俺ガイル二次作   作:ひきがやもとまち

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ようやく気分が持ち直せて完成できた、シェイクスピア(偽)版の俺ガイル更新です。
前から書きたかった回を、やっと書くことが出来ました。ひねくれの方でもやれば良かったと後悔してますけど今更でしょうなぁ。

今回の話は、アニメ版にはない原作小説版だけの話が元の回となっております。
詳しくは原作3巻目156ページからをご覧ください。お勧めです。


やはり奉仕部にシェイクスピア(偽)がいるのはまちがっている。第15幕

 ある時、古代の王はこう言った。

 

「人間という玩具、人生という物語。これに勝る娯楽はない」

 

 ――と。

 無意味さの忘却、苦にならぬ徒労。それ即ち遊興であり娯楽。

 娯楽こそが愉悦であり、そして人の魂は本能的に愉悦を追い求めるのだと――。

 

 至言である。

 だが文明が発達し、社会が複雑さを重ねた時代に生きる人々には、己が趣味をただ娯楽として終わらせることは難しい。

 時に魂の在処を見失い、己が人生という道に迷い、なんとしてでも己が愉悦である娯楽を日々の糧にできぬものかと迷い悩む者も出てくるようになるであろう。

 

 そう。たとえば己が未来へ続く道をまちがい続ける彼のように――――

 

 

 

 

 

「うおーん! 聞いてよハチえもーん!! あいつらがヒドイんだよー!!」

「材木座か・・・・・・。つーか、その呼び方やめろ。友達だと誤解されたら恥ずかしいじゃねぇか、俺が」

「いきなりヒドい!? それが前世で朋友だった過去を持つ者への言葉かハチえもーん!」

 

 奉仕部の扉が開かれて、黒い大きな影が部室の中へ伸びてくるように、材木座義輝が黒いコート姿でふうふう息吐きながら入って来ようとしにきたのは、6月に入って二週目月曜日の放課後になってからのことであった。

 要するに、由比ヶ浜結衣への誕生日プレゼント買いに行った日の翌日であり、昨日ショッピングモール行って色々あったばかりであり、由比ヶ浜結衣の退部がなかったことになって仲直りするイベントが起こる当日の――ぶっちゃけイベント起きる前の準備中ぐらいの時間だったのだけれども。

 

 そんな時間だからこそ、幕間劇へと誘うために道化役が割り込んでくるのが物語のお約束というものでもあるのだろう。

 いやまぁ、人を道化呼ばわりするのは失礼ではあるんだけれども、コイツの場合は別にいいと言うか、「真理を追究する者は常に周囲の俗人共には道化としか映らぬもの・・・」とかの理屈で受け入れちまいそうな気がしなくもないので、まぁいいかと。そういう理屈。

 

「おい、待つのだハチえもん。いやさ、八幡。ふざけている場合ではない。ハチえもんが気に入らないのなら、忍者ハチとりくんでもいいから我の話を聞くのだ」

「一番ふざけた存在に、ふざけてるとか言われてもなぁ・・・・・・」

「ぬ、今だ!!」

 

 ノックされた扉を開く係兼お茶漬けも出して追っ払う役も兼任するにはどうすればいいかと、己の在り方に悩んでいた八幡が抱え込む、一瞬の心の隙を見つけ出し、剣豪将軍材木座義輝は奉仕部の部室内へと潜入を果たし。

 

 ズザザザザ――ッッ!!!と、やけに上手いスライディング方式で、黒いコートを汚しまくりながら潜入工作員設定で飛び込んでくると。

 

 

「おお! 地獄のように黒っぽく、闇の夜に舞うコウモリの如きあなたを、私は美しいと思いたく思い、輝いているとすら感じられたら良いなと感じる始末!!

