ようこそ幻想の園へ~現代魔女の幻想入り~   作:せせらぎ

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その地は幻想郷

美しくただ広がる青々と茂った緑、視界端に広がるは大きな湖、森をひたすらに歩けば辿り着ける大きく美しい山。日差しを受けてキラキラと煌めく美しいこの風景をどう例えればいいのだろうか、花鳥風月 山光水色 深山幽谷。言葉で表すにはとても足らない。人の手が加わっていないこの大自然を見て感嘆を漏らさない者がいるだろうか。魔弓は現代で見ることのできない美しいこの風景を目に焼きつけていた。あの奇妙で気持ち悪い空間をひたすら耐えて10分、漸く見えた出口を潜り抜けた先がここだった。すでに背後には奇妙な空間の亀裂はなくなっていた。代わりに背後にはあの、山頂にできていた古びた神社だった。いや正確に言えば古びたではなく、しっかりと管理され清掃の行き届いた神社がそこにはあった。八雲紫の言うとおりであればここに彼女を導いてくれる者がいるという。

 

「美しい景色はいいんだけど…誰もいないんだけど、人の気配もなければ痕跡は…逆にあるのかな?掃除はされているし」

 

境内は落ち葉1枚落ちていなく、この神社の管理主はとっても几帳面なのかよほど暇なのか。それもそのはず、誰もこの神社には人1人いないのだ。しかし人の気配が1つこの境内へ、この神社へ向かってきている。

 

「(おかしい……明らかにおかしいスピードでこっちに近付いてくる。あれだけの木々があるのにどうやって間を抜けてきているんだろう。まるで私の飛行術式に似て……⁉)」

 

そう、魔弓はずっとこの神社に続く長い階段の下、広がる森の中に目を凝らしていた。しかし彼女が感知しているこちらへ向かってくる気配は明らかに木々を縫ってこれる速度ではない。思い当たるのは1つ、八雲紫は言っていた…神秘が色濃く残っている、それ|即(すなわ)ち人智を超えた、人の理解を超えた存在がそこにあるということだ。つまり何か飛んでいてもこの世界では何らおかしいことではない。すぐさま顔を上げて正面、ただ広がる空を睨みつける。もうすぐ傍にまで気配が迫っていた、魔弓の真上にその気配はあった。反応できなかった。思考していたからではない、気配感知に集中していたからではない。あまりにも速すぎたのだ。

 

「え、貴女誰…?というかなんで飛んでるの⁉」

 

「お、珍しいなこんな辺鄙なところに。参拝客か?でも見たことない顔と服装だな」

 

「魔…女?」

 

「よ!初めましてだな、私は霧雨魔理沙(きりさめまりさ)だ。まあ驚くな一応人間だぜ」

 

「えあ、どうも。私は慧 魔弓といいます…霧雨さんが私を導いてくれる方…ですか?」

 

「あーむず痒いからそんな畏まらないでくれよ。それになんだその導くってのは、私はここに霊夢にたかりに来ただけだぜ。ってことで霊夢知らないか?」

 

「まずその人を知らないのだけれど、えっとここは幻想郷で合っているのよね?」

 

「んーまあいつもの場所だろう」

 

真上にいたのはよくある代表的な魔女という格好をした金髪の少女であった。白と黒の洋風魔女ドレスに身を纏い箒に跨っていた彼女はゆっくりと魔弓の目の前に降り立ち辺りをきょろきょろと見渡す。当然だが先ほども見た通り誰もこの神社の境内にはいないのだ。いるのは魔弓と魔理沙の二人のみである。しかし彼女はずいずいと勝手知ったる我が家のように神社のわきへ歩いて行ってしまう。このまま何もせず突っ立ってるだけでも何も進まないので彼女のあとを小走りで追いかける。角を曲がると何やら話し声が聞こえてくる。位置的には神社の横部分に該当する場所、縁側だろうか。広場のようになっており軽いパーティーもできるような空間が広がっていた。そこには魔理沙と赤い巫女服を着た見た目歳は同じくらいの女の子が茶菓子をつまんでいた。どうやら魔弓に気づいたようで手招きをしている。

