伊吹楓は勇者である   作:水歩

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今回説明回!
次からしっかり戦闘だと思う!


勇者部

翌日放課後、勇者部は部室に集まっていた。

「友奈さん、その子なついてるんですね」

友奈の頭の上に人間の頭大の牛のマスコットのような生き物が乗っかっている。

「えへへ、牛鬼って言うんだよ」

この生き物は、樹海を守ってきた精霊である。

「かわいいですねぇ」

「ビーフジャーキーが好きなんだよね」

「牛なのに!?」

不思議な牛もいたものである。

「さてと、昨日はみんな無事でよかったよ」

黒板に何かを書いていた楓と風が話を始め、友奈、樹、東郷が二人の方を向く。

「早速、昨日のことを説明していくわ」

そう前置きし、話し始める。

「戦い方はアプリに説明テキストがあるから、今はなぜ戦うのかって話をしていくね。」

すると風は名状しがたい形状の絵を指差す。

「こいつバーテックス、人類の天敵が壁を越えて十二体攻めてくることが神樹様のお告げで分かったわけで、目的は神樹様の破壊、つまり人類の滅亡」

ここで、楓が言葉を引き継ぐ。

「以前、直近では三年前にも攻めてきたんだが、そのときは追い返すので精一杯だった」

「そこで大赦が造ったのは神樹様の力を借りて勇者と呼ばれる姿に変身するシステム」

風が五個形容しがたいものを描きながら続ける。

「人智を超えた力に対抗するには人智を超えた力って訳ね」

「その絵、私達だったんだ…」

風の何とも言い難い絵を見て樹がつっこむ。

「ごめん、僕が描けばよかった」

少なくとも楓が描けば、どれが何かは判別できたはずである。

「げ、現代アートってやつだよ!」

と、友奈がフォローにもならないフォローを入れる。

「コホンッ!ちゅ、注意事項として、樹海が何かしらの形でダメージを受けたり、長い時間封印して枯れたりすると、日常世界に戻った時に何かしらの災いとして現れるといわれているわ」

その言葉に友奈がハッとした表情をしていた、何か思い当たる事があるらしい。

「だから、派手に破壊されて大惨事なんてことにならないようにアタシ達勇者部が頑張らないと!」

そこで楓は口を挟む。

「ちなみに、皆も知っていると思うけど、大橋の事故もバーテックスとの戦いの影響だよ」

そして、大赦が動き始めていることを伝えると、補足を始める。

「で、その友奈の頭の上に乗っかってるものは『精霊』と呼ばれていて、僕たち勇者を助けてくれる。

 その精霊というものは、過去の英雄だったり、民間伝承が姿をとったものなんだ」

そう言うと、楓はスマホを取り出し自分の精霊を呼び出す。

すると、出てきたのは人の頭ほどの大きさで、頭に二つの小さな角が生え、脚の両脇にスリットの入った着物を着た人間だった。

「これが、僕の精霊清姫、精霊は、気に入った勇者に力を貸してくれる。」

「皆さんよろしくお願いしますね?」

「「しゃべった!?」」

部員の面々が清姫がしゃべったことに驚く。

「失礼な!私ももとは人間だったのですから、当然でしょう!」

清姫が、そのことに腹を立てるが、何分小さいので迫力は皆無である。

「清姫、燃やさないでくれよ?大切な仲間なんだから」

不穏な空気を感じた楓は清姫をなだめる。

「はぁい、ますたぁ」

清姫は楓の言う事は聞くようで、素直にスマホに戻る。

「あーっと、話を戻すけど、精霊には伝承があって、その伝承にあわせた能力を持ってるってことね」

話をもとに戻し、強引に話を終える。

すると、これまで一言も発さず、暗い顔をしていた東郷が、話し始める。

「この勇者部も、風先輩が意図的に集めた面子だったというわけですよね?」

その言葉に、風も楓も暗い顔をする。

「そうだよ、適正値が高い人はわかってたから…」

風は言葉を選びながら答えていく。

「アタシは神樹様をお祀りしている大赦から指令を受けているの、この地域の担当として」

「しらなかった」

「黙っててごめんね」

樹が思わず漏らした言葉に謝る。

「次は敵、いつ来るんですか?」

友奈が、思い出したように肝心なことを質問する。

「明日かもしれないし、今日かもしれない、でもそんなに遠くはないはずだよ」

楓がその質問に答えるが、誰も予測できないので、どうしても答えが曖昧になる。

「なんでもっと早く勇者部の本当の意味を教えてくれなかったんですか?楓さんがきたときに行っても良かったはずです。

 友奈ちゃんも樹ちゃんも死ぬかもしれなかったんですよ」

東郷が風と楓を静かに責める。

「ごめん、でも勇者の適正が高くても、どのチームが神樹様に選ばれるかわからないんだよ、むしろ変身しなくて済む確率の方がよっぽど高くて」

「そっか、各地で同じような勇者候補生が、、、いるんですね」

「…人類存亡の一大事だからね」

「ずっと黙っていたんですか」

しかし、納得できず、東郷が部室から出て行ってしまう。

「東郷」

 