 お久しぶりですな剣豪将軍殿! 久方ぶりの再会を我輩は心より歓迎いたしますぞー!」

 

 

 ずしゃばらずっしゃん! ズッドンドン!!と、天敵と鉢合わせした草食動物のように途中で方向転換しようとして、人間には無理だったので変な方向に身体が曲がり、教室後方に並べられてる机の列の中央へと突進していって盛大にぶちまけさせる、シェイクスピア(偽)が相変わらず苦手な剣豪将軍。

 

 ・・・・・・ただでさえ交友関係少ないのに、苦手な人物が二人も屯ってる奉仕部に、何故こうも来たがるのだろうか?

 交友関係少ないからかもしれない。他に行くところないのだろう、多分だが。

 

「ぐぉぉぉ・・・・・・っ、こ、腰が・・・腰をひねって・・・い、いやそうではない。そこは重要ではないのだ諸君。今日は諸君らに相談があってまかり越したのであって、痛たたた・・・。

 腰が、腰が・・・・・・腰がァァァァッ!?」

「あまり聞きたくねぇんだけどなぁ・・・。あと材木座、お前が今押さえてるとこは目であって、腰ではないように見えるぞ」

 

 微妙な顔をしながらも、一応はツッコんであげる気遣い上手でボッチな八幡。

 単に、他のメンバーがそろって微妙な顔をしたまま関わり合いになりたくなさそうな雰囲気を顔に出してるのと、部長に至っては話無視して読書に戻ってアウト・オブ眼中をボディランゲージで伝えてくるレベルだったから、消去法で仕方なくやっただけとも言えるのかもしれないけれども。

 

 尚、残る一人は喜んでやってくれそうな気がするけど、逆に八幡たちがやって欲しくないっつーか、やったら話をどんな風に面白おかしく改変させて下らん相談事を劇的ストーリーに変えられてしまうか分かったもんじゃなかったので、最初から候補に加えてなかった。

 最近色々と慣れてきた面を持つ奉仕部メンバーの一同だったが、どうやら用もないのに常連客になってる材木座もその点では例外でなかったらしい。

 

 先程までの事々は「ニヤッ」と笑って無かったことにしたのか、忘れっぽいだけなのか、片手を挙げて発言途中だった八幡を制した後、蕩々と今回の自分が彼らに相談したい問題事について語り始める。

 

 

 同じ学校の部活動である、「遊戯部」と揉めたから援軍が欲しい。というのが、大雑把な内容だった。

 

 

「あ? ユーギなんだって? 王?」

「遊戯部。今年創部された新しい部活よ。遊戯全般、エンターテインメントについて研究することを目的にしているようだけど、実質的にも規模的にも、同好会といった方が分かり易いでしょうね。

 この学校には同好会というものはないから、全て部活動ということになる。その結果としての遊戯部よ」

「成程成程。つまり部活で必要という名目で、学校の金を使って自分たちの趣味の産物を買い集め、部室も貸金庫として利用させてもらおう系の部活動という訳ですな」

 

 耳慣れない単語に、思わず聞き返してしまった八幡と、本から顔を上げて八幡に解説してくれる雪ノ下部長と、総論としての一般論でまとめて締めるシェイクスピア(偽)

 言われてみたら、その通りの典型例かもしれない・・・・・・と雪ノ下が無言のまま心の中で思ったかどうかは知らないものの、そういうことには興味が無い系の女子が、話を先に進めたがって本題へとたち戻させる。

 

「で、そのユーギ部がどうかしたの?」

「うむ。我がゲームシナリオライターを目指していることは先日語ったばかりではあるが――」

「あれ? ラノ何とかじゃなかったっけ?」

「ぬ・・・、・・・うむ。話すと長くなるのだが、ラノベ作家は収入が安定しないのでやめた。やはり正社員がいいと思ってな。

 それ故ゲームのシナリオライターを改めて目指しだした訳なのだが、そんな我は昨日ゲーセンで遊んでいたのだ。

 で、学校とは違ってゲーセンではそこそこ話ができるから、格ゲー仲間にゲームシナリオを書くと夢を語った訳だ。その場にいた誰もが我の偉大な野望に平伏して賞賛の嵐であった――」

 

 そう言って、その場面を思い出したのか、ちょっと嬉しそうな顔をしながら、そのとき言われた褒め言葉の数々を記憶の宝箱から取り出して並べていく。

 