 

「あら、もう来ていたの?貴女が魔弓さんね、初めましてね。私がこの幻想郷の大結界を維持している博麗(はくれい)霊夢(れいむ)よ。まあ大方紫から聞いてるから自己紹介は構わないわ、まあ座ってお茶でも飲みながらゆっくり話しましょう。魔理沙は帰っても構わないわ」

 

「いやいや私もお茶くらいもらっていくつもりだし、気にしないでくれ。適当に寛ぐから」

 

「あー……ここが幻想郷で合っていますよね?そして霊夢さんが導いてくれる人…?」

 

「ええそうよ。ここは幻想郷で東に位置する、博麗神社よ。導くだなんてそんな大それたことしないけれどね。最低限ここで生きるための規則や知識とかそういったこと説明するだけよ。まあ定型的だけれどこれだけは初めに説明させてね」

 

そういうと赤服巫女、すなわち霊夢は人差し指と中指を重ねて魔弓へ向ける。するとどうだろう人差し指と中指の間に一枚の光輝くカードが現れて形を成す。それを霊夢は魔弓に渡して眺めるように促すがそのカードはどうやら紙でできている訳ではないみたいで感触プラスチックのようだった。重さは感じられず半透明な面には複数のお札が描かれていて下部には『夢符[二重結界]』と記されており、あの廃神社の境内で八雲紫と決闘したとき彼女が宣言していた技に形式が同じように魔弓は感じられた。眉が霊夢に口を開くより早く魔理沙が

 

「スペルカードっていうんだよそれ。この幻想郷の住民なら大抵の奴は持っているぜ!」

 

「魔理沙の言う通りよ。まあこの幻想郷では揉め事や何かにつけて決着をつけたりするときなんかはスペルカードルールに則って決着をつけるの。スペルカードルールっていうのはね、妖怪や神なんて物騒な連中が暴れるとこの幻想郷が無茶苦茶になっちゃうからまあ制限掛けて『お遊び』としてしているのよ。まあ一応そうやって決めている以上負けたから相手を食い殺すなんて真似するやつはこの幻想郷にはいないから安心して頂戴ね。実際魔理沙や私含めてスペルカードで決闘する連中は争うより魅せるってことの方が大事だと思っているわ。いかに可憐で美しく自身の技を表現できるかってね」

 

「へぇスペルカードルールですか。つまり傷つけあわずに相手と競ったり、勝敗をつけることができるんですね?」

 

「ええ、まあルールとしては今持ってるそのカード、スペルカードって言ってそのカードの中には自分があらかじめ決めておいた技の名前とその名前の意味を体現した技の情報が入っているの。そのスペルカード枚数を相手と話し合って、敗北条件を決めて勝負するの。作るのは簡単よあとで一緒に作りましょう?まあ口で言っても難しいわね、魔理沙暇つぶしと説明のために犠牲になりなさい」

 

「お、いいぜ。今日は絶好調なんださっき文をボコボコにしてきたばっかりだからな!」

 

「魔弓さん、まあ気軽に何かの舞台でも見るような感じで適当に寛ぎながら鑑賞してて頂戴、軽く魔理沙を捻ってくるから」

 

「あ、はい。わかったわ…」

 

霊夢はそういうが早いか魔弓からスペルカードを受け取り彼女を座らせる。魔理沙も湯呑を縁側に置き箒にまたがり当然のように宙に浮かぶ、霊夢もさも当然のように宙にふわりと浮かぶと広場中央上空に留まる。2人はにやりと不敵に笑うと霊夢はお祓い棒のようなものを魔理沙へ、魔理沙は帽子の中をまさぐってなにやらマジックアイテムのような八角形のアイテムを霊夢へ向ける。

 

「カード枚数は2枚でいいわね!敗北条件は全カードブレイクされるか2回被弾でいいかしら?」

 

「ああ構わないぜ!久しぶりの霊夢との弾幕ごっこだからな楽しませてもらうぜ!ってことで悪いな霊夢先手必勝だぜ!」

 

