「あいつの名前
4月から入学した1年生の
「サッカー部だー?元々野球やってねーのかあいつ」
「確か中学までやってたって言ってたような言ってなかったような」
「なんだあ、随分中途半端な言い方じゃねーか」
「いやそれが中学の部活はサッカー部だって言ってましたからおかしいなと」
(中学までは野球をしてて部活はサッカー部って変な話だな)
それ以上は知らないという真田に礼を言い雷蔵はあるファイルを取りだし少し調べ物を済ますと、とあるところに電話をかけた。
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雷蔵がとあるところに電話をかけてから数日。翔希はいつものように屋上で昼休みで昼食を済ませうたた寝をしつつ過ごしていた。
「おおーお前こんなところにいたのか探したぜ」
「…探してたって俺の事をっすか?」
まさか自分のことを探しているとは思っていなかった翔希は寝転んでいた体制から起き上がり素直に疑問をぶつけた。
「この前も野球部の話は断りましたよね…」
「まあ気にすんな。お前のことについて調べがついたんだよ。早川さんに聞いてな。1年から難波シニアで投手としてマウンドに上がっていたけどお前最後の1年間ずっとベンチ外だったらしいな」
「それをなんで轟先生が?」
「早川さんとは昔社会人野球で同じチームメイトでな。お前が大阪出身ってのは聞いてたしなんか知らねーかなと思って聞いたらこれがビンゴだったわけよ」
まさか自分の過去について調べているなど思いもせずただ唖然としていた翔希も雷蔵に何があったかは翔希に直接聞けと早川さんに言われたと伝えると観念するように口を開いた。
「2年になった時に早川さんが辞めて新しい監督になった。俺の同級生が早川さんの跡を継いだ監督の息子。つまり贔屓ってやつ。監督からしたら息子のエースナンバーを奪う俺が憎かったと思う。たまに練習試合とかもでてたけど結果残しちまうと反発の声が上がる。だからおれは中2の夏からずっと球拾い」
「まあ怪我とかでなけりゃそういうもんだろうな。汚い大人ってもんはとことん汚い。お前のピッチングの映像何個か見たよ。おまえはいいピッチャーだよ。そんな良いピッチャーのお前に見てもらいたいもんがある。放課後ちょっと付き合ってくれ」
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日が落ち始め気温が下がり始めた頃、翔希と雷蔵はある河川敷に来ていた。
「こいつらは来年の春からうちの野球部に入る奴らだ。右から秋葉、ミッシーマ、俺の息子雷市だ。」
「…え?推薦とかっすか」
「違う違う。秋葉とミッシーマはガキの頃から目付けた奴らだ。ここら辺では無名だよ。どうだ?こいつらといれば甲子園も夢じゃねーだろ?」
素振りを拝見していると確かに細身の左打ちの秋葉。体格のいいミッシーマこと三島。2人とも中学3年生にしてはかなりいいスイングだ。
だがそんな2人のスイングが霞むほど鋭く早く、凶暴なスイングを繰り返す雷蔵の息子雷市。
思わず冷や汗が出てアドレナリンが出る。翔希の投手としての本能を素振り1つで刺激してしまうような雷市のスイングに翔希は甲子園が確かに夢でもない気がしてくる。
「まあ、そんなとこで野球部入って力貸してくれねーか、お前がいりゃホント甲子園どころか全国制覇も夢じゃないと俺は考えている。どうだ?ロマン溢れる話だろ?」
(たかが野球部に入るかどうかでなんでこんな大袈裟な話になってんだ。でもー)
この親子となら本当に叶いそうな全国制覇。そんな大きなロマンに期待せずはいられない翔希は薬師高校野球部へ入部することを決意する。