 

 

東郷は部室を出た後、渡り廊下に来ていた。

その東郷の肩越しに後ろからお茶のパックを持った手が差し出される。

その手に気づいた東郷が振り返ると、友奈が立っていた。

「…友奈ちゃん」

「はい東郷さん、わたしのおごり」

とうぜん、東郷は遠慮する。

「え、でもそんな」

「さっき東郷さん私の為に怒ってくれたから」

友奈は少し歩くと、振り返える。

「ありがとうね、東郷さん」

「あぁ、なんだか友奈ちゃんが眩しい」

その言葉に東郷は顔を手で覆う。

「あのね、私、昨日ずっともやもやしてたんだ」

そして心情を吐露する。

「このまま変身できなかったら、私は勇者部の足手まといになるんじゃないかって」

友奈は静かに東郷の言葉を聞いている。

「だからさっき怒ったのもそのモヤモヤを先輩たちにぶつけてたところもあって、悪い事言っちゃった」

友奈は静かに続きを促す。

「友奈ちゃんはみんなの危機に変身したのに、国が、大事な時なのに、」

「と、東郷さーん?」

「私は、私は、勇者どころか敵、前、逃、亡…」

「東郷さーん!」

東郷はどんどん沈んでいく。

「風先輩の仲間集めだって国や大赦の命令でやっていた事だろうに、あぁ私はなんて…」

「わーわーッそうやって暗くなってたらダメー!」

その様子に友奈が慌てだす。

「そうだ!元気の出るもの見せてあげるね、きっとすごく楽しくなるよ!」

 

「私の為にこんなネタまでやらせてほんとごめんね…」

「あああ逆効果!?どうしよう」

すると、東郷が友奈を見上げて尋ねる。

「友奈ちゃんは大事なことを隠されていて怒ってないの?」

その質問に友奈は少し考えてから答える。

「んー、そりゃ驚きはしたけど、でも嬉しいよ!この適正のおかげで風先輩や樹ちゃん、それに楓さんに会えたんだから」

「この適正のおかげ…」

「うん!」

そのしっかりした返事に東郷はハッとする。

「…私は…」

東郷はこれまでのことを思い出しながら答える。

「中学に入る前に事故で足が全く動かなくなって記憶も少し飛んじゃって、学校生活を送るのが怖かったけど、友奈ちゃんがいたから不安が消えて、勇者部に誘われてから学校生活を送るのがもっと楽しくなったんだ…」

そこで東郷はうつむいていた顔をあげ、続ける。

「そう考えると、適正に感謝かも」

友奈は東郷の手を握る。

「これからも楽しいよ、ちょっと大変なミッションが増えただけで」

その言葉に東郷も少し納得する。

「…そっか、そうだね、友奈ちゃんって本当に前向き」

その答えに二人は微笑み合う。

 

 

 

東郷を追って友奈が部室を出てから、風と楓は風の精霊である犬神に向かって、東郷に謝る練習をしていた。

「皆ー!説明たりなくてごっめんねー!」

「いや、軽すぎでしょ」

「だよね、軽すぎてもっと怒っちゃうかな」

そして、もう一度頭を下げてやってみる。

「皆、本っ当にごめんなさい!」

「それでいいんじゃないか?」

楓はそれでいいと言うが、風は納得がいかない。

「…低姿勢すぎない?困った~どうやって仲直りしよう、樹どうするべきか占えた?」

「結局占いに頼るのかよ…」

楓のつっこみなど気にしたふうもなく、風は樹に尋ねる。

「今結果でるよ、いかにしてお姉ちゃんと楓さんが、東郷先輩と仲直りするか、えいっ」

「おっなんかモテそうな絵じゃない?」

「いや、風、モテそうな絵って」

楓も、風につっこみながら二人に近づく。

「でっ?樹、他のは?」

「え…とぉ」

樹が、タロットの最後の一枚をめくろうとすると、周りの動きが止まる感覚がする。

そして樹がめくったカードも空中で動きをとめる。

「…あれ?」

「まさか!?」

そして三人のもとに、風のスマホを持って犬神が近づいてくる。

その画面には樹海化警報と表示されていた。

「…まさか二日連続でバーテックスが!?」

そして、三人は白い光に包まれる。




これからもよろしくお願いします!
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