妙よね・・・・・・」
雪ノ下に感心されてしまった。
ちなみにだが、英単語で言う「special」には「例外」って意味もあるから、ぼっち的にはコッチなんだろうが、どっちだろうと似たようなもんだから意味がいいっぽく感じる方でいいんだろう。
「例外」を良い受け取り方するときは「特殊」と呼んで、悪く解釈するときは「特別」でも「例外」ってことにする。
同じスペシャルでも『特殊部隊』を『例外部隊』と呼んでる軍隊はない。
英語の妙である。
単に、同じ一つの単語に、違う意味持たせすぎてるだけとも言えるけれども。
まっ、それはそれとしてだ。
「由比ヶ浜。お前、小学校の同級生で今でも会うヤツ何人いる?」
「え? んー、頻度にもよるっていうか集まる目的にもよるけど・・・・・・純粋に遊ぶの目的だと、一人か二人、かなぁ」
「お前の学年、何人いた?」
「三十人三クラスだけど?」
「ということは90人か。以上のことから、卒業の5年後も友達やってる確率は3%から6%ぐらいってところだ。
八方美人で、人に合わせてばかりで生きてきたと自認していた由比ヶ浜でさえ、この低確率だぞ。大抵のヤツなら0だ。
せいぜいバスの中や電車で偶然再会して、「今度電話するね」とか言うだけで、次に会うのは三十路になってからの同窓会ぐらいのヤツがほとんどだろうぜ」
「この男・・・・・・何から何まで仮定だけで証明すらしないまま、結論を断定してしまったわ・・・。
オマケに結論だけは現実味があるように聞こえるし・・・・・・数学の悪用にも程があるわね」
「美人・・・美人・・・・・・えへぇ~」
「由比ヶ浜さんも別に褒められてないから。むしろ利用されてるだけだったから。正気に戻りなさい。――えい」
「はうっ!?」
一瞬ニヤけたまま俺の話の内容を聞き流してた由比ヶ浜が、雪ノ下によって強制的に現実へと引き戻されたのは惜しかったが、まぁ結論自体は間違ってないと保証されたみたいだからいいだろう。
「まぁ結局のところ、あいつらの友情自体も大して長くは保たねーだろうし、いーんじゃねぇか?
別に無理して仲良くしようと足掻かなくたって。どーせアイツらも来年には1人減ってるか、2人増えて1人入れ替わってるかもしれないしな。
なんとなくで友達になって、何となくで友達切り捨てるヤツと仲良くやってける確率なんてエヴァ初号機の起動するより低い。
0,000000001%なんて、アニメじゃなきゃ0だ。四捨五入して切り捨てていい」
「だからそういう生々しい、あり得そうな話はしないでってば!! ・・・でも、1%でいいって考えると少しは気が楽なのはたしかかもね。
みんなと仲良くって、やっぱりしんどい時あるし。――0,00なんとかは切り捨てていいっていうのは賛成できないけど・・・。
だから留美ちゃんも、そう考えれば・・・・・・」
どこか実感のこもった声をかけてやると、留美も初めて由比ヶ浜へと向き直って微笑み返す。
ようやく好感度を抱いてもらうことができたらしい。留美ちゃんの好感度アップは詩織なみに難しい。
「うん・・・・・・でも、お母さんは納得しない。いつも友達と仲良くしてるかって聞いてくるし、林間学校もたくさん写真撮ってきなさいって、デジカメ・・・・・・」
力ない声でそう答えて、手元に持ったままのデジカメを握りしめる。
あのデジカメは、そのために買ったものだったらしい。たかが林間学校に気合い入りすぎの装備だとは思っていたが、親の方が気合い入れて奮発してたのか。
まぁ、普通の感覚でいえば修学旅行だのなんだののイベントは一生モノの思い出だったりする話が多いからな。娘のために気合い入れて準備すんのもおかしくはない。
「そうなんだ・・・・・・。いいお母さんだね、留美ちゃんのこと心配してくれてるんだし」
安心したように由比ヶ浜が言う声が耳に響く。
まぁ実際には修学旅行用に買ってやったデジカメなんて、女子の風呂場を盗撮用とか、女子部屋に忍び込んで記念撮影ぐらいに悪用されることの方が多いのが現実だろうとは思うんだけどな。世間一般では修学旅行が一生の思い出って事になってる方が多いわけだし。あとルミルミ女の子同士だし。
親としては一般論に合わせる方が無難だと思うだろうし、思いたいだろう。そんなもんだ、親や大人の心理なんてもんは。
俺なんかはそういう風に思っているのだが、それとは違う意見も当然存在するのが世の中というものでもある。
「そうかしら・・・・・・。支配して、管理下に置く、所有欲の象徴ではなくて?」
雪ノ下が薄氷の如く、不安をかき立てさせるような言葉を、私見として並べていく。