2人は後方に飛ぶと一定の距離を取る。直後魔理沙のマジックアイテムから星型で淡い黄色の弾幕が展開される、まるで天の川のようにキラキラと広場上空を彩る。割と疎らに振り撒かれたその星型弾幕は霊夢に向かってあっという間に距離を詰める。しかし霊夢はそれらを最低限の身じろぎでするりするりと間を抜けて魔理沙へ距離を詰めていく。魔弓から見ればかすっているだろうそれを不敵な笑みで抜けていく霊夢、魔理沙は左に旋回しながらまた今度は星の色と大きさを変えてアプローチを始める。先ほどの星の大きさは一つ当たり大体こぶし1つ程度の小さな星であったが今度は濃い青色の手の平大の大きさを密度高くばらまく。しかし霊夢は変わらず掠めているか当たっているかの瀬戸際でかわして見せる、美しい星の波は今度は色がまばらに変わりだす。赤白黄色の星が大きささまざまに魔理沙の背後の魔法陣から、魔理沙の動きに合わせて移動しながら放出されていた。青赤白黄の弾幕をひらりひらりと優雅に霊夢はいなしていく、が空を蹴り霊夢は弾幕の外に飛び出す。彼女の手には先ほど見た光り輝くカード『スペルカード』が1枚握られていた。

 

「行くわよ魔理沙。霊符[夢想妙珠(むそうみょうじゅ)]!」

 

霊夢のスペルカード宣言があると同時にスペルカードは光の破片になって宙に消えていき、霊夢の背後から7色の弾幕が魔理沙に向けて飛び出していく。魔理沙は箒で動き回りながら弾幕を放っていたが霊夢のその弾幕は魔理沙に向かって追尾していく。自動追尾弾というやつだ、しかし見た目も動きも綺麗で見ている者を魅了してくれる。一方魔理沙も必死に逃げ回りながらいくつかの追尾弾を打ち落としていたがとうとう1発の青い弾幕がほうきに直撃してしまい体勢が崩れて失速する。すかさずそこへ紫、赤、黄の弾幕が迫ってくるがそれを箒で薙いで消し飛ばす、しかし背後から迫ってきていた緑の弾が直撃してしまう。

 

「いった⁉ っくぅ~早速1発目かぁ」

 

「あら魔理沙今日は絶好調なんじゃなかったかしら?」

 

「うるせぇ!こっちの番だ!流星[スーパーペルセイド]」

 

魔理沙も1枚のカードを作り出し宣言する、彼女の後ろからは大きな無色の弾幕が霊夢に向かって尾を引いて流れていく。しかし霊夢の後ろからは細かい星型の弾幕が放射線状にばらまかれる、どちらかに注意していてはどちらかに直撃してしまうと難易度が高い。しかし彼女はそこにいなかった。魔理沙も魔弓も霊夢が消える瞬間は見ていない。いや、正確には今は下から見ているおかげで全体の状況の把握が魔弓にはできているので居場所はわかるのだ。しかしどうやって霊夢彼女自身がそこまで移動したのかわからないのだ。

 

「亜空点穴(あくうてんけつ)‼」

 

「ああああ!ずるいぞ霊夢!そんなの反則だz ぶはぁ!」

 

魔理沙の背後にとび膝蹴りを叩き込んで地面に叩き落とす。顔から地面に落ちていく魔理沙は特に受け身など取れるわけもなくそのまま顔面着地を華麗に決めると女の子とは思えない声をあげて沈黙する。その近くに霊夢も着地すると袖をパンパンとはたき魔弓の隣に座ってお茶を一口含む。

 

「まあこんなものね。とても簡単に見せたけれども。最後のあれはまあ大目に見て頂戴、まさか魔理沙めったに使わないスペルカード持ってくるんだもん、吃驚しちゃってつい力んじゃったのよ」

 

「力んで瞬間移動とかやってのけるんですね…」

 