 “頑張れよ”、“応援してるぜ”、“さすが剣豪さん俺たちに出来ないことを平然とやってのけるッそこにシビれる!あこがれるゥ!”――と言った内容の褒め言葉の数々を――。

 

「褒め言葉と言うより、馬鹿にしているとしか解釈しようのない言い様ばかりですな。

 特に最後のなんて、もはや悪意と見下しを隠す気があるのかさえ怪しいレベルかと」

「ぶっふぅぅぅッ!?」

 

 ―――あ、言っちゃった・・・。

 そう思ったのは八幡だったか雪ノ下だったのか、あるいは由比ヶ浜でさえ気付いてそう思っていたのかもしれない。

 

 実際問題それぐらいに馬鹿にしてるだけとしか思いようが無く、一切全くコレッポッチも褒め言葉になってない言葉が羅列されてるだけの代物ではあった。

 これで喜べてた材木座は一種哀れみすら感じてしまうほどの低レベルの言葉としてである。

 

 「頑張れ」も「応援してる」も、エールであって褒め言葉じゃ無いし、同じような意味の言葉だし。

 最後に至っては夢の話への批評なのか「自分たちには恥ずかしくて言えないことを平然と暴露した行為」を悪く言っているだけなのかさえ判断が難しい。

 

 とは思っても流石に言えないのが普通の人間というものでもあり、言われた時の状況を思い出して嬉しそうにしている材木座を見ている前では八幡でさえも憚られる心地になっている言葉の真実を平然と言ってのけて、材木座自身への誹謗中傷は一言も言ってないシェイクスピア(偽)の言葉選びは相変わらず流石である。

 決して憧れないし、シビれる事もなさそうだけれども。

 

「む、むむむ・・・・・・だ、だが、しかぁし!

 そんな中で一人だけ我に向かって事もあろうに、むむむ無理と、ゆゆ夢見てんなと言いだした奴がいたのだ! 一人だけ!! 一人だけではあったのだがな!」

 

 ―――あ、聞こえなかったことにして流した。

 と、今度はそう思ったのは由比ヶ浜を含む奉仕部の全員だったことだろう。あるいは材木座本人でさえ気付いてたかもしれない。

 周囲の中で一人だけ勘違いしてたボッチになりたくなかったのか、あるいは同じ立場になるの慣れてるからスルー性能上がってきた結果だったのか、とにもかくにも材木座はシェイクスピア(偽)からの指摘は無かったことにして、自分が浸ってた楽園フィールドを土足で踏み荒らしてきた“極少数の”乱入者たちだけの話に限定して相談の内容を進めていく道を選ぶ。

 

「とは言え一人だけだったので、我も大人だからその場では『で、ですよねー』と言ってお茶を濁してやったのだが、我もそこまで言われて引き下がれるほど大人ではない!!」

「大人なのか大人じゃないのか、どっちなのかしら・・・・・・」

 

 雪ノ下が呆れたように呟いて、材木座が一瞬ピクッとなって恐怖に満ちた顔をして、

 

「差し詰め、アダルトチルドレンと言ったところではないですかな? 些か古めかしい単語になってしまいましたが、大人になりきれない子供のような大人たちというのは、現実だと未だにままある事です」

「そう! それなのだ! 我は子供の心を大人になっても持ち続けている大人のアダルトチルドレンなのである! たとえば世界を守るエリートパイロットのような選ばれしチルドレンの一人なのである!!」

「意味違ってるぞ材木座・・・・・・お前さてはアダルトチルドレンの意味知らねぇだろ、絶対に・・・」

 

 シェイクスピア(偽)が感心した口調で呟いたので、渡りに船と飛びついたら今度は八幡から呆れたような呟かれる結果となってしまった。世の中なかなかご都合主義通りには上手く運んでくれないものである、新世紀みたいに。

 

「あだる・・・・・・チルドレン? ん?え? ま、まさかエッチなのとかはダメだと思うよ!?」

 