なにかイヤな過去の記憶でも思い出したのか、俺が何もしてないのに声音がいやに冷たく聞こえる言い方だった。
思わず、由比ヶ浜だけでなく俺までフォローを入れちまいたくなるほどに。
「え・・・・・・? そ、そんなことないよ! それに、・・・・・・その言い方はちょっと」
「雪ノ下。お前、そりゃあれだ。母親ってのは余計なことすんのが仕事みてぇなとこあるからな。愛情がなかったら管理したりしねぇよ。
――ただ、仕事で忙しいからとか、家事で時間割けねぇだかで実際の現場を見に来ねぇせいで、現場の実情まったく分かってねぇ場合が多すぎるだけで。
ちゃんと現実を知ってもらえりゃ分かってくれる親の方が多数派なはずだ。ソースは俺」
「ヒッキーはもっと酷いよ!? 言い方は悪くないだけで、言ってる内容はもっと酷かったからね!? って言うかヒッキーのお母さんからは、ホントに見捨てられちゃってるじゃん!」
俺が言うと、由比ヶ浜が怒って怒鳴り、雪ノ下は唇を噛んで下を向く。
その視線は俺たちと彼女の間にある地面を見つめており、普通に考えたら明らかにおかしい部類に入りそうな俺の話へのツッコミには向いていないっぽかった。
「そう、ね。普通はそうよね・・・・・・」
「い、いやユキノン? ヒッキーのは普通じゃないと思うよ? むしろ普通だったら問題ありすぎる家族関係だったと思うんだけど・・・・・・」
「ごめんなさい、鶴見さん。私が間違ってたわ。無神経な発言だったわね」
「あ、全然・・・・・・なんか難しくてよく分かんなかったし、あっちの人の方が酷いこと言ってるのは小学生でも分かったし・・・」
雪ノ下からの突然の謝罪に、しどろもどろに訂正しようと頑張ってるのに無視される由比ヶ浜と、微妙な立場で居心地悪そうな顔しながらも礼儀を守る鶴見留美。
そして俺は相変わらず、一人だけ悪く言われるポジションである。
まぁ今回のは俺が悪かったかもしれんのでなんも言わんし、なんも思わんが。
ただ、ウソは吐いてないぞウソは。俺はリア充たちのようなウソは吐かん。ひねくれ理論として間違ってない正しいウソを吐くだけで。
「そうだな。あるいは、お前の母ちゃんが特殊なだけだから、気にしなくていいぞ雪ノ下。
英語で言うとスペシャルで例外だ。なんか劣ってるっぽくていいだろう」
「(キキーッッ!!!)」
「サササッッ!!!!」
そして雪ノ下から放たれる、目から冷凍光線を即座に顔逸らして回避する、いつも通り過ぎて何やってんだ俺たちはな奉仕部一同全メンバー。
そんな俺たちの普段通りな、かみ合ってないようで実は噛み合ってるように見えて、実際には本当に噛み合ってない奉仕部らしいやり取りを見て、真顔だったルミルミの表情がほんの少しだけ綻んだ。
「私の状況も、今のイヤな感じも高校生ぐらいになれば、八幡たちみたいに変われるのかな・・・・・・」
「少なくとも、今のままでいるつもりなら絶対に変われないわね」
そして雪ノ下に再び、ぶった切られる。
おお雪ノ下よ、謝ったばかりの相手にも手加減せぬとは何事だ! ・・・・・・まぁ別問題だから普通の対応っちゃ普通なんだけどな。
それに言ってる内容も間違ってる訳じゃない。
「今のままでいるつもり」でいるんだったら、そりゃ今のまま変わらんだろ。普通に考えて。
「まぁ一応は、周りが変わることも充分あるから、それまで無理して付き合わねーって手もあるにはあるが・・・・・・それだと時間かかるんだよなぁ」
「そうなんだよね・・・・・・留美ちゃんは今が辛いんだから、それをどうにかしないと・・・・・・」
由比ヶ浜が気遣わしげに留美を見やり、見られた方はちょっとだけ困ったような表情になって、話しづらそうな声で話しはじめる。
「辛いって言うか・・・・・・ちょっと嫌だな。惨めっぽい。シカトされると自分が一番下なんだって感じる。
嫌だけどさ。でも、どうしようもないし」
「なぜ?」
間髪入れずに雪ノ下から問われ、一瞬躊躇った後、留美は再び話しづらい話をキチンと言葉にして声に出す。
「私、・・・・・・見捨てちゃったし。もう仲良くできない。仲良くしてても、またいつかこうなるか分かんないし。同じことになるなら、このままでいいかなって。惨めなのは、嫌だけど・・・・・・」
そんな彼女の話を聞いて、俺もようやく理解する。させられる。
―――ああ、そうか・・・と。
この子はもう見限ったのだ。自分と自分の周囲の人間たちのことを。
自分が変われば世界が変わるというが、そんなことは滅多にない。