「ええ、あと敬語とか使わないで頂戴。くすぐったいから、私も魔弓と同じくらいの年だろうから遠慮なんてしないでね」

 

「じゃあそうしようかな。ところで魔理沙は大丈夫なの?顔から思いっきり着地決めたけど…気絶してる?」

 

「ああ、気にしないでまあいつものことだから。懐かしい技出しておいて瞬殺されたのが恥ずかしくて顔上げれないだけよ」

 

「霊夢が今のは狡かっただけだよ、私はあんまり気にしてないからな!」

 

漸く顔を上げた魔理沙は帽子とスカートの砂埃を払うと赤くはれたおでこを痛そうにさすりながらお茶を口いっぱいに含む。ごくりと音を立てて飲み込むとそのまま縁側に倒れこんで日向ぼっこを始めてしまう。魔弓は魔理沙の腫れたおでこを痛そうに見つめながら霊夢に問う。

 

「スペルカードとか、あの綺麗な弾は威力とか出力、配置密度ってやっぱりある程度抑えないといけないの…?」

 

「ええ、さっきも言ったけどお遊びだからちゃんと避けられないといけないのよ。私の追尾弾は魔理沙みたいに箒で思いっきり叩いたり、同じくらいの大きさの弾幕で打ち消したりすると消えるんだけど。そうじゃなくて消せないほどの出力とか避けられないほど密度の高い弾幕なんか展開したらルール違反ね。それに一応出力は個人の加減次第ね。私はまあ当たったら服破けたり痣になる程度の強さよ?もちろん霊力とか魔力とかで身体強化しているから魔理沙みたいに直撃や顔面着地しても大概の奴らは無傷とか赤くなったり程度で済むんだけどね」

 

「へぇ~身体強化や浮遊魔法は幻想郷ではもう基礎中の基礎なんだぁ、私結構苦労したのにな」

 

「幻想郷ではそれが『当たり前』だからな、外の世界では飛んでる奴なんてめったに見ないっていうじゃないか。こっちじゃあたりまえだと思っていれば大体のことはできるぜ」

 

「そうね魔理沙の言う通りよ、まあ私の言葉ではないんだけどある奴の言葉を借りるとこうね。常識にとらわれてはいけない…ってね」

 

「…そうだなそれはそうだ。ところで霊夢、ちょっと魔弓借りていってもいいか?」

 

「まだスペルカードの作り方とか幻想郷の施設とか危険な奴とか全然教えていないんだけど?」

 

「私が教えておくから気にするな、ってことでちょっと私と一緒に来てくれないか魔弓」

 

「まだまだ分からないことだらけできちんと教えてもらえるなら構わないけれど。どこに行くの?」

 

「私の行きつけの図書館だ。紅魔館って場所にあるんだが私1人だとな、都合が悪くてさ」

 

「それはあんたが悪いでしょうが」

 

それはないぜと魔理沙はにっこり笑いながら立ち上がり、箒に跨(またが)り魔弓に手招きする。乗れということなのだろう、正直この箒で2人も乗れるとは思わないが近付き魔理沙の後ろへ跨る。どうやら普通の竹ぼうきのようだが魔理沙が地面を蹴るとそのまま上昇する。

どうやら2人分の重さ位どうってことはない様で視界の中央に捕らえた真っ赤な屋敷へ向かって………急速に発進する。

 

「あぁあああぁああああ⁉」

 

「いやっほーーぅ‼しっかりとつかまってろよー!」

 

魔理沙は帽子を片手で抑えて上半身を反らせて楽しそうに魔弓に叫ぶ、それ同様にすでに魔弓は叫んでいた。魔理沙の腰に手を回して振り落とされないように掴まっているだけで手一杯であった。徐々にスピードが落ちていき大きな湖の上に来ていたころには遊覧飛行程度のスピードになっており魔理沙も帽子を押さえるのをやめて下降の準備に入っていた。あっという間にここまで来てしまった、距離にしておおよそ10㎞ほどだろうか?もっとあるのかもしれないしそんなにないのかもしれない。

 

「よっし着いたぜ。ここが紅魔館だ」

 

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