 尚、アダルトと言えば18禁しか思いつかないらしい、語彙力の不足によってビッチと思われても仕方のない発言をしちゃっている残る一名のことは今は無かった事にしておきます。指摘するのは流石に憚られる。

 

「なので、きゃつめが帰った後に、あるかな勢千葉コミュでさんざん煽りの書き込みをしてやったのだが、どうやらそやつ同じ学校だったみたいでな。

 今朝コミュ開いたら、ゲームで決着つけることになっていたのだ。周囲が煽りに煽ってて・・・・・・なぁ、俺ってひょっとして嫌われてるのかな?」

「知らねぇよ・・・・・・まぁでも、ゲームで決着なら健全でいいじゃんか。バシッと決めてやれば?」

「ですな。まぁ、どこがどう繋がってゲームで勝てば勝敗が付く展開になったのか謎ですが。謎理論で生きている業界の方々とのバトルな訳ですし、テキトーにやって適当に終わらせてしまうのが宜しいのではと」

 

 ―――ああ、確かに・・・・・・。

 そう思ったのは多分、雪ノ下と八幡と由比ヶ浜で、材木座は十中八九含まれていなかっただろう、今回の言葉では。

 実際、謎の展開ではあるのだ。

 

 何故ゲームシナリオライター目指してるヤツが、無理だ現実見ろと言われて煽るような事言ったら、決着つけるため格ゲー勝負ということになってしまったのだろう?

 世界征服を目指す秘密結社の計画を、小学生主人公がゲームで阻止する古いマンガを現実にやりたがっているとしか思えない。

 

 あるいは、ゲーム作ってる人たちは全員、ゲームの腕がプロ級でなければなれない、とかのイメージでも抱いているか、材木座自身がコミュ内で『自分はスーパーゲマー』とか名乗ってプロ一歩手前みたいなこと言いふらしてた結果なのかもしれない。

 

 どちらにしろ、格ゲー勝負で勝ったところで、『シナリオが』上手く作れる理由にはならないと思うのだが・・・・・・まぁ、煽ってるだけのネットの中の人たちってそんなもんなんだろうきっと。おそらくはだが。

 双方共にネタ扱いされていて、誰も本気で言ってない。

 もっとも、逃げたら逃げたでネタ扱いされるだろうから、現実的損害ないという訳ではないんだけれども。

 

「はははっ! それは無理な相談だな。・・・・・・何故なら格ゲーだと向こうの方が全然強いのだ」

「え? お前、すげぇ得意なんじゃねぇの?」

「それはまぁ、一般人に負ける事はまずなかろうが、上は幾らでもいる。奥が深く、業も深いのが格ゲーだ。その男もプロと言うほどの腕前ではないが、我より確実に強い」

「・・・・・・なるほど。大体わかったわ。つまり、その格ゲーとやらであなたが勝てるように手伝えと言うのが今回の依頼な訳ね?」

 

 材木座が悔しげに言うと、雪ノ下が自分好みの話題になったからなのか、ぱたりと本を閉じながら確認するように問いかける。

 何しろ、それなら簡単な話であり、彼女の得意分野でもある。

 

 ――ただ、死ぬまで走らせてから死ぬまで素振りさせて、死ぬまで練習やらせる練習方法をゲーム版に応用すりゃいいだけなのだから・・・・・・。

 

「否っ!!」

 

 だが材木座はそうとは知らず、いやあるいは知ってたから言ったのかもしれんけども、全力で雪ノ下からの確認を力強く否定し、格ゲーの奥深さの何たるかを力説する。八幡に向かって。八幡に向かって。材木座的には大事な事なので二度言いました。

 

「かっ! 八幡バカッ! きさん格ゲーばなめちょるのかっ! そない一朝一夕でどないかなるほど甘いもんやない! 何よりあんさんに格ゲーの何がわかりますのんえ?」

「・・・知らねぇし、分かんねぇよ。ボッチだから格ゲーは一人プレイ専門で対戦やった経験あんまねぇんだよ俺は・・・・・・。

 だいたい俺じゃなく、雪ノ下に言え雪ノ下に。そういうことは」

「えっふん、えっふん、るふぉっほん!」

 