人が人を評価するのは、固定観念と印象だ。ボッチはボッチである事というイメージを実行するよう強要される。
人は現実をありのままに見ることは出来るが、見たがる奴は滅多にいない。
自分が頭の中に思い描いたとおりの印象が、本当に事実なんだと肯定してくれる情報だけを重視したがり、今の自分が抱くイメージを否定するような情報は間違ってると拒絶したがる。
カーストの低い気持ち悪いヤツが、なにか頑張ったところで「あいつ何頑張っちゃってんの?ぷーくすくす」と笑って終わりにしたがる。
結果的に成功して、自分たちより上に行かれた時には、目立ったことを理由に攻撃材料にして貶めることで自己の認識を守りたがる。
リア充はリア充としての行動を、中間クラスのカーストからは求められ、ボッチはボッチであることを義務づけられ、オタクはオタクらしく振る舞わないと苛立ちはじめる。
カーストが高い者が、低い者に理解を示すことは寛大さや教養の深さとして尊敬するが、その逆が同じことをするのは許さない。
口だけなら何とでも言えるとかどーとか、理屈をごねて本当はやってない事にしておきたがる。
それが子供の王国の腐りきったルールであり、やがて腐りきった大人たちの王国のルールへと続く初めの一歩になる。
そんな子供が年取っただけなのが大人だ。大人になっただけで色々分かって変われるなんて屁理屈こそ、幻想を信じることで「今の自分」を守りたがる腐りきった子供の王国に引きこもったまま成長できてない証でしかないだろうに。
より完成された、成熟したコミュニティに属すれば別なのだろうが、中学生や小学生に望むべくもない。
なにしろ高校生の俺たちの学校だって、そういう雰囲気があるままなんだから、たかが2,3年前の俺たち年齢に出来るんだったら苦労はしない。
そんな子供の王国の汚い現実を、鶴見留美はこの時点で理性によって理解して、見限ってしまったのだろう。
・・・・・・ただ
「惨めなのは嫌か?」
「・・・・・・うん」
そう聞いた俺に、鶴見留美はそう答えを返して、俺はそれで確信を得る。
鶴見留美は、『理性』によって自分と周囲を見限るべき存在と判定したが―――『感情』の方は諦めることができていない。
合理的な思考によって、その場所はダメだと理性によって見限りながら、感情の部分でその場所の一員で居続けたいと願う気持ちを捨てきれずにいる。
だからこそ理性的な判断で見限った相手から、一番下だと思わされると惨めに感じる。
どーせ同じ結果にしかなれない連中だと見下しながら、そんな連中にシカトされるのは嫌だと思ってしまうのは、つまりはそういう事なんだろうきっと。おそらくはの話だが。
――そういう風に考えたとき。ふと俺の頭の中に、一人の男のイメージが浮かんだ。・・・ような気がした。
色々なものを信じて裏切られて傷つけられて、求めても無駄だと諦めながら、それでも懲りずに求めてしまう、会ったこともなく見覚えのない男の顔が・・・・・・何となく頭に浮かんできて、鶴見留美の顔に重なって見えたような、そんな気がした瞬間。
今回の、俺の心は決まっていた。
「――肝試し、楽しいといいな」
俺はそれだけ告げて立ち上がり、やることが出来た森の中へと退屈な川を出て去って行く。
腹は決まった。問いかけは出来た。答えは最初から出続けているままだ。
後は答えに行き着くための方程式さえ作り上げれば、それで―――詰みだ。
(問題。世界は変わりません。自分は変えられます。さて、どう変わりますか?)
正解は―――
「世界を壊し、世界を創造する黒幕になる」
腐りきった子供ブリタニア帝国の特権階級貴族モドキどもに、言葉で殴っていいのは言葉で殴り返される覚悟があるヤツだけだという現実を教えてやろう、フハハハハッ!!!
・・・・・・って、今回は俺完全に悪役ポジションになりそうだな。
まぁ、目的は人助けでも、やるのは一歩間違えると犯罪スレスレ行為だからいーんだけどさ、悪役で別に。
そういうところもルルーシュだよなぁ。
ルミルミの腐った子供帝国に、ユーフェミア・プリーズ。俺が何もせずとも楽できるから。
つづく
念のため補足説明:
今話における八幡のルミルミ分析は、彼女が「自分側の人間ではなく」本来は一般寄りの人が、他人の悪意によって追いやられたから今みたいな心理状態になっていると推測したという解釈です。
好きで、その手の考えをしてるなら別として、他人のせいでそうなっただけの女の子は本来の場所に戻してやろうという発想で、原作の解決策を実行する流れですね。
まっ、最後は今作八幡らしいアレンジはしますけど…。