二度目の襲来から一か月半。
残りのバーテックスは六体、そのうち一体が結界内へと侵攻する。
「皆、三回目の戦闘だけど、やり方は忘れてないよね?」
「うぅ、大丈夫か自信ないです」
「え、えーとですね、ここをこうしてこう」
「ほうほう」
樹が友奈と動きを確認する。
「えぇい、為せば大抵何とかなる。四の五の言わずビシッとやるわよ!」
しびれを切らした風が叫ぶ。
「勇者部ファイトー!」
「「「オー!」」」
風の掛け声に合わせて気合を入れる。
すると、近づいてきていた四つの大きな角を持つバーテックスが爆発した。
「え、ちょっ?東郷さんが?」
後衛で、少し後ろに下がっていた東郷がやったのかと問う。
「私じゃない」
「それじゃ一体?」
勇者部の面々が困惑する。
「そうか、来たか」
そうつぶやくと楓は四人に気づかれないように、木の根の陰に隠れる。
すると、バーテックスの周りに囲むように刀が突き立つ。
「封印開始!」
そこに、赤い勇者服を纏った少女が飛び込んでくる。
「思い知れ私の力!」
その少女は刀を呼び出す。
「まさかあの子ひとりでやる気!?」
「御霊が出たよ!」
バーテックスから出た御霊が濃い煙を吐き出す。
「なにこれガス!?」
「なにも見えないよぉ~」
その霧は目隠しとなり、御霊の姿を隠してしまう。
しかし赤い少女は的確に御霊に斬りかかる。
「そんな目くらまし、気配で見えてんのよ!」
縦に垂直に斬り御霊を真っ二つにする。
「殲、滅!」
「諸行無常」
そんな決め言葉(?)と共に残身を解き勇者部の前に着地する。
「はぁ」
「えぇと、誰?」
そこに、少し離れていた東郷が合流する。
「東郷さん…!」
そこで新しい勇者が口を開く。
「はぁ、揃いも揃ってぼーっとした顔してんのね」
そういうと勇者部の面々を見回す。
「こ、ん、な、連中が神樹様に選ばれた勇者ですって?…本当なの?ハンッ」
そう言ってそっぽを向く。
「あの…」
「なによチンチクリン」
友奈が話しかけようとするが一蹴される。
そして自己紹介を始める。
「あたし三好夏凜大赦から派遣された正真正銘正式な勇者」
そこで言葉を切ると続ける。
「つまりあなた達は用済み、はいお疲れ様でしたー」
そのあまりと言えばあんまりな言葉に勇者部の面々は面食らう。
そして、隠れていた楓もその言葉に耐えかねて木の根の陰から出る。
「ひどい言い草だね、三好?」
「へ?伊吹さん!?」
今度は出てきた楓に夏凜が面食らう。
「まぁいいや、もう時間無いから明日だ明日」
バーテックスを倒して時間がたち、樹海化が解除される。
樹海化が解除されると、勇者部は中学校の屋上にいたが、夏凜はいなくなっていた。
「ちょっと楓!?あの子何!?」
樹海化が解除され、戻って来て早々楓は問い詰められていた。
楓は、風の勢いに思わずたじろぐ。
「い、いやちょっと大赦であの子に剣を教えてた時期があってね…」
風の勢いに押されてそんな言葉を返す。
「ふぅ~ん」
その言葉に納得していない顔で引き下がる。
「とりあえず、明日説明するから」
「ちゃんと説明するならいいけど…」
「なら今日は解散!」
部長のかわりに楓がむりやり解散させる。
翌日、楓が部室に行くといつもの面々のほかに夏凜が立っていた。
「全員そろったわね。じゃ、楓よろしく」
楓は風から丸投げされる。
「じゃ、三好話頼んだ」
「は、はい!」
楓が夏凜に話を振ると、固い返事をする。
「転入生のふりなんて面倒くさい。でも、ま、私が来たからもう安心ね、完全勝利よ」
そんな夏凜の言葉に楓の表情が曇る。
「なぜ今このタイミングで?どうして最初から来てくれなかったんですか?」