 色んな方言が混じりすぎて何言ってるか全然分からないながらも、怒ってる事だけは伝えようとしてきた材木座に対して、八幡の方も怒りと鬱陶しさがこみ上げてきたのか事実を端的に伝えたところ、平塚先生みたいな咳払いで変な方向に誤魔化して、「う、うわぁ・・・」と由比ヶ浜から素で本気でキモがられて距離置かれる結果を招いてしまった訳だが・・・・・・閑話休題。

 

「じゃけぇ、勝負そのものをなかったことにするか、我が確実に勝てるもので勝負したいんじゃ。だからそういう秘密道具を出してよ、ハチえもん」

「お前のクズっぷりには、さすがの俺や安田でも負けるんじゃないかと、時々本気で思うときあるわ・・・・・・」

 

 てへへっ、と笑いながらクズいことを言ってのける材木座の顔を、八幡は地獄のように殴り、輝く星にしてやりとまで感じる始末。

 普段は彼自身もけっこう色々言ってるとはいえ、自分でクズいことを言うときには気にならなくても、他人が言ってるのを聞かされた時には割と引きやすいものであり、次に自分が言う番になった時には気にならなくなり直してるものである。それが人間の心というもの。

 

「だが、悪いが断る。今回は明らかにお前に原因があるだろ。刺される覚悟がないなら煽るんな」

 

 部長の雪ノ下から首振られて拒否のボディランゲージされたのもあって、八幡はキッパリと材木座からの依頼を断った。

 もともと奉仕部は、誰でも彼でも救ってやる正義の味方志望の集まりではなく、救済を目的としている救国の聖女に率いられている組織でもない。ただ努力の手助けをするだけの存在である。

 何でも願いを叶えてくれる万能の願望器でもなければ、お助けロボットでもない。

 

 まぁ、そういう活動方針だった割には自主的に首突っ込みたがってたケースの方が多いようなイメージある上に、願望器の方は大抵は破滅待ってるパターンが多くて、お助けロボットは居候先の少年関係者以外はあんま願い叶えてくれない奴なんだけども、今はとにかくそういう奴だったということにしておいて。

 

 一応は原則として、奉仕部の活動目的は『飢えた者に魚を与える事』ではなく『魚の捕り方を教える事』今回の依頼は明らかに、この原則から逸脱した内容のものだった。

 八幡と雪ノ下が依頼を蹴ることは端から見ると薄情に思う者もいるかもしれないが、活動方針としては非常に正しい。

 むしろ、自業自得の運命にまで手を差し伸べてしまったのでは、互助の面から見ても自立を促す上でも不適切極まりない、結果のみを与えたがるボランティア精神から外れたものになってしまう結果となるだろう。

 

 言うべき事はちゃんと言った方が、相手のためにも良いのである。・・・・・・由比ヶ浜クッキー事件とか特に。

 

 

 ―――だが、しかし。

 そこは材木座も然るもので、伊達に奉仕部一番の常連客という地位を、相手に嫌がられながらも続けてきた男ではない。こういう場面でのコツは心得ている。

 

 即ち――おねだりする時には稼ぎ頭のお父さんじゃなく、財布を握ってるお母さんに頼んだ方が成功率が高い。・・・・・・というワガママ聞いてもらう時のコツを、である。

 

 

「はむん、奉仕部などと片腹痛い。目の前の人間一人救えずに、何が奉仕か救済か!

 本当は救うことなど出来ぬのであろう? 綺麗事を並べるだけでなく、行動で我に示してみせるがいい!

