伊吹楓は勇者である   作:水歩

9 / 16
誕生日の特別話っていうのは一回本編が終わってからやりますね。


歓迎

その日部活後解散すると、楓は風を呼び出した。

「風、三好のことなんだが…」

「あの子がどうかしたの?」

「いや、多分集合場所間違うと思うから僕が部室に一度行くよってだけ」

そういうと、足早に立ち去ろうとするが、風が楓の態度に違和感を覚えて追いつき問う。

「ちょっと、楓何かあったの?」

「まぁ、忠告位ならいいか」

その問いに楓は自身を納得させるようにそうつぶやくと、答える。

「風、勇者システムの満開についてなんだが、なるべく使わないでくれ。それの影響がまだ分かっていないんだ」

「分かったわ、できるだけ使わないようにするわ」

風は素直にうなずく。

「でも、なんでさっき言わなかったの?」

そう、風が当然の疑問を口にする。

「俺も、どこまで言っていいかまだ分かってないんだよ」

少し辛そうに言う楓を見て風が声をかけようとするが言葉が見つからずに押し黙る。

そこで楓が空気を変えようと話題を戻す。

「と、とりあえず今週末は部室に一回寄るから少し遅れると思う」

「じゃ、友奈たちには心配しないように言っておくわ」

二人とも切り替えが早く元の明るいトーンで会話している。

そして、他愛のない話をしているといつの間にか二人の住むマンションについていた。

「あ、楓今日食べてく?」

「いや、今日はいいよ。ありがとね」

いつもはそこで風にごちそうになるのだがなにか思う事があるのか断る。

「何かあるの?」

「いや、今日そんなに腹減ってなくてもう寝ようと」

いつもは風と同レベルの大飯ぐらいな楓の言葉に不安気に尋ねる。

「大丈夫?風邪とかじゃないよね?」

「大丈夫、風邪じゃないから。今日はちょっと疲れがね」

そうごまかして楓は自分の家に入る。

そしてベッドに横になると深い眠りにおちた。

 

 

その週末、楓は部室にいた。

時計を気にしながら待っていると、集合時間の十五分前に部室の戸が開き夏凜が入ってきた。

「あ、伊吹さん早いですね」

「早いですねじゃないよ。本当に間違えるなんて…」

その言葉に夏凜はきょとんとする。

「集合場所は現地、はい急ぐよ」

楓は部室から夏凜を追い出し友奈たちのもとへ向かおうとする。

「ちょ、ちょっと待ってください。なんで私が間違うと…」

「三好さぁ、前からそういう間違い多かったけど自覚なかったの?」

その言葉がよほどショックだったのかポケッとして突っ立ている。

「ほら行くぞ、先方に迷惑がかかる」

そう急かし楓はスタスタと集合場所へと急ぐ。

 

 

集合場所に着くと勇者部の面々が待ち構えていた。

「あ!やっと来た!二人とも遅いわよ!」

「三好に言ってよ…」

「というかホントに部室に行ってたわけね…」

少し呆れた顔で風が呟く。

「じゃ、そろそろ始めようか」

「「「はーい!」」」

 

 

その後、レクリエーションで折り紙を子供たちに教えたり、人形劇で子供たちと遊んだあと夏凜以外で集まっていた。

「はい、ケーキの準備大丈夫?」

「大丈夫です!」

友奈がケーキの入った箱を少し持ち上げて答える。

「じゃ、いくわよ」

そういうと風が夏凜の家のインターホンを押す。

しかし、何度押しても反応がない。

「あれ?もう寝てる?」

「いや、そんなことはないでしょまだ七時だし」

すると、後ろから声をかけられる。

「あれ?あんたたちなにやってんの?」

振り向くとそこには夏凜が木刀を持って立っていた。

「楓からどうせコンビニ弁当食べてるって聞いて、どうせなら皆で遊びに来たのよ」

「分かったわよ、開けるからそこどいて」

そして、夏凜は鍵を開け皆を招きいれる。

その部屋は、中学生女子としては異様なほどものがなく、最低限の家具とトレーニング器具しか置いていなかった。

部屋に入ると部屋の中を物色しだす。

「これスポーツ選手みたい!」

樹がランニングマシーンに触れて呟く。

「み、水しかない…」

そして友奈が冷蔵庫を開ける。

「ま、いいから座って座って」

すでにリビングで座っていた風が促す。

「いきなり来てなんなの!?」

そこでやっと夏凜がつっこむ。

その問いに友奈が答える。

「あのね、夏凜ちゃん…」

そこでケーキの箱を取り出す。

「ハッピーバースデー!」

「「「おめでとう!」」」

その言葉に夏凜は顔を赤くする。

「…あほ、…ばか、…ぼけ、…おたんこなす」

「え、え?」

「何よそれ?」

夏凜の反応に困惑する。

「誕生日なんてやったことないから、なんて言ったらいいのか分からないのよ…!」

「あれ?三好の兄さんならめっちゃやってそうな気が…」

夏凜の反応を見て楓が思わず漏らす。

「とにかく、誕生日おめでとう夏凜ちゃん」

友奈のその言葉に夏凜は恥ずかしがりながらもまんざらでもない様子だった。

パーティが始まってしばらくした後、友奈がカレンダーに書き込みだした。

「勇者部の予定と、私達の遊びの予定、あとはー」

「コラー!勝手に書き込むんじゃないわよ!」

そんな様子をみて楓は少し安心する。

(よかった、三好は少し頑なだから。勇者部になじんできたみたいで)

「忙しくなるわよー」

「勝手に忙しくするなぁ!」

ただ、友奈と風がボケ倒しているせいで夏凜のつっこみが大変になってきているのだが。

「文化祭でやる演劇の練習もあるし忙しいよー」

その言葉に一同がぽかんとする。

「演劇…?」

「いつ決まったんですか?」

その皆の反応を見て友奈はうろたえる。

「あ、あれ?もしかして私の中のアイデアを口走っちゃった…かも…」

「ばかなの?」

しかし、風の琴線に触れたようで風が賛成する。

「いいね演劇!」

そして立ち上がり宣言する。

「決まり!今年の文化祭はそれで行きましょう!」

「よかったね、友奈ちゃん」

東郷のことばに友奈ははにかむ。

「うん!」

 

 

夜が更けてきたので解散すると、夏凜のスマホにSNSの招待がきた。

その勇者部のグループに入ると、怒涛のように発言がきて、夏凜は困惑する。

そして最後に、『これから全部が楽しくなるよ!』という言葉とともに、写真が送られてきた。

その写真は、パーティの途中で撮った集合写真だった。

そして、夏凜はベッドにもぐりこむ。

「…全部が楽しくなる…か、世界を救う勇者だって言ってるのに、バカね…」

そうつぶやくと、夏凜は眼を瞑った。




最近日常回ばっかりですねー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。