伊吹楓は勇者である   作:水歩

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満開

楓は、勇者部の面々と離れ魚型バーテックスを追い詰めていた。

バーテックスに地中に潜る暇を与えずに攻撃をしていると、風達の悲鳴が聞こえる。

楓が悲鳴の響いてきた方向へ目を向けると、そこには見たことのない巨大なバーテックス。

そして、倒れ伏した勇者部の姿があった。

それを見た瞬間、楓の脳裏にある記憶が去来する。

 

 

―身体が動かない…唯一動く頭を動かし、前を見る。そこには全身傷だらけになった少女がいた―

 

―胸が痛みと共に苦しくなり、動かなくなる。その前に、片目の機能が使えなくなった少女が悲壮な覚悟を決め、去っていく―

 

 

その記憶に、楓の意識は沸騰し、内に秘めた竜を解き放つ。

「てめぇらは絶対殺してやる!」

その言葉と共に楓の姿が変わっていく。

短かった黒髪は腰ほどの長さの白髪になり、髪の先に蒼い炎を纏う。

そして、脚の膝から下と、肘より先の腕に蒼い炎を纏う。

頭には二本の黒い角が生え、その先にも蒼い炎が纏わりつく。

楓は、姿を変えると、魚型バーテックスを切りつける。

すると、斬りつけた瞬間、刀から蒼い炎が噴き出し、その炎が竜となってバーテックスに絡みつき、燃やし尽くす。

燃え尽きるのを見届けると巨大なバーテックスの元へと向かった。

 

 

楓が魚型を切りつけたころ、風が立ち上がろうとしていた。

「…このままじゃ神樹様が…」

風は立ち上がろうと全身に力を籠める。

「冗談じゃないわよ…」

そして、自身の武器である大剣を杖にして立ち上がる。

しかし、その後ろから、バーテックスの操る水球が近づき風を水球に閉じ込める。

「お姉ちゃん…!」

倒れ、いまだに動けない樹が出せる最大の音量で叫ぶ。

その言葉に風は水球から出ようと大剣を振り回すが、水中にいるため、水をかき混ぜるだけで、しだいに息が苦しくなっていく。

(樹を置いて、皆を巻き込ん、楓に助けられておいてさっさとくたばるなんて、そんなこと、できる訳がないでしょうー!)

そして、神樹からエネルギーを受け取り、たまっていた満開ゲージを使って満開する。

その余波で、風を覆っていた水球が吹き飛ぶ。

「お姉、ちゃん…?まさか!」

「ため込んだ力を開放する…勇者の切り札…楓が止めていたもの…でも、これならいける!」

「あれが、満開…!?」

満開した風に向かってバーテックスが火球を放つ。

その火球を風はかわすと、バーテックスにチャージをする。

満開したことで力が跳ね上がり、巨大なバーテックスを吹き飛ばす。

そして、東郷も満開する。

「もう…許さない」

「東郷さん、あれって」

「―我敵軍に総攻撃を実施す!」

東郷は日の丸の鉢巻きをまくと、その、戦艦のような大火力で風の援護を開始する。

そして、東郷がマップを見ると、一つの小さな点が神樹に近づいていた。

「神樹様に近い!?このバーテックスはやい!?」

そして、射程の長い東郷がそのバーテックスを狙うが、動きが素早く狙いきれない。

「このままじゃ神樹様が!」

(私も、私だって!)

樹が満開しようとする。

(お姉ちゃんと、皆と、並んで歩いていけるように!守りたい!)

そして、樹も満開する。

満開して樹は、強化されより遠くまで届くようになったワイヤーで、その小さなバーテックスを拘束し、引っ張る。

その近づいてきたバーテックスを粉々にし、残った御霊を破壊する。

 

 

(くそっ!もう三人も満開してる!)

楓は、魚型を倒した後、風達の元へ向かっていたが、その間に三人が満開してしまっていた。

「風!どいて!」

楓は近くまで来ると、風にどくように叫ぶ。

「楓!?」

楓の言葉に風はバーテックスの近くからどいて楓を見ると、その風貌に驚愕する。

「何その髪!?」

「説明は後ッ!」

そう言いながらバーテックスを斬りつけ炎を纏わせる。

すると、そのバーテックスが大量の火球を吐き出し、それをまとめ巨大な火球を作ると、風にぶつける。

「なにこの元気っぽい球…いいわ来なさい!」

その火球を大剣で受け止め、勇者部に指示を出す。

「勇者部一同封印開始!」

「ったく、あたしにもいいとこ残しときなさいよね!」

そして、風以外の五人が封印を開始する。

封印が始まったことを確認したところで風の満開が解け、巨大な火球が神樹に向かって進む。

「風先パ…」

「そいつを、そいつを倒せー!」

風を気にする勇者部に気にする必要はないと勇者部に指示を出す。

しかし、その指示に逆らって、楓が神樹に向かう火球を止める。

そして、楓と風以外の四人は、バーテックスから出た御霊に驚愕していた。

その御霊は巨大で、宇宙にあったのである。




次の回で恐らくこの戦闘は終わります。
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