「えー1年5組の北原翔希です。ポジションは主にピッチャーをやってました。よろしくお願いします」
まばらな拍手が起きそれに頭を下げる。すると雷蔵がグラウンドへとやってきた。
「自己紹介終わったみてーだな。よし!18人目の仲間が入ったし今日はてめぇらの実力を見るために紅白戦やるぜ。全員にピッチャーやらせっから全員がエースのチャンスだぜ。俺にガンガンアピールしろ!」
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「球種はなにがある?」
「とりあえず実践で使えるのはカーブ、スライダー、チェンジアップです」
「おっけー、じゃあストレートは、、、」
1回表の守りからいきなり投手としてマウンドに上がる翔希は2年生捕手の渡辺とサインの打ち合わせをしている最中だ。
「まあ嫌だったら首振ってくれたらいいし思い切って投げろよ!」
渡辺との打ち合わせの後投球練習が終わりボール回しのボールがが手元に戻り打者を見る。
初球はアウトコースの真っ直ぐのサイン。
そのサインに頷きワインドアップに入りサイン通りアウトコースへ真っ直ぐミットへ収まる。
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1人1イニングずつという決まりだったがその中で翔希は1イニングを3者凡退に抑え、紅白戦ながらまずまずの高校野球デビューを果たした。
打つ方でも、投手経験のない野手が投げたこともあり急造投手多いながら5打席全て出塁を果たした。
試合後には雷蔵は翔希、2年生の三野、真田を投手と据えこれから戦っていくとチーム内で取り決めたことを発表し新生薬師高校がスタートした。
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「カーブどうやって投げてんの?」
紅白戦の帰り道、真田が翔希に話しかける。
「うーん今は捻る感じで投げてるかなぁーもっと引き出し増やしたいしなぁー、抜くカーブもマスターしたいなって思ってる」
「今はって……今でも十分凄いじゃん翔希のカーブ」
「おーおー言うね俊平。褒めてもなんもでねーぜ。」
「いや翔希は良いピッチャーだよほんと。これ以上凄くなって本当に何目指すんだよ」
真田の言葉には嘘やお世辞は一切なかった。現に紅白戦では3番バッターとして翔希と対峙したが強烈な実力差を感じた。
球速は真田と同じ程度だったがそのストレートがコースいっぱいに決まり追い込まれたあとはボールになるカーブに手を出してしまい三振を決した。
真田は同じ投手として翔希との実力差を感じたのだった。そんな投手がこの無名高校で上を目指しているからこそどうしたいのか聞きたかった。
「うーん甲子園かなぁ今は」
「え?甲子園?この高校で?甲子園いくなら他の有名校とかいかなかったの?」
「うん、この高校で、最初は野球もやる気はなかったけどまあ目指すなら甲子園かなとりあえずは。何となくで3年間過ごしたくないしな、なんせ野球好きだし」
「甲子園かぁ考えたこと無かったなぁ……けどなんか翔希とならいけそうな気がするし俺も真面目に目指してみようかな」
「まあ俊平はまず校舎裏でランニングサボらんことやな監督はバレバレなのになって苦笑いしてたぞ」
「ハハハ、まあその通りだな」
今まで続けてきた野球を何となく高校でもやり始めてた真田だったが1人の野球人として、1人の投手として翔希と共に甲子園を目指してみようと誓った。