 正義の味方とは所詮、倒すべき悪がいなければ誰も救うことが出来ぬ、間違える者に依存する存在でしかないのだと、運命の夜を経験した我には最初から分かっていた事だがな! フォッフォッ!!」

 

 

 ―――あ、やっちゃった。

 そう思ったのは八幡と由比ヶ浜で、計算通りだったのは材木座。

 

 そんな中で只一人、奉仕部の方針を決めて語った、奉仕部部長の雪ノ下雪乃だけが、そう思ったとしても思わないことを自らに課していた氷の女帝であったが故に。

 

 

「・・・・・・・・・そう、では証明してあげましょう」

 

 

 奉仕部の方針は、既にこの時点で確定することが決まってしまってたのでありましたとさ・・・・・・。

 計算通りの望んで得た結果であっても、雪の女帝が放つ氷のオーラにビビらされたらしい材木座が「ひぃっ!?」とか小さく悲鳴上げてる姿を遠くにいるものみたいに見ながら溜息を吐き。

 

「・・・・・・材木座のバカのせいで、今回もまた面倒なことになりそうだなー・・・」

「そうですかな? 我が輩は楽しみですなぁ、今回の件。

 学び舎を同じくする級友が苦難と絶望の道のりを歩み、あの結論に至ったのです。ならば吾輩たちは万難を排して、それを叶えるだけではありませぬか? 比企谷殿」

 

 その横から妙にやる気を滲ませまくってる声と調子で、一番首を突っ込んできて欲しくないタイプの男が意味深なウィンクしながら語りかけてきたので、気持ち悪がって一歩距離を開けてから、念のため八幡は聞いておくことにする。

 

「お前の頭と性格がおかしいのは分かりきってることなんだけどさ・・・・・・一応聞いとくぞ?

 ―――なんで、そんなやる気ありまくってんの・・・?」

 

 無駄に熱っ苦しくて、材木座のコート姿よりも季節外れなような気がしてくるテンションで、いつも以上に気合い入ってるように見えなくもない友人みたいなナニカに対して、八幡は真意を問いかけておいた。

 

 雪ノ下とは違った意味で、この男が材木座の話に乗ってくることは予想できていたんだけども、その理由までは雪ノ下と違って分かり辛いっつーか、分かりたくなってゆーか、そんな感じの理由でよく分からなかったので一応確認のために。

 

 そして、得られた回答は以下の通りとなる。

 

 

 

「フッ・・・・・・それは無論――――面白そうだからに決まってるじゃないですかッ!!!

 なにしろ、自業自得な結果を逆恨みしての意趣返しですよ!? この世界に住む60億の内59億9999万ぐらいは子供のころに経験して、大人になったら恥ずかしくて取り繕わないと出来なくなっていく子供っぽい行動!!

 しかも、彼は幼い子供などではない!! 彼は戦いに敗北するのを嫌がりながら、無残に全てを失う覚悟もなく他者を煽った自業自得の結果でしかないのに、彼は恨む!! 見捨てないでくれと仲間を巻き込む!!

 いい歳して、自分が悪いのに謝るのも負けるのも嫌だから、プライドを守るために挑む勝負とは、そういうことでしょ――――ッッ!!!!」

 

 

 

 ドドーン!!と、効果音でもセットで付属してきそうな声と勢いとノリで、材木座本人よりもクズい参加理由を堂々と大声で宣言しまくって、言い終わった自分の言葉に酔いしれてるらしい表情で満足げに吐息するシェイクスピア(偽)

 

 それを見ながら、色々諦めきった表情で八幡の仲間入りする雪ノ下と、更にドン引き度を増して奉仕部内で一人だけの常識人ボッチになりつつある由比ヶ浜と、慣れてるので特に変化ない八幡と。

 

 

「・・・・・・いや、そこまで言わなくてもさ・・・・・・分かってるよ? 分かってるんだよ我だって、自分が悪いことぐらい。

 分かってるんだけど、やめられない事って人にはあると思われる訳だし、もう少し配慮ってゆーかオブラートにって言うか、言い方に気をつけるとかそういう気遣いとかをさ・・・・・・いや、間違ってはいないんだけどね、間違ってはさ・・・・・・でもさぁ~・・・・・・ブツブツ」

 

 

 ――部室の隅に移動して、なんかブツブツ言ってるのを誰にも聞いてもらえなくなってる材なんとか君。

 

 斯くして奉仕部メンバーによる、由比ヶ浜結衣との本格的な仲直りイベント決着の前に実は存在していたエンディング前の幕間劇が、今はじまる。

 

 

 

つづく

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