東郷が問う。
「私だってすぐに出撃したかったわよ。でも『大赦』は二重三重に万全を期している。最強の勇者を完成させるためにね」
「最強の勇者…」
「そ、あなた達先遣隊の戦闘データを得て完璧に調整された完成型勇者。それが私」
そこで夏凜はスマホを取り出し、皆に見せる。
「私の勇者システムは対バーテックス用に最新の改良を施されている」
「まぁ、僕たちと同等程度にはバーテックスと戦えるぐらいになる程度だけどね」
楓が補足と言うより訂正を入れる。
「ま、まぁいいわ、私はあなた達トーシロとは違って戦闘のための訓練を長年受けてきている」
「あのー…」
「なによ!」
そこに友奈が口を挟む。
「一応、私も格闘技は一通り修めてるんですけど…」
その言葉に夏凜は一瞬フリーズする。
その様子をみて、風が嬉しそうに言う。
「しつけ甲斐のありそうな子ねー楓」
「そうだろ?」
楓はそんなことを言いながら悪い顔をする。
「なんですって!?」
そんな二人の言葉に夏凜は憤慨する。
「ま、いいわとにかく…大船に乗ったつもりでいなさい」
「よろしくね、夏凜ちゃん」
友奈にそう呼ばれて夏凜は少し焦る。
「いっ、いきなり下の名前?」
「嫌だった?」
その問いに、どうでもいいふりをして答える。
「…フン、どうでもいい名前なんて好きに呼べばいいわ」
その言葉に友奈が嬉しそうに言う。
「ようこそ、勇者部へ」
その言葉に夏凜は困惑する。
「ちょ、部員になるなんて話一言もしてないわよ」
「ちがうの?」
その問いに勢いよく否定する。
「違うわ!私はあなた達を監視するために来ただけよ」
「じゃあ、部員になったほうが早いよね?」
「ま、いいわそういうことにしておきましょうか」
そんなことを言いながら承諾する。
「その方が監視しやすいでしょうしね」
「監視監視ってあなたねぇ、見張ってないと私たちがサボるみたいな言い方やめてくれない?」
夏凜の言い方に少し呆れぎみに言う。
「偶然適当に選ばれたトーシロが大きな顔するんじゃないわよ」
その言い草にさすがの風も少しムッとする。
「大赦のお勤めはねおままごとじゃないのよ」
そして、夏凜が窓の方に顔を向けると、そこで夏凜の精霊が牛鬼に噛まれていた。
「何してんのよこのくされチキショー!!」
「外道メ」
「外道じゃないよ牛鬼だよ」
そういって友奈は牛鬼にビーフジャーキーをあげる。
「そういえばその子しゃべれるんだね」
「えぇ、私の能力にふさわしい強力な精霊よ」
自慢げに夏凜が言う。
「あ、でも東郷さんは三匹いるし楓さんのはもっとしゃべるよ?」
その友奈の言葉にふたりは精霊を呼び出す。
「ど、どうしよう夏凜さん」
すると、いつの間にか移動して占っていた樹が声をかける。
「今度は何よ!」
「夏凜さん死神のカード…」
「勝手に占って不吉なレッテル張らないでくれる!?」
気を取り直して夏凜は言う。
「とにかく、これからのバーテックス討伐は私の監督のもとに励むのよ」
「事情は分かったけど…学校にいる間は上級生の言うことを聞くものよ」
風がそんな風に夏凜を諭す。
「ふん、まぁいいわ。残りのバーテックスを殲滅したら終わりなんだしそれまでの我慢ね」
「一緒に頑張ろうね!」
「が、頑張るのは当然。私の足を引っ張るんじゃないわよ」
その後、夏凜以外はかめやにきていた。
「夏凜ちゃんも一緒に来ればよかったのに」
「頑なな感じの人でしたね」
「ふふふ、ああいうお堅いタイプは張り合いがあるわね」
「お姉ちゃん…」
「どうやったら仲良くなれるかな?」
そして、いつも通り風と楓は四杯分うどんを食べ、解散した。
こっからも頑張って書いていきますよー!